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7 逆転し始める優位
西の聖地で父の愛を知るラデューク
しおりを挟む目覚めた後、案内を囁く頭の中の声に導かれ、開いている扉の中へと進み行く。
大きな窓から陽の差し込む、白い壁の優美な部屋で、窓の近くには白いレースの天蓋付き寝台。
ラデュークはそこに、安らかな寝息を立てる美しい母の寝姿を見つけ、ほっと安堵の吐息を漏らした。
背の高い…光纏った美しい神聖騎士が戸口に現れ、囁く。
「尋ね人が来ている。
客間へどうぞ」
彼はにっこり笑うと、ラデュークの横に来る。
一瞬で、景色が変わり、ラデュークは訪問したのは誰かと。
考える間もなく、周囲の景色は客間へと変わる。
神聖騎士の美青年は、にっこり笑うと。
かき消すように、その姿をその場から消し去った。
「……(噂には聞いていた…。
彼らは結界張られた聖地では、力が使えると…。
けど実体験してみると…驚くばかりだ)」
ラデュークが顔を上げると。
そこには、アドラフレンが微笑んで、立っていた。
「…アドラフレン…殿」
「やあ。
口を利くのは初めてだっけ?」
ラデュークは頷く。
「ディアヴォロスに言われてね。
今彼、南領地ノンアクタルで暗躍してる、人さらい集団の。
行方とアジトを追うのに忙しくて」
「……………………もしかして、アデスタン…?
…奴らはしたたかで、厄介だ」
「…ともかく、かけて。
君に、話したいことがある」
ラデュークは言われるまま、腰掛ける。
この“聖地”に光が満ちてるせいか…。
体がじんわり温かく…不思議と、素直に成れた。
「…君の父君、ラダデュークは私とディアヴォロスにとっての、叔父で…。
先日、亡くなってしまった」
ラデュークが、顔を揺らすのを、アドラフレンは見た。
気の毒だとは思った。
が、言葉を続ける。
「…一途に…昔、愛した人を待っていてね。
けれど流行病で。
幾らでも…死なない方法はあったのに、ロクに手当もさせず。
そのまま、逝ってしまわれた。
それで…」
ラデュークの顔が下がり…髪に隠れたその顔は、震えているように見えた。
「…助け…なかったのか、あんた!
ディアヴォロスだって…!!!
彼なら、幾らでも…助けられたはず!!!」
顔を下げたまま叫ぶラデュークに、アドラフレンは静かに、告げた。
「…本人が、望まなかった。
“私を助けたいのなら…このまま逝かせてくれ”
それが彼の…。
最期の望みで。
ディアヴォロスは彼と親しかったから。
大変気を落としてね」
ラデュークはそれを聞いて…下げた顔のその頬に、涙を伝わせた。
「彼の城に君と君の母を迎えたいと。
君にとっては、おばあさんに当たる…ロンドル大公爵夫人がおっしゃってる。
君に会うのを、とても楽しみにしてる。
幾度も縁談を進めても…息子…ラダデューク叔父さんは、首を縦に振らなかった。
それ程愛した…人の子供だから」
「俺の母が…彼を死に、追い込んだのに?」
ラデュークの言葉に、アドラフレンは俯く。
「死に際を見てる。
“これで良かった。
誰も恨まないで、もし彼女が頼って来たら。
私の財産を、全て彼女に”
それがラダデューク叔父さんの、最期の言葉だから」
ラデュークが…泣いているのを、アドラフレンは暫く…声もかけず、見守った。
「ロスフォール大公が、君を探しまくってる。
それで…彼の部下のディドロとナーダを捕らえたんだけど。
君が大公のために、あちこちに精鋭らを、配置してるだろう?
…とりあえずは彼らから聞き出して、全て秘密裏に逮捕する予定なんだけど。
君が今後、部下として使いたい…もしくは、救いたい者があれば、私に書類で名を記して届けてくれるかな?」
ラデュークはまだ、泣いていたけど。
顔を下げたまま、微かに頷く。
「…それで…ロスフォール大公が勢力を削ぎ落とされ、報復出来る力を無くした頃。
君の、大公爵の、披露目を催そうと思う。
祖母殿には。
君の心の準備が出来次第、いつでも会えるよう、手配して置くから」
ラデュークは俯き…声を噛みしめ…そして、頷く。
アドラフレンはとうとう、そっ…と椅子を立つと、ラデュークの横の腰掛け。
屈めてる彼の背に、静かに手を添える。
その、手の温もりの温かさに。
ラデュークはとうとう、我慢出来ずに両手を顔に当て、泣き伏した。
アドラフレンは彼の背の震えが止まるまで。
その背に手を、添え続けた。
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