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記憶を無くしたレジィリアンス
ラステルの打ち明け話
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エウロペがエルデリオンの部屋を出、見張りの扉を抜けて王城の中央階段を降りて行く。
すると階段下の、横の扉がいきなり開いて、ラステルが姿を見せた。
エウロペは階段を降りきって、下で待つラステルに口開く。
「…エルデリオンの部屋でナニしたか、言えって?」
ラステルはその問いに、無言で頷く。
エウロペはため息を吐いた。
それでラステルは、彼が口を開きやすいよう説得にかかる。
「彼に少年を扱う教授をした者から、大体の事は聞いてます。
エルデリオンは貴方に…依頼したと推察してます」
「それで私がどこまでしたか。
それが聞きたいんだな?」
ラステルが頷くのを見て、エウロペは眉間を寄せる。
「…正直、俺もキツかったから。
出来れば酒を飲んで話したい」
ラステルは頷くと
「舌触りの良い、いい酒があるので、こちらへ」
と導く。
ラステルはやって来た扉を開け、エウロペを中へと導き入れ、扉の奥の廊下の、その先の扉を開ける。
エウロペはチラ…と見て
「私が見張りの扉を抜けたのを、見張りに聞いて近道した?」
と尋ねる。
ラステルは扉を開けると、頷いた。
エウロペがその部屋へ入ると、王城内なのに華美で無い、落ち着いた造りの部屋で、レンガの壁。
レンガの暖炉。
けれど重厚感ある焦げ茶のキャビネットとそして、革張りの椅子が二脚。
ラステルに一つの椅子を指し示され、エウロペは腰掛ける。
ラステルはキャビネットから、グラスとボトルを取り出すと、二脚の椅子の間の、木の円形のサイドテーブルの上に、グラスを置いた。
明かりは少なく、暖炉の火が揺れている。
エウロペ自身も憔悴してたから。
暖かくて、落ち着いた。
酒の注がれたグラスを手渡され、エウロペが受け取ると、ラステルは自分のグラスを手に、横の椅子に腰掛ける。
エウロペが一口、目を閉じ飲み込み、ふうっ…と吐息を吐くのを、ラステルは見守った。
「…つまり依頼に応えた」
エウロペはその問いに、目を開ける。
「ヤワに見えて…思い込んだら引かないな」
独り言のようなその言葉に、ラステルは頷く。
「ええ。
一度こうと決めると。
決して引きません。
何があろうと」
「私が彼の…後ろを傷つけなかったか。
心配だったんだろう?」
「で、犯した?」
エウロペは肩を竦めた。
「しようと思ったが…出来なかった」
ラステルは、目を見開く。
「どうして?」
エウロペは言いにくそうな表情をし、けれど言った。
「…かなりほぐしたが…彼はとても、狭くてね」
ラステルは頷く。
それでエウロペは、かなり具体的な説明をした。
「レジィリアンスに、エルデリオンがした事と。
誘拐犯がレジィにした事を、私にして欲しいと。
脅したんだが、聞かない。
それで…馬車でした事を出来るだけ怖がらせて。
したんだが…。
いざ犯そうとしても、彼は狭くて。
無理に挿入してたら血だらけで。
彼は椅子にすら、座れなくなる。
拡張器を使って広げたけれど、それでも無理で。
傷つけそうだったので、そこで止めて。
…で、明日、まだ私に犯されたかったら。
張り型を入れたままにしとけと、命じたが…」
ラステルはまた、目を見開いた。
「…言ったんですか」
「もしまだ私に犯されたいなら、入れたままにしとけと」
「…じゃ、可能な限り入れたままですね」
エウロペはもう少しで、酒を吹きそうになった。
「…そこまで…頑固か?!」
ラステルは頷く。
エウロペは椅子を立ちかけ、ラステルに腕を握られ、振り向く。
「…エルデリオンにした命令を、取り消しに行く気ですか?
無駄ですよ。
むしろ、貴方で安心。
別の男に依頼しないか、こっちはハラハラしてたし。
貴方に断られたら、エルデリオンはそいつらに依頼しそうで、こっちはその男達を誘い出し、旅行に連れ出す計画まで立ててましたから。
…ダメなら、非常事態で誘拐・監禁まで視野に入れてました。
ともかく、そいつらにエルデリオンが身を預けようものなら…」
エウロペは目を見開き、椅子に腰掛ける。
「…ものなら?」
ラステルは、ため息を吐く。
「…エルデリオンはレジィ殿がされたような体験をしようと、本気ですからね。
ヨランダ伯によれば、サッシ・アベ侯爵。
この男は隙あらばエルデリオンを抱きたいと。
それはいつもスケベ面で、ヨダレ垂らしててねぇ…。
毎度、デルデロッテが本気で睨み付けて、追っ払ってる男です。
しかもうんと、相手を辱めるのが好きな男でねぇ…」
「…ある意味、レジィの追体験するには、ふさわしい男だな?」
エウロペに言われ、ラステルは顔を下げる。
「…それでも、エルデリオンに気があるだけ、まだマシ。
次の候補が、ドナテラ公爵。
この男は、それは評判が良くなくて」
「どう悪い?」
「そりゃあもう…。
紅蜥蜴の、得意客じゃないかと疑ってるくらい…。
少年を買っては、調教に命かけてるような変態」
「例えば?」
「縛り上げて、鏡の前でうんと辱める」
エウロペが顔を下げるのを見て、ラステルは続ける。
「延々と刺激しつつも、絶対イかせない」
エウロペの顔が、もっと下がるのを見て、ラステルは囁く。
「私の言った意味、お分かりでしょう?
貴方に断られてたら…」
エウロペは顔下げたまま、頷き倒した。
「その他にも三人の名が上がったようですけど…どれも、ど・変態で…。
万が一デルデロッテが知ったら。
上がった名の男、全部斬り殺しかねない。
それっくらい、最低の変態男達です」
「…私だと…デルデロッテは殺さないのか?」
ラステルは頷く。
「まず、貴方は簡単に殺せないし。
頼まれたとは言え、貴方の大事なレジィリアンス殿を、抱いてる負い目がある」
エウロペはきょとん、としてラステルを見る。
「…こちらが無理に頼んだのに?」
ラステルはエウロペを呆れて見た。
「デルデロッテですよ?
もうレジィリアンスは、彼と抱き合うことに夢中。
つまりデルデも、かなり情が移ってるから…。
相当…入れ込んで抱いてる」
「…………………確かに」
ラステルは肝心なことを頼もうと、話を戻し、エウロペに釘刺した。
「多分まだかなり過激なことを、エルデリオンは貴方に頼むと思います。
が、断らないでやって下さい。
でないと…」
「…最低の変態に、身を委ねるから?」
ラステルは頷きながら、言い諭す。
「エルデリオンが依頼しようとした全員。
旅行か、こちらが誘拐して姿を消したりしたら…。
どんな男に『犯せ』と頼むか…。
ヒヤヒヤものですよ」
それを聞いて、棚に並べられた性具の数々を思い出し、エウロペは深いため息を吐き出した。
すると階段下の、横の扉がいきなり開いて、ラステルが姿を見せた。
エウロペは階段を降りきって、下で待つラステルに口開く。
「…エルデリオンの部屋でナニしたか、言えって?」
ラステルはその問いに、無言で頷く。
エウロペはため息を吐いた。
それでラステルは、彼が口を開きやすいよう説得にかかる。
「彼に少年を扱う教授をした者から、大体の事は聞いてます。
エルデリオンは貴方に…依頼したと推察してます」
「それで私がどこまでしたか。
それが聞きたいんだな?」
ラステルが頷くのを見て、エウロペは眉間を寄せる。
「…正直、俺もキツかったから。
出来れば酒を飲んで話したい」
ラステルは頷くと
「舌触りの良い、いい酒があるので、こちらへ」
と導く。
ラステルはやって来た扉を開け、エウロペを中へと導き入れ、扉の奥の廊下の、その先の扉を開ける。
エウロペはチラ…と見て
「私が見張りの扉を抜けたのを、見張りに聞いて近道した?」
と尋ねる。
ラステルは扉を開けると、頷いた。
エウロペがその部屋へ入ると、王城内なのに華美で無い、落ち着いた造りの部屋で、レンガの壁。
レンガの暖炉。
けれど重厚感ある焦げ茶のキャビネットとそして、革張りの椅子が二脚。
ラステルに一つの椅子を指し示され、エウロペは腰掛ける。
ラステルはキャビネットから、グラスとボトルを取り出すと、二脚の椅子の間の、木の円形のサイドテーブルの上に、グラスを置いた。
明かりは少なく、暖炉の火が揺れている。
エウロペ自身も憔悴してたから。
暖かくて、落ち着いた。
酒の注がれたグラスを手渡され、エウロペが受け取ると、ラステルは自分のグラスを手に、横の椅子に腰掛ける。
エウロペが一口、目を閉じ飲み込み、ふうっ…と吐息を吐くのを、ラステルは見守った。
「…つまり依頼に応えた」
エウロペはその問いに、目を開ける。
「ヤワに見えて…思い込んだら引かないな」
独り言のようなその言葉に、ラステルは頷く。
「ええ。
一度こうと決めると。
決して引きません。
何があろうと」
「私が彼の…後ろを傷つけなかったか。
心配だったんだろう?」
「で、犯した?」
エウロペは肩を竦めた。
「しようと思ったが…出来なかった」
ラステルは、目を見開く。
「どうして?」
エウロペは言いにくそうな表情をし、けれど言った。
「…かなりほぐしたが…彼はとても、狭くてね」
ラステルは頷く。
それでエウロペは、かなり具体的な説明をした。
「レジィリアンスに、エルデリオンがした事と。
誘拐犯がレジィにした事を、私にして欲しいと。
脅したんだが、聞かない。
それで…馬車でした事を出来るだけ怖がらせて。
したんだが…。
いざ犯そうとしても、彼は狭くて。
無理に挿入してたら血だらけで。
彼は椅子にすら、座れなくなる。
拡張器を使って広げたけれど、それでも無理で。
傷つけそうだったので、そこで止めて。
…で、明日、まだ私に犯されたかったら。
張り型を入れたままにしとけと、命じたが…」
ラステルはまた、目を見開いた。
「…言ったんですか」
「もしまだ私に犯されたいなら、入れたままにしとけと」
「…じゃ、可能な限り入れたままですね」
エウロペはもう少しで、酒を吹きそうになった。
「…そこまで…頑固か?!」
ラステルは頷く。
エウロペは椅子を立ちかけ、ラステルに腕を握られ、振り向く。
「…エルデリオンにした命令を、取り消しに行く気ですか?
無駄ですよ。
むしろ、貴方で安心。
別の男に依頼しないか、こっちはハラハラしてたし。
貴方に断られたら、エルデリオンはそいつらに依頼しそうで、こっちはその男達を誘い出し、旅行に連れ出す計画まで立ててましたから。
…ダメなら、非常事態で誘拐・監禁まで視野に入れてました。
ともかく、そいつらにエルデリオンが身を預けようものなら…」
エウロペは目を見開き、椅子に腰掛ける。
「…ものなら?」
ラステルは、ため息を吐く。
「…エルデリオンはレジィ殿がされたような体験をしようと、本気ですからね。
ヨランダ伯によれば、サッシ・アベ侯爵。
この男は隙あらばエルデリオンを抱きたいと。
それはいつもスケベ面で、ヨダレ垂らしててねぇ…。
毎度、デルデロッテが本気で睨み付けて、追っ払ってる男です。
しかもうんと、相手を辱めるのが好きな男でねぇ…」
「…ある意味、レジィの追体験するには、ふさわしい男だな?」
エウロペに言われ、ラステルは顔を下げる。
「…それでも、エルデリオンに気があるだけ、まだマシ。
次の候補が、ドナテラ公爵。
この男は、それは評判が良くなくて」
「どう悪い?」
「そりゃあもう…。
紅蜥蜴の、得意客じゃないかと疑ってるくらい…。
少年を買っては、調教に命かけてるような変態」
「例えば?」
「縛り上げて、鏡の前でうんと辱める」
エウロペが顔を下げるのを見て、ラステルは続ける。
「延々と刺激しつつも、絶対イかせない」
エウロペの顔が、もっと下がるのを見て、ラステルは囁く。
「私の言った意味、お分かりでしょう?
貴方に断られてたら…」
エウロペは顔下げたまま、頷き倒した。
「その他にも三人の名が上がったようですけど…どれも、ど・変態で…。
万が一デルデロッテが知ったら。
上がった名の男、全部斬り殺しかねない。
それっくらい、最低の変態男達です」
「…私だと…デルデロッテは殺さないのか?」
ラステルは頷く。
「まず、貴方は簡単に殺せないし。
頼まれたとは言え、貴方の大事なレジィリアンス殿を、抱いてる負い目がある」
エウロペはきょとん、としてラステルを見る。
「…こちらが無理に頼んだのに?」
ラステルはエウロペを呆れて見た。
「デルデロッテですよ?
もうレジィリアンスは、彼と抱き合うことに夢中。
つまりデルデも、かなり情が移ってるから…。
相当…入れ込んで抱いてる」
「…………………確かに」
ラステルは肝心なことを頼もうと、話を戻し、エウロペに釘刺した。
「多分まだかなり過激なことを、エルデリオンは貴方に頼むと思います。
が、断らないでやって下さい。
でないと…」
「…最低の変態に、身を委ねるから?」
ラステルは頷きながら、言い諭す。
「エルデリオンが依頼しようとした全員。
旅行か、こちらが誘拐して姿を消したりしたら…。
どんな男に『犯せ』と頼むか…。
ヒヤヒヤものですよ」
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