アースルーリンドの騎士達 妖女ゼフィスの陰謀

あーす。

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9 復活を果たすエルベス大公家とギュンター

監獄で大物を見つけ自白させるニーシャ

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 ニーシャはズボン姿で、アドラフレンが隠れ屋敷として使っている別邸の、広い監獄を歩く。

ナーダの自白の元に暴かれた、ロスフォール大公の秘密の部下らのアジトを。
アドラフレンの隠密部隊は次々と急襲し逮捕しては、ここに連れ込んでいた。

ロスフォール大公の秘密部隊らの殆どは捕らえられ、両手を後ろ手に縛られて、この地下広間に放り込まれてる。

鉄格子の嵌められた、横長で幅広の窓から陽は差すが、室内は暗い石の広い部屋。
石のベンチや石のテーブル。石の寝台と…やたら寒々しい。

ニーシャは壁に沿って一列に、並んで座ってる猟師風の汚い男から、町民や商人。
盗賊から下級貴族に至る、秘密部隊の男らの顔を、ジロジロと眺めて歩いた。

アドラフレンの部下が、ウロつくニーシャに気づいて
「幾ら縛ってあるからと言っても!
危険です!
万が一貴方が、人質にでも取られたら!
我々は動きを封じられ、この連中を全員解放なんて事態も、招きかねないんですから!」
と叫ぶ。

が、ニーシャはそう忠告した男を、美しい顔でジロリ。
と睨めつける。

「…私を誰だと思ってるの?」
「…全くだ。
そんなじゃじゃ馬を人質に取ろうなんて考えた、男が痛い目見るだけだ」

後の言葉が扉から響いて、二人は同時に振り向く。
アドラフレンが、姿を現して微笑んでいた。



「…じゃじゃ馬?!」
歩み来るアドラフレンにニーシャは異論を唱え、アドラフレンは彼女の目前に来て、横の部下に肩を竦めて見せる。
「ドレスを着ていない彼女は、とても危険で凶暴だから」

ニーシャが横を見ると、忠告した部下は、恐る恐る横から離れようとしていた。

「失礼ね。
男みたいな格好はしていても、私はレディなのよ?!」
アドラフレンは苦笑する。
「とても物騒な…ね。
ところで、知った顔でも、見つけたのか?」

アドラフレンに問われて、ニーシャは顔をうつむけて隠してる、一人の男を指さす。
「…あんな汚いナリしてるけど。
彼、ディンダルティン公爵よ?」

「…ホントだ…。
ロスフォールの右腕がこんな汚い格好で、隠密行動してたのか…。
さっき、ラデュークの部下に聞いたけど。
彼、何かロスフォール大公の重大な秘密を知ってるらしい」

浮浪者風のボロを纏ったディンダルティン公爵は、アドラフレンとニーシャから、さっ!と顔を背け、うそぶいた。
「…何言ってるだ!
誰に似てるか、しんねぇが!
おいらはダートだ!」

ニーシャは腕組みしてつぶやく。
「…だから、町民ダートはディンダルティン公爵の変装。
って…私もアドラフレンも、とっくの昔に知ってるのよ」

ディンダルティン公爵は、顔を下げたまま、動揺で揺らす。
「…知っ…て…?!!!!
およがせていたのか!!!」

アドラフレンは叫ぶディンダルティン公爵を、じっ…と見る。
「…泳がせ…たかったけど。
君、いっつも、尾行をまいて姿を突然消すだろう?
どこに消えるのか、教えて貰いたいんだけど」

ディンダルティン公爵が、アドラフレンを激しく睨めつける。
「…私を、吐かせられると思ってるのか?」
嘲笑の、笑みを浮かべながら。

無言のアドラフレンの横で、ニーシャはベストの内ポケットから、小さな薬瓶を取り出す。

それを見たアドラフレンは目を見開き、こっそりニーシャに尋ねる。
「…それ…使うと、廃人になるとか言ってなかった?」
ニーシャはにっこり笑う。
「噂では、そうよ?
でも試してみる、絶好の機会じゃなくて?」


数分後、別室の椅子に縛り付けられたディンダルティン公爵は、ヨダレを垂らし、定まらない目の焦点を泳がせながら、べらべら吐いた。

「地下通路が完備されてる所しか、私は行かないから、どれだけ尾行してもムダなんだ!
ロクル街道の宿屋も…。
コナクル宝石店にも…地下通路が、通ってるんだ…。
へへ、ホラむかーーーし。
アースルーリンドの地上は、人を喰らう大型獣だらけ。
我々の始祖の、ひ弱な漂流者らは、まだ数が少なくて…。
獣を恐れて、地下に穴掘って暮らしてた。
『光の民』が、たまーーにやって来ては、地下道を広げてくれて…。
知ってるか?
始祖らは『光の民』に
“獣をやっつけてください”
って、頼んだんだぞ?
けど利口な『光の民』は、断った。
“一匹二匹。
いや、十匹倒したところで、君たちの被害は無くならない。
けれど縦横無尽の地下道があれば。
誘い込んで一匹ずつ獣を殺し、少しずつその数を減らせる。
その間、安全な地下道で、君たちが数を増やせば。
必ず獣の数を上回り、やがて獣の数を劇的に減らせて、地上で暮らせるようになる”
そんで…その通りになった!
『光の民』って…すげぇよな…」

アドラフレンは、横のニーシャを見る。
「…イカレた?」
「でも、吐いてるわ」
「でも、余分な事も、かなり言ってるけど?」
「肝心なことも、ちゃんと言ってるじゃない…。
それで、地下道で姿をくらまして。
どこへ行ってたの?
私たちに、絶対知られたくない、どこかよね?」

ディンダルティン公爵は、首を垂らす。
「…そうでぁ。
知られたくない…知っちゃいけない…場所でぁ。
大公の、秘密のお宝のある場所でぁ」

ニーシャは、くす。と笑う。
「どこ?それ」

「…ニャンニャ街道の…」

アドラフレンが、小首を傾げる。
「ナーナ街道のコトかな?
もしかして」

「そう…らぁ…。
ニャンニャ街道の…先にある…」

「街道の先は、でっかい岩で崖。
行き止まりじゃない」
ニーシャが憤慨して言う。

ディンダルティン公爵は、ヨダレ垂らしながら、にやり…。
と笑う。

「とーーろーーがぁ。
行き止まり、じぇねーんでぁよーーー」

アドラフレンは、横のニーシャに屈んで問う。
「なんか…かなりヤバくなってないか?」
「まだかろうじて、聞き取れるわ」

「いーーーわぁのうーーしろーーに、ちーーかぁにおーーりる、ほーーそいみーーちがぁーーーー」

「アドラフレン様。
また新たなアジトを知ってる者が。
どうします?
そっちも、襲います?」

部下の言葉にアドラフレンは振り向く。
「今、行く」
そして、ディンダルティン公爵の言葉を、じっと聞いてるニーシャに囁く。
「廃人にしちゃったら、後始末は君に任せるから」
「………………ペットにして、飼えと?」

アドラフレンは、クスと笑い、言った。
「まあ男性機能が正常なら、君は満足かもね」

そしてニーシャが言い返す、前にさっ!と背を向け、室内から出て行った。

その背をニーシャは睨みつつ、尚もディンダルティン公爵の言葉に耳を傾ける。
「ちぃーじょーおーーーーーにでぇぇぇぇえると。
おーーやししぃぃきぃ、がぁぁぁぁ。
そーーーぉこぉーーに、ひぃーーとに、しぃーーーられぇーーーて、いーーーけなぁいおーーーちからぁがぁぁぁぁ」

「他に知ってる人は?」

ディンダルティン公爵は、首を横に振る。
「いーーーちどはぃーーると、でぇぇぇぇられぇぇぇなぁぁぁぃぃぃぃぃ。
かーーーんとぉぉぉくがぁぁぁこーーおろすぅぅぅ。
でぇぇいりでぇぇきるのぉぉぉぉは、おぉぉぉぉれだぁぁぁけぇぇぇぇ」
「だって…食べ物とかはどうしてるのよ?」

「おーーーりぇえぐぁぁぁぁ、はーーーこーーーぶーーーー」

ニーシャの横で、監視してたアドラフレンの部下は囁く。
「…聞き取れています?
私、何言ってるか全然、解らなくなってますけど」
「実は、わたしもよ(嘘だけど)。
これ、飲ませて。
多分正気に、戻るはずだから」
「…はず……です…か。
戻らなかったらきっと、アドラフレン様は…」
「私に引き取れって、言うでしょうね」

ニーシャは素っ気無く背を向け…けれど足早に部屋を出、地下広間にまた、ロスフォールの部下が数人、縛られて放り込まれていくのを見、庭に出ると繋いであった馬にひらりとまたがり。

拍車をかけて、走り去った。
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