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花祭り
花祭り 2
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結局四人の妹達もついて来て、馬車はぎゅう詰め。
オーガスタスだけは馬に騎乗し、馬車の後を付いてくることになった。
花祭りの街道に着くと、馬車から一斉にはしゃいだ女性達が降りて、代わりにオーガスタスが乗り込み、マディアンを抱き上げる。
彼女はオーガスタスの伸ばす両腕や逞しい肩。
そして彼の綺麗な鼻筋の顔が間近で、つい頬を染める。
危なげなく抱き上げられ、馬車の外へ出ると眩しい太陽に照らされ、一気に…彼の腕に抱き上げられたまま、高い位置に引き上げられ、改めてオーガスタスがとても、長身なんだと感じる。
妹達が振り返って見るから…オーガスタスは、微笑んで告げた。
「先を…行ってくれて構(かま)わない」
そう…親しげな微笑浮かべ告げるオーガスタスは、彼の逞(たくま)しさを忘れる程優しそうで、マディアンは彼に抱き上げられてうきうきした気分になるのを、止められなかった。
その後、妹達はさえずり続け、荷物を持つローフィスの周囲を、小鳥のように纏(まと)わり付く。
「本当に、婚約者の方を愛していらっしゃるの?」
ローフィスは、エレイスとアンローラの二人に、両側から腕を巻き付けられて尋ねられ
「残念ながら」
と大袈裟に答えて、二人の笑いを誘う。
三女ラロッタと、一番下の、そばかすの消えない地味な感じの五女アンリースは、腕組んで、雑踏の中を歩く。
賑やかなその一行は、誰よりも抜きんでて長身の赤毛のオーガスタスと、その腕に抱き上げられた淑女マディアンの美しさで、場の注目を浴びた。
「凄いわ!
みんな、オーガスタス様に振り返って行かれるのね!」
明るい栗毛のふんわりした髪を振って、四女アンローラがはしゃいで告げる。
ローフィスはそれを聞いて、にこやかに笑った。
「背が高いだけで無く、堂として男前ですからね!
教練時代は猛者達ですら、オーガスタスの体格の素晴らしさに。
彼が通ると、揃いも揃って振り向いて行く様は、端で見ていても壮観でしたよ」
マディアンは抱いて運んでくれる、オーガスタスの腕の中でそれを聞いた。
そして、見上げる。
「本当に、整ったお顔をしていらっしゃるものね」
オーガスタスは一つ、吐息吐くと
「…拍子抜けするほど、ゴツく無い。
と、猛者共に言われましたよ」
そう、ぼやく。
マディアンはそれを聞いて、ますますくすくすと笑い続けた。
オーガスタスが、マディアンを抱き直すように腕をずらす様を見。
ローフィスがすかさず横の、屋外に並べられたテーブルと椅子を、視線で指し示す。
「そこで、少し休みましょうか?」
言われてオーガスタスが椅子に寄ると、マディアンを、そっ…と椅子の上に降ろす。
ローフィスは妹達と店の中に入り、カウンターで色々注文を始め、オーガスタスはマディアンの横の椅子に腰掛けた。
マディアンはそっ…と告げる。
「少し、お疲れになられました?」
オーガスタスはそれを聞いて表情を崩し
「重さは平気ですが…腕を動かさず、ずっと同じ状態でいるとね」
そう、快活(かいかつ)に微笑む。
マディアンが、気遣うように囁く。
「痺(しび)れてしまわれました?」
オーガスタスは、爽やかに笑った。
「そう、ならない為に、ローフィスは休憩をくれた」
マディアンが一辺に笑顔になる。
それを見て、オーガスタスは声を落とし…けれど暖かい声音で告げる。
「ローフィスは、大抵相手を笑顔にする。
その為に細かな気配りの出来る男だ」
マディアンは彼の、言いたい事が解った。
「…俺と違って?」
オーガスタスは頷く。
「女性に、いつもウケがいい。
実際…あいつと友達でいるのも、楽しい。
女だけでなく…男や友達にいつも…気配りの出来る、大変有能で優秀な男で…。
俺が女だったら、あいつくらい旦那にしたい男はいない。と思うくらいだ」
マディアンは、オーガスタスを見た。
とても大きな、逞しく男らしい彼が…少し、項垂れて見えた。
「…ギュンター様の事は?どう思われるの?
彼、どこへ行っても女性に取り囲まれているでしょう?」
オーガスタスが、一辺に笑顔になる。
「あいつは昔からそうだから。
第一俺が女だったら、あいつは選ばない」
マディアンはつい、びっくりして聞いた。
「…そうなの?」
オーガスタスは肩竦める。
「そりゃ…床上手(とこじょうず)と評判であの美貌だが…競争相手が多すぎて、マトモに惚れたら悲劇だ」
マディアンはつい、マジマジとオーガスタスを見た。
オーガスタスは見つめられて、決まり悪げにもぞ…。
と身を捩(よじ)る。
「…それだけ体格も素晴らしくて“男の中の男”みたいに男らしくていらしても…ローフィス様の方が、男として優(すぐ)れていらっしゃる。
そう、思っていらして?」
オーガスタスは居心地悪そうに、またもぞ…と身を捩(よじ)り、横を向くと
「…戦いとか乱暴事には…。
他より確かに、俺は優れてると思うが…。
事、ご婦人への気遣(きづか)いは…。
ローフィスには、誰も勝てない」
マディアンはまだ、じっ…とオーガスタスを見つめ、オーガスタスはますます居心地悪そうに、二度、もぞ…と身を捩った。
オーガスタスだけは馬に騎乗し、馬車の後を付いてくることになった。
花祭りの街道に着くと、馬車から一斉にはしゃいだ女性達が降りて、代わりにオーガスタスが乗り込み、マディアンを抱き上げる。
彼女はオーガスタスの伸ばす両腕や逞しい肩。
そして彼の綺麗な鼻筋の顔が間近で、つい頬を染める。
危なげなく抱き上げられ、馬車の外へ出ると眩しい太陽に照らされ、一気に…彼の腕に抱き上げられたまま、高い位置に引き上げられ、改めてオーガスタスがとても、長身なんだと感じる。
妹達が振り返って見るから…オーガスタスは、微笑んで告げた。
「先を…行ってくれて構(かま)わない」
そう…親しげな微笑浮かべ告げるオーガスタスは、彼の逞(たくま)しさを忘れる程優しそうで、マディアンは彼に抱き上げられてうきうきした気分になるのを、止められなかった。
その後、妹達はさえずり続け、荷物を持つローフィスの周囲を、小鳥のように纏(まと)わり付く。
「本当に、婚約者の方を愛していらっしゃるの?」
ローフィスは、エレイスとアンローラの二人に、両側から腕を巻き付けられて尋ねられ
「残念ながら」
と大袈裟に答えて、二人の笑いを誘う。
三女ラロッタと、一番下の、そばかすの消えない地味な感じの五女アンリースは、腕組んで、雑踏の中を歩く。
賑やかなその一行は、誰よりも抜きんでて長身の赤毛のオーガスタスと、その腕に抱き上げられた淑女マディアンの美しさで、場の注目を浴びた。
「凄いわ!
みんな、オーガスタス様に振り返って行かれるのね!」
明るい栗毛のふんわりした髪を振って、四女アンローラがはしゃいで告げる。
ローフィスはそれを聞いて、にこやかに笑った。
「背が高いだけで無く、堂として男前ですからね!
教練時代は猛者達ですら、オーガスタスの体格の素晴らしさに。
彼が通ると、揃いも揃って振り向いて行く様は、端で見ていても壮観でしたよ」
マディアンは抱いて運んでくれる、オーガスタスの腕の中でそれを聞いた。
そして、見上げる。
「本当に、整ったお顔をしていらっしゃるものね」
オーガスタスは一つ、吐息吐くと
「…拍子抜けするほど、ゴツく無い。
と、猛者共に言われましたよ」
そう、ぼやく。
マディアンはそれを聞いて、ますますくすくすと笑い続けた。
オーガスタスが、マディアンを抱き直すように腕をずらす様を見。
ローフィスがすかさず横の、屋外に並べられたテーブルと椅子を、視線で指し示す。
「そこで、少し休みましょうか?」
言われてオーガスタスが椅子に寄ると、マディアンを、そっ…と椅子の上に降ろす。
ローフィスは妹達と店の中に入り、カウンターで色々注文を始め、オーガスタスはマディアンの横の椅子に腰掛けた。
マディアンはそっ…と告げる。
「少し、お疲れになられました?」
オーガスタスはそれを聞いて表情を崩し
「重さは平気ですが…腕を動かさず、ずっと同じ状態でいるとね」
そう、快活(かいかつ)に微笑む。
マディアンが、気遣うように囁く。
「痺(しび)れてしまわれました?」
オーガスタスは、爽やかに笑った。
「そう、ならない為に、ローフィスは休憩をくれた」
マディアンが一辺に笑顔になる。
それを見て、オーガスタスは声を落とし…けれど暖かい声音で告げる。
「ローフィスは、大抵相手を笑顔にする。
その為に細かな気配りの出来る男だ」
マディアンは彼の、言いたい事が解った。
「…俺と違って?」
オーガスタスは頷く。
「女性に、いつもウケがいい。
実際…あいつと友達でいるのも、楽しい。
女だけでなく…男や友達にいつも…気配りの出来る、大変有能で優秀な男で…。
俺が女だったら、あいつくらい旦那にしたい男はいない。と思うくらいだ」
マディアンは、オーガスタスを見た。
とても大きな、逞しく男らしい彼が…少し、項垂れて見えた。
「…ギュンター様の事は?どう思われるの?
彼、どこへ行っても女性に取り囲まれているでしょう?」
オーガスタスが、一辺に笑顔になる。
「あいつは昔からそうだから。
第一俺が女だったら、あいつは選ばない」
マディアンはつい、びっくりして聞いた。
「…そうなの?」
オーガスタスは肩竦める。
「そりゃ…床上手(とこじょうず)と評判であの美貌だが…競争相手が多すぎて、マトモに惚れたら悲劇だ」
マディアンはつい、マジマジとオーガスタスを見た。
オーガスタスは見つめられて、決まり悪げにもぞ…。
と身を捩(よじ)る。
「…それだけ体格も素晴らしくて“男の中の男”みたいに男らしくていらしても…ローフィス様の方が、男として優(すぐ)れていらっしゃる。
そう、思っていらして?」
オーガスタスは居心地悪そうに、またもぞ…と身を捩(よじ)り、横を向くと
「…戦いとか乱暴事には…。
他より確かに、俺は優れてると思うが…。
事、ご婦人への気遣(きづか)いは…。
ローフィスには、誰も勝てない」
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