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激突
作戦会議
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ラステルが皆を見回し、告げる。
「心話が使えないようなので、現在の状況をお話致します」
皆、口を閉じて一斉にラステルに振り向く。
ラステルは顔色も変えず話し始めた。
「援軍が来るまで、ここで持ち応えるつもりでした」
そう口火を切ったところに、デュバッセン大公が静に扉を開け、聞いてる皆にこっそり紛れる。
ラステルは大公に軽く頷くと、続きを話し出した。
「が、シャスレ城から来る筈の援軍は襲撃され、応戦したものの敵の数が多く、撤退。
東第一駐屯地から来るはずの騎士らも、足止めを喰らい応戦中。
スフォルツァ殿らと到着するはずだった、一番数の多い都からの援軍も。
道を大木で塞がれ、進路を変更して細道へ入った途端、襲撃を受け応戦中。
城の周囲も取り囲まれています。
奴らの目当ては5人の王子なので、三組の囮を、敵にバレてる秘密の通路から逃亡させました。
現在、城を囲む敵の布陣は囮を追って崩れ、城から出る絶好の機会。
とはいえ…」
ラステルは一旦区切り、皆の顔を見回した。
誰もが続きを聞こうと、ラステルを真顔で見つめ返し、続きを促す。
ラステルは再び口を開いた。
「ル・シャレファの三人は熟睡。
彼らも見つかれば、大変な美少年ですから、奴らの拉致対象」
「つまり誰かが三人を担ぐ?」
ギュンターの質問に、ラステルが頷く。
「更に問題は、逃げ込む先が無い。
正確には、無数にあるけど安全の保証ができない」
ロットバルトが呻く。
「無数にあるんなら…奴らを攪乱出来る。
が、一度侵入されたら、逃げ出すしか無い?」
デュバッセン大公は頷く。
「私の一番自慢の城は、要塞。
入れば立てこもれる。
が、ここからは距離がある」
エルデリオンが目を見開いた。
「…つまりここから逃げ出し、近場の隠れ家に辿り着いた後でも…。
状況次第では、そこから逃げ出すしか無いんだな?」
ローフィスが、ため息交じりに頷く。
「しかも三人のル・シャレファを担いで」
ノルデュラス公爵も腕組む。
「ラウールを入れた、五人の王子を庇いながら…か…」
デルデがため息交じりに頷いた。
「が、森と花の王国従者の、王子の護りは鉄壁。
勿論、私はエルデリオンから離れない。
ミラーシェンはエディエルゼ王子が守るとしても、当のエディエルゼ殿ですら、狙われてる。
問題はラウールを、一時も目を離さず、誰が守るか」
ラウールは無言で、肩を迫り出そうとした。
が、ノルデュラス公爵がその肩に手を当て、告げる。
「私が。
彼とは長い付き合いだ。
…もしまた掴まれば…見せしめのために、奴らに酷い扱いを受ける。
彼をそんな目には遭わせない」
皆、エルデリオンに色惚けしてたノルデュラス公爵の、意外にもしっかりした発言に思わず公爵を見直し、目を見開いて見つめた。
エディエルゼがミラーシェンを見つめ、呟く。
「…つまりそれは、ミラーシェンにも言える事なんだな?」
公爵が頷くと、オーガスタスが呟く。
「ギュンター、目を離すな。
何がなんでも、ミラーシェンから離れるな」
命じられたギュンターは、しっかりと頷く。
が、突然一人だけダレてソファに座ってたゼイブンが、立ち上がって告げる。
「じゃ俺は、エディエルゼ?王子を守るかな。
美女がいないんじゃどうせ守るなら、男だろうが美形を守りたい」
突然、オーガスタスとローフィスが顔を下げる。
シュテフザインの皆も、オーデ・フォールの皆もが、暗い表情のオーガスタスとローフィスをつい揃って見た。
「…何か不都合でも?」
デュバッセン大公の問いに、オーガスタスとローフィスは顔を下げたまま互いを見つめ、ローフィスがため息交じりに重い口を開き、説明する。
「…ギュンターとゼイブンのコンビは、毎度必ずやらかすので…」
オーガスタスも、暗い表情で頷く。
「酷く、不吉だ」
ゼイブンは二人の杞憂を払拭するように、陽気に言い切った。
「俺が守るのは、エディエルゼ王子だぜ?」
ギュンターは思い切り、ため息吐く。
「エディエルゼは愛弟ミラーシェンから離れない。
俺はミラーシェンを守る」
ローフィスは、まだ分かってない笑顔のゼイブンに説明した。
「…つまりお前ら四人で、ワン・セット」
ゼイブンは突然笑顔を引っこめ、ローフィスを見る。
「だってお前は?
俺を守ってくれるだろう?
お前がいれば、不吉なギュンターと俺との因縁も帳消し」
オーガスタスは顔を下げきるローフィスを、気の毒そうに見て呻く。
「つまりお前が、二人の尻拭い役って事だな」
ローフィスも呻く。
「最悪…」
ラステルは不吉がどの程度か思い浮かばず、皆に告げる。
「行き先や道筋の指示は私が出します。
が、現場での指令は、オーガスタス殿にお願いする」
皆、納得して飛び抜けて長身、畏怖堂々としたオーガスタスを見つめながら、頷いた。
ノックの音が聞こえ、デュバッセン大公が
「入れ!」
と声を上げる。
召使い三人が、背にル・シャレファの三人を乗せて、入って来る。
三人はピクリとも動かず、召使いの背で寝こけていた。
デュバッセン大公はにこやかに皆を見つめ
「では誰が三人を背負って逃げるか。
話合いをしましょうか?」
けれどラステルは大公に囁く。
「それはつまり、両手塞がっても構わない人物。
もっと言うと、戦闘能力の低い人間って事だよね?」
デュバッセン大公は目を見開いた。
「…私はここに、指令として残らないと」
ラフォーレンが、スフォルツァに
「ちゃんと確実に、守ってくれますよね?」
と念押しした後
「一人なら担げます」
と申し出た。
スフォルツァは微笑むと
「私はラフォーレンと担がれた子を守らないと」
と言って退ける。
ゼイブンが腕組んで言い放つ。
「面倒見から言うと、ローフィスだ」
オーガスタスは即、却下した。
「ふさげるな。
戦闘中、俺を短剣で守ってくれる貴重な存在だ。
お前が担げ」
ゼイブンは目を見開いて組んだ腕を解き、意を唱えようとした。
が、全員が無言で頷くので、言いそびれる。
ミラーシェンがおずおずと口を開いた。
「では一番軽い子は、私が…。
どうせ、守って貰う立場ですし…」
ロットバルトがデルデを、そしてラステルを見た後、二人が頷くのを確認し、ミラーシェンに優しく微笑んで、口開く。
「小柄な貴方が担いで逃げるのは、かなり大変だ。
私が担ぎます」
オーガスタスは頷くと
「俺とローフィスで、君とゼイブンを守る」
と言うので、ゼイブンは思いっきり不満をブチ撒けた。
「俺の意思は?!」
すかさずローフィスが突っ込む。
「引っ込めとけ」
ギュンターは心からほっとして、エディエルゼに告げた。
「あんたに護りは要らないだろうから、自分を守ってくれ。
俺はミラーシェンから離れないし、いざとなれば担いでも戦える」
エディエルゼは長身美貌のギュンターを見上げた。
「…では私は、ミラーシェンを背負った貴方を守ろう」
ギュンターがにっこり微笑むので、エディエルゼは滅多な見せない彼の笑顔に見惚れた。
デュバッセン大公が部屋に入って来た部下の報告を受け、ラステルに進言する。
「直ぐ、出て下さい。
敵は三組の囮を追って三分割し、城から離れて行ってますから!」
そして、ラステルに念を押す。
「最終到着地点は、ダズガンデ城へ!」
ラステルは頷き返し、ラフォーレンは眠ってるエドウィンを担ぐ。
ロットバルトは一番年下だけど、一番体の大きなシュアンを背に担ぎ上げた。
ゼイブンはローフィスに
「彼も凄い美形だ」
と言われ、渋々ラフィーレを、背に担いだ。
「心話が使えないようなので、現在の状況をお話致します」
皆、口を閉じて一斉にラステルに振り向く。
ラステルは顔色も変えず話し始めた。
「援軍が来るまで、ここで持ち応えるつもりでした」
そう口火を切ったところに、デュバッセン大公が静に扉を開け、聞いてる皆にこっそり紛れる。
ラステルは大公に軽く頷くと、続きを話し出した。
「が、シャスレ城から来る筈の援軍は襲撃され、応戦したものの敵の数が多く、撤退。
東第一駐屯地から来るはずの騎士らも、足止めを喰らい応戦中。
スフォルツァ殿らと到着するはずだった、一番数の多い都からの援軍も。
道を大木で塞がれ、進路を変更して細道へ入った途端、襲撃を受け応戦中。
城の周囲も取り囲まれています。
奴らの目当ては5人の王子なので、三組の囮を、敵にバレてる秘密の通路から逃亡させました。
現在、城を囲む敵の布陣は囮を追って崩れ、城から出る絶好の機会。
とはいえ…」
ラステルは一旦区切り、皆の顔を見回した。
誰もが続きを聞こうと、ラステルを真顔で見つめ返し、続きを促す。
ラステルは再び口を開いた。
「ル・シャレファの三人は熟睡。
彼らも見つかれば、大変な美少年ですから、奴らの拉致対象」
「つまり誰かが三人を担ぐ?」
ギュンターの質問に、ラステルが頷く。
「更に問題は、逃げ込む先が無い。
正確には、無数にあるけど安全の保証ができない」
ロットバルトが呻く。
「無数にあるんなら…奴らを攪乱出来る。
が、一度侵入されたら、逃げ出すしか無い?」
デュバッセン大公は頷く。
「私の一番自慢の城は、要塞。
入れば立てこもれる。
が、ここからは距離がある」
エルデリオンが目を見開いた。
「…つまりここから逃げ出し、近場の隠れ家に辿り着いた後でも…。
状況次第では、そこから逃げ出すしか無いんだな?」
ローフィスが、ため息交じりに頷く。
「しかも三人のル・シャレファを担いで」
ノルデュラス公爵も腕組む。
「ラウールを入れた、五人の王子を庇いながら…か…」
デルデがため息交じりに頷いた。
「が、森と花の王国従者の、王子の護りは鉄壁。
勿論、私はエルデリオンから離れない。
ミラーシェンはエディエルゼ王子が守るとしても、当のエディエルゼ殿ですら、狙われてる。
問題はラウールを、一時も目を離さず、誰が守るか」
ラウールは無言で、肩を迫り出そうとした。
が、ノルデュラス公爵がその肩に手を当て、告げる。
「私が。
彼とは長い付き合いだ。
…もしまた掴まれば…見せしめのために、奴らに酷い扱いを受ける。
彼をそんな目には遭わせない」
皆、エルデリオンに色惚けしてたノルデュラス公爵の、意外にもしっかりした発言に思わず公爵を見直し、目を見開いて見つめた。
エディエルゼがミラーシェンを見つめ、呟く。
「…つまりそれは、ミラーシェンにも言える事なんだな?」
公爵が頷くと、オーガスタスが呟く。
「ギュンター、目を離すな。
何がなんでも、ミラーシェンから離れるな」
命じられたギュンターは、しっかりと頷く。
が、突然一人だけダレてソファに座ってたゼイブンが、立ち上がって告げる。
「じゃ俺は、エディエルゼ?王子を守るかな。
美女がいないんじゃどうせ守るなら、男だろうが美形を守りたい」
突然、オーガスタスとローフィスが顔を下げる。
シュテフザインの皆も、オーデ・フォールの皆もが、暗い表情のオーガスタスとローフィスをつい揃って見た。
「…何か不都合でも?」
デュバッセン大公の問いに、オーガスタスとローフィスは顔を下げたまま互いを見つめ、ローフィスがため息交じりに重い口を開き、説明する。
「…ギュンターとゼイブンのコンビは、毎度必ずやらかすので…」
オーガスタスも、暗い表情で頷く。
「酷く、不吉だ」
ゼイブンは二人の杞憂を払拭するように、陽気に言い切った。
「俺が守るのは、エディエルゼ王子だぜ?」
ギュンターは思い切り、ため息吐く。
「エディエルゼは愛弟ミラーシェンから離れない。
俺はミラーシェンを守る」
ローフィスは、まだ分かってない笑顔のゼイブンに説明した。
「…つまりお前ら四人で、ワン・セット」
ゼイブンは突然笑顔を引っこめ、ローフィスを見る。
「だってお前は?
俺を守ってくれるだろう?
お前がいれば、不吉なギュンターと俺との因縁も帳消し」
オーガスタスは顔を下げきるローフィスを、気の毒そうに見て呻く。
「つまりお前が、二人の尻拭い役って事だな」
ローフィスも呻く。
「最悪…」
ラステルは不吉がどの程度か思い浮かばず、皆に告げる。
「行き先や道筋の指示は私が出します。
が、現場での指令は、オーガスタス殿にお願いする」
皆、納得して飛び抜けて長身、畏怖堂々としたオーガスタスを見つめながら、頷いた。
ノックの音が聞こえ、デュバッセン大公が
「入れ!」
と声を上げる。
召使い三人が、背にル・シャレファの三人を乗せて、入って来る。
三人はピクリとも動かず、召使いの背で寝こけていた。
デュバッセン大公はにこやかに皆を見つめ
「では誰が三人を背負って逃げるか。
話合いをしましょうか?」
けれどラステルは大公に囁く。
「それはつまり、両手塞がっても構わない人物。
もっと言うと、戦闘能力の低い人間って事だよね?」
デュバッセン大公は目を見開いた。
「…私はここに、指令として残らないと」
ラフォーレンが、スフォルツァに
「ちゃんと確実に、守ってくれますよね?」
と念押しした後
「一人なら担げます」
と申し出た。
スフォルツァは微笑むと
「私はラフォーレンと担がれた子を守らないと」
と言って退ける。
ゼイブンが腕組んで言い放つ。
「面倒見から言うと、ローフィスだ」
オーガスタスは即、却下した。
「ふさげるな。
戦闘中、俺を短剣で守ってくれる貴重な存在だ。
お前が担げ」
ゼイブンは目を見開いて組んだ腕を解き、意を唱えようとした。
が、全員が無言で頷くので、言いそびれる。
ミラーシェンがおずおずと口を開いた。
「では一番軽い子は、私が…。
どうせ、守って貰う立場ですし…」
ロットバルトがデルデを、そしてラステルを見た後、二人が頷くのを確認し、ミラーシェンに優しく微笑んで、口開く。
「小柄な貴方が担いで逃げるのは、かなり大変だ。
私が担ぎます」
オーガスタスは頷くと
「俺とローフィスで、君とゼイブンを守る」
と言うので、ゼイブンは思いっきり不満をブチ撒けた。
「俺の意思は?!」
すかさずローフィスが突っ込む。
「引っ込めとけ」
ギュンターは心からほっとして、エディエルゼに告げた。
「あんたに護りは要らないだろうから、自分を守ってくれ。
俺はミラーシェンから離れないし、いざとなれば担いでも戦える」
エディエルゼは長身美貌のギュンターを見上げた。
「…では私は、ミラーシェンを背負った貴方を守ろう」
ギュンターがにっこり微笑むので、エディエルゼは滅多な見せない彼の笑顔に見惚れた。
デュバッセン大公が部屋に入って来た部下の報告を受け、ラステルに進言する。
「直ぐ、出て下さい。
敵は三組の囮を追って三分割し、城から離れて行ってますから!」
そして、ラステルに念を押す。
「最終到着地点は、ダズガンデ城へ!」
ラステルは頷き返し、ラフォーレンは眠ってるエドウィンを担ぐ。
ロットバルトは一番年下だけど、一番体の大きなシュアンを背に担ぎ上げた。
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