孤独な王子と美貌の護衛と、近衛連隊の暗殺

あーす。

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ハードラー城、平定

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 ハードラー城内で。
しこたま酒が入り、すっかり寝ぼけ眼だった盗賊残党らは。
近衛騎士らの急襲に、腕に覚えのある者は慌てて剣を握り、騎士らに振るい。
だが殆どの者は、、蜘蛛の子を散らすように逃げ去って行く。

盗賊だけあり、その逃げ足は速く。

騎士らは必死に追いかけるものの…庭の木や茂みの間をすばしっこく逃げて行き。
幾人かの騎士らは、盗賊の後を追うのを諦めた。

剣の腕は天才的。
と言われ、思う存分自分の剣技を披露したい、銀髪で狐のような細面、美形のレンフィールは。
逃げ出す盗賊の背に怒鳴りつける。

「逃げるとは何事だ!
戻って正々堂々、戦え!!!」

が、細身のその男の剣が、銀に弧を描く度。
仲間が血をまき散らし、倒れ伏す姿を目にした盗賊らは、聞く気無く逃げ出す。

ギデオンが、場内を一通り見回り、庭に出る。

すると城の地下室へと続く入り口の、鉄の扉から。
叫び声が聞こえた。
「お助け下さい!
アースルーリンドの、騎士のお方ですよね?!」

ギデオンが、背後に続くシャッセルとアドルフェスに首を振る。

ほぼ2mに近い長身の、頑健な体格の二人がかりで。
ようやく、重い鉄の扉を持ち上げると。
中から、城の召使いや侍従。
下働きの者らが、狼狽えきった表情で、次々出て来た。

「狼藉者らは…」
「賊は?!
退治されたのですか?!」

口々に怯えながらささやき、周囲を見回す。

埃まるけの…けれど侍従の白い制服を着けた一人が。
ギデオンの姿を見つけ、叫ぶ。

「ギデオン准将…!」

その声に、皆が皆、感激にむせび泣くような表情を見せ。
安堵に包まれ、次々膝を折ると、草の上に崩れ落ちた。

ギデオンは近寄ると、声かける。
「一晩中、地下室に居たのか?」

ギデオンの名を叫んだ侍従は、声をかけられ。
歓喜にむせぶ表情で、ギデオンを見上げる。
「はい…!
城からの入り口は、固く閉ざし。
賊が入れないほど、物を積み上げてしまって…。
それでも幾人かは逃げ遅れ…」

そう告げて、喉を詰まらせる。
女中も下働きの者らまでもが、命を落とした仲間を思って、すすり泣き始める。

が、無事難を逃れたことに感謝しつつ、緊張を解いてぐったりとへたり込む者、多数。

「准将!
逃げ出した賊は、隣の城のカデンツァの城門へと雪崩れ込もうとしたが。
追いついた騎士が目にした所、門は開かず中へは入れず。
門をよじ登ろうとした者は、全て上から石を落とされ、怪我で良い方。
死んだ者までいる」

ギデオンはレンフィールのその報告に、頷く。
「仲間も平気で見捨てるか…」

長身、黒髪のアドルフェスが、背後で唸る。
「数が減れば。
お宝の取り分は増える。か?」

シャッセルは眉間を寄せた。
「討伐されなければ。
の話だろう?」

ギデオンは二人の会話を聞き、頷く。
「が、数が更に減ったのは、朗報だ。
奴ら騎士じゃないから、誇りより命乞いだ」

アドルフェスとシャッセルが、揃って頷く。

「…が。
カデンツァに入り込むのは、至難の業のようだな…」

ギデオンの独り言を聞いた、下働きの少年の一人は。
それを聞くなり、草の上に下ろした腰を瞬時に跳ね上げ、叫ぶ。
「抜け道!
おいら、知ってるよ!
ついて来て!
門を潜らず、入れるから」

シャッセルとアドルフェスは、ここで一休みする予定で。
誰か手空てすきの者に、少年の後を追うよう、命じようと周囲を見回す。

が、正面で剣を下げて立つレンフィールの、目がまん丸になっていて。
二人ともが、背後に振り向いた時。

少年の、後を追って走って行ったのは、ギデオンだった。

「…!」
シャッセルが、それを見るなり駆け出し。
アドルフェスもが。
後れを取るまいと、慌てて走りながら、レンフィールに
「後を頼む!」
と一声叫ぶ。

レンフィールは歯がみすると
「ええい、次の戦闘が始まるぞ!
ギデオン准将の、後に続く意志ある者は、直ぐ様続け!!!
カデンツァを、落とす!!!
怪我してる者は、事後処理に回れ!
中央護衛連隊に、助力を頼め!」

それだけ叫ぶと、背の高い二人の美丈夫、アドルフェスとシャッセルに後れを取るまいと。
剣を抜いたまま鞘にも終わず。
柄をきつく握って駆け出した。

レンフィールの叫びを聞き、一息ついてた騎士らは。

そこら中から凄まじい勢いで一斉に駆け来て、レンフィールの後を追う。

「あの…」
侍従が、そこら中に居た近衛騎士らが、一斉に駆け始めるのを目に。
呆然と声かける。

間もなく城の横から。
隠れていた、城のお抱え騎士らを助け出した近衛の騎士ら、三人程が。
お抱え騎士らに
「残党に、縄を打て!」
だの
「中央護衛連隊に、出動要請を出せ!!!
捕らえた盗賊を、牢に入れろと!」
だのと叫びつつ。

仲間の近衛騎士の背を追い、駆け出す。

助け出されたお抱え騎士も。
女中や侍従ら、下働きの者らもが。

大勢の近衛騎士が、一斉に駆け出して行く姿を呆けて見送った。

けれど。
遅れてやって来る、腿を斬られ、びっこを引く騎士や。
腕に切り傷を作り、血を滴らせてる騎士達ですら。
仲間の後を追おうと、走り出すので。

女中達は思わず駆け寄って
「お願いです!
手当させて下さい!」
と、懇願した。

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