森と花の国の王子

あーす。

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アールドット国王の別邸

とっても不満な公爵と、妄想の始まり

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 王が階段を上がり、書斎に入った時。
そこで食事をしていたのはノルデュラス公爵ただ一人。

公爵は顔上げると
「皆、寝室で休んでるぞ」
と告げて、食事に戻る。

黙々と食べてる公爵を見、王は尋ねた。
「エディエルゼの寝室は?」

公爵は、さあ?と言う代わりに、肩を竦める。

王は彼の様子が、沈んでる風なので尋ねてみた。
「…さっき…廊下挟んで隣室の化け物。
お前も脳裏のイメージで見たのか?」

公爵は、首を横に振る。
「…違う。
エルデリオンの所在を尋ねたら、治療中のデルデロッテに寄り添って眠っていて、訪問は無理だと言われた」

そう告げた後、金髪浅黒い肌で、美丈夫の王を見上げ
「…それと、とても不愉快な夢を見た」
と呻く。

王は、公爵を見つめ尋ねた。
「どんな?」
「あんたとギュンター、二人でエルデリオンを嬲ってる夢」

王は肩すくめる。
「一人が自分じゃ無くて、不満か?」
公爵は食べる手を止めず、頷く。
「…出来れば一人で。
心ゆくまでエルデリオンの体を堪能したい」

王は肩すくめ
「デルデロッテが婚約者と聞いた」
そう告げると途端、公爵は肩を落とす。

「…だからもう抱けない」

王は頷き
「折角アースルーリンドの魔法使いが山程来てる。
一人ぐらい、エルデリオンを好きなだけ抱けるリアルな夢くらい、見せてくれるはずだ」
と勧める。

公爵は顔上げ
「実際してるぐらい、リアルな夢か?」
と尋ねるので、王は面倒くさくなって言った。
「俺が知るか。
自分で尋ねろ」

公爵は頷くなり、脳裏で魔法使いを呼び出してる様子。
王は階段裏の寝室の、三つの扉を見、階段上にも二つ寝室があるのを思い出し。
一つ一つ、エディエルゼを探して尋ねるのも面倒で、結局
『明日にしよう』
と諦めて書斎を出た。

入れ替わりにオーガスタスが、エウロペとギュンターを連れ、戻って来る。
ギュンターは項垂れきって
「腹減った…」
と呻くので、王は廊下を歩きかけ…取って戻って、書斎のテーブルの上を見た。
山盛りあった食事は、ほぼ姿を消していた。

エウロペに
「その呼び鈴引いて、追加を頼め」
と告げると、エウロペは頷くので。
王はやっと安心して、廊下を自室に向かって歩き出した。


エウロペが頼んだ料理は、間もなく湯気立てて皿に大盛りで盛られ、運ばれて来る。
肌の浅黒い、頭にターバン巻いた召使いは、オーガスタスの大きさを見
「…足りますか?」
と恐る恐る尋ねた。

エウロペは運ばれてきたワゴンの上の皿を、オーガスタスに手渡し。
空の皿を、代わりに受け取ってワゴンに乗せながら、オーガスタスを伺う。

オーガスタスはエウロペに皿を手渡ししながら、山盛りの大皿三つを見つめた後。
ギュンターを見、ぼやく。
「…足りるか?」
ギュンターは無言で首を横に振る。

オーガスタスはまた、空になった皿を公爵から手渡され、エウロペに渡して召使いに振り向く。
「…後…」
ギュンターが即座に
「四皿」
と告げるので、エウロペは目を見開く。
オーガスタスは召使いに
「最低この量で、二皿もあれば。
ギュンターは、黙らせる」
と告げた。

召使いは顔を下げ
「…努力します…」
と呻くと、空の皿が重ねられたワゴンを戸口に運びながら
「今夜は客人が多いので…コックがヒステリー起こしそうで…」
とぼやいた。

公爵が、顔上げて尋ねる。
「コックは女か?」

召使いは顔を上げないまま
「いえ。
アールドットで女性は神聖な存在。
数が少ないので、悪戯に戦闘などには、とても同伴できません…」
と小声で呟く。

公爵が、目を見開いた。
「じゃ…ここの体格良い男達はみな…」
「…小柄で見目の良い男は皆、偵察隊が帰ると、一斉に姿を隠します…。
犯されるので」

オーガスタスもギュンターも、エウロペも聞いていたので、黙して椅子を引く。

「…じゃ…エルデリオンなんてすっごく、危ないな…」
呟く公爵の言葉を聞き、エウロペは顔上げる。
「ラステルが、させると思いますか?
王子を一騎兵らに、集団で犯させるなんて行為」

ギュンターはフォークを取り上げると
「アールドットに産まれなくて、良かったぜ…」
と言ったきり、食事に没頭し始める。

がつがつがつがつがつ…。

エウロペはその野性味たっぷりの食べっぷりを見、呆れてフォークを宙で止めて見つめた。
「…まるで一週間ほど、絶食した後みたいだ…」

オーガスタスはため息混じりにフォークを手に取り、もう片手で調味料を料理に振りかけながら、頷く。
「いつもやたら小まめに動き回ってる男だから。
直ぐ腹が減るらしい」

公爵はかなり腹が膨れてきていたので、オーガスタスを見つめ、尋ねる。
「アースルーリンドで女性は…あまり犯されたりしない?」

オーガスタスは食べ物をフォークから頬張りながら、呻く。
「地方にもよるが…。
無体なマネをするのは、ほぼ崖の外からやって来る、盗賊達だ。
奴ら、美形の女、子供をさらい、平気で犯す。
だから…場所によっては女子供を犯す男は、殴り倒される」

ギュンターは食べながら頷く。
「俺の地元がそうだ。
男は皆荒っぽいが、女子供は大切に扱う」

エウロペは微笑むと
シュテフザイン森と花の王国と同じですね」
と告げた。

ギュンターは顔を上げてエウロペを見、オーガスタスもエウロペを見て、ぼやいた。
「だがあんたは、態度が丁寧だ。
ギュンターのように粗野じゃ無い」

エウロペは微笑むと、感じ良く告げる。
「王家に仕える身なので。
相手によってそれなりの態度が取れなければ、務まりません」

オーガスタスが、そう言ったエウロペを見た後。
ギュンターに小声で囁いた。
「…一国の重臣だ。
俺らみたいな、やさぐれ者とは育ちも身分も違う」
ギュンターも、口にスパゲティを入れながら頷いた。
「敬わないと」
オーガスタスは呆れてギュンターを見た。
「出来ないくせに」

エウロペは微笑む。
「必要無い」
ギュンターは頷いて、オーガスタスに告げる。
「だ、そうだ」

オーガスタスはため息混じりに頷いた。
「お前と違って、彼は人間の器がデカい」
ギュンターは、また頷いた。
「だろうな」

公爵はギュンターに呆れた。
「アースルーリンドにも、宮廷はあるんでしょう?」

オーガスタスはグラスを手に取って答える。
「だが俺達は近衛騎兵。
宮廷人とは違い、荒っぽい事専門だから。
多少行儀が悪く、言葉使いも悪くても、剣の腕があれば許される」

公爵は、納得して頷いた後。
金髪美貌の、ギュンターの優美な美貌を見て、唸った。
「いかにも宮廷人な、顔立ちなのに」

ギュンターは食べるのに忙しく、取り合わず。
オーガスタスが囁いた。
「中身は野獣」

エウロペはくすくす笑い、公爵は目を見開いた。

「湯に浸かってきます」

公爵が椅子を引くと、三人は公爵を見上げた。
「まだだったのか?」
オーガスタスが尋ね、エウロペも呟く。
「多分、一番最後はラステルかな?」

公爵はエウロペを見た。
「…ラステルは…まだ情勢を見てるのか?
で?
無事、王城に戻れそうか?」

エウロペは頷く。
「さっき強烈な敵戦力を、ごっそり削いだので」

公爵はほっとして、歩き出す。
「これで安心して、寛げる!」

書斎から出て広い居間を抜け、階段に向かう公爵の背を見つめ、オーガスタスはぼやいた。
「そういえば、どさくさ紛れに一緒に戦ったが。
あいつ、元は敵だっけ」
エウロペは頷いた。
「けれど貴重な戦力でしたね。
彼」

ギュンターも頷く。
「四方八方から、わんさか敵が押し寄せて来てたしな」

けれど間もなく。
皆の脳裏に、ノルデュラス公爵がエルデリオンを抱き寄せ…そして股間に手を滑り込ませる映像が、浮かび上がる。

「…………なんで?」

ほぼ食事を終えてるオーガスタスとエウロペに、ギュンターが、まだ食べながら尋ねる。

オーガスタスは脳裏に呟く。
“シュアン!
エドウィン!”

直ぐ、ラフィーレが返答した。
“元はオーレなの!
けどエドウィンもシュアンも、無意識にオーレが公爵に見せてるの、皆に見せちゃってるの!”

エウロペも脳裏で囁く。
“公爵だけに、限定して貰えないんですか?”

ラフィーレが、困惑しきって答える。
“…エドウィンもシュアンも、寝ちゃってて…。
オーレも公爵の妄想、夢で実現させるのと、結界張るので手一杯で…。
エドウィンとシュアンと、回路切れないの”

ギュンターが、皿から顔を上げて脳裏で唸った。
“…つまり?”

“エドウィンとシュアンが起きるか、オーレが回路切るまでは、このまま”

困惑したラフィーレの声の後。
レンフの声が響く。
“これ、無意識で繋がってるから…。
ほら、怪我してる婚約者が…”

その言葉道理、脳裏の映像ではデルデが姿を現し、公爵と掴み合ってる。

公爵が
“なんで私の夢に、君が出て来る!”
と叫んで、デルデを払い退けようとし、エルデリオンを指し示して怒鳴った。
“彼を、あのまま放っとくのか?!”

“私が満足させる!”
デルデは公爵の襟首掴み、押し退けようとしてる。

公爵は掴み返しながら、怒鳴ってる。
“二人ですればいいじゃないか!
どうせ夢だし…エルデリオンは二人にされるのが、大好きなんだぞ?!”

エルデリオンはもう勃ってる様子で、恥ずかしげに頬を染めて囁く。
“それじゃまるで私が…淫乱みたいじゃないか!”

エウロペが、とうとう尋ねる。
“これ…さっき戦った全員に、見えてるんですか?
それとも城中の皆が?”

ラフィーレが、ちょっとほっとして返答した。
“えっ…と、半分うたた寝してる公爵を除いて。
今起きてる、戦った仲間…。
だから…書斎にいる皆さんと、ラステルと。
…えっとデルデも寝てるんだけど…。
エルデリオンの横にいるし、エルデリオンと深く繋がってるから。
通じちゃってる”

「他はみんな、寝てるのか?」
オーガスタスに問われ、ラフィーレは頷いた。
“うん!
みんな、疲れてるんだねぇ…”

オーガスタスとエウロペは顔を見合わせ、オーガスタスが
「貧乏くじか」
と呻くと、エウロペも同意して頷いた。

「さっさと寝るべきでしたね」
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