アースルーリンドの騎士達 妖女ゼフィスの陰謀

あーす。

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追加別記 ディングレー

ディングレーの厄日(アレッサンナとの、その後) 2

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 宿屋の一階は、食堂になっていて、宿の宿泊客以外も食事を取ってる。
木の剥き出しの、質素な食堂は、こんな早朝にも関わらず、人で埋まっていた。

ディングレーは見回すが、ローフィスの姿は無い…。

「(…エリスが逃げ出したろうから、後を追って狼の巣に、入って無いといいが…)」

が。
エリスは水を飲んでいた。
もしローフィスが危険なら。
利口なエリスは、ローフィスの元に向かって走ったはず………。

ディングレーはともかく、くたびれきっていたから。
座る場所を探し、店内を見回した。

どこもかしこも、猟師か木こりか。
デカくてムサい、男ばかりで隙間が無い。

かろうじて開いてる間には、ご婦人らが腰かけていた。

「(…仕方無いな…)」
と進みかけた矢先。

座ってる二人のご婦人の内、一人が顔を上げる。

ディングレーは咄嗟に、顔を背けた。
「(…右の王家の遠縁の血筋の…アレッサンナ…!!!
どうしてこんなとこに…?!)」

金髪よりは暗い、栗毛を結い上げ。
紫のマントを羽織り、旅行用の飾り気の無い、暗褐色のドレスを纏っていた。
青い瞳だけが。
「右の王家」との、血統を示している。

そう…。
彼女とは数週間前。
舞踏会で出会った。
しかし。
王族や身分高い者らの来る、高級な舞踏会じゃ無い。

身分低い者らが、気軽に集う舞踏会だったから。
ディングレーは王族の仰々しい身分を忘れ、ローフィスと気軽に楽しんだ。

もし彼女が最初に
『「左の王家」の、ディングレー様でいらっしゃるわね?』
とか言ってたら…逃げ出してた。
が、彼女は言わず…酒の話をし…。
そして、開いた胸元から零れ出そうな乳房を、軽く胸元に押しつけて来たから…。
抱いて欲しいんだと。
そう思いそして…。
舞踏会場の、離れで…そうなった。

甘い、香り。
成熟した女性の…くらくらするような匂いに導かれ。
豊満な胸に顔を埋め…当然、下にも。

すすり、舐め…そして…挿入した。
柔らかく濡れた感触がこの上無い快感をもたらし…。
扇情的に乱れた彼女の嬌声に煽られ…。
確か思いっきり腰を使って…三度?果てた。

二点鐘程一緒に過ごした後。
こっそり抜け出し、探しに来たローフィスと出会い、シた事を報告すると。
ローフィスに
「大丈夫か?
幾ら…無名ばかりの、低級な舞踏会とはいえ…。
お前を知ってる奴が、来てないとも限らない。
彼女が後に、お前だと知ったら…」
「…だが、名乗らなかったし」

けれど無事じゃ無かった。
「(名前を聞かなかったのは…彼女が俺を知らないんじゃ無く、知ってたからで…)」

そう。
その後、自宅に肖像画が届き、両親共々の会見の申し入れも届き…。
ディングレーは近衛宿舎から、執事に呼び出され。
執事と顔を合わせた途端、怒鳴りつけられ…。

『どうするんです!
ご結婚されるおつもりが、あるんでしょうね?
アレッサンナ様は「右の王家」の血筋!
ちゃんと一族の、端っこながらも王族の一員と、認められています!
…今までのように、念書を書かせ金を持たせて、追い払うことの出来ないご身分の女性なんですよ?!!!!』

執事に耳元でキンキン声で叫ばれ…。
耳の、痛かったこと…この上無かった。

『で?!
お返事はどのように?!
お館様(ディングレーの父親)にもお知らせしなくてはなりませんので!
ディングレー様の、結婚相手のご婦人とその御両親との、会見にご出席下さいと!!!』

『するな!!!
…ともかく、忙しいと。
直ぐ会うのは無理だと…言っといてくれ』

『当分はそれでいいとしても!!!
相手のご身分を考えれば、いつまでも逃げ切れませんよ!!!』


………ずっと、保留にし続け…。
その後、舞踏会で出くわす度…。
直ぐその舞踏会から逃げ出すか、彼女から顔を思いっきり背け…。

「(…タニアと踊った舞踏会で…ローフィスともキスしたし。
あれで諦めたかも)」

ディングレーはそう思い返し、他に席が無いので仕方無く、アレッサンナのテーブルに向かう。

が、真っ直ぐ見つめられ…。

「(睨まれ…てる?)」

近づいた時。
アレッサンナは臭そうに顔をしかめ。
ハンケチを鼻に当てて、顔を背け、低く鋭い声で…唸った。
「臭いこと…!
地元の無頼の騎士が。
わたくし達の…!
王族のテーブルに!
まさか無断で、座ろうとか、してませんわよね?!」

「………………………………」

だが、向かいにかけていた女性が、振り向いて囁く。
アレッサンナよりもっと、栗色に近い髪色。
けどやはり、青い瞳で「右の王家」の血筋の。
たおやかで優しい印象の、淑女。
くすんだ桃色の、マントとドレスを纏っていた。

「…どこも他は空いてないわ。
ほこりだらけで…きっととても、くたびれていらっしゃるのよ?」

けれどアレッサンナは声を張り上げる。
「ナスターシャ、貴方優しすぎるわ!
見て?
身なりはとても見窄らしいし、髪もぼさぼさ。
凄く…汚いし。
数日はお風呂に、入ってないみたい。
あらお風呂って、分かっていらっしゃるのかしら?
川で水浴びがせいぜいかしら?」

ディングレーは椅子の背に手をかけて、止まった。

つまり彼女は…。
「(…俺だと、まるっきり分かってない…?)」

アレッサンナは顔を上げ、きっ!と睨みつける。
「ここに、お座りになるおつもりなの?!」

向かいのナスターシャが、困惑しながらも優しく微笑む。
「私の横になさったら?」

けれどアレッサンナは、きっ!
とそう言ったナスターシャを睨んだ。

くたびれてたディングレーは、ナスターシャの横に来ると、椅子を引いてどかっ!と座り込んだ。

通りがかった女将に。
「薬草酒を。
特大の酒瓶に入れて」
と頼み、向かいのアレッサンナを見ないよう、寛ぐ。

けどアレッサンナは、ディングレーを怒鳴りつけた。
「無礼にも、程があります!
確かに、私たちに相応しくない、こんな食堂にはいます!
けれど仮にも王族!!!
ちゃんと敬意を、払いなさい!!!」

が。
アレッサンナが叫んだ途端。
食堂内の、人相の悪い、汚い男らの目が、ぎらり…!
と光るのを、ディングレーは見た。

「…こんな場で。
身分をひけらかすな。
護衛はどこにいる?」

囁くが、アレッサンナはふん!と顔を背ける。
代わってナスターシャが答えた。
「外の馬車で。
荷物番をしておりますわ」

程なく、ごろつきが三人、テーブルに寄って来ては、にやついて言う。
「…ツンケン気取った女かと思ったら!
御姫様だったのかい?」
「俺と一緒に、遊ばないか?
宮廷のヤサ男より、よっぽどいい思い、させてやるぜ?」

「(…言わんこっちゃ無い…)」
ディングレーは女将がテーブルに置いた、薬酒の取っ手を掴むと、一気に煽った。

けれどアレッサンナは、一人のむさい男に手首を掴まれ、まだ叫んでた。
「ヤサ男ばかり?
ご冗談!
「左の王家」のディングレー様は、それは男らしくて!
あんた達なんか、目じゃない程激しくて情熱的なのよ?!
その上、臭くも汚くも無くて、凄くお上品なの!
…手を離して!!!」
「その、ディングレー様はここにいるのかい…?
いないだろう?!!!!」

ディングレーは思わず、顔を、下げた。
横の、ナスターシャの視線を感じたから。

ナスターシャはどうやら、自分がディングレーだと、気づいてるらしい…。

それでディングレーは、言うしか無かった。
「嫌がってるだろう?!
離してやれ!!!」

怒鳴った後、気づいた。
「(…声で、俺だと気づかれたか…?)」
しかし、残りの二人が寄って来て。
「黙ってろ」
だの
「余計な口挟むな」
だのと、脅してきたから。

ディングレーはもう、立ち上がって一人を殴り倒し。
もう一人が胸ぐら掴むので、揉み合いになり。
そしてそいつの腹に、膝を蹴り込んで、沈めた。

アレッサンナの手首を引っ掴んで、引き寄せて背に回す。
が、どんっ!と背に倒れかかったアレッサンナは

「きゃっ!臭いじゃ無いの!!!」

と、助ける気の失せる叫び声を上げる………。

気を取り直して顔に振られた拳を避け、相手の腹に拳を叩き込もうとした時。

起き上がった二人が、アレッサンナとナスターシャに襲いかかり、掴み、引き寄せようとする。

けど突然。
かっ!と一人が目を見開き…ナスターシャの目前で、バタン…!
と倒れ。
次いでアレッサンナを掴もうと手を伸ばした男も、同様。

突然。
バタン!と大きな音立て、倒れ伏す。

「(…ローフィスの、飛ばし針…?!)」
ディングレーは呆けて倒れる仲間を見る、目前の男を殴り倒した。

がっっっっっ!
どっすん!!!

三人は伸び…。
その時、ようやく扉が開いて、二人の護衛達四人が、中に入ってきて。
「大丈夫でしたか?!」
と尋ねる。

ナスターシャは優しく頷き
「あのお方が…」
とディングレーを指す。

が。
アレッサンナは…。
ディングレーに、喰ってかかった。

「何が目的で、助けてくれたの?!
宝石?!
それとも、金?!
…まさか私が、目当てじゃないでしょうね?!!!!
幾ら助けられても、貴方みたいな汚くて身分の低い男なんて!!!
まっぴらよ!!!」

叫ばれた時。
ナスターシャも…。
護衛の男らも。
呆けてアレッサンナを見る。

「…その…「左の王家」の、ディングレー様でいらっしゃいますよね?」
護衛の一人がそう囁き、尋ね…。
アレッサンナはまだ、叫んだ。
「私はディングレー様と、濃密な一夜を過ごしたのよ?
彼は絶対違うわ!!!
ディングレー様だなんて、どこからそんな…!!!」

その時。
ディングレーの横にローフィスがこっそり並び…。



二人揃った姿を、アレッサンナは目を見開き、見つめ…。
ローフィスに向かって、叫ぶ。
「貴方…貴方確か、舞踏会でディングレー様とキ…」

「…スされてた、ローフィス。
ええ。
その男です。
で、こっちは…」

「ディングレー様、ご本人ですわよね?」
ナスターシャに言われ、ディングレーはもう仕方無く、頷く。

アレッサンナが、汚い無頼の…ディングレーをもう一度見て。
はっ!と、ようやく気づき、両手を口に当て…。

そしてくるりと、皆から背を向けた。

その後の、その場一同の…気まずいこと。

皆、顔を下げて沈黙する中。
ローフィス、だけが。
ディングレーの腹を肘で小突き
「(…破談にする、チャンスだぞ…!)」
と目で、訴えた。

はっ!と気づいたディングレーは、王族に戻り、尊大に告げる。
「…君は俺の姿が変わった、だけで、俺と分からなかった。
君が俺の妻になるのは、到底無理だな…!」
と言い、護衛らとナスターシャに、顎を上げて尊大に頷き、ローフィスを侍従のように引き連れて、食堂の扉を開け、外に出た。

出てローフィスから顔を背け、まだ、威張っていたが。
咄嗟、ローフィスに振り向き屈み、尋ねる。
「どうしてここが…!」
「まさか、レットル(灰色狼)の巣に迷い込んでたのか?!」

ローフィスも同時に叫び、二人は声が重なって一旦沈黙し。
また同時に…。
「エリスをどうして離した?!」
「アレッサンナと待ち合わせてたのか?!」

とうとうローフィスが、ディングレーに顎をしゃくる。
ディングレーは躊躇いながらも、言った。
「そうだ。
レットル(灰色狼)の巣に迷い込んで、駆けつけてくれたエリスに助けられた。
アレッサンナとは、偶然出会った。
他に席が空いてないほど満員だったから」

ローフィスが、じっ…とディングレーを見る。
「…エリスが血相変えて出て行ったから…そうかな。
とも思ったが…。
あんま、早いから後を追えなかった。
焚き火場所に戻ってくるかとも、思って。
待つつもりだったが。
足りない物が色々あったんで、一旦ここに来て…。
正解だったな」

ディングレーが、頷いた時。
アレッサンナが隣のナスターシャに
「貴方、気づいてたの…?!」
と叫びながら出てくるのに、出くわした。

アレッサンナが横を通る時。
また『臭い』と言われると思ったディングレーは、条件反射で避ける。
が、アレッサンナはすり寄ろうとし…止めた。

そしてアレッサンナはナスターシャと共に…無言で馬車に乗り込む。
馬車が動き出すと窓から顔を出し、切なげにディングレーに視線を送った。

ディングレーは馬車が去るまで、顔を下げていた。
「もう…行った?」
ローフィスはディングレーの肩に、ぽん。と手を乗せ、囁く。
「良かったな。
無事、破談出来て」

ディングレーは頷きながら、言い返す。
「今日、俺に起きた物事の中で、良かった、たった一つの事出来事だ」

ローフィスは呆れて、ディングレーを見た。

「エリスは間に合い、お前は命拾い。
…したんじゃないのか?」

「!!!…そうだった!」

ディングレーは気づいて顔を上げ、咄嗟エリスを見た。
エリスは草をはんでいたが、顔を上げ。

ふん!
とディングレーから、思い切り、顔を背けるので。
ディングレーは思い切り、項垂れた。

横のローフィスに、こそっと尋ねる。
「エリスの機嫌を取る方法…」
「主はお前だ。
俺に分かるか!」

ディングレーはもっとがっくり、肩を落とした。
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