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リセット 7 オーガスタス

リセット 7 オーガスタス 16

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 意識の無い中、レイデンの声が響き渡る。

“おめでとう~!
経験値は+2で、58だけど!
敵と戦ったから、剣術数値が+3!
上がったよ!”

賢者の、はしゃぐ声も聞こえる。
『オマケに、ジュエリーもゲットよっ!
タイガー・アイ!』

また、ピロリロリ~ン!
の音と共に、宝石箱が開いて、グラデーション・ゴールド色の宝石が!
アイリスの、ミッドナイト・ブルー・サファイアの横で輝いてる!

なんか、すごく嬉しい~♡

もしこれで悪鬼と戦ったら。
アイリスとオーガスタスが、助っ人して戦ってくれるんだね♡
るんるん♡

“多分、召喚キャラもう直出るから!
召喚キャラをモノにして!”

も…モノ…ですか………。

賢者、飛び跳ねてる感じで言う。

『経験値、50超えればもうこの後は楽よ!
…でも肝心の、剣術数値がねぇ…』
“ジュエリー、片っ端からゲットして、攻撃力上げるしか無いと思う…”

…………さいですか…。

そこで俺、ぱちっ!
って、目が覚めた。

「(あ…あれ~?
オーガスタスが…いない…?)」
なんか…あんだけ親密に過ごした後なだけに、なんか凄く寂しいよ…。

ガウン探し、羽織って…立ち上がると。
窓の外で声がする…。

庭に出るスタンドグラスの扉が少し、開いていて…。
そっ…と覗くと、オーガスタスと…もう一人が、庭のテーブルを挟む椅子にかけて、話してる…。

俺、そろーっと、近寄ってみる。
部屋の灯りで、二人の横顔が浮かび上がる。

オーガスタスの向かいに座ってる人物って…。
細かく縮れた長い黒髪は腰近くまであって。
なんか…凄く高貴な感じの、整いきった顔立ちをしてる…。
瞳が透けて…白銀に光った?
グレーの瞳?
あれ?
それとも…ブルー?グリーン?
顔が傾く度に、淡い色なんだけど…色の印象が変わる、不思議な瞳の色…。

だ…誰?
召喚キャラ?!

『ぎゃー!
ディアヴォロスよ!
左将軍!』
“この人だけは、ベットインしなくても召喚カード、ゲット出来るんだけど…”

「(え?!
マジ?!)」
“けど、逆に難しいかも…”
『感謝されないと。
なのよね~』
「(…え゛?!
つまり…感謝される事をするって事?)」
“また、言葉が変になってる…”
「(…なるでしょ!
左将軍に感謝されるって…どーすりゃいいのよっ!)」

けれどその、左将軍ディアヴォロスが、覗いてる俺に気づいて顔を上げる。
こっちに背を向けてたオーガスタスが、振り向く。

オーガスタスに見つめられた、だけで、頬が染まって…つい、俯いてしまった。
「……………彼がその…ごほん。
さっき話した…」
オーガスタスが、照れながら説明すると。
左将軍ディアヴォロスはにっこり笑う。

「(う…。
確か、王族なんだよね?
高貴!崇高!
雰囲気が、常人離れしてるっ!)」

「アーシュラスにとても、気に入られた後、随分恨みを、買ったみたいだね?」
ディアヴォロスがそう言うと、オーガスタスが顔を下げる。
「…アーシュラスから…あんたに使者が、行ったのか?」
ディアヴォロス、オーガスタスを見つめて微笑む。
「…君がアーシュラス所有の奴隷を連れて、逃げたと。
即刻アーシュラスに返すよう、使者を使って文句を言って来た」

俺、つい進み出て、座ってるオーガスタスの横に立って叫んだ。
「オーガスタスは悪くないんです!
第一…!」
言いかけると、オーガスタスが素早く口挟む。
「成り行きを説明してあるから…大丈夫だ」

俺、そう言ったオーガスタスを見て…左将軍も見る。
「…あ…あれ?
じゃ、オーガスタスに怒ってない?」
左将軍、凄く高貴なんだけど、感じ良く笑って言う。
「怒ってない。
…アーシュラスはいつも、とんでもない言いがかりを、毎度付けてくるから」

俺、ほっとした。
「オーガスタスは俺の事、二度も…じゃなくて、三度も助けてくれたって…言いました?
俺、すっごくオーガスタスにお世話になって!
もし、アーシュラスの元に、俺がどうしても戻らないとオーガスタスが酷い目に合うなら…そうしますから!」
でもそう言ったら、オーガスタスが俺の腕をそっと握る。
まるで、止めるみたいに。

左将軍は、くすっ!と笑う。
「オーガスタスが苦労して助け出したのに。
君を返したら私が、オーガスタスに見限られてしまう」

俺、多分オーガスタスの上司にあたる…左将軍がそう言うので、ぽかん。として、左将軍を見つめてしまった………。

左将軍、にこにこして言う。
「…これでも私の大切な右腕なので。
彼に軽蔑されるような上官に、私は成りたくないのでまず、君の言ったことは起こり得ない」

俺、何だか凄く、ほっとした。
「…良かった」

オーガスタスは立ってる俺を見上げて、言う。
「…座って。
大丈夫。
アーシュラスが文句を言うのは、左将軍相手にはどうにもならないから、単なる…」
左将軍がその後を言った。
「八つ当たりだ」
そう言って、左将軍はくすくす笑う。

俺、ちょっと惚けて…椅子を引いて、座る。
二人の間に座って…笑ってる左将軍とオーガスタスを、交互に見る。

オーガスタス、腕組みして、くすくす笑う左将軍を、ちょっとむくれて見てる。
「…面白がってる」
オーガスタスの言葉に、俺、高貴な左将軍を見る。
左将軍、笑いながら口を開く。
「だっ…だって…随分惚れ込まれてるな?
君の為なら、アーシュラスの元に戻るとまで、言われるなんて…」

オーガスタス、俯いて溜息を吐いてる…。
左将軍、まだ笑いながら言う。
「その上…アーシュラスに奪還された後でも、ザハンベクタに
『行って!』って…言ったんだろう?
聞きたかったんだけど、どうしてザハンベクタ?
彼は馬だろう?」

俺、笑ってる左将軍に言う。
「…ザハンベクタは凄く利口な馬だから、言葉が分かるんだよ」
左将軍、いきなり真顔になる。
「なるほど」
整いきった、凄い美男で…しかも雰囲気が…なんか、神様…?みたいな…崇高な感じがする。

外見だけ見てると、近寄り難いんだけど。
オーガスタスと一緒のせいか、なんか…砕けた雰囲気…。

「…で、もう一つ聞きたかったのは…オーガスタスは、言ったんだろう?君に。
あんまりオーガスタスの方が、アーシュラスより良い様子を見せると…。
アーシュラスが嫉妬して、君に凄く執着して、取り戻しに来るって」

俺、俯いてしまった。
「うん…。
それは俺が悪い。
でもさ。
アーシュラスと第二王子の後のオーガスタスって、地獄から天国で…。
演技するの、無理だった。
良すぎて」

途端、左将軍また、くすくすくすっ!って笑って。
オーガスタス、照れたように頬を染めて、俯く。
けど顔上げて。
派手に笑ってる左将軍を、頬が赤いまま睨み、呟く。
「…いい加減、笑い止めよ!
人が悪すぎるぞ、あんた!」
「…これだけ惚れ込まれた理由が、良く解る説明だ…。
君も、男冥利に尽きるよな?」

左将軍にそう言われて、オーガスタス、頬を染めたまま、ふてくれさたようにまた、腕組みした。

俺、ちょっと呆れながら…笑い続ける上官の左将軍と、ふてくされてる部下の筈のオーガスタスを、交互に見つめてしまった。

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