アースルーリンドの騎士達 妖女ゼフィスの陰謀

あーす。

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2 妖女ゼフィスとの出会い

王宮舞踏会後の波紋

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 翌日、ギュンターは近衛一般宿舎の自室で。
向かいの部屋のディンダーデンが扉を開け、ズカズカと部屋に入って来るのを見た。



見慣れた青い瞳の流し目の、ディンダーデンの美麗な顔を眺めると。
開口一番、ディンダーデンは言った。

「…お前、ララッツを、蹴ったって?」

ギュンターは、一瞬言葉を詰まらせる。
「…蹴ったのはフォルデモルドの筈だ」
「フォルデモルドは二度も蹴られたと言ってるそうだ」

ディンダーデンはそう言って、長身で頑健な広い肩幅の迫力有る体軀を、ソファに沈め…。
笑ってる。

「良く、あんな堅苦しくて窮屈で、退屈な王宮舞踏会なんて、出向くな。
と、思ったが………」
そう言って、くっくっくっ…と、肩揺らして笑う。

ギュンターは、呆れた。
「あんたぐらいいい家柄なら…。
出るのは当然なんだろう?」

「ふざけるな。
だが、行儀を知らないお前と一緒だったら…。
退屈しないで済むみたいだな。
御大オーガスタスが、さぞ頭抱えて、困ってたんじゃ無いのか?」

そう言ってまた、愉快そうに笑ってる。

ギュンターが、とうとうムッとして言い返す。

「…俺を笑いに、ここに来たのか?」

ディンダーデンはまだ、笑いながら返答する。
「いや?
ちょい朝、食堂に顔出したら。
もうそこら中、みんな昨日の舞踏会の噂してて。
お前ヘタしたら、一番厳しい謹慎処分を喰らうだろうと、予測してたから。
顔見に来た」

「……………俺がしたのは。
フォルデモルドが「右の王家」の御姫様の腕、乱暴に掴んでたから。
助け出しただけなのに?」
「けどお前、その姫と三曲踊ったって?
傑作だったのは、二曲だったら厳罰は免れたかも。
って予測だ」

「………………なんで、そっちだ?」
「ノルンディルが、「右の王家」の御姫様をずっと狙ってる。
婿の第一候補が、左将軍派のディングレーだそうで。
ずっとノルンディルは、後回しにされて。
…相手が王族じゃ、無理も無いが。
だがノルンディルからしたら、ディングレーは年下だわ、敵対勢力の左将軍派だわ。
なのに王族で自分より身分高く、周囲にやたら、持ち上げられてるわで。
…ノルンディルはディングレーを、最悪に嫌ってる。
なのにお前なんて新兵まで出しゃばって。
相当、アタマに来てる。
湯気吹いてるんじゃ無いか?」

そこまで言うと、ディンダーデンは湯気吹くノルンディルを想像したのか。
更に肩を揺らし、笑いながら言葉を続けた。

「それで…舞踏会でサドのノルンディルは、待たされてる腹立ちも込めて。
フォルデモルドなんて作法もロクに知らない、バカをわざわざ差し向けたのに。
お前が阻むし。
その上お前、タニアに惚れられて三曲も踊ったから…。
ノルンディルは、憤死寸前だそうだ」

そこでまた。
憤死寸前のノルンディルを想像したのか。
ディンダーデンは、くっくっくっ…。
と、笑い倒す。

「朝っぱらから、楽しそうでいいな。
俺は訓練に行かないと」

そう言って、剣を持ち部屋を出ようとした矢先。
扉が開いて、年上の教官が怒鳴りつける。

「新兵、ギュンター!
貴様は暫く、処罰が決まるまで自室謹慎だ!!!
外出は控えろ!!!」

ばん!!!

言うだけ言って扉が閉まって。

ギュンターは呆けたまま、椅子に腰を沈める。

ディンダーデンの、心底愉快そうな、くっくっくっ…と言う笑い声だけが。
暫く室内に響いていた。

暫く後。
ディングレーが扉を開ける。



「…なんでみんな、ノックしないかな」
ギュンターは、ぼやくが。
ディングレーはさっさと部屋に入って、まだソファに座るディンダーデンの、向かいにどかっ!と腰掛ける。

「ローフィスが、呼び出された」
呆然とそう告げるディングレーに、斜め横の椅子にかけてたギュンターは、囁く。
「…あんた、ついてなくていいのか?」
「…俺より睨みの利く、ディアヴォロス(左将軍)とオーガスタスが付いてる」
「…で、お役御免で…ふてくされて、ここに寄ったのか?」

ディンダーデンが、にやり。と笑ってギュンターに顔を向ける。
「お前の、見張りだ。
違うか?」

ディングレーは心から不本意そうに、頷いた。
「違わない。
お前が更なる無茶、しないよう。
ここに押し止めとけと。
オーガスタスに言われた」

ディンダーデンが、またくっくっくっ…と笑い、肩を揺らす。

「…楽しそうで、いいな」
ディングレーの率直な感想に、ディンダーデンは笑いながら頷く。
「ララッツを蹴ったの、実はギュンターなんだろう?」

ディングレーはため息吐きながら、笑ってるディンダーデンに告げる。
「そっちは伏せといて、公(おおやけ)ではローフィスが蹴った事になってる。
…普段から虚言だらけのフォルデモルドが“蹴った”と言い張ったところで。
誰も相手にしないから。
公式にギュンターは多分、処罰を受けない。
だが利口で発言力のある、ララッツが“蹴られた”と言えば別。
問題視される」

「…大丈夫そうか?ローフィス…」

ギュンターの疑問に、ディングレーは額に手を付け、呻く。
「俺に『殴れ!』と、怒鳴ってるしな…」

ディンダーデンはそれを聞いて、ソファから身を乗り出して問う。

「…言われたお前は証人だろう?
なのに呼び出されないのか?」

ディングレーはまだ、ため息交じりに呟く。
「オーガスタスに依頼した、ディアヴォロスからの指令を受けて、ローフィスは急いでいたのに。
どきそうに無いから、ローフィスは思わずそう怒鳴ったと。
ディアヴォロスは、奴らに突きつけるそうだ。
『王家』の急使を阻むのは、厳禁だから」

それを聞いたディンダーデンは、思わず呟く。
「…利口だな。
ララッツも隊長。
ローフィスも隊長。
位は同じだから、言い分の正しい方が、通る」

ディングレーが、その言葉に頷く。

ギュンターはそれを聞いて、ぼそり…と声を発した。
「もし…蹴ったのが、俺なら?」

ディングレーとディンダーデンが、ほぼ同時に振り向き
「大問題だ」
と声が揃って。

言った後、二人は互いの顔を見合わせた。

「…つまり俺は…状況が、まるで読めない馬鹿?」

ギュンターの、ちょっとしょげたセリフに、ディングレーが直ぐ、言い返す。
「あの場合、蹴って正解だろう?
足止めされて、フォルデモルドに追いつかれてたら。
大乱闘だ。
俺は大好きだが。
事後処理で、オーガスタスとディアヴォロスがアタマ抱える」

ディンダーデンも、にやついて言う。
「お前はバカでいい。
一緒に居て退屈しなくて楽しい」

ギュンターは、思い切り顔を下げたまま、頷き倒す。

「俺と同類で俺より、ちょっとだけ利口なあんたらに。
聞いた俺が馬鹿だった」

ギュンターが顔を上げると。
ディングレーは憮然とした表情で。
けど、頷き。
ディンダーデンはにこにこして、頷いていた。
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