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記憶を無くしたレジィリアンス
困惑するエウロペと反省するデルデロッテ
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エウロペとラステルが、コテージの玄関扉を開けて居間に入ると。
すっかり出来上がった、ロットバルトとテリュス。
そしてレジィが、頬を真っ赤にし、とんでもない音程で。
どんな歌を歌ってるのかも判別できない、調子の外れすぎた歌声を、大音響で響かせていた。
エウロペは額に手を当て、ラステルは口をぽかん。と開けて声も出ない。
「…君、対処法ある?」
エウロペに聞かれ、ラステルは無言で首を横に振る。
「…エリューンとデルデロッテはどこかな?」
エウロペにさっさとエリューンの部屋に続く廊下に逃げられ、ラステルは手を伸ばして呼び止めようとした。
が、エウロペはさっ!と廊下の角を曲がり、姿を消した。
コンコン。
ノックすると中から
「どうぞ」
と声がするので、エウロペが扉を開けると。
暖炉の前で、椅子に座るエリューンが腰浮かすデルデロッテの腕を、引き留めるように握っていて、エリューンはエウロペに
「意見を下さい」
と要請され、事態が分からぬまま中に入って、扉を閉めた。
デルデは観念するように、椅子に腰を下ろす。
エウロペは二人の少し後ろの椅子を勧められ、腰掛けて話を聞いた。
聞くなりエウロペはまた、額に手を当てる。
「…まず、君がデルデロッテと寝たとしても。
デルデがどうやってるかの、参考にはならないと思う。
だってどう頑張ったって、君はデルデにはなれないし…。
経験から言って、デルデの方が圧倒的に達人。
逆に君が、男としての自信を失いかねない」
「ですよね」
エリューンに同意され、今度エウロペはデルデに言った。
「君の意見も分かるけど。
挿入に近い体験程度に、収めておかない?
女性の挿入体験に似た経験は、別の方法で出来ると思う。
後腔を男の持ち物で抉られるって、結構刺激が強いから。
よほど自制心が強いか、女好きじゃない限り。
ヘタをすると忘れられなくなって…。
レジィに加え、エリューンにまでそうなられると、正直私が困る」
デルデが、じっ…見るので、エウロペは付け足した。
「…それに相手が君って、凄く心配だし」
デルデは斜にエウロペを見つめた。
確かにエウロペは年上だし、男としても迫力ある。
真ん中分けの明るい栗毛は、無造作に肩まで伸ばされ、乱れ具合が野性味を感じさせた。
頬骨が出ていて、顎も頬もゴツさのある、爽やかで男らしい顔立ち。
けれど何より、明るく鋭い緑の瞳が、時折り射抜くようで。
なみなみならぬ迫力を醸し出す。
何より体格は、首が太く肩幅は広く、肩も胸も筋肉で盛り上がり、なのに腰は引き締まりきって足も長く、その動作はしなやかで隙が無い。
が、あえて挑戦状を叩きつけるように、口開いた。
「…貴方も私の事を“凄い垂らし”って、思ってません?」
エリューンが即座に言って退ける。
「誰でも思ってますよ。
一般常識です」
エウロペはまた、額に手を当てると。
デルデロッテを挑発しないよう、出来るだけ穏便に話し始める。
「私はただ、君が年の割に成熟し、経験もとても豊富だと思ってるだけだ。
オーデ・フォールの君らは、性に対してとても敷居が低い。
確かにレジィもエリューンも若いから。
色々経験したって、自分を見失わなければ、いいとは思う。
が、初めての相手が君って…危険すぎる気がする」
エリューンも頷く。
「デルデロッテって、自分が“垂らし”の自覚、なさ過ぎですよね?」
エウロペが、エリューンを取りなした。
「誰もが彼相手だと、楽しい情事が期待出来ると、大勢の人間に望まれていて。
彼の方から、滅多に誘う必要が無いから。
無理無いと言えば…無理無いのかもしれない」
エリューンはジロ…とデルデロッテを見た。
「つまり、そんな自分に誘われたんだから、光栄に思えと?」
デルデはため息吐いた。
「そんなつもり、毛頭無いよ」
今度、エウロペがエリューンに聞く。
「で、デルデ相手だと無理でも、レジィ相手には出来そう?
キス」
エリューンは即座に頷いた。
「レジィを間近に見て、女の子を思い浮かべるのは難しくないけど。
デルデは無理でしょう?」
今度、デルデが聞いた。
「…つまり女の子相手に、今までやって来たことを。
レジィにするつもり?」
エリューンは真顔で頷いた。
今度、デルデが呆れた。
「…男の子と、一度も経験無いと。
やっぱそれは無理があると思う」
エリューンは即座に、エウロペに振る。
「貴方は?
経験、あります?
どう思います?」
デルデロッテにまで興味津々に見つめられ、エウロペは苦笑した。
「そりゃ…何でもこなせないと務まらない家系に、生まれてるから。
経験はあるよ」
エリューンとデルデロッテはまだ続きを待って、エウロペをじっ…と見る。
ので、エウロペは言った。
「…エリューンが情事してるところ、一度も見てないので…。
男の子の相手が出来るかどうかの判断が、つかない」
デルデロッテが“やっぱり”とエリューンを見る。
「ほら。
私と同意見」
エリューンは即座に反論する。
「どこが。
全然違うでしょう?
エウロペは実際自分としてみようなんて、言ってませんよ」
けれどエウロペは、顔下げて忠告した。
「でもデルデロッテが、品位有り、更に教える事を忘れず教授するんなら。
実技は有益だとは思う。
…女性相手なら、即、勧めるところだけど。
こればっかりは女性じゃ、教えられそうにないから、悩みどころだね」
デルデはエリューンに向き直る。
「私とレジィのしてるとこ、会話は聞いてなかった?
聞いてたら私が、嫌がる相手に無理にしないって、分かる筈だけど」
エリューンは呆れて言った。
「でもレジィは媚薬で自我、飛んでますよね?
判断力も、自制心も。
あ、それと羞恥心も」
とうとう、エウロペは言った。
「レジィの記憶が戻れば、君が今言った事は取り戻すから。
それまでは二人がしてるとこ、覗いて勉強したら?」
エリューンは流石エウロペ。と尊敬の眼差しで見つめ
「そうします」
と頷いた。
デルデはとうとう、肩すくめた。
「困った時は、いつでも相談に乗る、って提案は、生きてるから。
その時は、呼び止めて」
そう言って、デルデは立ち上がる。
戸口に歩き始めると、エウロペがエリューンに小声で
「…君、彼の事あまり良く、思ってないよね?」
と尋ねてる声が聞こえた。
けれどその後エリューンは、わざと聞こえるよう、大声で返答する。
「国を出た馬車での時、私がエルデリオンを止めに馬を走らせたけど。
デルデが止めさえしなければ、エルデリオンだって今これほど。
レジィに拒絶されずに済んだ訳ですから、当然です!」
デルデは思わず振り向き、エウロペは小声で言い返す。
「王子の護衛の立場なら。
彼が止めるのは当然だ。
けど聞いたろう?
彼はその義務に、腸煮えくりかえって言葉」
エリューンは不満げに、しぶしぶ頷いた。
「…聞きましたけど」
デルデがほっとして、ドアノブを回そうとした、その時。
エリューンはまだ言った。
「けど今でも夢に見る。
大国の上品で偉そうで、余裕たっぷりのあの美貌で。
私の前に馬に乗って、立ち塞がった姿。
あれ思い出すと、理屈抜きに腹が立つんです」
エウロペは“やれやれ”と顔を下げ、思わず振り向くデルデと目が合ったエリューンは、無意識に睨み付け、デルデは思わず顔を下げて思った。
「(…なんで私は顔下げてるんだ…)」
自分の取った行動に誇りが持てず、デルデは少し悲しげな背中をエリューンとエウロペに向け、扉を開けた。
「…彼の心の傷、絶対君、抉ってる」
エウロペが小声で囁くと、エリューンは
「…私の後腔を抉ろうとした相手ですよ?
手加減、要ります?」
と尋ね返してた。
とうとうデルデはさっ!と扉を潜ると、バタン!と扉を閉めて心の中で呟いた。
「(…なんかエリューンって苦手。
って思ってた理由が、今はっきり分かった)」
そしていざ、エリューンを抱けるとなったら。
挑戦的な琥珀の瞳を向けられたりしたら、全力で蕩かしにかかる自分が容易に想像出来
「(エリューンが私を、警戒するはずだ)」
と、反省した。
すっかり出来上がった、ロットバルトとテリュス。
そしてレジィが、頬を真っ赤にし、とんでもない音程で。
どんな歌を歌ってるのかも判別できない、調子の外れすぎた歌声を、大音響で響かせていた。
エウロペは額に手を当て、ラステルは口をぽかん。と開けて声も出ない。
「…君、対処法ある?」
エウロペに聞かれ、ラステルは無言で首を横に振る。
「…エリューンとデルデロッテはどこかな?」
エウロペにさっさとエリューンの部屋に続く廊下に逃げられ、ラステルは手を伸ばして呼び止めようとした。
が、エウロペはさっ!と廊下の角を曲がり、姿を消した。
コンコン。
ノックすると中から
「どうぞ」
と声がするので、エウロペが扉を開けると。
暖炉の前で、椅子に座るエリューンが腰浮かすデルデロッテの腕を、引き留めるように握っていて、エリューンはエウロペに
「意見を下さい」
と要請され、事態が分からぬまま中に入って、扉を閉めた。
デルデは観念するように、椅子に腰を下ろす。
エウロペは二人の少し後ろの椅子を勧められ、腰掛けて話を聞いた。
聞くなりエウロペはまた、額に手を当てる。
「…まず、君がデルデロッテと寝たとしても。
デルデがどうやってるかの、参考にはならないと思う。
だってどう頑張ったって、君はデルデにはなれないし…。
経験から言って、デルデの方が圧倒的に達人。
逆に君が、男としての自信を失いかねない」
「ですよね」
エリューンに同意され、今度エウロペはデルデに言った。
「君の意見も分かるけど。
挿入に近い体験程度に、収めておかない?
女性の挿入体験に似た経験は、別の方法で出来ると思う。
後腔を男の持ち物で抉られるって、結構刺激が強いから。
よほど自制心が強いか、女好きじゃない限り。
ヘタをすると忘れられなくなって…。
レジィに加え、エリューンにまでそうなられると、正直私が困る」
デルデが、じっ…見るので、エウロペは付け足した。
「…それに相手が君って、凄く心配だし」
デルデは斜にエウロペを見つめた。
確かにエウロペは年上だし、男としても迫力ある。
真ん中分けの明るい栗毛は、無造作に肩まで伸ばされ、乱れ具合が野性味を感じさせた。
頬骨が出ていて、顎も頬もゴツさのある、爽やかで男らしい顔立ち。
けれど何より、明るく鋭い緑の瞳が、時折り射抜くようで。
なみなみならぬ迫力を醸し出す。
何より体格は、首が太く肩幅は広く、肩も胸も筋肉で盛り上がり、なのに腰は引き締まりきって足も長く、その動作はしなやかで隙が無い。
が、あえて挑戦状を叩きつけるように、口開いた。
「…貴方も私の事を“凄い垂らし”って、思ってません?」
エリューンが即座に言って退ける。
「誰でも思ってますよ。
一般常識です」
エウロペはまた、額に手を当てると。
デルデロッテを挑発しないよう、出来るだけ穏便に話し始める。
「私はただ、君が年の割に成熟し、経験もとても豊富だと思ってるだけだ。
オーデ・フォールの君らは、性に対してとても敷居が低い。
確かにレジィもエリューンも若いから。
色々経験したって、自分を見失わなければ、いいとは思う。
が、初めての相手が君って…危険すぎる気がする」
エリューンも頷く。
「デルデロッテって、自分が“垂らし”の自覚、なさ過ぎですよね?」
エウロペが、エリューンを取りなした。
「誰もが彼相手だと、楽しい情事が期待出来ると、大勢の人間に望まれていて。
彼の方から、滅多に誘う必要が無いから。
無理無いと言えば…無理無いのかもしれない」
エリューンはジロ…とデルデロッテを見た。
「つまり、そんな自分に誘われたんだから、光栄に思えと?」
デルデはため息吐いた。
「そんなつもり、毛頭無いよ」
今度、エウロペがエリューンに聞く。
「で、デルデ相手だと無理でも、レジィ相手には出来そう?
キス」
エリューンは即座に頷いた。
「レジィを間近に見て、女の子を思い浮かべるのは難しくないけど。
デルデは無理でしょう?」
今度、デルデが聞いた。
「…つまり女の子相手に、今までやって来たことを。
レジィにするつもり?」
エリューンは真顔で頷いた。
今度、デルデが呆れた。
「…男の子と、一度も経験無いと。
やっぱそれは無理があると思う」
エリューンは即座に、エウロペに振る。
「貴方は?
経験、あります?
どう思います?」
デルデロッテにまで興味津々に見つめられ、エウロペは苦笑した。
「そりゃ…何でもこなせないと務まらない家系に、生まれてるから。
経験はあるよ」
エリューンとデルデロッテはまだ続きを待って、エウロペをじっ…と見る。
ので、エウロペは言った。
「…エリューンが情事してるところ、一度も見てないので…。
男の子の相手が出来るかどうかの判断が、つかない」
デルデロッテが“やっぱり”とエリューンを見る。
「ほら。
私と同意見」
エリューンは即座に反論する。
「どこが。
全然違うでしょう?
エウロペは実際自分としてみようなんて、言ってませんよ」
けれどエウロペは、顔下げて忠告した。
「でもデルデロッテが、品位有り、更に教える事を忘れず教授するんなら。
実技は有益だとは思う。
…女性相手なら、即、勧めるところだけど。
こればっかりは女性じゃ、教えられそうにないから、悩みどころだね」
デルデはエリューンに向き直る。
「私とレジィのしてるとこ、会話は聞いてなかった?
聞いてたら私が、嫌がる相手に無理にしないって、分かる筈だけど」
エリューンは呆れて言った。
「でもレジィは媚薬で自我、飛んでますよね?
判断力も、自制心も。
あ、それと羞恥心も」
とうとう、エウロペは言った。
「レジィの記憶が戻れば、君が今言った事は取り戻すから。
それまでは二人がしてるとこ、覗いて勉強したら?」
エリューンは流石エウロペ。と尊敬の眼差しで見つめ
「そうします」
と頷いた。
デルデはとうとう、肩すくめた。
「困った時は、いつでも相談に乗る、って提案は、生きてるから。
その時は、呼び止めて」
そう言って、デルデは立ち上がる。
戸口に歩き始めると、エウロペがエリューンに小声で
「…君、彼の事あまり良く、思ってないよね?」
と尋ねてる声が聞こえた。
けれどその後エリューンは、わざと聞こえるよう、大声で返答する。
「国を出た馬車での時、私がエルデリオンを止めに馬を走らせたけど。
デルデが止めさえしなければ、エルデリオンだって今これほど。
レジィに拒絶されずに済んだ訳ですから、当然です!」
デルデは思わず振り向き、エウロペは小声で言い返す。
「王子の護衛の立場なら。
彼が止めるのは当然だ。
けど聞いたろう?
彼はその義務に、腸煮えくりかえって言葉」
エリューンは不満げに、しぶしぶ頷いた。
「…聞きましたけど」
デルデがほっとして、ドアノブを回そうとした、その時。
エリューンはまだ言った。
「けど今でも夢に見る。
大国の上品で偉そうで、余裕たっぷりのあの美貌で。
私の前に馬に乗って、立ち塞がった姿。
あれ思い出すと、理屈抜きに腹が立つんです」
エウロペは“やれやれ”と顔を下げ、思わず振り向くデルデと目が合ったエリューンは、無意識に睨み付け、デルデは思わず顔を下げて思った。
「(…なんで私は顔下げてるんだ…)」
自分の取った行動に誇りが持てず、デルデは少し悲しげな背中をエリューンとエウロペに向け、扉を開けた。
「…彼の心の傷、絶対君、抉ってる」
エウロペが小声で囁くと、エリューンは
「…私の後腔を抉ろうとした相手ですよ?
手加減、要ります?」
と尋ね返してた。
とうとうデルデはさっ!と扉を潜ると、バタン!と扉を閉めて心の中で呟いた。
「(…なんかエリューンって苦手。
って思ってた理由が、今はっきり分かった)」
そしていざ、エリューンを抱けるとなったら。
挑戦的な琥珀の瞳を向けられたりしたら、全力で蕩かしにかかる自分が容易に想像出来
「(エリューンが私を、警戒するはずだ)」
と、反省した。
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