アースルーリンドの騎士達 妖女ゼフィスの陰謀

あーす。

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2 妖女ゼフィスとの出会い

つれなく袖にされたギュンターに、復讐を誓うゼフィス

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 ゼフィスは幾度も、金髪の青年に視線を送る。
が、周囲の女性達も揃って皆、彼を見つめていた。

快活な着飾った若い女性が一人、美貌の金髪の青年に話しかけるのをきっかけに。
次々と女性達が、彼の周囲を取り囲み始める。

ゼフィスはその邪魔な女達を、睨んだ。

が、もれ聞く内容で、彼の名が“ギュンター”だと分かった。
四度目。
視線を送ってようやく、ギュンターが自分に視線を向けた時。
ゼフィスは歓喜で身が震った。

滅多に無いことだけど…。
彼の紫の瞳に見つめられただけで…股間が濡れる感触がした。
もうそれだけで、彼とのめくるめく情事を連想し、欲情する。

彼も、それを察したのか。
真っ直ぐ、ゼフィスを見つめ返した。

取り巻く女性達は、あからさまな色気を発するゼフィスに、嫌悪の表情で振り向く。
が、ギュンターが真っ直ぐ、ゼフィスだけを見つめてるのを感じ、すごすごと彼の周囲から、引いていく。

自分達では…色香の塊、ゼフィスに敵わないと察して。

ゼフィスは、最高な気分で内心高笑った。
「(…彼、あの美麗な顔の割に、相当な好き物だわ…)」
もってこいね。

ゼフィスはそんな風に思って、ギュンターの前に進み出て、誘いをかけた。
「タニア嬢は大変お美しいけれど…。
あなたのお相手には、不足ではございません?
私、この後別室へ行こうと思っておりますの。
ご一緒に、少し横になられません事?」

最初にギュンターに話しかけ、まだ隣にいた女性は、ゼフィスのあかさらまな情事の誘いに、眉をひそめた。

けれどギュンターが、まだそう言ったゼフィスを見ていたので…。
彼の隣から、一歩後ろに引く。

ゼフィスは自分よりも身分高い令嬢達を、全員後ろに引かせ。
場を支配する女王になったような気分で、高まる気持ちを止められなかった。

絶対、断らない。
そう確信したのに。

ギュンターは言った。
「…悪いが、間に合ってる。
寝台のテク持ちは他にもっといるから、そっちを当たってくれると嬉しい。
俺は…ただ遊ぶ相手でも楽しむだけで無く、情を交わせる相手を望んでるから…。
あんたに、俺は不向きだ」

ゼフィスは一瞬、心臓の鼓動が、止まった気がした。

信じられず、背の高いギュンターの、その美貌を凝視する。

が、すまし返ったその美貌は崩れず、彼の顔の上には何の表情も現れてはいない。

次に彼は、視線をチラと斜め横に送った後。
親密に見える表情を投げかけて、こう囁く。

「…どうしても今必要なら、よければ彼を、紹介しようか?」

斜め横を丁度通りかかった紳士に、再びチラと視線を投げかけながら、
まるで促すように。

がんっ!
ゼフィスは頭を、横から殴られた気がした。

通りかかった紳士は、チビでデブで容姿は今一だけど、確かに床上手で女にモテる侯爵。
けれど…かろうじて王宮舞踏会に、出席できる程度の…。
大した影響力も無く、大金持ちでも無い身分の低い(王宮舞踏会では)、無害な男…!

「(…あんな男を釣り上げたって、ロスフォール大公に鼻で笑われるだけだわ…!)

ぱち…。
一歩、後ろに引いた女性が。
ギュンターの言葉に怯むゼフィスを目にした途端、拍手を始め…。
ゼフィスの登場で、一斉に後ろに下がった女性達もが、一斉に拍手を始める。

ぱちぱちぱちぱち…。

女王の筈が、一転敗者…!

ゼフィスはいたたまれず、ドレスを翻してその場を去るのが精一杯。
柱の陰に逃げ込むと、今起こった事が信じられずに思い返す。

「(…絶対!モノに出来たと思ったのに、どうして…!)」

背後で熟年のご婦人が囁く。
「色香がどれほどあろうが、小娘ね。
どんな事があっても、喰い下がってベットに引き込むべきよ。
そしたら…彼は、あなたのいいなりに出来たでしょうね。
勿論…寝室でそれだけの、寝技に自信があれば…のお話ですけど」

振り向くと、好色と噂の公爵夫人。
あちこちダブつく、贅肉だらけの体を豪華なドレスで包み込み。
金持ちを、ひけらかすように宝石で全身を飾り立て。
垂れた、顎と頬。
ただれた青い目を向けられ…。

ゼフィスは悔しさでその場を、駆け出した。

「(あんな…金で若い男を買うような女にまで、侮辱されるなんて…!
あんたなんて、金が無けりゃどんな男だって、手に入りやしないわよ!!!)」

「…もう、帰るのか?
念願の王宮舞踏会だろう?」
下級貴族の…気心の知れたゼフィスの愛人の一人。
ロッドナットが声をかけて来た。

ゼフィスは、ロスフォール大公と繋がりの出来る、以前からの古馴染みの彼の胸に突っ伏すと、肩を震わせ、泣き始めた。
「おいおい…!
ここは場所が悪い。
馬車へ行こう」

馬車の中でさんざ、泣いて…。
どれ程悔しく、酷い侮辱を受けたかを、ロッドナットにブチまけた。

「王宮が無理なら、辺境があるぞ?
確かに僻地だが…。
銀髪の、影の一族の若き頭領が、見目のいい男女を探してる。
いい相手はいないかと聞かれ、困ってる。
確かに…とんでもなくへんぴな場所だが…。
頭領を口説き落とせば、最高の暗殺軍団を手に入れられる」

「…どんな男でも殺せる…?」
「当たり前だ。銀髪の一族だぞ?
数こそ少なく、王家にはなれなかったが…。
王家に匹敵する、強者揃い。
揃って誰もが、銀髪の一族の強さには敬意を払う。
王族達ですらも」

「…殺せるのね………」

自宅に帰り、ロスフォール大公の使者が、舞踏会の首尾を聞きに来た時。
銀髪の一族の話をした。

すると使者は
「大公様に、お目通りできますよう、手配します」
そう言って、ゼフィスを馬車へと導いた。

その夜、滅多に無い大公との会見に、ゼフィスは銀髪の一族の影響力を、思い知った。

金髪に近い栗毛の若き大公は、品良く、感じ良く見える。
が、話し始めると狡猾で計算高く、青い瞳は常に獲物を狙う、鷹のような鋭い目をしてる。
と毎度気づく。

「…頭領を本当に、垂らし込めるのか?」
「…ともかく、やってみるわ」
「…我々のいいなりに出来たら…お前に領地をやり、伯爵夫人の地位を約束する。
…垂らし込むだけじゃ、ダメだ。
こちらの要望道理に動かねば、意味が無い」

ゼフィスはギュンターに冷たい態度を取られた後だったので、素っ気無く言った。
「やるだけやるわ」

けれど大公はその時、そんな返答でも何も言わなかった。
普段ならたっぷり浴びせかける、嫌味も、皮肉も。
ゼフィスの目の中に、ギュンターへの復讐の炎を見たせいか。

ゼフィスは気づくとも無く、決意していた。
銀髪の一族の力を使い…ギュンターに復讐を果たす。
そんな、決意を。

「いいだろう…。
明日、発て。
支度はこちらでする」

ゼフィスは頷いて…くたびれ果てた体を再び、帰路に向かう馬車に、押し込んだ。
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