森と花の国の王子

あーす。

文字の大きさ
365 / 418
アールドット国王の別邸

敵を倒す策謀で、エルデリオンに襲いかかるバルバロッサ王

しおりを挟む
 続き部屋の書斎から、広間の皆の様子はよく見えた。
バルバロッサは机の上の図面を、幾つか手に取る。
一枚を皆の方に向け
「今とりあえず分かってる、周辺の敵の配置図だ」
と見せた。

オーガスタスは地理が分かってないので、見てもさっぱり。
エウロペとラステルは、熱心に見つめてる。

ラステルはひとしきり見、ため息吐いた。
「ヤッハ族まで加わってるのか…」

エウロペが顔を上げる。
「大昔追放された…一大権力を誇ってたオーデ・フォール中央王国の豪族ですね?
確か…北東のレドルド国へ散ったと言われてる…?」

ラステルは顎に指を当て、地図を見つめて頷く。
「レドルド国の国境は、崖だらけでそりゃ過酷な辺境で、作物もあまり取れない痩せた土地…。
追放当時、かなり持ち出した宝石や金も一族の人数が多く、あっと言う間に使い果たし、乞食同然の貧しい境遇に落ち、勢力としては死んだも同然と、ノーマークだったのが。
…計算違いだったな…」

オーガスタスはラステルを見つめる。
「かなりの数がいるのか?」
ラステルは頷く。
「…しかもファントール大公らと違い、戦い好きの血の気の多い一族で、大勢部下がいた。
最初は国境近くのレドルドの村を襲い、食料を奪い。
終いに各国へ輸出する、宝玉を届ける商人らを襲い始め…レドルド国王軍に一掃された。
レドルド国は豊富に取れる宝玉を、見事に加工し輸出してる国だから。
その宝玉が奪われれば、国としても大打撃だから、徹底的に捕らえられて殺され、残党は辺境の崖山に、ひっそり隠れ住んでるって聞いてたのに…。
こんなに数が居たとは…」

バルバロッサは頷く。
「報告だと、まるで野人のようだが、蛮人でやたら強いそうだ。
人だと思って戦えば殺られる。
そう言ってたな」

ラステルは呻く。
「厄介だな…。
シェンダーロールらが、命がけで奴らの数を減らそうとするのも納得だ」

バルバロッサはラステルを見る。
「勝算はあるのか?」

ラステルは顎に手を当て、無言で考え込む。

オーガスタスはバルバロッサに見つめられ
「俺に聞かないでくれ。
出会ったらこっちも死ぬ気で剣を振るまで」
と肩すくめた。

エウロペが地図を指さす。
「この崖の近くに誘い込んで、一気に殺るしかない。
ここも…ここも、崖が立ち塞がって、行き止まりでしょう?」

ラステルは頷くものの
「どう誘い込むかですね」
と独り言のように囁く。

オーガスタスが、肩すくめた。
「そいつらの目当てもエルデリオンなら…エドウィンにエルデリオンの幻覚を連中に見せ、誘い出せば?
幾ら光が足りないとはいえ、それっくらいは出来る筈だ」

ラステルが、オーガスタスを見た。
「本物みたいにリアルに、見せられますかね?」

その時、エドウィンが脳裏に語りかけて来た。

“多分、出来る。
けど…嘘の映像を作り出すのは無理だから、こっちで本当にエルデリオンに、走ったり立ち止まったり…して貰えば。
それを送れる”

ラステルはバルバロッサとオーガスタス、エウロペを見
「とりあえず…試してみましょうか?」
と告げ、バルバロッサは
「部下を送る地点を教えてくれ。
待機させる」
と同意した。

結局四人は、再びデルデの居る寝室へ戻る。
そこでエルデリオンに説明し、揃って隣部屋へと移動した。

オーレに伝達して貰い、ヤッハ族の幾人かがウロついてる地点の、近くに居るバルバロッサ王の偵察隊に。
行き止まりの崖の横で待ち伏せるよう、伝えて貰う。

そこでエドウィンはオーレの意識から、ヤッハ族の小部隊。
八人ほどがウロついてるのを見つけ、エルデリオンに頷く。

“追われてるみたいに…走って貰えます?”

エルデリオンはため息を吐くと、内心を吐露した。
“デルデの手を握ってないと…彼の気力が低下するんじゃ無いかって…心配なんだけど”

けれど隣室から、姿の見えないミラーレスが心話を、全員の脳裏に響かせた。
“今は安定してる。
気力低下してきたら、ちゃんと知らせる”

エルデリオンはため息吐くと、家具の少ないその部屋を、少し後ろを振り向きながら、走って見せた。

エドウィンがその映像を、ヤッハ族の小部隊へと送る。
まるで野人のような、髪もボサボサ、衣服もボロボロな男達の一人は、エルデリオンに気がつくものの…。
チラ…と見るだけで、気にもとめない。

“釣れないな…”
オーガスタスが、ため息交じりに囁く。

エドウィンが、言いにくそうに告げた。
“ええと…。
連中、エルデリオン王子の顔を知らないみたい…。
犯せないか?と一人が言っていて、別の一人は、胸が無いから、男だろう?って…。
興味無さそうに…”

バルバロッサが直ぐ、尋ねる。
“凄くサカってそうか?”

エドウィンは恥ずかしげに
“…凄く…シたいみたい…。
でも映像のエルデリオンは、色気が無さそうで…。
鹿とか、木の洞の方が…その…つまり突っ込むには都合が良い…って…”
と、小声で告げた。

“つまりエルデリオンに、色気あれば釣れるな”

バルバロッサは言うと直ぐ、走るのを止めて見つめてるエルデリオンに寄り、腕を引く。

オーガスタスとエウロペは目を見開き、オーガスタスは横で見てるラステルに
「止めるなら今の内だぞ?」
と囁いた。
が、ラステルは目を見開いたまま、沈黙してる。

「…っ!!!
何…っ…やっ!!!」

バルバロッサは腕を掴んで背後に付くと、後ろから胴を抱き寄せ、シャツの合わせに手を突っ込み、エルデリオンの胸を揉み始めた。

「止め…っ!!!」

エルデリオンはバルバロッサの手を握り、引き剥がそうとするけど…。
幾度も乳首の先端を爪で押し潰され、感じて震え始める。

オーガスタスもエウロペも、そしてラステルもが、ヤッハ族の小部隊の男らが、バルバロッサに愛撫されて仰け反る、エルデリオンの映像に皆、振り向くのを見た。

ラステルは呻く。
「…釣れてるみたいですね…」
オーガスタスも、躊躇った後、頷く。

エドウィンは、バルバロッサに告げた。
“そのまま…引き連れて、ちょっと先で…倒して組み敷けたり…出来ます?”

バルバロッサは返答もせず、エルデリオンの腰を抱いたまま強引に引き歩き、次に思いっきり床に投げ、転がるエルデリオンをあっと言う間に組み敷いた。

「…楽しんでますね…」
エウロペの感想に、ラステルは頷く。
「バルバロッサ王はね…。
多分まだ眠ってるから、大丈夫だとは思うけど…。
デルデ…こういう事には、異常に敏感だから…」

するとエドウィンが、小声で囁く。
“え…と…。
シュアンが、デルデにまで映像送っちゃって…”

エルデリオンはバルバロッサに組み敷かれ、必死に分厚い胸板を、押し返しながら叫ぶ。
“ダメっ…!!!
デルデ、悪化しちゃ…うっ!!!”

けれど隣室のミラーレスの心話が、皆の脳裏に響いた。
“…どころか…デルデの気力も治癒力も、ものすごーく活発化してるんですけど…。
いっその事、バルバロッサ王に抱かれちゃったりしたら…。
彼、一気に回復し、怒り狂って起き上がるかも”

その声がした途端。
バルバロッサの手が、エルデリオンの股間を握り込む。
「ぃ…やっ!!!
や…ぁっ!!!」

言葉は拒絶してるけど。
バルバロッサの手に握られ、刺激されて、エルデリオンは明らかに…感じてる。

“エドウィン、ノルデュラス公爵には見せないよう、シュアンに言ってくれる?
彼まで怒り狂って乱入されたら…収拾付かない…”
エウロペが要請したけど、ラフィーレが残念そうに呟く。

“もう送っちゃってる…。
って言うか、みんな見てる…。
シュアン、ずっと一緒に居たから、無意識にみんなを仲間みたいに認識してるから…。
けど幸い(?)ノルデュラス公爵、疲れて寝ちゃってるから…。
夢だと思ってるかも”

オーレの声がする。
“全員に見せるの、マズいのか?
じゃ、シュアンの意識を切り離すぞ”

が、ミラーレスは
“デルデには見せといて。
彼、怒りのパワーで凄い快復力発揮してるから”
と告げ、ラフィーレが
“じゃ、ボクがデルデに送る”
と言い、間もなくデルデの
“誰だこいつ!!!”
と、大音量で皆の脳裏に、怒鳴りつける声が聞こえた。

オーガスタスは顔を下げ
「ほんっとに、デルデに見せといて、正解なのか?」
と、ラステルに問い、エウロペまでもが
「デルデ、憤死しませんかね?」
と尋ねた。

ラステルは顔を下げて考え込んだ後。
顔を上げてオーガスタスに
「けどミラーレスって、凄腕の治療師なんですよね?」
と逆に質問する。

オーガスタスは躊躇った後、頷き
「…た…ぶん?」
と確信なさげに、肯定した。

「や…ダメっ…。
ぁ…んっ!」

エルデリオンの喘ぎ声に気づいた三人が振り向くと、エルデリオンはもうズボンを引きずり下ろされ、直に握られていて…更に腿を持ち上げられ、バルバロッサの口に含まれ、指で後腔を犯され、仰け反り始めていた。

「ぁ…あっ!
お尻…止めて…指…抜いて…っ!
ぅ…んっ!」

三人はまだ年若いエドウィンを、刺激が強すぎないか?と心配げに揃って伺ったけど。
エドウィンはヤッハ族の数人が、群れて興味津々で岩陰から覗いてるのを見
“後…少しで崖下の袋小路に入るんだけど…”
と状況をうれいてた。

“もう…ちょっと、いやらしくないと…ダメかも…”
エドウィンがそう、ため息交じりに告げ、ラステルは固まる。

丁度その時扉が開くと、ギュンターが唐揚げが山程乗った、大皿抱えて室内に入って来る。
「さっきから頭の中で見えてる、エルデリオンとバルバロッサ王の…」

言って、室内を見た途端、絶句した後。

「…実際、ってたのか…」
と呟いた。

バルバロッサは咥えていたエルデリオンの一物から顔を上げ
「手伝え。
もっと感じさせるのに、手が足りない!
お前、惚れてる男を犯せるんだろう?!」
とギュンターに要請した。

ギュンターは片手に大皿、片手に骨付き唐揚げを持ったまま、黙してバルバロッサを見た後。
オーガスタスに尋ねた。
「通訳してくれないか?
言ってる言葉は一応分かるが、意味が通じない」

けどエドウィンが、心話で告げた。
“エルデリオンがもっと色っぽくならないと。
敵はいつまで経っても岩陰で覗くだけで。
もっと近くに来ないから、誘い出せないの”

「………………………」

ギュンターは骨付きチキン持ったまま固まり、とうとうオーガスタスに、大皿。
エウロペに骨付きチキンを取り上げられ、ラステルに背を押され、エルデリオンを組み敷くバルバロッサの横に、押し出された。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

捜査員達は木馬の上で過敏な反応を見せる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...