森と花の国の王子

あーす。

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アールドット国王の別邸

無作為に夢を繋げてしまった能力者たち

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 オーガスタスは脳裏に、直ぐラステルの声が響くのを聞き、さすがエルデリオンの従者。
と感心した。

ラステルはオーレを呼び出すと
“どうしてデルデが出てくるのか、聞きたい。
さっきラフィーレが言う所によると、デルデが側に寝ているから意識が繋がって…。
との事らしいが…。
つまりノルデュラス公爵の夢の中のエルデリオンは、意識が繋がってる、本物のエルデリオンと言う事か?
もしそうなら。
体は犯されて無くても、意識では犯される感覚を、味わってると言う事では?”
と冷静に問いかける。

直ぐ、オーレから返答が響く。
“ノルデュラス公爵の、妄想だけのつもりだったんだが…。
彼の妄執が凄くて。
エルデリオンの意識回路を強引に開いてしまい、彼の意識と繋がって。
実際のエルデリオンが、意識レベルで公爵にお触りされていて。
エルデリオンの意識と深く繋がってるデルデはそれを感じ、介入したようだ”

ラステルが沈黙してるので、オーレはもっと言った。
“…つまり、事故で。
俺の予測範囲外の出来事だ”

ラステルが頷きながら部屋へ入って来るのを、エウロペとオーガスタスは見、オーガスタスはギュンターの横に並べられた、まだ手つかずの皿をさっ!とギュンターからかっさらい、ラステルの為に確保した。

ギュンターは食べながら、ジロリ…とオーガスタスを、殺気すら感じさせる鋭い眼差しで睨む。

エウロペはそれを見るなり、美貌のその男の、野性味溢れる紫の瞳の。
背筋の寒くなる程ぞっとする視線を、ものともせず腕組みして知らんぷりするオーガスタスを、改めて凄い。
と思った。

脳裏ではエウロペの横の椅子を引くラステルの、声が響いてる。
“なんとかノルデュラス公爵に、意識の繋がってない、姿だけがエルデリオンのイメージで、好きなだけ遊んで貰えるよう、出来ませんか?”

今度はオーレが、暫し沈黙した。

シュテフが代わりに呻く。
“それが出来たら、とっくにしてる。
さっきからエルデリオンとノルデュラス公爵の、精神回路を切ろうとしてるのに、出来ない”

ミラーレスまで唸った。
“これ、映像として見せてるから発覚してるけど。
しつっこく思われてる相手に、無意識に犯されたり弄ばれたりする感覚って、感じた事無いですか?
それ、相手が神経回路を強引に繋げて、意識レベルで犯したりしてるんです。
結構、日常茶飯事でありますよ。
人間はほぼ“気のせい”にして、気づきませんけど。
エルデリオンがきっぱり拒絶する、強固な意志があれば閉じられるんですが。
過去かなり…ノルデュラス公爵に、好きに体を嬲られてるので。
強く拒絶できないみたいで、無理っぽいですねぇ…。
治療担当としては、デルデにこれ以上、意識レベルで戦って欲しくないんですけど”

オーガスタスが、ため息混じりにぼやく。
“けど方法はあるんだろう?
公爵を強引に、夢の中から弾き出すとか”

腰掛けたラステルは、テーブルの向こうから、ギュンターから奪った皿を目の前に置いてくれるオーガスタスを、ありがたげに見つめながら脳裏で叫ぶ。
“あるんですか、方法!”

オーレはため息混じりに
“一人じゃ済まず、三人の意識を弾かなきゃ、だが。
やってみる”
と呻いた。

結局脳裏の映像は。
中途に触れられ反応してしまったエルデリオンが、股間を両手で押さえ、真っ赤な顔で俯き、デルデとノルデュラス公爵の、押し合いをチラ見していた。
デルデは今やノルデュラス公爵にのしかかると
“私がお前を犯し、『女』にして!
二度とエルデリオンを犯したいなんて、思わなくさせてやる!”
と本気で怒っていて、デルデに押し倒されそうな公爵は
“私相手に、勃つのか?!
私はお前を『女』にしたくとも、勃たないぞ!!!”
と、言い返していた。

が、突然亀裂が入り、三人は亀裂に引き裂かれ、映像は突如消えた。

“…これからなのに…”
エドウィンが寝言のように呟き、シュアンも聞き取りづらい寝言で
“つまんないの”
と呟く。

オーレが
“お前らも、俺の神経回路から出て行け!”
と怒鳴るけど…まだレンフらしき声が響く。
“…オーレ、餓鬼に弱かったのか?!”
シュテフの項垂れた声も聞こえる。
“だから毎度、見ている回路を餓鬼共に乗っ取られ、全員に見せたり聞かせたりする羽目になるんだ”
“俺には厳しいのに”

レンフの不満げな声の後。
脳裏の声はぷっつり途切れ、映像も完全に消え去った。

オーガスタスはラステルに振り向く。
「これでやっと、ゆっくり食えるな」

ラステルは笑顔でオーガスタスに、会釈した。
「食事の心配までして下さって。
感謝します」

オーガスタスも思った。
が、ギュンターも思った。
「…神経タフだな、あんた」

ラステルは食べながら頷く。
「タフじゃ無いと、務まらないので」
横で腕組みしてるでエウロペも俯いて、ため息混じりにラステルに同意し、頷いた。


ギュンターとラステルの食後、結局四人揃って階上の寝室へと向かう。
エウロペが
「横の寝室は開いてますから」
と言ったから。

エウロペが寝室の扉を開けると、天蓋付き大きな寝台にはレジィとミラーシェン、テリュスが寝こけていて。
自分が寝る予定だった、奥の大きな寝台兼長椅子には。
既にエディエルゼが眠っていた。
「(……………………)」

横を見ると隣部屋の扉を、オーガスタスが開けていて。
ギュンターの他、ラステルまで入って行くので、つい覗いて見る。

その部屋は、天蓋の付いてない大きな寝台が二つ並んでいた。
それでエウロペは、室内に入って尋ねる。
「私もお邪魔して、いいですか?」

ラステルは直ぐ感じ良く頷き、が、寝台を見て思案する。
「かなり大きい寝台なんですが。
オーガスタス殿とギュンター殿だと…」

ギュンターも、頷いた。
「夜中にどっちか落ちる。
多分間違いなく、落ちるのは俺だ」

エウロペは苦笑した。
ラステルはにこにこ笑うと
「私なら、大丈夫ですね?」
と言って、奥の寝台の横に立つオーガスタスの、向かいに立つ。

オーガスタスは頷いた。
「俺は基本、寝相は良い。
が、ギュンターだと狭くて押し合いになるから。
つい条件反射で、押し返してしまう」
ラステルは請け負った。
「私は押しませんから」

オーガスタスも感じの良い微笑を、ラステルに返した。

エウロペはギュンターの横に
「失礼します」
と言って横になる。
ギュンターはエウロペをチラ…と見て
「…敬わなくても…」
と呟くので、エウロペはとうとうクスクス笑った。
「必要無い」
ギュンターは頷き、自分の頭を腕の上に乗せ、背を向ける。

ラステルは
「お湯に浸かってきます」
とオーガスタスに告げるので、オーガスタスは布団に潜り込んで頷いた。
「多分、もう寝てる」


全員が、疲労の極限で眠りに就いていると、夢の中でミラーシェンが泣いていた。

“…嫌…嫌っ!!!”

裸の仮面の男達が、ミラーシェンの体を嬲ってる。

両腕は手錠がはめられ、広げて上に吊るされ。
背後から男の一人が胸に手を這わせ、もう一人は正面から股間に手を入れ…後腔を指で、抉っていた。

“や…っ!!!”

ミラーシェンが仰け反ると、男は嬉しそうに笑う。
“ここ…?
ここが良いんだね…”

“いや…嫌っ!!!”

エウロペもラステルも見ていたけど。
どうにも出来ず、うなされた。
ギュンターが遠くで吠えている。
“どうして殴れない!!!”

エディエルゼが、幾度も突進してるのか。
横の壁のような白い膜が、何度も何度も波打って揺れている。

“ミラーシェン!!!”

オーガスタスが、ため息混じりに呻いた。
“オーレ…”
“んぁ?”
ミラーレスが、オーレに代わって返答する。
“寝てる。
多分犯人はエドウィンとシュアンで、二人ともぐっすり寝てる”

オーガスタスが、ぼやいた。
“安眠が欲しいぜ…”
直ぐ、ゼイブンの呻きも聞こえた。
“同感…。
流石にあの仮面の男共は、俺でも短剣投げて殺してやりたいと思う程、下衆げす

ミラーシェンは後腔を執拗に指で嬲られ、背後の男に胸を揉まれ、しつこく乳首を弄られ、首を振ってもがいてるけど…。
だんだん、股間が勃ち上がる。

“感じてる…。
ほら、そのうち、して欲しくって、私にねだるようになる…”
“嫌…っ!!!”

ミラーシェンが暴れると、足首の足枷が見えた。
鎖は長かったけど。
でも逃げ出せないよう、繋がれていた。

ギュンターも頭に来てるらしく、エディエルゼとは別方向の、壁のような白い膜に、拳の跡を幾つも浮かび上がらせてる。
“ゼイブン!!!
お前、神聖神殿隊付き連隊騎士だろう?!
こういう不思議には、詳しいはずだ!!!
呪文を唱えて何とかしろ!!!”

ギュンターの要請を聞き、ゼイブンが唸る。
“あのな。
俺は短い呪文の威力は、自慢じゃ無いが神聖神殿隊付き連隊騎士の中でも、一番の破壊力だ。
が…”

ローフィスが、眠気でくたくたな声で唸る。
“…でもコントロールが利かないから、俺と一緒に唱えないと、逆に周囲の皆が危険なんだ…。
誰か、無意識に流れ出したミラーシェンの夢を、見せてるらしいな…。
俺には…声しか聞こえないが…”

ゼイブンが唸った。
“凄く深い眠りに就いてるからだろ?!
俺には映像も見えてる。
少しぼやけてるが”

“俺はハッキリ見えてる!!!
くそっ!!!”
ギュンターがまた、怒り心頭で白い膜を拳で殴りつけた。

ダウンッ!!!

別方向の白い膜も人型の跡がくっきり浮かび上がり、エディエルゼが突進し、破ろうとしてるのが伺えた。

“これ…ミラーシェンの過去の記憶だろう?
何とか出来そうか?ローフィス”
オーガスタスに聞かれ、ローフィスは遠くで呻いてるみたいな声を出す。
“…眠すぎて……あ…レッ…サス…アクトパス…テ…”

するとエディエルゼとギュンターの居るらしき白い膜の、別方向の膜が突如開く。

バルバロッサ王が入って来ると、驚く仮面の男の一人を背後から肩を掴んで振り向かせ
がっっっ!!!
と殴って寝台の上から、一瞬で吹っ飛ばした。
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