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アールドット国王の別邸
デルデが高速回復するミラーレスの治療と、その犠牲者
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その後バルバロッサ王は、ヤッハ族の豪傑を仕留めた二隊が負傷者多数なので、他の部隊長と回路をオーレに開いて貰い
“二隊を護衛しろ!”
と命を下した。
脳裏では散らばっていた偵察隊が、エドウィンに道筋を示され、続々二隊へと合流し、70名ほどの男らが取り囲み、護りながら城へと帰還してくる様子が映し出されていた。
エルデリオンはまだ、横に立つ距離の近いギュンターの身体の温もりを、名残惜しいと想ってる自分に気づき、脳裏に呟く。
“デルデロッテの…容態は…?”
シュアンがミラーレスに、エルデリオンの呟きを送る。
ミラーレスは気づき、顔を上げると
“オーレの光の結界で活性化され、かなり傷口が塞がって来てるところ。
けどまだ血が足りないから、起きればフラフラ。
動けば傷口が裂ける”
と報告を寄越した。
エルデリオンは俯いて囁く。
“見舞っても…いい?”
けれど暫く沈黙は続く。
エルデリオンが返事を伺ってるので。
シュアンが、ミラーレスの思考をエルデリオンに送った。
凄まじい勢いで、色々なパターン映像が、頭の中を駆け巡ってる。
会わない場合。
エルデリオンが一人で見舞う場合。
ギュンターを伴って見舞う場合。
更にギュンターとバルバロッサ王を伴って、見舞う場合…。
“バルバロッサ王は、偵察隊の動向伺うのに忙しいらしいし…。
ギュンターと来るんなら、いいかも”
そう、やっとミラーレスは言葉を返した。
ギュンターはエルデリオンから背を向けて戸口に歩きかけ、振り向く。
「俺、これから風呂…」
言いかけるギュンターの腕を、横にやって来たエルデリオンはがっし!と掴み、一緒に扉を潜り抜けて隣室へと連行した。
ラステルが慌てて、後を追い脳裏で叫ぶ。
“偵察隊の映像は…私の脳に流しといて貰えます?”
直ぐエドウィンから
“分かった”
と返事が来た。
ギュンターはエルデリオンに強引に腕を掴まれ、隣室の扉を開けられ、仕方なく一緒に潜る。
白い光の結界内に横たわる、デルデロッテは目を閉じていたけれど。
エルデリオンが横にやって来ると、目を開けジロリ、とギュンターを睨む。
咄嗟、ギュンターは顔を背けた。
背後からラステルが来て、慌ててデルデロッテの枕元に駆けつけると、口添えした。
「ヤッハ族って…昔の謀反者の末裔を倒す作戦で…。
エルデリオンは見事、体張って罠の役割を果たしたんだ!」
エルデリオンは横で叫ぶラステルを見た後。
反対横に立つギュンターを見上げ
「…そうだったの?」
と聞く。
ギュンターは、エルデリオンを見ないまま頷いた。
そして、小声で呻く。
「脳裏の映像…見えてなかったのか?」
エルデリオンはギュンターに振り向くと
「あの状態で…君は見えてたのか?!」
と逆に尋ねた。
ギュンターは目を見開いてエルデリオンを見つめた後。
くぐもった声で呻く。
「…所々…要所はチラ見してた…。
出来なかった?」
エルデリオンは真っ赤になって怒鳴りつけた。
「出来る訳、無いだろう?!」
ギュンターはまだ、寝台に横たわりつつもずーーーっと自分を睨み付けてる、デルデロッテの濃紺の瞳を避けるように俯く。
「…凄く…ヨさそうだった…」
デルデが呟くので、ラステルは向かい側で傷の上に手をかざして立つ、ミラーレスを慌てて見、尋ねた。
「…最初の触りの部分で…映像は、切ったんですよね…?」
大男のシュテフはミラーレスの斜め後ろで、立ちんぼで目を閉じていたけれど。
目を開けて呟く。
「所々、映像見せて、活性化の様子を探った」
その時、シュテフの見ていた映像が、皆の脳裏に見えた。
デルデロッテの腹の傷の、内部。
周囲から赤と黄色の糸のようなものが凄い勢いで伸び、包んで行く様。
“赤いのは血管。
黄色は神経組織。
本当は、こんな凄い勢いで活性化してたら、痛みが出たり酷い眠気に襲われ、大抵気絶するんだけど”
シュテフに脳裏で呟かれ、ミラーレスが顔を上げ、言葉を足す。
“オーレの結界は質が良いから。
ほぼ確実に、眠くなる筈なんだけど”
けどある程度活性化し、デルデロッテが眠気に覆われ、目を閉じかけると。
ミラーレスはエドウィンに要請し、ギュンターと裸で絡む、色っぽいエルデリオンの映像をデルデの脳裏に流す。
途端、デルデはかっ!と目を開けギュンターを睨み付け…。
シュテフが見えてる映像の、デルデロッテの腹の傷は、凄い勢いで赤と金の色が絡まるように細かく伸び始め、細胞が作られて肉が盛り上がり始める。
ミラーレスのかざした手から白い光が放射され、赤と金の絡む場所を誘導、整え…傷口の表面は少しずつ肉に覆われ、その大きさを小さく変えていく。
ラステルは感心した。
「…これ…縫った傷なんかより、ずっと綺麗に治りますね…」
ミラーレスは手をかざしながらも、ジロッ、とラステルを睨んだ。
背後で腕組みしてた銀髪のオーレが、呆れてぼやく。
「里一の治療師だぞ?
元に戻すのは、彼にとって当たり前。
プライドに…いたく触ったぞ?」
ラステルは一瞬呆け
「すみません、こんな治療初めて見たもので」
と抑揚の全く無い声で告げた。
ギュンターは、脳裏で自分が裸のエルデリオンを抱いた映像を、客観的に見せられてる最中ずっと。
横たわるデルデロッテの濃紺の瞳で睨み付けられ、チラ…チラ、とラステルを、縋るように見た。
けれどミラーレスのプライドを傷つけたラステルは、顔を下げたまま。
デルデの濃紺の瞳は、突き刺さらんばかりにきつい。
が、怪我人を殴って顔を背けさせる訳にも行かず、ギュンターは行き詰まってとうとう脳裏に叫ぶ。
“シュアン!
ローフィスに今直ぐ来るよう、要請してくれ!
ローフィス!!!
助けてくれ!!!”
隣室のオーガスタスは、ギュンター決死の救助要請を聞くと、ため息を吐いて立ち上がる。
扉に歩み寄りながら、脳裏に呟いた。
“シュアン、ローフィスは…”
ラフィーレが代わって、伝えてくれた。
“熟睡してるから…聞こえてない…”
オーガスタスは、二度頷くと、握り込んだノブを捻り扉を開き、部屋を出る。
バルバロッサ王とエウロペは、長身で立派な体躯のその男が。
項垂れたように室内を出て行く様子を、無言で見送った。
オーガスタスが隣室の扉を開く前。
大急ぎでざっと事の次第を、ラフィーレから聞いた。
エドウィンとオーレは、偵察隊の様子を伺うのと映像送るので手一杯らしく。
ラフィーレが、気の毒そうに囁く。
“でね、ミラーレスがデルデロッテの治療に、ギュンターとの映像とか…バルバロッサ王と三人の絡んでる映像とか…傷の様子見ながらちょくちょく使うから…”
扉を開けた途端、オーガスタスの脳裏に、ミラーレスの叫び声が飛び込む。
“これは、有意義な治療だ!!!
人間がこれ程早く傷が癒えるのは、私の経験上初めての事で、画期的。
テストの意味でも、必要なんだ!!!”
オーガスタスが顔を上げると、ミラーレスは脳裏で叫ぶのとデルデの傷の具合を見るのに必死でオーガスタスの動向に気づかず、戸口にその姿を見つけ、初めて
「口で言っても、通じてたな…」
と、声に出して呟いた。
部屋の隅に立つオーレと、一人掛け用ソファに座るエドウィンを除き。
寝台から離れた場所に立つシュテフも。
その後ろの長椅子に、二人並んで寛いでるシュアン、ラフィーレも。
そして、寝台手前に立つ、ラステル、エルデリオン、ギュンターもが振り向く中。
デルデだけは横たわったまま、ぎんぎんとギュンターを、睨み続けていた。
オーガスタスはため息吐くと、進み出てギュンターの前に立ち、デルデの視線を自分の体で遮る。
が、デルデはそれでも睨み付けるので、とうとうラステルが囁いた。
「強敵ヤッハ族の数を減らすのに、必要な事だと…分かるだろう?」
が、デルデは睨み付けたまま少しも視線をそらさず、唸る。
「そこじゃない…」
ラステルは尚も取りなした。
「…けどデルデ。
蕩けたのはエルデリオンで…ギュンターにとってはいつもしてる、当たり前の行為。
君にだって、覚えがあるだろう?
何人の宮廷女官を蕩けさせ…彼女らに惚れてる男に、今の君みたいに睨み付けられた?」
その時初めて。
デルデは凄く嫌そうに、枕元に立つラステルに視線を向けた。
ラステルは更に畳みかける。
「しかもその時、君は…女官に誘われたから。
だけどギュンターは?
作戦上、否応無しだ。
どっちが同情出来る?
ギュンターの方だろう?」
やっと、デルデは目を伏せ、オーガスタスの背後に立つギュンターは、ほっとして脳裏に呟く。
“大きな体で遮ってくれて、凄く嬉しかったけど。
それでも突き刺さってたからな。
あいつの視線…”
けれどミラーレスは、大きなため息を吐いた。
「治療のために、もう少しギュンターに、腹を立てていて欲しかったですね…」
シュテフも頷く。
「活性化が三割減。
残念だったな」
そう言って、気の毒そうに項垂れてるミラーレスを見る。
オーガスタスが、振り向いてギュンターを伺う。
ギュンターは項垂れきっていて
「治療のためなら、俺の精神的打撃はどうでもいいのか?!」
と呻いていて、オーガスタスが顔を戻すと、ミラーレスとシュテフは揃って、肩を竦めてた。
“二隊を護衛しろ!”
と命を下した。
脳裏では散らばっていた偵察隊が、エドウィンに道筋を示され、続々二隊へと合流し、70名ほどの男らが取り囲み、護りながら城へと帰還してくる様子が映し出されていた。
エルデリオンはまだ、横に立つ距離の近いギュンターの身体の温もりを、名残惜しいと想ってる自分に気づき、脳裏に呟く。
“デルデロッテの…容態は…?”
シュアンがミラーレスに、エルデリオンの呟きを送る。
ミラーレスは気づき、顔を上げると
“オーレの光の結界で活性化され、かなり傷口が塞がって来てるところ。
けどまだ血が足りないから、起きればフラフラ。
動けば傷口が裂ける”
と報告を寄越した。
エルデリオンは俯いて囁く。
“見舞っても…いい?”
けれど暫く沈黙は続く。
エルデリオンが返事を伺ってるので。
シュアンが、ミラーレスの思考をエルデリオンに送った。
凄まじい勢いで、色々なパターン映像が、頭の中を駆け巡ってる。
会わない場合。
エルデリオンが一人で見舞う場合。
ギュンターを伴って見舞う場合。
更にギュンターとバルバロッサ王を伴って、見舞う場合…。
“バルバロッサ王は、偵察隊の動向伺うのに忙しいらしいし…。
ギュンターと来るんなら、いいかも”
そう、やっとミラーレスは言葉を返した。
ギュンターはエルデリオンから背を向けて戸口に歩きかけ、振り向く。
「俺、これから風呂…」
言いかけるギュンターの腕を、横にやって来たエルデリオンはがっし!と掴み、一緒に扉を潜り抜けて隣室へと連行した。
ラステルが慌てて、後を追い脳裏で叫ぶ。
“偵察隊の映像は…私の脳に流しといて貰えます?”
直ぐエドウィンから
“分かった”
と返事が来た。
ギュンターはエルデリオンに強引に腕を掴まれ、隣室の扉を開けられ、仕方なく一緒に潜る。
白い光の結界内に横たわる、デルデロッテは目を閉じていたけれど。
エルデリオンが横にやって来ると、目を開けジロリ、とギュンターを睨む。
咄嗟、ギュンターは顔を背けた。
背後からラステルが来て、慌ててデルデロッテの枕元に駆けつけると、口添えした。
「ヤッハ族って…昔の謀反者の末裔を倒す作戦で…。
エルデリオンは見事、体張って罠の役割を果たしたんだ!」
エルデリオンは横で叫ぶラステルを見た後。
反対横に立つギュンターを見上げ
「…そうだったの?」
と聞く。
ギュンターは、エルデリオンを見ないまま頷いた。
そして、小声で呻く。
「脳裏の映像…見えてなかったのか?」
エルデリオンはギュンターに振り向くと
「あの状態で…君は見えてたのか?!」
と逆に尋ねた。
ギュンターは目を見開いてエルデリオンを見つめた後。
くぐもった声で呻く。
「…所々…要所はチラ見してた…。
出来なかった?」
エルデリオンは真っ赤になって怒鳴りつけた。
「出来る訳、無いだろう?!」
ギュンターはまだ、寝台に横たわりつつもずーーーっと自分を睨み付けてる、デルデロッテの濃紺の瞳を避けるように俯く。
「…凄く…ヨさそうだった…」
デルデが呟くので、ラステルは向かい側で傷の上に手をかざして立つ、ミラーレスを慌てて見、尋ねた。
「…最初の触りの部分で…映像は、切ったんですよね…?」
大男のシュテフはミラーレスの斜め後ろで、立ちんぼで目を閉じていたけれど。
目を開けて呟く。
「所々、映像見せて、活性化の様子を探った」
その時、シュテフの見ていた映像が、皆の脳裏に見えた。
デルデロッテの腹の傷の、内部。
周囲から赤と黄色の糸のようなものが凄い勢いで伸び、包んで行く様。
“赤いのは血管。
黄色は神経組織。
本当は、こんな凄い勢いで活性化してたら、痛みが出たり酷い眠気に襲われ、大抵気絶するんだけど”
シュテフに脳裏で呟かれ、ミラーレスが顔を上げ、言葉を足す。
“オーレの結界は質が良いから。
ほぼ確実に、眠くなる筈なんだけど”
けどある程度活性化し、デルデロッテが眠気に覆われ、目を閉じかけると。
ミラーレスはエドウィンに要請し、ギュンターと裸で絡む、色っぽいエルデリオンの映像をデルデの脳裏に流す。
途端、デルデはかっ!と目を開けギュンターを睨み付け…。
シュテフが見えてる映像の、デルデロッテの腹の傷は、凄い勢いで赤と金の色が絡まるように細かく伸び始め、細胞が作られて肉が盛り上がり始める。
ミラーレスのかざした手から白い光が放射され、赤と金の絡む場所を誘導、整え…傷口の表面は少しずつ肉に覆われ、その大きさを小さく変えていく。
ラステルは感心した。
「…これ…縫った傷なんかより、ずっと綺麗に治りますね…」
ミラーレスは手をかざしながらも、ジロッ、とラステルを睨んだ。
背後で腕組みしてた銀髪のオーレが、呆れてぼやく。
「里一の治療師だぞ?
元に戻すのは、彼にとって当たり前。
プライドに…いたく触ったぞ?」
ラステルは一瞬呆け
「すみません、こんな治療初めて見たもので」
と抑揚の全く無い声で告げた。
ギュンターは、脳裏で自分が裸のエルデリオンを抱いた映像を、客観的に見せられてる最中ずっと。
横たわるデルデロッテの濃紺の瞳で睨み付けられ、チラ…チラ、とラステルを、縋るように見た。
けれどミラーレスのプライドを傷つけたラステルは、顔を下げたまま。
デルデの濃紺の瞳は、突き刺さらんばかりにきつい。
が、怪我人を殴って顔を背けさせる訳にも行かず、ギュンターは行き詰まってとうとう脳裏に叫ぶ。
“シュアン!
ローフィスに今直ぐ来るよう、要請してくれ!
ローフィス!!!
助けてくれ!!!”
隣室のオーガスタスは、ギュンター決死の救助要請を聞くと、ため息を吐いて立ち上がる。
扉に歩み寄りながら、脳裏に呟いた。
“シュアン、ローフィスは…”
ラフィーレが代わって、伝えてくれた。
“熟睡してるから…聞こえてない…”
オーガスタスは、二度頷くと、握り込んだノブを捻り扉を開き、部屋を出る。
バルバロッサ王とエウロペは、長身で立派な体躯のその男が。
項垂れたように室内を出て行く様子を、無言で見送った。
オーガスタスが隣室の扉を開く前。
大急ぎでざっと事の次第を、ラフィーレから聞いた。
エドウィンとオーレは、偵察隊の様子を伺うのと映像送るので手一杯らしく。
ラフィーレが、気の毒そうに囁く。
“でね、ミラーレスがデルデロッテの治療に、ギュンターとの映像とか…バルバロッサ王と三人の絡んでる映像とか…傷の様子見ながらちょくちょく使うから…”
扉を開けた途端、オーガスタスの脳裏に、ミラーレスの叫び声が飛び込む。
“これは、有意義な治療だ!!!
人間がこれ程早く傷が癒えるのは、私の経験上初めての事で、画期的。
テストの意味でも、必要なんだ!!!”
オーガスタスが顔を上げると、ミラーレスは脳裏で叫ぶのとデルデの傷の具合を見るのに必死でオーガスタスの動向に気づかず、戸口にその姿を見つけ、初めて
「口で言っても、通じてたな…」
と、声に出して呟いた。
部屋の隅に立つオーレと、一人掛け用ソファに座るエドウィンを除き。
寝台から離れた場所に立つシュテフも。
その後ろの長椅子に、二人並んで寛いでるシュアン、ラフィーレも。
そして、寝台手前に立つ、ラステル、エルデリオン、ギュンターもが振り向く中。
デルデだけは横たわったまま、ぎんぎんとギュンターを、睨み続けていた。
オーガスタスはため息吐くと、進み出てギュンターの前に立ち、デルデの視線を自分の体で遮る。
が、デルデはそれでも睨み付けるので、とうとうラステルが囁いた。
「強敵ヤッハ族の数を減らすのに、必要な事だと…分かるだろう?」
が、デルデは睨み付けたまま少しも視線をそらさず、唸る。
「そこじゃない…」
ラステルは尚も取りなした。
「…けどデルデ。
蕩けたのはエルデリオンで…ギュンターにとってはいつもしてる、当たり前の行為。
君にだって、覚えがあるだろう?
何人の宮廷女官を蕩けさせ…彼女らに惚れてる男に、今の君みたいに睨み付けられた?」
その時初めて。
デルデは凄く嫌そうに、枕元に立つラステルに視線を向けた。
ラステルは更に畳みかける。
「しかもその時、君は…女官に誘われたから。
だけどギュンターは?
作戦上、否応無しだ。
どっちが同情出来る?
ギュンターの方だろう?」
やっと、デルデは目を伏せ、オーガスタスの背後に立つギュンターは、ほっとして脳裏に呟く。
“大きな体で遮ってくれて、凄く嬉しかったけど。
それでも突き刺さってたからな。
あいつの視線…”
けれどミラーレスは、大きなため息を吐いた。
「治療のために、もう少しギュンターに、腹を立てていて欲しかったですね…」
シュテフも頷く。
「活性化が三割減。
残念だったな」
そう言って、気の毒そうに項垂れてるミラーレスを見る。
オーガスタスが、振り向いてギュンターを伺う。
ギュンターは項垂れきっていて
「治療のためなら、俺の精神的打撃はどうでもいいのか?!」
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