若き騎士達の波乱に満ちた日常

あーす。

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偶然ローフィスと出会うアイリス

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 祖母と共に、母も妹達も一緒に夜会に出かけていて、ニーシャも既に屋敷を出た後だったので、アイリスは叔父のエルベスと二人きりの食卓の席に着いた。

けれどエルベスには途中使者が訪れ、別室で話し込んでいたから、アイリスは早々に食事を切り上げ、大公家より退出して『教練キャゼ』に向け、馬を駆けさせる。

けれど摘まむ程度の夕食だったので、だんだん空腹を感じ始め、辺りを見回した。

後少し丘を登れば『教練キャゼ』の門が見える、その手前に酒場を見つけ、ふと馬の首を向けて酒場の馬留うまどめに手綱を巻き付けた。

「確かここは、オーガスタスら四年達がたむろってる酒場だから、安全なハズ」
アイリスは鼻歌交じりで、酒場へ歩を運ぶ。
扉を開けて直ぐ右のテーブルに、『教練キャゼ』に戻った後尋ねていこうと思ってたローフィスの姿を見つけ、目を見開いた。

「(…ここに寄らなきゃ、行き違いになるとこだった…)」

アイリスは、ローフィスをじっ…と見る。
気づいたローフィスがこちらに振り向いた時。
にっこり、笑った。

手前の椅子の美女ら四人が、一斉に振り向く。
「(お邪魔だったかな…?)」
アイリスは一瞬、身が引けて別のテーブルへ行こうか。
と思った瞬間、ローフィスが声を発する。
「いいから横に座れ」

アイリスは頷くと、振り向いた美女らに会釈し、ローフィスの横に腰掛けた。
「『教練キャゼ』に戻った後、貴方の部屋に出向くつもりでした」
そう言うと、ローフィスは即座に言葉を返す。
「ナンの用で?」
「マレー」

ローフィスは一瞬言葉を飲み込み
「聞こうか」
と低い声で告げた。

アイリスは今日の出来事を、かいつまんで話す。
「…そんな事情で…明日、マレーが実家に帰れる算段を付けたんですが…ディングレー殿の了承も必要ですし」

ローフィスはそれを聞いた途端、両腕をテーブルに乗せ、乗り出してた体を捻り、アイリスの耳元で小声で話す。
「お忍びで、ここに来てる。
ここでの呼び名は“ディッセン”」

言って、顔を離しアイリスの表情を覗う。
言葉を足さないと分からないかな?
と見つめていると、アイリスは真顔で頷く。
「…つまり今、ここに居ないって事は…」
と言うと、向かいの美女らに見られない、テーブル下でこっそり、人差し指を上に向け、指さす。
ローフィスはおもむろに頷くと、説明を加えた。
「俺の前に座ってる四人のお嬢さんは、順番待ちだ」

また、言った後ローフィスは
「(言葉、通じてるかな?)」
とアイリスを見る。
アイリスは頷くと
「…つまり当分、話は出来ないと」
とため息吐く。

ローフィスはアイリスの察しの良さににっこり微笑むと、囁いた。
「俺に言えば、ヤツにも通じる」

アイリスは頷くと、『教練キャゼ』のローフィスの私室で言うはずだった言葉を言った。

「…明日、邸宅と領地の引き渡しを告げに、立会人が出向きます。
そのタイミングでマレーがその場に居る必要がある。
予定より三日早いので。
多分、義母と自称義母の“弟”は焦るはず。
義母に盛られた薬は抜けていますから。
マレーの父親も、かなり正気に戻ってるはず」

ローフィスは頷く。
「つまりマレーに、その説明をしとかなきゃならないな」
アイリスは頷く。
「その後、義母らが逃げ出す間を与えず、アドラフレン殿の部下らが“詐欺”容疑で、義母と“弟”の逮捕に踏み込みますから…」

ローフィスは頷いて
「何点鐘の予定だ?」
と尋ねた。
「全ての段取りが出来れば朝、大公邸から早馬が私の元へ、知らせに来ます」
アイリスの言葉に、ローフィスは微笑む。
「じゃその後、お前からこっちに知らせてくれるんだな?」
「ディングレー殿の召使いに、伝言入れるつもりでした」
ローフィスは、アイリスが陰謀に慣れてるのに舌を巻き、つぶやく。
「それが確実だな」
「ですから、ディングレー殿の私室に貴方に出向いて頂こうと」

ローフィスは頷く。
「…で、なんで俺がここに居ると分かった?」
アイリスはローフィスの、粋で爽やかな顔をじっ…と見た後、ぼそりと言う。
「大公邸での夕飯が少なくて。
ここでのお勧め料理って、知ってます?」
ローフィスはまだ手を付けてない料理の鉢を、指を添えてアイリスの方へ押し出す。
「まず、これだ。
カボチャのクリーム煮」

言った途端、アイリスはテーブルの上のスプーンを取り上げると、口に掻き込み始める。
「…足りないな。
親父!
“肉たっぷりシチュー”と特製パイも頼む!」

アイリスはローフィスに感謝の会釈をしつつも、料理を口に運ぶ手を止めなかった。


ディングレーはローフィスに貰った“女を孕ませない避妊薬”のせいで、いつもの…がっつき具合が軽減してるコトに気づく。
相手の女がロマンチックに抱きついて来るせいか。
こちらもなぜか、甘い雰囲気で抱きしめていたりする。

けれど抱き合ったまま挿入し始めると。
つい…いつも以上にガンガン突いてしまった。

けれど相手の女は、凄く甘ったるい声で
「いいわ…!
凄い、最高!!!」
と叫ぶので。
一人が終わり、二人目が入れ替わるように部屋に入ってきた後も、同じ事を繰り返した。

一人目はおっかなびっくりだったけど。
二人目の時は、自分も天国に行った。

なので二人目が部屋を出た後。
つい三人目を、喜びの瞳で出迎えた。

が、扉が開いて姿を見せた、その相手は…。

「…ローフィス?
…まさか…とうとう俺にされる覚悟が、出来たのか?」

ローフィスは一気に眉をしかめ、怒鳴る。
「…な訳、あるか!!!
アイリスがマレーが実家に帰れる算段付けた。
今日…もう二度と、領地の農夫らと楽しかった時間は過ごせないと泣かれて。
大公邸まで、急ぎ駆けたそうだ」

ディングレーはお花畑の気分が、一気に冷えるのを感じた。
マレーは必死に笑顔をいつも作っていたけど。
心の底には、大きな…誰にもどうにも出来ない悲しみがあって。
気遣おうにも、誰にもそれに触れられないよう、身を引いてしまう。

まるで剥き出しの、今も機会あらば激しく痛む傷口に、触れられたくないように。

不器用な自分は…触れずにいるのが精一杯。
出来たのは…出来るだけ多くの人が居て、楽しい場所に連れ出すコトぐらい。
ロクに慰める事すら、出来なかった。

項垂れる、寝台で裸の上半身剥き出し、下は布団で隠してるディングレーの横へ、ローフィスは腰掛けると囁く。
「ともかく明日。
マレーを実家に帰す。
俺も行くが、お前が付き添うかどうかを聞きたかった」
「…当然、付き添う」

ローフィスは頷くと、言葉を足した。
「アイリスの召使いが、大公邸から連絡が来次第、お前の召使いに連絡入れるそうだ。
俺はこの後、お前の部屋に泊めて貰う」
ディングレーは頷いた後、顔を上げる。
立ち上がり扉に向かうローフィスを見上げ、尋ねる。
「もう、『教練キャゼ』に戻るか?」

ディングレーが今にも寝台から出そうな様子を見せるので、ローフィスは慌てて言った。
「今お前を帰したら、残り四人のお嬢さん方に、俺は八つ裂きにされる。
先の二人に“凄くヨかった”と聞いてるから」

ディングレーは目を見開く。
「…本当に、後四人も上がって来る気か?!」

ローフィスは『当然だろう?』と頷く。

ディングレーは再び頭が、お花畑に彩られ始め、出て行くローフィスの後、直ぐ顔を出す美女を、思わず両腕広げて迎え入れた。
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