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9 復活を果たすエルベス大公家とギュンター
ロスフォール大公の隠し財産を奪い取る大公母とエライン
しおりを挟むニーシャが大公家に戻ると、早朝にも関わらず。
領地見回りから帰ったばかりのエラインとエルベスが、ぐったりしながらソファでお茶を飲んでいた。
が
「エルベス様。使者を待たせておりますが」
そう侍従に声かけられると、エルベスは立ち上がる。
「お疲れ様。
先に食事を頂いていてください」
と、エラインに告げて、部屋を出て行く。
それを聞いて、ニーシャが尋ねる。
「…今帰ったばかりなのよね?
………エルベスって、お腹減ってないの?」
エラインは椅子にへたり込んだまま、言った。
「わたしは、よせって、忠告したのに。
宴会場での女将さん方の自慢料理。
回る領地毎に、全部平らげてるから。
お腹は、これでもか。
…ってくらい、いっぱいだと思う。
むしろ…あれだけ食べて、どうして吐きそうにならないかが、不思議?」
ニーシャはそれ聞いて、呆れて肩を竦めた。
早朝の食卓では、領地の作物の出荷準備の報告を受け取っていた大公母が、エルベスに代わって貰って食卓に着いていた。
エラインはニーシャから、アドラフレンが次々にロスフォール大公の秘密部隊を捕らえていると聞き、眠気もふっ飛ばして、わくわくして尋ねる。
「それで?!
どれくらい捕らえられたのかしら?!」
ニーシャはフォークに突き刺した肉を頬張りながら、囁く。
「現在は、多分2/3は捕らえたんじゃ無いか。
って、アドラフレンが。
けど、捕まるとみんな結構、ベラベラ喋ってくれるんで。
4/5くらいまでは、捕らえられるんじゃ無いか。
って、アドラフレンは言ってたわ」
「…で、大物は捕まえられたの?」
大公母にそう聞かれて、ニーシャがにやり。
と笑う。
「ええ。
大公の片腕と呼ばれている、ディンダルティン公爵を」
「あらその彼って…」
エラインが言うと、大公母も言う。
「ロスフォールの裏事情を全部、知ってると言われてる男よね?
でも簡単に、口は割らないでしょう?」
「あらどうして?」
エラインの問いに、大公母は冷静な顔で、優雅にフォークを口に運びながら告げる。
「父親の負債を全部、肩代わりして貰ってるから。
もし裏切ったら、負債が戻るだけじゃ無くて。
公爵領を取り上げられた上で、重罪犯で縛り首なのよ。
先代の公爵が使い込んだお金って、王室の公費だから」
それを聞いたエラインが、呆れながら囁く。
「…お金だけだったら…ロスフォールの隠し屋敷のお金を盗めば、負債は簡単に返せたんでしょうけどね…。
でもその隠し屋敷って、本当にあるの?」
エラインの質問に、大公母の目が輝く。
「噂では聞いたけど…」
「噂?」
エラインが聞くと、大公母は頷く。
「あちこちから、秘密裏に盗んだ金品や、表に出せない書類が。
そこに全部、隠してあって。
もしそこを暴かれ、奪われたら、ロスフォールはお終い。
って言う程の、凄い宝物が、山程ある屋敷らしいわ」
「お母様。
ウチはそんな屋敷、無いわよね?」
エラインに聞かれて、大公母は思案しながら返答する。
「ウチは、隠密時にニーシャの使ってる、各地の隠れ屋敷がそれに当たるかしら…。
分散して隠してあるから、平気よ」
エラインは肩を竦め、ニーシャに尋ねる。
「で。
場所は分かったの?」
「…何でも、ナーナ街道の行き止まりの岩の辺りに。
地下の隠し通路の入り口があるらしいわ。
まあ、いい場所よね。
あの辺り、狼がウロつくって有名だから、人気無いし」
公母はエラインが、じっ…と視線を向けるのを見て
“分かってるわ”
と、頷いた。
その後、大公母とエラインは示し併せて。
ニーシャがポロリと食卓で漏らした、隠し屋敷の場所を。
護衛として大量に雇った騎士らのうち、土地に詳しい騎士数名と地図を見ながら相談し。
隠し屋敷の場所の、アタリを付けて、護衛騎士らとたくさんの馬車を引き連れ、襲撃に向かった。
地図では全部岩山になってる場所の。
入り口は、当然岩場。
だがその奥には洞窟があり、暫く地下を行くと、間もなく平地に出て。
その先に、屋敷が現れる。
護衛達は中で財産を守る男らを、一気に襲撃して次々に倒し、一掃して公母とエラインを、屋敷内へと招き入れた。
中は、山と積まれた宝石や金、高価な絵。
そして…幾つもの土地の権利書。
「お母様。
この土地って…ナスィック男爵が…山賊に奪われたという、権利書じゃ無くて?」
エラインに聞かれ、公母はその羊皮紙を見る。
「まあ…!
きっと男爵が亡くなった頃に。
見つかったと言って、正式に土地を自分の物にしようと…隠してあるのね!
これも…これも!
いつの間にか無くなったと、知り合いに聞いた土地の権利書だわ…。
女中か召使いに取られたのかもしれないと…たいそう狼狽えておっしゃってたけど…。
ロスフォールが、盗ませたのね!」
「お母様…!
これ!
イックル伯爵の、没落のきっかけを作った…権利書よ?」
「…本当だわ…。
伯爵は娘を、ロスフォールの愛人にするのを拒んだせいだとおっしゃってたけど…。
領地の権利を主張していたのは、別の…成り上がり者の卑しい男だったわ。
けれど、一番豊かな領地の権利書をいつの間にかその男に奪われて…。
盗まれたという、証明も出来ずに財産の殆どを失ってしまわれて…」
エラインが、頷く。
「家の領地の管理人の、若くて感じの良い若者と、娘さんは恋仲だったから。
今はその領地の一領民として…伯爵共々、住んでいらっしゃねるけれど…。
これをお返しすれば、失った財産の殆どを、取り戻せるわね」
大公母は頷く。
「…誰から奪われたか、分かっている権利書は、奪われたお方にお返ししましょう」
「あらでも。
これはレニケン侯爵の別荘の権利書みたいだけれど…」
「…あの男もどこからか、奪って得ているみたいだから。
もっと大元の持ち主を探させましょうか」
「それがいいわ」
「きっとどれも、自分に都合良く動いてくれた者らに与えた土地や別荘、領地だけど…。
彼らが裏切らないよう、権利書を取り上げてここに隠していたんだわ」
公母が言うと、エラインも叫ぶ。
「…本当に、やり方が汚いわよね!!!」
「でもこれを返せば…返された方々は、こちらの味方になってくれるわ」
「お母様。
このお宝と。
情報を仕入れたり水面下で動く部下を、逮捕された段階で…。
ロスフォールは終わってるわよ」
大公母はその言葉に、満面の笑み。
「仕返しって、本当に楽しいわ!」
エラインも、心から同意した。
「最高よね!
これで出荷被害の損失も、護衛達の給料も。
レスルに払った分だって!
余裕で払えるわよ!!!」
二人は勢い込んで、四つある広い部屋、いっぱいの金銀宝石がこれでもか!と付けられたの宝飾品を。
護衛達にどんどん、運び出させた。
高価な家具や食器。
宝石だらけの豪華な衣装。
金貨の詰まった重いチェストも、山程あった。
大勢の護衛達は、戸板に乗せて地下通路を潜っては、宝物を馬車に運び込む。
最初は二人一組で運んでいたけど、知恵者の一人の提案で。
屋敷から洞窟へ、ずらっ!と一列に並ぶと、リレー方式で手渡しで。
洞窟内から次々と、宝物を運び出した。
エラインと公母は、運び出されていく大量のお宝を見て、にんまり笑った。
「…ロスフォールがこれ以降、大公家の威光を維持出来ると思う?」
「男爵程度の事しか、出来なく成ると思うわ。
もう他に、こんな隠れ屋敷が無ければ」
二人は満面の笑顔で、少女のようにぴょんぴょん跳ね回って。
終いには抱き合って、喜んだ。
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