アースルーリンドの騎士達 妖女ゼフィスの陰謀

あーす。

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特別追記 ユァルエルパの誇り高き王子

ユァルエルパの誇り高き王子

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 その夜、ディアヴォロスは自分と透けて重なっているワーキュラスが、遠くに気を向けてる気配に、読んでいた本から、顔を上げる。

ワーキュラスの本体、巨大な光竜の姿は、アースルーリンドとは別次元の『光の国』にある。
ワーキュラスはいつも、自分と繋がってる彼の意識で、自分の目や感覚を通して、この世界を見ていた。

ワーキュラスと長い付き合いのディアヴォロスは、もうワーキュラスが言いかける言葉を予測出来た。
「…どこから?」

尋ねると、ワーキュラスはため息交じりに、荘厳な声で囁く。
“この国の者では無い。
船が座礁し、更に彼らの王子が囚われ、とても困っている”

「船…と言うと、外の国だな?
どの国の者か、分かるか?」
“発音が難しい。
ユァルエルパ…知っているかな?
この大陸…エルデルシュベインより南にあるエーダ大陸の、最南端に位置する伝説の国だ”

ディアヴォロスはワーキュラスが、僅かに繋がった、誰かの意識からそれを読み取るのを感じた。

「…私が…一度も見た事の無い、黒人種の王国の事かな?」

ディアヴォロスが聞くと、ワーキュラスは頷く。

“好奇心旺盛な若き王子が、船で大陸伝いに、迂闊に北上し…。
嵐に遭って、この国の南の海沿いの岩礁に、座礁した。
悪い事に、崖道からこの国に入った途端、南領地ノンアクタルの盗賊に掴まった様子だ。
多分、珍しい少年と、どこかの王子の後宮に売られた可能性が高い。
お付きの護衛らがとても心配し、この国では勝手が分からず…。
巫女にお告げを仰いだところ、君の名前が出た。
それで彼らは、君を探し、名を呼んでいる”

ディアヴォロスは感じた。
『私の名をきっと、その護衛は痛烈な感情込めて、心の中で呼んだのだろう…。
その声はワーキュラスに聞こえ…。
ワーキュラスは意識だけを空間に飛ばし、私の名を呼ぶその男を見つけ出して繋がり、その男の意識を読み取って、私に告げている』

ディアヴォロスは、パタン…と本を閉じた。
ワーキュラスは直ぐ察する。
“今から…南領地ノンアクタルに走る気か?”
「案内してくれるんだろう?」

そう言うと。
ワーキュラスは光がさざめくように頷き、ディアヴォロスはもう、室内を駆け出して、厩へと走っていた。

直ぐ、馬に乗り、手綱を引いて馬丁に一声叫ぶ。
「補佐のオーガスタスに!
私は出かけたから後を頼むと。
直ぐ、知らせに行ってくれ!」

馬丁は行き先も告げず、駆け去る左将軍の後ろ姿を見、ため息を吐いて…。
左将軍官邸とは、続き通路のある、補佐官邸へと出向く。

補佐官邸の侍従に次第を告げると。
侍従も俯き加減で
「伝えます」
と返答した。

侍従は若き左将軍補佐、オーガスタスに
『またか?!』
と言われる覚悟で、私室の扉をノックし
「入れ」
の声の後、扉を開けて伝達する。

オーガスタスは目を見開き、けれど冷静に頷いたので、侍従はほっとして、下がろうとした。
その時、オーガスタスのため息交じりの、声がぼそりと聞こえた。

「…またか………」

侍従は、がくっ!と膝がコケて、転びかけて持ち直し、何とか平静に扉を閉めて、ため息を吐いた。





 夜通し馬を飛ばし、南領地ノンアクタルと東領地ギルムダーゼンの境目。
岩山の細道で、ディアヴォロスはユァルエルパの護衛らを見つけた。

マントを真被りにし、目元だけ出していると、黒い肌だけが伺い見えて、南領地ノンアクタルの者に見えた。

が、たった一騎馬で駆け来るディアヴォロスを見、マントを下げた彼らの、その顔は。
噂で伝え聞く、黒人種。
肌は南領地ノンアクタルの肌黒よりも更に黒く。
目も黒で、鼻はへしゃげて丸い。
顔立ちは、精悍そのもの。

三人の男らは、馬から下りる男が、とても長身で神秘の光を纏い、微笑んでいるのに、目を見開く。

“…ユァルエルパのお方か?”

三人は頭の中で響く言葉に、顔を見合わせる。

“…巫女が神託で告げた…この国の助け手、ディアヴォロス殿か?”

ディアヴォロスはワーキュラスが、心話で通訳してくれているのに微笑む。
“お困りの様子だ。
この国では不案内でしょう?
私と共においで下さい。
くつろげる場所に、ご案内いたします”

三人の、王子の護衛らは、顔を見合わせあい…。
けれどディアヴォロスの、後に続いて、岩道を歩き出した。

岩道を少し進み、間もなく細い枝道に入ると、木の茂った向こうに邸宅が見えてくる。
南領地ノンアクタルの街を見下ろす、高い丘に立つディアヴォロスの別宅。

ディアヴォロスは馬から下り、後ろから徒歩でやって来る、彼らを中へ招き入れる。
扉を開けると、直ぐ侍従が二人、姿を見せた。

侍従達は彼らの珍しい風貌に驚きつつも、彼らが手に持つマントに、そっと手を差し伸べ
「マントをお預かりいたしましょうか?」
と声をかける。

が、問われた三人には言葉が通じず。
ディアヴォロスに
「食べ物と飲み物。
それに彼らの泊まる部屋を用意してくれ」
と言われ、目を見開いて頷いた。

侍従の一人は
「いつも変わったお方をお招きされる。
が、今回はその最たる出来事だ」
と小声で呟いて、下がった。

ディアヴォロスは異国の護衛三人に、王子の事を尋ねる。
ワーキュラスは直ぐ、彼らの頭に浮かぶ、王子の姿をディアヴォロスにイメージとして伝える。
ディアヴォロスはまだ15・6の若き王子が、肌がとても黒く、大きな黒い瞳の、見慣れぬ異人種ながらも独特の美しさを持つ、美少年なのに気づく。

頭の中で、護衛らに囁いた。
“王子は必ず、私が探し出してあなた方にお返しいたします”

三人は、頷く。
“王子が戻らなければ…国王は。
国でも最強の戦士らを引き連れて、王子を探しに国を出ます”

それはすなわち、戦を意味すると。
ディアヴォロスには理解出来て、頷く。

“船を修理させましょう。
私がお約束いたしますから。
もし船が先に直れば。
国王にどうか。
王子は無事で直国に帰ると。
そうお伝え下さい”

三人は、神秘なるディアヴォロスに、頭を深く垂れる。

“船が直れば。
他の者は国に帰しましょう。
けれど我ら三人は。
王子の側を、離れる事は出来ません”

ディアヴォロスはその返答に、頷いた。




 翌日、オーガスタスはディアヴォロス不在で代理出席してる会議の最中、使者より手紙を受け取る。

「…失礼」
オーガスタスはズラリとテーブルを挟み座る、近衛の年上の重鎮らの白い目を避け、戸口に居る使者より羊皮紙を受け取り、廊下に出ると羊皮紙を開く。
読んで直ぐ、使者へ命を下す。

「補佐官邸にいる隠密部隊のデルアンダーに。
直ぐ、南領地ノンアクタルの王子の後宮に、黒人種の奴隷が囚われてないかを調べるよう。
そう伝えた後(のち)。
ディアヴォロスの元に戻り、直ぐ動くと伝えてくれ」

使者は頷いて下がり。
オーガスタスは内心、呻いた。

「(…黒人種???
今度はナニ始めたんだ。あの人)」
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