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ヨーンの襲撃
ヨーンの襲撃 5
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パタン…。
オーガスタスは扉を閉めると、言った。
「…彼は、婚約者では?」
「どなたの?」
オーガスタスは言われて暫く、マディアンを凝視した。
「…貴方の…婚約者だと、彼から紹介を受けた」
マディアンは言われて顔を、上げる。
胸とお腹の、詰まったような鈍い痛みが引いて行って、爽やかな気分になって。
「ああ…きっとお優しいお方だから、貴方に私が失恋した。
と思い込んで。
貴方がこれ以上私を傷付けないように、そうおっしゃったのでしょう」
言ってしまった後、マディアンははっ!として、口を手で押さえる。
オーガスタスは困惑しきって告げる。
「…どうして貴方が私に、失恋したと思われたんでしょう?」
マディアンはその言葉に、顔を上げると呟く。
「私相手だと…丁寧(ていねい)語なのね」
オーガスタスは顔を下げ
「俺はあんたと違って、育ちが良くない。
…丁寧語を使えば、あんたと同列に、成れるとも思ってない」
そう、静かに告げる。
マディアンは、オーガスタスを見つめた。
「シェダーズ様が…貴方は南領地ノンアクタルの、奴隷の出身だと…。
ギュンター様が貴方は幼少の頃、ご両親を事故でいっぺんに亡くされたとおっしゃったわ」
オーガスタスは俯けた顔を上げる。
「あんたの、想像の出来ない境遇で…。
左将軍が情けをかけ、補佐にしてくれたが、悪い育ちは隠しようが無い」
マディアンが見ていると、オーガスタスは少し決まり悪げに、肩を竦(すく)めた。
「…実際、地を出すと。
口も態度も悪い」
そして、マディアンを温かい鳶(とび)色の瞳で見つめると、低い、けれど確かな声音で告げる。
「あんたのような淑女には、縁の無い生活で…丁寧語を使うくらいしか、接する方法を知らない」
マディアンはそう言って“素”を曝す無防備な…オーガスタスを見た途端、胸が締め付けられた。
きっと自分では想像も付かない程過酷な…体験をいっぱいしてきている。と解って。
オーガスタスはまだ、マディアンを見つめ呟く。
「こんな…立派な近衛隊服を着ていても…脱ぐと傷だらけの汚い体をしてる。
…あんたみたいな上品なお嬢様は…シェダーズのような男が似合いだ」
マディアンはそう告げる彼を、じっ…と見た。
「…過去を…恥じていらっしゃる?
ご自身でその傷を…汚いと本当に、思っていらっしゃるの?」
オーガスタスは少し、困ったように告げる。
「誇る気も無いが…傷も俺の、一部だからな」
そう素っ気無く呟いた彼を、マディアンはもう、大好きになった。
好きに、理屈は無い。
それを聞いた時、意味が解らなかった。
けど今は…もう理屈無しにどうしようもなく、彼の事が好きなんだと知った。
マディアンはそっと、彼に告げる。
「女に泣かれるのが、大嫌いなら…私を嫌いにしてみせて…。
貴方の嫌な面をいっぱい見せて、私に貴方を、大嫌いになるようにして…」
オーガスタスは俯いたまま、ぼそり。と言った。
「そんなのは訳無い。
努力する、必要も無い」
言って、背を向け扉を開ける。
そして振り向き、言った。
「また…来る。
当分、動けないんだろう?」
マディアンは部屋を出て行く長身の…赤い髪の、彼の広い背を見続けた。
どうしてだか、心に深い傷を負った野性の獅子が、愛おしくてたまらず、瞳が潤んだ。
“やっぱり…彼が好き”
自分を、誤魔化す事すら無駄だった………。
オーガスタスは扉を閉めると、言った。
「…彼は、婚約者では?」
「どなたの?」
オーガスタスは言われて暫く、マディアンを凝視した。
「…貴方の…婚約者だと、彼から紹介を受けた」
マディアンは言われて顔を、上げる。
胸とお腹の、詰まったような鈍い痛みが引いて行って、爽やかな気分になって。
「ああ…きっとお優しいお方だから、貴方に私が失恋した。
と思い込んで。
貴方がこれ以上私を傷付けないように、そうおっしゃったのでしょう」
言ってしまった後、マディアンははっ!として、口を手で押さえる。
オーガスタスは困惑しきって告げる。
「…どうして貴方が私に、失恋したと思われたんでしょう?」
マディアンはその言葉に、顔を上げると呟く。
「私相手だと…丁寧(ていねい)語なのね」
オーガスタスは顔を下げ
「俺はあんたと違って、育ちが良くない。
…丁寧語を使えば、あんたと同列に、成れるとも思ってない」
そう、静かに告げる。
マディアンは、オーガスタスを見つめた。
「シェダーズ様が…貴方は南領地ノンアクタルの、奴隷の出身だと…。
ギュンター様が貴方は幼少の頃、ご両親を事故でいっぺんに亡くされたとおっしゃったわ」
オーガスタスは俯けた顔を上げる。
「あんたの、想像の出来ない境遇で…。
左将軍が情けをかけ、補佐にしてくれたが、悪い育ちは隠しようが無い」
マディアンが見ていると、オーガスタスは少し決まり悪げに、肩を竦(すく)めた。
「…実際、地を出すと。
口も態度も悪い」
そして、マディアンを温かい鳶(とび)色の瞳で見つめると、低い、けれど確かな声音で告げる。
「あんたのような淑女には、縁の無い生活で…丁寧語を使うくらいしか、接する方法を知らない」
マディアンはそう言って“素”を曝す無防備な…オーガスタスを見た途端、胸が締め付けられた。
きっと自分では想像も付かない程過酷な…体験をいっぱいしてきている。と解って。
オーガスタスはまだ、マディアンを見つめ呟く。
「こんな…立派な近衛隊服を着ていても…脱ぐと傷だらけの汚い体をしてる。
…あんたみたいな上品なお嬢様は…シェダーズのような男が似合いだ」
マディアンはそう告げる彼を、じっ…と見た。
「…過去を…恥じていらっしゃる?
ご自身でその傷を…汚いと本当に、思っていらっしゃるの?」
オーガスタスは少し、困ったように告げる。
「誇る気も無いが…傷も俺の、一部だからな」
そう素っ気無く呟いた彼を、マディアンはもう、大好きになった。
好きに、理屈は無い。
それを聞いた時、意味が解らなかった。
けど今は…もう理屈無しにどうしようもなく、彼の事が好きなんだと知った。
マディアンはそっと、彼に告げる。
「女に泣かれるのが、大嫌いなら…私を嫌いにしてみせて…。
貴方の嫌な面をいっぱい見せて、私に貴方を、大嫌いになるようにして…」
オーガスタスは俯いたまま、ぼそり。と言った。
「そんなのは訳無い。
努力する、必要も無い」
言って、背を向け扉を開ける。
そして振り向き、言った。
「また…来る。
当分、動けないんだろう?」
マディアンは部屋を出て行く長身の…赤い髪の、彼の広い背を見続けた。
どうしてだか、心に深い傷を負った野性の獅子が、愛おしくてたまらず、瞳が潤んだ。
“やっぱり…彼が好き”
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