アースルーリンドの騎士達 妖女ゼフィスの陰謀

あーす。

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特別追記 ユァルエルパの誇り高き王子

脱出

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 護衛らは鍵を受け取り、王子の手足の枷を外し始める。

手足が自由になった王子は、突然シャムノウムに詰め寄り、オーガスタスの手から短剣をもぎ取り、シャムノウムの腹へと突き刺す。

が。
寸でのところで、ディアヴォロスが王子の手首を掴み、止めて微笑む。

“大層お腹立ちでしょう…。
ですが、今殺しては、貴方は逃げ切れなくなる。
ここまで探しにやって来た、貴方をお守りする護衛らのためにも。
この男はどうか、私にお任せ下さい”

王子は悔しげに、ディアヴォロスを見上げる。
だがとても大きく、そして優しい瞳をしたその神秘なる男を見。
王子は憤りに短剣を床に投げ捨て、思いっきりの蹴りを、シャムノウムに喰らわせた。

がんっ!!!

二撃。
がっ!!!
三撃。
どかっ!

シャムノウムが前に身を屈めた途端。
四撃目で王子はシャムノウムの股間を。
激しく蹴り上げた。

がっっっっ!!!

「っ…△×□▲…」

意味不明の呻き声を上げて…。
シャムノウムは股間に手を当て、前に倒れ伏す。

オーガスタスは立ち上がり、異国の少年王子の横で膝を付いている、ディアヴォロスを見つめる。

ディアヴォロスは蹴っている少年の横で立ち上がり、股間を蹴られて泡を吹いて横たわる、シャムノウムを見つめ。

オーガスタスを見、頷く。

オーガスタスは、やれやれ…。
とディアヴォロスの合図に従って、シャムノウムを抱き起こし、みぞおちを軽くはたいて気を取り戻させ、囁く。

「…まだ痛いだろうな…。
だが、聞け。
もしこの事を口外し、追っ手など差し向けたら。
お前の身は破滅」

そこまで言うと、護衛ら三人が、まだ憤る自国の王子を諫めながら。
広間から連れ出すのが見えた。

広間の入り口にはデルアンダーが。
こっちだと、手を振って護衛らに、合図を送っていた。

ディアヴォロスは素早く、シャムノウムに屈み、囁く。
「君の拉致したのは、最南に位置する強大国の王子。
このまま彼らに君を引き渡せば…。
君は彼らの国に連れ去られ、残虐な拷問の末、処刑される」

そこまで言うと、ワーキュラスが。
護衛らや王子の頭から引き出した、拷問のイメージをシャムノウムに見せた。

両手両足鎖で繋がれ。
立たされたまま、一物を刃物で切り取られ、血まみれで泣き叫ぶイメージ。

シャムノウムはそれを頭の中で見て。
真っ青になって、震え上がった。

「良く聞け。
彼らは王子を侮辱した者を、決して許さない。
もし君を、彼らに引き渡さなければ。
彼らは軍隊を連れてこの国に、攻め入る可能性すらある」

シャムノウムは、ディアヴォロスに振り向く。
「君は近衛の左将軍!!!
近衛は彼らを退け、アースルーリンドを護るのが使命!
君は戦になろうが、この国を護る!!!
…そうなんだろう…?」

ディアヴォロスは笑った。
「自分の尻拭いを、私にさせる気か?」

シャムノウムはまた、震え上がった。
その時、ようやく分かったから。

ディアヴォロスの一存で。
もし、彼に庇って貰わなければ…。
自分は彼らに引き渡され…囚われて一物を切られ、そして…その後。
酷い拷問の末、死ぬのだと。

「…君がしたのは、強大国の一国の王子を激しく侮辱した事だ。
彼らがそれを、簡単に許すと思うのか?
王子にさっき、一撃で殺された方がマシだと。
思い知りたいか?」

シャムノウムは、がたがたと震った。
「なん…でもする。
言う事を全て聞く!!!
だ…か…ら!!!」

ディアヴォロスの、胸に衣服を握りしめてすがりつく、シャムノウムを。
オーガスタスは吐息を吐いて、見つめる。

ディアヴォロスは囁いた。
「では、そうして貰おう」

けどその時。
ディアヴォロスの中の、ワーキュラスがかっ!と光り、途端シャムノウムは気絶した。
頭の中で、ワーキュラスが点滅した光をディアヴォロスに送る。

「!人が来る…」
ディアヴォロスが短く叫び、オーガスタスは頷く。
二人同時に立ち上り、そのまま駆け出す。

が、廊下を。
玄関へと歩く先に、第12王子と第9王子が。
その背後に、軍隊のような屈強な護衛を大勢引き連れ、こちらに向かって来ていた。

オーガスタスは速度を緩め、ゆっくり歩き出すディアヴォロスの、平静な横顔を見つめた。

まだ…!
デルアンダーとテスアッソンは、囚われた少年少女らを逃がしてる真っ最中。
この連中に阻まれては、厄介。

「…早々にお帰りか?」

第12王子にジロリと見られ、冷たく言葉を投げかけられ。
オーガスタスは咄嗟、叫ぶ。

「「左の王家」の王族で、左将軍であられるディアヴォロス閣下だぞ!
ひれ伏して、口を慎め!!!」

鋭い獅子のような、身震いするその咆吼に。
王子らは、黙り込み…。
オーガスタスの少し前にいるディアヴォロスに、ゆっくり無言で、腕を胸に当て、頭(こうべ)を垂れた。

ディアヴォロスは無言で横を通り過ぎ、オーガスタスは礼を取る二人の王子を、ジロリ…と睨めつけ、軍隊のような護衛らの横を、通り過ぎた。


廊下の角を曲がると、ディアヴォロスがチラとオーガスタスに視線を向ける。
その合図で、二人は一気に駆け出した。

オーガスタスは正面門へ続く中庭で、馬丁から手綱をひったくり、愛馬ザハンベクタに跨がり。
振り返るとディアヴォロスは。
裏門へと続く道へと、その姿を消していた。

オーガスタスは馬の首を出口門へと向けつつ、思う。

「(…これで退場…。
で、いいんだよな?)」

けれどディアヴォロスと繋がってるワーキュラスは忙しいのか。
返答は、無い。

ため息を吐きかけた時。
明るい光が頭の中に瞬き、オーガスタスは頷いて、馬の腹を蹴る。

ザハンベクタはその合図に、一気に出口門へ向かって、駆け出した。

「(…手抜きだな…ワーキュラス………)」
頭の中でワーキュラスへ、そう呟いてみる。

が、ワーキュラスから送られたのは。
ディアヴォロスが少年の一人を馬の前へと乗せ。
ユァルエルパの護衛らと奪還した少年王子もが、馬に跨がり。
少年少女を前に乗せたデルアンダー、テスアッソンと、その部下らとが。
裏門を一斉に駆け抜けて行く、イメージ。

オーガスタスは、一つ頷いて“納得した”と声にならぬ声を送る。
ワーキュラスは二度、点滅して返答に変えた。

が、その後、再び頭にイメージが強引に浮かぶ。
ディアヴォロスの補佐になりたての時は、焦った。
が、今やすっかり慣れたオーガスタスは、ワーキュラスからのメッセージだと理解する。

訪れた第12王子と第9王子が、倒れた第16王子を抱き起こし。
護衛らに不届き者を拉致するよう、手を振って命ずる姿が浮かび上がり、オーガスタスは愛馬の腹を蹴って、合図を送る。

ザハンベクタは力強く速度を上げ、軽々と門を潜り抜け。
怒濤の走りで市街地を駆け抜け、別荘へとひた走った。
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