森と花の国の王子

あーす。

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アールドット国王の別邸

エディエルゼを口説く?バルバロッサ王

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 歩いてる途中でも、がさがさっ!と音がし、周囲を取り巻くバルバロッサの騎兵らは、現れ出る敵に剣を振って薙ぎ払ってる。

一行の背後、ドーリオ男爵は捕虜として引っ立てられ、姿を見せる部下らに
「助けてくれ!」
と叫ぶものの、精悍な浅黒い肌の男らは、ものともせずに茂みから現れるドーリオ男爵の部下を、一刀のもと斬り捨てる。

ラステルは最早エルデリオン同様デルデの横に付き、容態を伺いながら歩いてる。

森を抜け、別邸と呼ぶには大きすぎる、小さな城の門を潜り、中へと入って行く。

ラステルはそこが、かつてシャロン公爵が別荘として使ってた城で、この付近が反乱軍の巣窟となり物騒に成り始めた頃、とうとう維持するのを諦め、買い手を探してると言う話を思い出した。

広い庭を延々歩き、やっと城の入り口に辿り着く。
門と外壁は分厚い石が積まれ、頑健で、更に至る所に見張りが居て、ノルデュラス公爵もロットバルトもが、安心出来る場所だと確信出来た。

けれど城の玄関前に立つ数名の男の一人が、ラステルの姿を見つけ、駆け寄る。

「御無事でしたか!!!」

ラステルはやっと配下の姿を見つけ、嬉しそうに微笑んだ。
「どうなってるか、報告を貰えるか?」

けれどバルバロッサが直ぐ、口を挟む。
「あんたらの都から来た軍隊は、尽く道を塞がれ、立ち往生だ。
我らもここからあんたらの都に行くには、積まれた石を退かさなきゃ向かえない」

配下も、口ごもりながらも告げる。
「至る通路に大きな石を積み上げられ、まるで通れません。
シャスレ城もミューレアン城もが周囲を包囲され、まだ攻め込まれてはいませんが、出る事叶わず。
ともかく我らを足止めし、貴方方を襲う計画らしいと、今判明して…」

ラステルは、とてもすまなそうな表情を浮かべて顔を下げる部下に、声かける。
「で、ここに来るのがやっとだったのかい?」

部下は、それでも優しく声かけてくれるラステルに、感激して顔を上げた。
「ここより東には、敵が多すぎて全く立ち入れず…。
バルバロッサ王にお目通りし、アッハバクテスが参戦してると告げたところ、軍を動かしてくれるとお約束頂けまして…。
それで出撃準備をされていた時、あれ…が響いたんです」

バルバロッサが、後を継ぐ。
「白い光の中に人型が。
突然現れ“アッハバクテス”と脳裏に語りかけ、光で方角を示した。
あれは何だったんだ?」

問われた途端、ラステルも振り向いたけど。
オーガスタスやローフィス、ギュンターらも一斉に背後に振り向く。

エウロペに抱き上げられたレジィは、まだ疲れた様子だったけど、目を開けていて。
か弱い声で呟いた。
「…“シャーレ”は、アッハバクテスが嫌い…。
とても嫌い…。
乱暴に、とても乱暴に犯されたから。
それで…アッハバクテスが恐れる貴方が近くに居ると感じて、貴方の元まで飛んで来たんだと思う…」

「“シャーレ”?」
バルバロッサに問われ、レジィは疲れたように俯く。

エウロペの背後に居たスフォルツァが、顔を上げて続きを告げた。
「アースルーリンドの『光の民』と人間の混血で、この地でも力の使えるル・シャレファ金の蝶と呼ばれる種族の少年が、紅蜥蜴ラ・ベッタにさらわれて…。
酷い目に遭ったんです。
今彼は、精神と肉体が分離してしまい、精神だけが彼の中で眠ってる」

ラステルの部下は目をぱちくりさせ、バルバロッサは真顔で問う。
「では肉体はどこに?」

オーガスタスが、顔を下げて説明した。
「緊急を要したので、アースルーリンドの神聖騎士の長が空間移動して飛んで来て運び…。
今、アースルーリンドの東の聖地の結界の中で、癒されてる」

ラステル配下はバルバロッサ王を見上げ
「…分かりました?」
と聞く。
バルバロッサ王は
「アースルーリンドに肉体がある、ってとこだけは。
空間移動?
なんだそれは」

エドウィンを抱き上げてるラフォーレンが、苦笑した。
「私の腕の中に居るこの子が目覚めれば、イメージとして見せてあげられますけど…」

けどそう言った途端。
全員の脳裏に、東の聖地の白い壁の優美な部屋に居る神聖騎士の長、ダンザインが呼び出され、一瞬でその部屋から姿を消し、エウロペらの居るファントール大公の城の空間に、現れ出る映像が浮かんだ。

“…唐突だな…”

バルバロッサは脳裏に響くその声を聞いた途端、オーガスタスを見つめ、尋ねた。
「今の、あんたの声っぽい」

オーガスタスは頷く。
「エドウィンが目覚めると、心の中で思った言葉が皆の脳裏に響いてしまう」

その時
“じゃ銀髪の美青年を、例え犯してでもモノにしたいと思ったら…”
と皆の脳裏に声が響き渡り、エディエルゼがきっっっ!!!と、バルバロッサを睨んだ。

バルバロッサは皆が自分を見てるのに気づき
「俺が言ったと、断定してるな」
とぼやく。

ラステルも、ラステル配下も呆れた。
が、ローフィスが脳裏で呻いた。

“エディエルゼの鬼神の戦い振りを見てるここのみんなは、絶対彼を犯そうなんて無謀なことは考えないから、誰の言葉か、簡単に限定出来る”

バルバロッサはそれを聞くと、オーガスタスを見た。
“…彼は男は趣味じゃ無かったな”
と脳裏で呟いた後、くるりと向きを変え、ギュンターに向き直って問う。
「お前でも、あの銀髪の美青年は口説かないか?」

ギュンターは、エディエルゼに振り向く。
「俺はマジ惚れしてる相手が居るから、あっちから“抱いて”と言わない限りは、手を出さない」

その時ようやくエディエルゼは
「私の事か?!
ミラーシェンで無く?!」
と怒鳴りつけた。

バルバロッサはエディエルゼの横の、やはり銀髪のあどけなく愛らしい美少年をチラ見した後、エディエルゼに頷く。
「子供に手を出すのは、最悪の卑怯者。
抵抗出来ないか弱い少年を犯すのは、人間のクズだ。
手応え在る美青年なら、遠慮無く組み敷けるが」

エディエルゼはそれを聞き、呆れて目を見開く。

一同はエディエルゼの強さを思い知ってるので、一斉に顔を下げる中。
ノルデュラス公爵が、脳裏に響く声で呻いた。
“エディエルゼは、手応え在る…なんてもんじゃないのに…”

“命がけだよな…”
スフォルツァも同意するように呻き、ロットバルトも脳裏で呻いた。
“暴れ馬を手なずけるよりもっと、骨が折れるぞ…”

“伝説の凶暴なドラゴンですら、エディエルゼと比べれば大人しい…”
ラウールの声が響いた時。
バルバロッサはとうとうラウールを見た。

「…そんな相手だからこそ、楽しくないか?」

が、誰もが一斉に顔を下げ、同意する者は一人も居ず、エディエルゼだけが憤慨して怒鳴った。
「ラステル!
我が国の風習を教えてやれ!
男に抱かれる男など、ひ弱で役にも立たない、最下層の恥ずべき男だと!!!」

が、ラステルはいつの間にかその場に居ず、エディエルゼは首を振ってラステルを探す。

バルバロッサはそんなエディエルゼを見つめ、眉間を寄せた。
「…つまり抱かれる男はあんたの国では、奴隷同然か?」

エディエルゼが真顔でバルバロッサを見据え、しっかりと頷く。

バルバロッサは斜にエディエルゼを見つめ、言い放った。
「…俺の国では違う。
気に入った気の強い相手を組み敷くのは、特別の相手の時。
奴隷や、最下層の卑しい者扱いじゃ無い」

ギュンターは無言で頷いた後
“ちょっと分かる”
と脳裏に呟いた。

直ぐオーガスタスに
“お前は惚れた相手を、ほぼ強姦し、その後本気だと分かって貰えず、苦労し続けだもんな”
と皆にバラされ、オーガスタスを睨んだ。

「強姦なんてされたら、本気で惚れてると言われても、誰も信じない」
エディエルゼにきっぱり言われ、ギュンターは思いっきり、顔を下げて言い訳た。

「…強引だったが、ちゃんと良くした」

「…それで余計、恨まれてる」
ローフィスにぼそり…と言われ、ギュンターはムキになった。
「良くして恨まれるって…おかしいだろう?!」

ローフィスはまだ、言った。
「騎士としてプライドのたいそう高い男を、女のように感じさせたら…恨まれるのは当然だと思う」

ギュンターはつい、エディエルゼを見た。

エディエルゼはきっぱり言い切った。
「ローフィスの、言うとおりだ」

バルバロッサはそれを聞き、笑う。
「つまり俺が強引にお前を組み強いて感じさせたら。
俺を恨むのか?」

とうとうエディエルゼは怒鳴りつけた。
「今までの話、聞いてなかったのか?!
当然、恨むに決まってる!!!」

けれどバルバロッサはもっと笑った。
「美人は怒っても綺麗だな。
だが言っとく。
俺に抱かれたら、最高に気持ち良いぞ?」

「ほざいてろ!!!」

エディエルゼに怒鳴られ、バルバロッサはとうとう、アーッハッハッハッ!!!と声立てて笑い出した。

とっくの昔にラステルとエルデリオンは、治療のためデルデを抱いて城へと駆け込む男と共に、城の中に姿を消していたけど。

エドウィンが脳裏に響く声で中継してくれ、皆の会話に呆れ果てながらもラステルは叫んだ。

“魔法使いの誰かに、デルデを助けるよう要請してくれ!!!”
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