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花祭り
花祭り 1
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翌日、午前中にオーガスタスとローフィスが、マディアンの家を訪問した時。
二人は玄関先で、華やかな四人姉妹とその母親の、歓迎を受けた。
武人として真っ直ぐ背を伸ばし、引き締まった表情をしていたオーガスタスは。
両側からエレイスとラロッタに腕を巻き付けられ、室内へと促されて。
その厳しい表情を崩す。
母がオーガスタスの目前にやって来ると、はしゃいで話しかけた。
「夫は早朝、仕事に出かけてしまって!
でも左将軍補佐がどんな役職か。
わたくしどもでは、さっぱり分からなかったので、夫に聞きましたら…。
時には、左将軍の代理をなさるほどの、高位の役職なんだとか…!!!」
その隙に、ローフィスはアンローラに
「マディアン殿は、お部屋ですか?」
と尋ね、オーガスタスをその場に残し、さっさと階段を、上がって行ってしまう。
オーガスタスは横目で階段を上がり始めるローフィスを見つつ、困ったように、母に囁く。
「私に過ぎた大役なので…。
近衛では、厳つい顔をしていないと、年上の重鎮達に舐められるんです」
アンローラは階段下で、階段を上がって行くローフィスの背を見送りながら、叫ぶ。
「あら、そんな長身でしたら!
お顔はきちんと見えませんから。
だらしない表情でも、分かりませんわ?!」
オーガスタスの、右腕に腕を巻き付けてた、ラロッタが叫ぶ。
「お馬鹿さんね!
近衛騎士はみんな、背がお高いのよ!」
エレイスもアンローラに言葉を返す。
「私達には屈んで下さらないと、拝見出来なくても。
近衛騎士の方達には、見えちゃうわよ?!」
二人に言われ、アンローラは肩を竦め、五女のアンリースは、くすくす笑った。
やっと女性達に解放され、オーガスタスが階段を上がり、マディアンの部屋に到着した時。
オーガスタスはローフィスが、寝台の上に居るマディアンの気分を、相変わらずの軽やかな口調で、持ち上げてるのを耳にする。
「そこの街道で、花祭りが開かれていますよ」
マディアンはそれを聞くなり、いっぺんに顔を輝かせる。
「毎年出かけますの!」
言った後、自分の痛む体を思い出し
「けれど今年は…」
と落胆の表情に変える。
それでも自分を見つめてるローフィスに、マディアンは気づき…。
二人はほぼ、同時に。
オーガスタスに振り向く。
オーガスタスは揃ってじっ…と見つめ来る、二人の強い促す視線に曝され、唸(うな)った。
「俺が、抱き上げて運ぼう」
ローフィスは頷き、とたんマディアンは、満開の笑顔を見せた。
オーガスタスはマディアンの、楽しげで美しい笑顔を目にし。
頬を少し染め、顔背けて俯く様を、ローフィスも見たがマディアンも見た。
オーガスタスが馬車の仕度を頼みに行くのに、その場を離れると、マディアンがローフィスにそっと尋ねる。
「…やはり私に、少しは気がおありかしら…」
ローフィスは、にこやかに微笑んだ。
「間違いなくね!」
その言葉でマディアンはいっそう笑顔になって、ローフィスと笑い合った。
オーガスタスが戻って来て、扉を開けると。
楽しげに笑い合う、二人に気づく。
代わって持っていく物の仕度をする為、場を外すローフィスの背を見送り、マディアンを見つめる。
「…あいつといると、楽しそうだ」
マディアンは、顔を上げる。
そう言ったオーガスタスは、左将軍補佐。というより、私的な…。
一人の青年に見え、そして…自信無さげだった。
「…ローフィス様は…人を笑顔にするのが、お得意なのよ。
第一、話題は貴方だわ?」
オーガスタスの、表情が一辺に変わる。
「…何を、言ってました?」
少し、怒ったように言うその言葉を聞いて、マディアンは吹き出した。
「…あの方が私に、何かまずい事をバラしたとか…勘(かん)ぐっていらっしゃるの?」
マディアンに笑われて、オーガスタスは決まり悪げに、頭に手を当て髪を掻(か)く。
「…違ったようだ」
マディアンはつい長身のオーガスタスを見上げ、囁(ささや)く。
「…バラされたら困る事が、お有りなのね…?」
言われてオーガスタスは、無言で横を向く。
マディアンはつい、尋ねてしまった。
「何を言われたら、貴方にとって困った事になるの?」
オーガスタスは俯(うつむ)くと
「貴方に嫌われるようにする。
と約束してるから、その…」
そう言いかけてマディアンを見つめ、ぽつり…と言葉を繋ぐ。
「…実際貴方のような淑女には、どう接して良いかまるで解らず…凄くオタついてしまって。
更に…貴方はとても素敵な女性(ひと)だから、感情が制御出来ず、無様(ぶざま)な様も曝(さら)しそうだ」
が、気づいて顔を上げる。
「ああ…俺が無様だと、貴方は俺に失望するな。
それは…いい事だ」
マディアンはまた、くすくすと笑った。
「私の前では、格好(かっこ)いい男で、いらっしゃりたいの?」
オーガスタスは、困ったように呟く。
「大抵の男は、気に入ったご婦人に、それなりの男。
として、見られたいものでしょう?
俺だってそうだ」
鳶(とび)色の瞳で真っ直ぐ男らしく見つめられ、マディアンの胸が高鳴った。
素っ気無く…素を曝すオーガスタスが、やはり一人のとても好ましい男性。
として目に映り、マディアンはやっぱり、彼に見惚れた。
扉を開け様、ローフィスが囁く。
「俺は、お邪魔だったかな?」
マディアンが途端、くすくすと微笑(わら)い、オーガスタスが唸(うな)る。
「出かけられるんだろう?
もう」
ローフィスは肩竦める。
「二人きりに、してやりたいが、荷物持ちがいないと何かと不便だろう?
お前の両腕は彼女で、塞(ふさ)がってるんだし」
オーガスタスは、その通りだ。
と頷いた。
二人は玄関先で、華やかな四人姉妹とその母親の、歓迎を受けた。
武人として真っ直ぐ背を伸ばし、引き締まった表情をしていたオーガスタスは。
両側からエレイスとラロッタに腕を巻き付けられ、室内へと促されて。
その厳しい表情を崩す。
母がオーガスタスの目前にやって来ると、はしゃいで話しかけた。
「夫は早朝、仕事に出かけてしまって!
でも左将軍補佐がどんな役職か。
わたくしどもでは、さっぱり分からなかったので、夫に聞きましたら…。
時には、左将軍の代理をなさるほどの、高位の役職なんだとか…!!!」
その隙に、ローフィスはアンローラに
「マディアン殿は、お部屋ですか?」
と尋ね、オーガスタスをその場に残し、さっさと階段を、上がって行ってしまう。
オーガスタスは横目で階段を上がり始めるローフィスを見つつ、困ったように、母に囁く。
「私に過ぎた大役なので…。
近衛では、厳つい顔をしていないと、年上の重鎮達に舐められるんです」
アンローラは階段下で、階段を上がって行くローフィスの背を見送りながら、叫ぶ。
「あら、そんな長身でしたら!
お顔はきちんと見えませんから。
だらしない表情でも、分かりませんわ?!」
オーガスタスの、右腕に腕を巻き付けてた、ラロッタが叫ぶ。
「お馬鹿さんね!
近衛騎士はみんな、背がお高いのよ!」
エレイスもアンローラに言葉を返す。
「私達には屈んで下さらないと、拝見出来なくても。
近衛騎士の方達には、見えちゃうわよ?!」
二人に言われ、アンローラは肩を竦め、五女のアンリースは、くすくす笑った。
やっと女性達に解放され、オーガスタスが階段を上がり、マディアンの部屋に到着した時。
オーガスタスはローフィスが、寝台の上に居るマディアンの気分を、相変わらずの軽やかな口調で、持ち上げてるのを耳にする。
「そこの街道で、花祭りが開かれていますよ」
マディアンはそれを聞くなり、いっぺんに顔を輝かせる。
「毎年出かけますの!」
言った後、自分の痛む体を思い出し
「けれど今年は…」
と落胆の表情に変える。
それでも自分を見つめてるローフィスに、マディアンは気づき…。
二人はほぼ、同時に。
オーガスタスに振り向く。
オーガスタスは揃ってじっ…と見つめ来る、二人の強い促す視線に曝され、唸(うな)った。
「俺が、抱き上げて運ぼう」
ローフィスは頷き、とたんマディアンは、満開の笑顔を見せた。
オーガスタスはマディアンの、楽しげで美しい笑顔を目にし。
頬を少し染め、顔背けて俯く様を、ローフィスも見たがマディアンも見た。
オーガスタスが馬車の仕度を頼みに行くのに、その場を離れると、マディアンがローフィスにそっと尋ねる。
「…やはり私に、少しは気がおありかしら…」
ローフィスは、にこやかに微笑んだ。
「間違いなくね!」
その言葉でマディアンはいっそう笑顔になって、ローフィスと笑い合った。
オーガスタスが戻って来て、扉を開けると。
楽しげに笑い合う、二人に気づく。
代わって持っていく物の仕度をする為、場を外すローフィスの背を見送り、マディアンを見つめる。
「…あいつといると、楽しそうだ」
マディアンは、顔を上げる。
そう言ったオーガスタスは、左将軍補佐。というより、私的な…。
一人の青年に見え、そして…自信無さげだった。
「…ローフィス様は…人を笑顔にするのが、お得意なのよ。
第一、話題は貴方だわ?」
オーガスタスの、表情が一辺に変わる。
「…何を、言ってました?」
少し、怒ったように言うその言葉を聞いて、マディアンは吹き出した。
「…あの方が私に、何かまずい事をバラしたとか…勘(かん)ぐっていらっしゃるの?」
マディアンに笑われて、オーガスタスは決まり悪げに、頭に手を当て髪を掻(か)く。
「…違ったようだ」
マディアンはつい長身のオーガスタスを見上げ、囁(ささや)く。
「…バラされたら困る事が、お有りなのね…?」
言われてオーガスタスは、無言で横を向く。
マディアンはつい、尋ねてしまった。
「何を言われたら、貴方にとって困った事になるの?」
オーガスタスは俯(うつむ)くと
「貴方に嫌われるようにする。
と約束してるから、その…」
そう言いかけてマディアンを見つめ、ぽつり…と言葉を繋ぐ。
「…実際貴方のような淑女には、どう接して良いかまるで解らず…凄くオタついてしまって。
更に…貴方はとても素敵な女性(ひと)だから、感情が制御出来ず、無様(ぶざま)な様も曝(さら)しそうだ」
が、気づいて顔を上げる。
「ああ…俺が無様だと、貴方は俺に失望するな。
それは…いい事だ」
マディアンはまた、くすくすと笑った。
「私の前では、格好(かっこ)いい男で、いらっしゃりたいの?」
オーガスタスは、困ったように呟く。
「大抵の男は、気に入ったご婦人に、それなりの男。
として、見られたいものでしょう?
俺だってそうだ」
鳶(とび)色の瞳で真っ直ぐ男らしく見つめられ、マディアンの胸が高鳴った。
素っ気無く…素を曝すオーガスタスが、やはり一人のとても好ましい男性。
として目に映り、マディアンはやっぱり、彼に見惚れた。
扉を開け様、ローフィスが囁く。
「俺は、お邪魔だったかな?」
マディアンが途端、くすくすと微笑(わら)い、オーガスタスが唸(うな)る。
「出かけられるんだろう?
もう」
ローフィスは肩竦める。
「二人きりに、してやりたいが、荷物持ちがいないと何かと不便だろう?
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オーガスタスは、その通りだ。
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