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かっ飛びアレクサンドライト まぜまぜイエロー・ダイヤ オン コース 8 ファントレイユ

かっ飛びアレクサンドライト まぜまぜイエロー・ダイヤ オン コース 8 ファントレイユ 11

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 けど。
気づいたらヤンフェスんとこの応接間のソファで、毛布かけられてて朝…。
ファントレイユ、帰って来なかった?!

つい。
起きて、ぼーーーってしてると。
ヤンフェスが来て。
「傷は?」
って聞かれるから。
「…ほぼ痛まない」
って…言えた。
ヤンフェス、気のいい笑顔で、くすっ。
って笑って。
「良く効く薬草だけど。
暫くは、湿布しないとまた痛むよ。
取り替えようか?」
って聞くから、頷く。

上半身起こして。
衣服はだけて。
打ったところの薬草湿布、張り替えて貰いながら、聞く。
「…ファントレイユ…ギデオンの所に、止まったの?」

ヤンフェス、ちょっと手を止めて俺の事見て。
「…マントレンが言うには…左将軍の任命式の準備をしてるって」
「…ファントレイユが手伝ってるの?」
「…違う。
ファントレイユが左将軍に、任命されたんだ」
「………………え?!
それ、凄い!!!」
「…だから今、ファントレイユに会いになんて出かけて。
途中、アドルフェスに見つかったりすると…。
君、腹いせにもっと酷い目に、あわされかねない」
「…なんで?」
「…アドルフェスは自分かシャッセルが。
任命されると思ってたから」

「………………えーと。
アドルフェスって…ファントレイユのコト、キライ?」
「凄くね。
ギデオンに、気に入られてるから」

「…シャッセルも…左将軍の地位、ファントレイユに取られたら。
アドルフェスみたいに、ファントレイユに腹を立てて…。
俺がアドルフェスに捕まっても、助けてくれない?」
ちょっと不安になってそう聞くと。
ヤンフェス、笑う。
「シャッセルはそんな根性、腐ってない。
君が困ってれば、ちゃんと助けるさ」

俺。
それ聞いて、本当にほっとした。
「…じゃあファントレイユ、当分忙しいんだね…?」
「…任命式は、今日の午後、急遽行われるからね」
「………そう…。
ヤンフェスは?」

ヤンフェス、溜息吐いて言う。
「…俺もマントレンも…一応隊長だから。
隊の兵に、任命式について、色々指示しないと」

「………そう」

けどヤンフェス、顔を上げる。
「任命式の準備で忙しいのは、アドルフェスも同じだ。
今だけ、じっとしてれば。
多分俺達同様、出かけるから。
君に手出ししてる間なんて、無いと思う」
「…うん………」

その時、扉が開いて。
マントレンが…紺色の隊服に金の帯付けて。
飾り緒の付いた剣下げて…正装?
姿で、顔、見せて言う。
「…ヤンフェス。そろそろ出ないと。
ファントレイユは夕べ遅くまで。
今日の午前は、任命式のぎりぎりまで。
色々なお偉方の挨拶回りで…忙殺されてるみたいだ」

「…そうだろうな…。
何せ、身分で言えば、アドルフェスかシャッセル…。
ファントレイユが王子の護衛を、任命された時だって。
かなりの反感買ってたのを、ギデオンが押し切ったろう?」

マントレン、戸口で頷いてる。
「…ギデオンも、根回しで必死。
アドルフェスやシャッセルの一族が、横やり入れて来る前に。
さっさと任命式して、カタつける気だ。
…アドルフェスはさぞや、不機嫌だろうな」

ヤンフェス、肩竦めてる。
「…だがあいつだって、午前中で任命式の準備じゃあ…。
力のある親戚一同にチクって、中止に手を回す、時間も無いだろう?」

そう言って…緑色の、飾り気の無い上着を着たまま、立ち上がる。
「…ヤンフェスは正装、しないの?」
そう聞くと。
ヤンフェス、戸口のマントレンの方へと歩きながら振り向いて、ウィンクする。
「農民出の射手は、こんな服装でも許されるんだ」
マントレン、くすくす笑って。
「腕の確かな射手は少ないから。
いつでもヤンフェスは特別待遇なんだ」
って、横に来るヤンフェス見て言う。

ヤンフェス、優しい笑顔見せて、言う。
「朝食が直、出来るから。
食べて、ゆっくり休んでて。
万が一、ファントレイユが掴まって…こちらに少しでも、戻れるようなら。
ここに顔を出すよう、伝えとくから」

俺、その気遣いが嬉しくて、頷くと。
パタン…と、扉が閉まった。

けど。
良く考えると…アドルフェスって、フライパンで頭、殴られてるんだよね。
きっと式の間中、ずきずき痛んでるんだろうな。
って思わず…笑っちゃった。


でも…その少し後だった。
突然扉が開いて。
二人程の男がズカズカ入って来て。
俺の事、強引に腕を掴んでソファから引き上げ。
口を手で塞がれて、無理矢理…連れ去られちゃったの。

あっと言う間のコトで。
俺、玄関ホールを挟んで、反対側の廊下の…アドルフェスの部屋に連れ込まれ。
紺の飾りの付いた制服着こなして、正装姿のアドルフェスと対面させられた。
「…残念ながら、時間が無いから可愛がってやれないが。
暫くここに、居て貰おう…。
時間を見つけ、ここに戻った時。
ゆっくり嬲ってやるから、楽しみにしてろ」
って言われて。
扉から出て行くアドルフェスの背中、見送った後。

俺をここに連れ込んだ男に引っ立てられて。
扉の奥の、地下へと続く階段、無理矢理引きずり下ろされ。
真っ暗な地下室へ。
閉じ込められた。

正直、あんまり突然で、怖かったけど。
「(せめて朝食、食べた後にして欲しかった)」
って…お腹減ってて、がっくりした。

でも良く考えたら。
朝食作ってくれてる…ヤンフェスの召使いさんかな?
が多分、俺がいない。
って気づいてくれる筈だから。

きっと、マントレンとヤンフェスが、助け出してくれる。
って…自分を、慰めた。
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