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激突
ゼイブンの功労?
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皆が城の地下へと案内され、地下に続く石の階段を駆け下りる。
やがて地下洞窟へと出ると、四方が崩れないよう石で固められた洞窟をひた走った。
暫く後、階段が見えて来る。
先頭の案内役の部下は、松明を掲げたまま、階段を上る皆を見送った。
先頭のラステルが、先の扉を開ける。
上がった地上は森の中で、更に夜で暗かった。
ラステルは横に避け、次々出てくる全員を見守る。
そして頷くと、案内し始めた。
皆、注意深く周囲の木々の間に敵が潜んでないか。
伺いながらラステルの後に続く。
エウロペは確かに気配があるのに…殺気を帯びてないことを不審に感じながら、レジィリアンスの横に張り付くエリューンと、自分と二人の動向に気を配りながら進む、耳の良いテリュスを盗み見た。
テリュスは直ぐ気づき、視線を向ける。
その時
「…っはぁん♡」
と喘ぎ声が聞こえ、エウロペはぎょっとした。
だって気配は複数。
確実に、潜んでる敵のものだと推察出来たのに。
「ぉい止めろ!」
ひそめた声が聞こえ、その後
「止めて下さいっ!」
と、やはりひそめた青年の声。
次にずちゃっ!と…何やら卑猥な音がした時。
ゼイブンが進む一行の列から外れ、ラフィーレを背に担いだまま、さっさと進んで茂みを掻き分けた。
オーガスタスもローフィスも、制止する間もなく戦闘の火蓋を切ろうとするゼイブンを凝視し、先頭のラステルまでもが歩を止める。
ゼイブンは見た後
「…なんだ男か…」
とぼやく。
が直ぐ後に
「邪魔するな!」
「引っ込んでろ!」
「バカ!剣を抜け!」
と争う声。
オーガスタスとローフィスは一気に緊迫し、剣の柄に手をかけながらも…敵の反応に首捻った。
ゼイブンは何事も無くスタスタと戻って来て
「男が複数の男に強姦されてた」
と、しらっと報告する。
エウロペはそれを聞き、耳をそばだてた。
そして、テリュスを見る。
皆、戦いに備えるのかどうかを判断しかね、周囲をキョロキョロ見回してる。
テリュスがぼそり…と呟く。
「…なんか潜んでる敵、俺達襲うどころじゃなく、仲間内で襲い合ってる」
皆、一斉にテリュスに振り向いた。
テリュスは聞いてる風で、ちょっと顔を下げながらぼやく。
「…これ…あれに似てる?
さっきの…ル・シャレファ眠らせる、前の状況」
ローフィスが、さっ!とゼイブンに振り向き見つめた。
「…お前ちゃんと、唱えたんだよな?!呪文!」
ゼイブンはローフィスを見る。
「遮断の呪文だろ?
ちゃんと効いてたし。
…あ、けどお前達から遮断はできた分、別に拡散してたかも」
「ぁあっ!」
男の喘ぎ声が聞こえた途端、ラウールとミラーシェンが頬染め、顔も下げた。
ノルデュラス公爵が呻く。
「…つまり襲い合ってるって…の…は…」
オーガスタスが、さっ!と皆に首振って命を出す。
「さっさと抜けよう!」
ラステルも、直ぐ歩を進め始めた。
ラフォーレンは担いでるエドウィンを見
「寝てますよね…」
と呟き、進み始めるスフォルツァはそんなラフォーレンを見ると
「ゼイブンの呪文だから、ヤバいんだな」
と感想を述べた。
レジィリアンスはエリューンに手を引かれながら、あちこちの茂みでがさっ!とか
「…っあっ!」
と言う喘ぎ声を聞き、呟く。
「…なんかそこら中で…シてる?」
エリューンはレジィの手を握り、ぐいぐい先へと引っ張りながら、無言で頷いた。
テリュスは足音立てず軽く歩を運ぶエウロペの横で、囁いた。
「…なんか、敵が居るのに襲われないって、新鮮…」
エウロペも囁き返す。
「正気の男が数名いて、戦闘を促してるらしいが…剣を抜いては来ないね」
エルデリオンは周囲から、がさがさ音がするのに目を見開く。
「…つまりそこら中で…?」
デルデロッテが剣の柄に手をかけたまま、素早く釘を刺す。
「覗いてる暇なんてありませんから」
ノルデュラス公爵が、ぼそり…と呟く。
「…女がいなければ、弱い男を平気で犯す奴らだから…。
仲間なのに、何人が多数でヤられてる事か…」
横のラウールも、思いっきり頷いた。
「見えなくて、正解ですな…」
ロットバルトが呻くと、ローフィスが笑顔で
「珍しくゼイブンのやらかしが、吉と出た症例だ」
と弾んだ声で告げる。
ゼイブンはおんぶ紐でくくった、背のラフィーレの寝顔をチラ見し
「元凶は俺じゃ無い」
と言い訳た。
とうとう正気らしい一人が
「ちっ!」
と舌打ちした後、がさがさがさっ!と走る音が聞こえ、オーガスタスもギュンターも身構えたけど。
平行して走り去って行く。
オーガスタスが告げようとした矢先、ラステルが振り向いて鋭い口調で叫んだ。
「この先にも敵が居る!」
「行き先、変更出来そうか?」
オーガスタスの問いに、ラステルは首を横に振る。
「ここを進むしか無い」
オーガスタスは背後で、だんだんハデに聞こえて来る喘ぎ声や
「さっさと俺と代われ!」
「次は俺だ!」
と争う声に気を取られてる、全員に告げた。
「戦闘準備だ。
いつでも抜けるようにしとけ!」
ギュンターが暫く沈黙した後
「抜くのは、柄のついた剣のコトだよな?」
と聞く。
斜め後ろに追いついたラフォーレンは
「え?
あそこに乱入して抜く気だったんですか?」
と尋ね、横のスフォルツァの視線を感じ
「…股間の剣のコトです」
と説明した。
スフォルツァは脱力しながら
「ちゃんと分かってるから説明するな!」
と怒鳴り返す。
少し先を行くエディエルゼは振り向くと
「この先に正気の敵がいるって事だ!
股間の剣で戦えるのか?!」
と怒って怒鳴りつけた。
ラフォーレンは自分より若く、その上背も低い銀髪の美青年に怒鳴られ、顔を下げて呟く。
「ギュンターなら、もしかして」
ギュンターはそれを聞くと、顔色も変えず言った。
「この場合、俺じゃ殴り合いだ。
デュバッセン大公辺りなら、全滅させられるんじゃ無いのか?」
ラフォーレンは目を見開く。
「あの黒髪の華奢な大公って…どれだけ挿入されても大丈夫なぐらい、凄いんですか?!」
とうとうノルデュラス公爵が、くすくす笑い始め
「全員制覇しても平気そう…」
と呟き、とうとうオーガスタスに
「いつ斬りかかられるか、分からないって状況なのに。
どうしてそんなに緊迫感、無いかな…」
とぼやかれた。
けれどエルデリオンは、両側の茂みから盛大に聞こえ始める喘ぎ声を耳に、異論を唱えたくても口にできず顔を下げ、代わってデルデロッテが
「こんな状況じゃ、勃つなと言う方が無理な輩もいますから」
とぼやき、ロットバルトに
「まさか勃ってるのか?!」
と目を見開いて問われた。
その声に、テリュスが顔を下げるのを見て、エウロペが慌てて囁く。
「トーレルの森!」
皆、進みながら
「?」
だったけど、エリューンは肩を揺らし、レジィリアンスに至っては、クスクス笑い始め、テリュスは真っ赤になって怒鳴った。
「今度は、痒くなるから止めろ!」
エウロペは怒鳴られて笑顔で尋ねる。
「おさまった?」
テリュスは赤くなって頷く。
けどレジィがもっと笑い転げ
「出すんなら、うるしの無い場所で出さないと!」
と呟き、ノルデュラス公爵に
「え?しようとしたら、漆にかぶれた?」
と問われた。
ラフォーレンが見てると、硬派のエディエルゼまでがそれを聞いて肩を揺らし、ゼイブンだけが頷きながら
「あるよな。
森とか茂みの中で、シた事あれば一度くらいは」
と賛同を示した。
とうとうロットバルトの忍び笑いが聞こえた時。
テリュスは怒鳴った。
「笑うな!」
けれど横のエウロペまでが、声を殺して笑いながら肩を揺らし、他のみんなの肩や頭が揺れてるのを見、テリュスは真っ赤になって怒ったまま、周囲の笑う男達を睨み付けた。
やがて地下洞窟へと出ると、四方が崩れないよう石で固められた洞窟をひた走った。
暫く後、階段が見えて来る。
先頭の案内役の部下は、松明を掲げたまま、階段を上る皆を見送った。
先頭のラステルが、先の扉を開ける。
上がった地上は森の中で、更に夜で暗かった。
ラステルは横に避け、次々出てくる全員を見守る。
そして頷くと、案内し始めた。
皆、注意深く周囲の木々の間に敵が潜んでないか。
伺いながらラステルの後に続く。
エウロペは確かに気配があるのに…殺気を帯びてないことを不審に感じながら、レジィリアンスの横に張り付くエリューンと、自分と二人の動向に気を配りながら進む、耳の良いテリュスを盗み見た。
テリュスは直ぐ気づき、視線を向ける。
その時
「…っはぁん♡」
と喘ぎ声が聞こえ、エウロペはぎょっとした。
だって気配は複数。
確実に、潜んでる敵のものだと推察出来たのに。
「ぉい止めろ!」
ひそめた声が聞こえ、その後
「止めて下さいっ!」
と、やはりひそめた青年の声。
次にずちゃっ!と…何やら卑猥な音がした時。
ゼイブンが進む一行の列から外れ、ラフィーレを背に担いだまま、さっさと進んで茂みを掻き分けた。
オーガスタスもローフィスも、制止する間もなく戦闘の火蓋を切ろうとするゼイブンを凝視し、先頭のラステルまでもが歩を止める。
ゼイブンは見た後
「…なんだ男か…」
とぼやく。
が直ぐ後に
「邪魔するな!」
「引っ込んでろ!」
「バカ!剣を抜け!」
と争う声。
オーガスタスとローフィスは一気に緊迫し、剣の柄に手をかけながらも…敵の反応に首捻った。
ゼイブンは何事も無くスタスタと戻って来て
「男が複数の男に強姦されてた」
と、しらっと報告する。
エウロペはそれを聞き、耳をそばだてた。
そして、テリュスを見る。
皆、戦いに備えるのかどうかを判断しかね、周囲をキョロキョロ見回してる。
テリュスがぼそり…と呟く。
「…なんか潜んでる敵、俺達襲うどころじゃなく、仲間内で襲い合ってる」
皆、一斉にテリュスに振り向いた。
テリュスは聞いてる風で、ちょっと顔を下げながらぼやく。
「…これ…あれに似てる?
さっきの…ル・シャレファ眠らせる、前の状況」
ローフィスが、さっ!とゼイブンに振り向き見つめた。
「…お前ちゃんと、唱えたんだよな?!呪文!」
ゼイブンはローフィスを見る。
「遮断の呪文だろ?
ちゃんと効いてたし。
…あ、けどお前達から遮断はできた分、別に拡散してたかも」
「ぁあっ!」
男の喘ぎ声が聞こえた途端、ラウールとミラーシェンが頬染め、顔も下げた。
ノルデュラス公爵が呻く。
「…つまり襲い合ってるって…の…は…」
オーガスタスが、さっ!と皆に首振って命を出す。
「さっさと抜けよう!」
ラステルも、直ぐ歩を進め始めた。
ラフォーレンは担いでるエドウィンを見
「寝てますよね…」
と呟き、進み始めるスフォルツァはそんなラフォーレンを見ると
「ゼイブンの呪文だから、ヤバいんだな」
と感想を述べた。
レジィリアンスはエリューンに手を引かれながら、あちこちの茂みでがさっ!とか
「…っあっ!」
と言う喘ぎ声を聞き、呟く。
「…なんかそこら中で…シてる?」
エリューンはレジィの手を握り、ぐいぐい先へと引っ張りながら、無言で頷いた。
テリュスは足音立てず軽く歩を運ぶエウロペの横で、囁いた。
「…なんか、敵が居るのに襲われないって、新鮮…」
エウロペも囁き返す。
「正気の男が数名いて、戦闘を促してるらしいが…剣を抜いては来ないね」
エルデリオンは周囲から、がさがさ音がするのに目を見開く。
「…つまりそこら中で…?」
デルデロッテが剣の柄に手をかけたまま、素早く釘を刺す。
「覗いてる暇なんてありませんから」
ノルデュラス公爵が、ぼそり…と呟く。
「…女がいなければ、弱い男を平気で犯す奴らだから…。
仲間なのに、何人が多数でヤられてる事か…」
横のラウールも、思いっきり頷いた。
「見えなくて、正解ですな…」
ロットバルトが呻くと、ローフィスが笑顔で
「珍しくゼイブンのやらかしが、吉と出た症例だ」
と弾んだ声で告げる。
ゼイブンはおんぶ紐でくくった、背のラフィーレの寝顔をチラ見し
「元凶は俺じゃ無い」
と言い訳た。
とうとう正気らしい一人が
「ちっ!」
と舌打ちした後、がさがさがさっ!と走る音が聞こえ、オーガスタスもギュンターも身構えたけど。
平行して走り去って行く。
オーガスタスが告げようとした矢先、ラステルが振り向いて鋭い口調で叫んだ。
「この先にも敵が居る!」
「行き先、変更出来そうか?」
オーガスタスの問いに、ラステルは首を横に振る。
「ここを進むしか無い」
オーガスタスは背後で、だんだんハデに聞こえて来る喘ぎ声や
「さっさと俺と代われ!」
「次は俺だ!」
と争う声に気を取られてる、全員に告げた。
「戦闘準備だ。
いつでも抜けるようにしとけ!」
ギュンターが暫く沈黙した後
「抜くのは、柄のついた剣のコトだよな?」
と聞く。
斜め後ろに追いついたラフォーレンは
「え?
あそこに乱入して抜く気だったんですか?」
と尋ね、横のスフォルツァの視線を感じ
「…股間の剣のコトです」
と説明した。
スフォルツァは脱力しながら
「ちゃんと分かってるから説明するな!」
と怒鳴り返す。
少し先を行くエディエルゼは振り向くと
「この先に正気の敵がいるって事だ!
股間の剣で戦えるのか?!」
と怒って怒鳴りつけた。
ラフォーレンは自分より若く、その上背も低い銀髪の美青年に怒鳴られ、顔を下げて呟く。
「ギュンターなら、もしかして」
ギュンターはそれを聞くと、顔色も変えず言った。
「この場合、俺じゃ殴り合いだ。
デュバッセン大公辺りなら、全滅させられるんじゃ無いのか?」
ラフォーレンは目を見開く。
「あの黒髪の華奢な大公って…どれだけ挿入されても大丈夫なぐらい、凄いんですか?!」
とうとうノルデュラス公爵が、くすくす笑い始め
「全員制覇しても平気そう…」
と呟き、とうとうオーガスタスに
「いつ斬りかかられるか、分からないって状況なのに。
どうしてそんなに緊迫感、無いかな…」
とぼやかれた。
けれどエルデリオンは、両側の茂みから盛大に聞こえ始める喘ぎ声を耳に、異論を唱えたくても口にできず顔を下げ、代わってデルデロッテが
「こんな状況じゃ、勃つなと言う方が無理な輩もいますから」
とぼやき、ロットバルトに
「まさか勃ってるのか?!」
と目を見開いて問われた。
その声に、テリュスが顔を下げるのを見て、エウロペが慌てて囁く。
「トーレルの森!」
皆、進みながら
「?」
だったけど、エリューンは肩を揺らし、レジィリアンスに至っては、クスクス笑い始め、テリュスは真っ赤になって怒鳴った。
「今度は、痒くなるから止めろ!」
エウロペは怒鳴られて笑顔で尋ねる。
「おさまった?」
テリュスは赤くなって頷く。
けどレジィがもっと笑い転げ
「出すんなら、うるしの無い場所で出さないと!」
と呟き、ノルデュラス公爵に
「え?しようとしたら、漆にかぶれた?」
と問われた。
ラフォーレンが見てると、硬派のエディエルゼまでがそれを聞いて肩を揺らし、ゼイブンだけが頷きながら
「あるよな。
森とか茂みの中で、シた事あれば一度くらいは」
と賛同を示した。
とうとうロットバルトの忍び笑いが聞こえた時。
テリュスは怒鳴った。
「笑うな!」
けれど横のエウロペまでが、声を殺して笑いながら肩を揺らし、他のみんなの肩や頭が揺れてるのを見、テリュスは真っ赤になって怒ったまま、周囲の笑う男達を睨み付けた。
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