若き騎士達の波乱に満ちた日常

あーす。

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ギュンターとアイリス、それぞれの戦い方

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 アイリスとギュンターは、四年宿舎の階段を駆け上がる。
扉を開け様、ギュンターはだだっ広い食堂を、素早く見回す。
四年の姿はそこに無く、全員が講義中だと知った。

アイリスはさっさと中へと駆け込み、広い食堂の横階段を目指す。
二階、大貴族宿舎へと続く階段を、一気に駆け上がって行く。

上がりきった入り口を入って直ぐ、少し広い、豪華な大貴族食堂に出る。
が、食堂を囲むように、扉はずらりと並んでいた。
アイリスは首を振って、一番豪華な部屋へと続く、扉を探した。

ギュンターは直ぐ横に追いついて、囁く。
「どの部屋か、解るか?」

が、一番奥の扉から。
どすん!

何かにぶつかる、激しい音がした。

アイリスが叫ぼうとした時、もうギュンターは音のした扉に駆け寄り、ドアノブを掴み開けていた。

あまりの素早さに、アイリスは口を開けたまま呆ける。

開けた扉から、四年猛者一人が、床に突っ伏すのが伺い見え、ディングレーはその男を蹴り倒した直後、別のもう一人に顔を殴られていた。

がっつつつ!

黒髪が散り、ディングレーが顔を戻した時。
口の端から血を滴らせ、頬を紫に腫らしてる。

アイリスが叫ぶ間も無くギュンターは室内へ突進して行く。
再び、ディングレーを殴ろうとした猛者の背後に。
ギュンターは一瞬で詰め寄ると、肘を猛者の背に、思い切り喰らわす。

がっっっつん!

自分へ向かい、ふっ飛んで来るダランドステを。
ディングレーは咄嗟とっさ、横にけた。
ダランドステは必死に床に倒れ込むのをこらえ、けれど背が激しく痛むのか。
俯いたまま顔を上げない。
ディングレーが事後の確認を終え、助っ人に入ったのは誰なのかと、振り向いた時。
ダランドステのいた場所に立つ姿を見、呆気あっけに取られつぶやく。

「…………………ギュンター」

ギュンターはチラ…!と視線を寝台に走らせ、アイリスに視線を送って、縛られてるアスランの方へと促す。

アイリスは合図を受け取り、直ぐ寝台に駆け上って、アスランの戒めを解き始めた。

ディングレーは、蹌踉よろめめきながらも身を起こす、配下の男に気づくと、直ぐ駆け寄って蹴り上げる。

がっつつ!
「糞っ!」

立ち上がりかけた所を、腹を下から蹴り上げられて。
配下の男は仰け反って、背から床へ。
もんどり打って、倒れ込んだ。

どぉんっ!!!

が、ディングレーは、実兄グーデンが。
ギュンターをじっと、見てるのに気づく。

「…お前が…三年の編入生か?」

そうつぶやく男に、ギュンターは視線を向ける。
豪華な濃い紫の衣服に身を包む王族の男が、青白い顔で、ひ弱で。
配下の猛者に比べ、はるかに小柄で貧弱なのに、呆れきる。

ついディングレーの横に寄って、顔を近づけ囁く。
「…奴がもしかして、あんたの…にーちゃんか?」

ディングレーが顎をしゃくる。
ギュンターは背後から襲いかかるダランドステに気づくと、一瞬で振り向き身を屈めて後ろにふっ飛び、再び右肘を、襲い来るダランドステの開いた胸へ、叩き込んだ。

がっっっっっ!
「ぐっ!」

当たった肘の勢いで、痛む胸を押さえ。
ダランドステは後ろに吹っ飛ぶ途中、足を絡ませ、今度は背から床に倒れ込んだ。

どたんっ!

ディングレーはその素早い反撃に呆れ、つぶやく。
「…喧嘩慣れしてるな」
ギュンターが、頷く。
「ガタイのデカい奴には、効く」

肘を引く、その美貌の編入生を。
グーデンが、眉をひそめ見つめる。
「…お前は可愛がってないのか?
その男を」

グーデンにそう尋ねられ、ディングレーは思いっきり、眉を寄せた。

「…幾ら顔が綺麗だろうが…。
こんな乱暴者に、欲情する馬鹿がどこにいる!
あんただって、顔だけ見れば随分ヤワっちいぞ!」

が、グーデンは見下す表情で、片肩を寄せた。
「…洗練されているんだ。
お前のように男らしい。と言い訳ながら、いかにも臭そうじゃない」

寝台に飛び乗るアイリスは、転がるアスランを抱き起こす。
アスランは泣いていて、震っていた。
アイリスは必死でその縄を解く。
「待って!もう…少しだから…!」

が隣部屋からもう2人。
今度は、三年猛者が顔を出す。

「…おいおい…。
ボスはああ言ったが、どう見たって…。
遊びたいのは、あいつアイリスだよな?」
「おあつらえ向きに、わざわざご自分で、寝台にお乗り遊ばしてるぜ………」

ディングレーがそれを聞いて、かっ!と瞳を見開く。
アイリス目がけ、寄って行く三年猛者2人の前に咄嗟とっさ駆け寄り、立ち塞がって怒鳴る。

「俺の前で奴を手込めにするには、勇気が要るぞ!!!」

その激しい怒号に、2人は一瞬でぎょっとして、グーデンに振り向く。

グーデンは面倒臭げに怒鳴る。
「いいから、殴りかかれ!」

が。
三年2人は同学年で最強のディングレーの、強さを思い知ってたし、更に悪い事に、ディングレーは本気で怒ってた。

その、野生の狼を彷彿とさせる凄まじい迫力に。
2人は竦み上がる。

アイリスはグーデンが、ギュンターに目を付け始め。
一方ギュンターの方は、グーデンを敵として相対し始めるのを見、焦った。

「ギュンター!
こっちを助けて!」

その可憐なアイリスの叫び声に、ギュンターはグーデンから一瞬で目を逸らし、駆け寄る。

アイリスの真横に、野生の鷹でもこれ程軽やかだろうか。
と思う程俊敏に寄る、美貌の編入生に。
思わずアイリスは驚愕を隠しながら、務めて弱々しく、ギュンターに縋り付く。

「この…結び目が。
どうしても取れなくて」

ギュンターは唸る。
「短刀を常備して無いのか?」
そう言うと、ブーツの横から小刀を出し、縄目に入れた。

アイリスはその場をギュンターに譲り、すっと立ち上がって寝台を降ると、寄り来るグーデンの前に立ち、にっこりと笑う。

「お初にお目にかかります。
聞けば「左の王家」のグーデン殿。
王族のお方とは「右の王家」のお方同様、幾度もお目にかかってます。
が、貴方とは初対面ですね?」

ディングレーはつい…その落ち着き払った変声期前の声に驚き、アイリスへと顔を振った。
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