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可愛いピンクの薔薇の棘
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お部屋を見せてあげたら?
とセフィリアに言われた時には、心臓が口から出そうになった。
二人きりだ………。
どうしよう?
頬が真っ赤で、心臓がばくばく言うから、ファントレイユは出来るだけレイファスを、見ないようにした。
レイファスに会って熱を出したりしたら…セフィリアは二度と、レイファスを自宅に招かなくなるに違いない。
レイファスを二度と見られなくなるなんて…!
ファントレイユは絶望が心を真っ黒に染めるのが、解ったから、会った途端大好きになったレイファスを、熱が出るのが怖くてじっと見るのを、我慢した。
でも、レイファスが僕を見てる。
部屋で二人きりになって…だから、必死で喋り続けた。
ちょっと、拗ねたような表情。
気に入られなかったのかな?
それも不安で、ファントレイユは一人で…喋り続けた。
何喋ってるか、自分でもまるで、解らなかったけど……………。
昼食の支度が出来た。
と女中のマリーアンが来て告げられ、レイファスと一緒に部屋を出たけど、足が宙に、浮いてる感じで…足元がふわふわした。
部屋を出る時、憧れのマリーアンに
「とても綺麗で愛らしい方ですね?」
と笑ってウィンクされて言われ、頬がまた、熱くなったので必死に、熱を出さないよう祈った。
レイファスを、二度と招待しないわ。
とセフィリアに言われるのだけは、絶対嫌だった。
食事の味なんか、まるで解らなかった。
窓が開いていて、風がレイファスの巻き毛を揺らしてる。
鮮やかで明るい栗毛。
顔上げると、くっきりと大きな青紫の瞳。
食卓の、ピンクの薔薇が目に入る。
もし…出来るなら、レイファスにとても似合う…ピンクの薔薇の花束を、プレゼントしたかった。
…そんな事考えていたし、ずっとぽーっと成って、もし熱が出ていてもセフィリアには絶対気づかれないように。
と気を引き締めていたから…昼寝の時間、横の籐椅子に横たわるレイファスの寝顔を見、女中に毛布かけられ、微笑んでお礼を言って…二人、だけで昼寝の時間を過ごした時ようやく…レイファスの、寝顔をたっぷりゆっくり、見られた。
色が白くて…ぷっくりとした頬は愛らしいし、唇はとても、可愛らしかった。
レイファスは直ぐ、寝息立てたけど、ファントレイユは心臓がどきどき言い続けて、頬がずっと熱くなって眠れず…いつ迄もいつ迄も、隣の籐の寝椅子で眠る、レイファスの顔を見続けていた。
…だから陽が傾いて、夕べの冷えた風が開け放たれた窓から差し込むと、ファントレイユはレイファスが、寒く無いかを伺った。
けど女中が夕食を告げ…レイファスはむずったけど目を覚まし…ファントレイユは彼女を導いて、夕飯の席に誘った。
幾度も小さな…可愛らしい手を見たけど…どうしても掴んで
「こっち」
が出来なかった。
凄く、したかったけど、それで一発で熱を出したりしたら、もう最後でレイファスには二度と、会えなくなる。
ファントレイユはしたい事を極力我慢し続け、熱が出ない事とレイファスにこの先…もうずっと、会える事を願い続けた。
けど、部屋に入った途端、もう座っていたアリシャに言われた。
「今夜は泊めて頂くわ。
ファントレイユのお部屋でお休みなさい。って。
セフィリアが」
ファントレイユはびっくりした。
が、し過ぎて逆に、表情に出なかった。
顔が、一瞬で固まったから。
つい…一晩レイファスと一緒。
なんて具体的に考えたりすると、ぼっ!と顔が沸騰して、一発で熱を出し、レイファスとアリシャが馬車で帰る図が、想像出来たので。
けど…レイファスが振り向く。
途端、ファントレイユの方が意識して、顔下げた。
それでも頬が熱かったから…真っ赤にならないよう必死で心の中で、祈った。
レイファスが横を通り過ぎた時、足先に一気に重みがかかり…レイファスに、踏まれた。と解った。
突然ですっごくびっくりしたし、痛かったけど…ゼイブンの言葉が心に蘇り、何とか…声を、上げずに済んだ。
レイファスが、振り向く。
ファントレイユは一生懸命、痛くないフリをした。
レイファスに“弱っちい、男じゃない奴”
と思われたくなくて。
レイファスが、何かじーーっ。と見ていたから
『大丈夫だよ』
と言いたかったけど、今夜一緒。を意識して緊張が極限だったから、微笑むのが精一杯。
けど…レイファスが、ちょっと惚けた表情で見つめるので、ファントレイユはまた、少し開いた赤い柔らかそうな唇が可愛らしい。
と見つめてしまい、頬が熱くなって凄く、自制した。
…だから…セフィリアに
「レイファスとゲームをしたら?」
と言われたので、どれだけほっとしたか知れない。
ファントレイユは盤の上で、透ける石に綺麗に掘られた騎士やら姫君の駒を動かすゲームにこの所、夢中だったし、始めると空腹も忘れた。
姫君の駒は、ピンクの透ける石。
騎士は群青色と緑。それに黄色とそして…黒があった。
ファントレイユは群青の騎士が一番格好良くて、好きだった。
意地悪な魔女は紫。
この気まぐれ魔女は、下手をすると敵に寝返ったりもする。
黒の騎士は…凄く恐ろしい呪いの剣を持っていて…あまり好きでは無かったけど、ここ一番の時に使う。
威力は凄いけど…姫君のお付きの貴婦人に凄く弱くて…直ぐ、やられちゃうから姫の護衛の騎士が、うんと姫から離れてる時じゃないと、使えなかった。
目前にレイファスが居たから…最初は集中できなかったけど…レイファスは強くて、ぼっ。としてると、直ぐ手持ちの騎士達でファントレイユの駒の姫君を取り囲む。
姫を取られたらそれで負け。
ファントレイユは必死で駒の姫を、目前のお姫様(レイファス)から、護り始めた。
「(可愛くて、綺麗なだけじゃ無くって、かしこいんだ…)」
心の中でそう、呟きながら。
ファントレイユは最初、駒勧める毎にレイファスを盗み見してたけど、レイファスがあんまり強くて、ゲームに熱中した。
緑の騎士が華麗に盤の上を移動する。
黄色の騎士の使い方が突拍子も無くて、ファントレイユは進行を塞ぎ姫を護るのに、必死に成った。
レイファスは接近戦が好きみたいで、突然斬り込んで来る。
でもファントレイユは遠隔戦が好きだったから、その騎士の動きを離れた場所から、留めた。
レイファスは敵目前に、討ち取ろうとして毎度、遠く離れたマスから狙う敵の刺客に、足を止められ、騎士を討ち取れなかった。
ふ…と突然…。
レイファスも盤の上を凝視していたけど、ファントレイユも気づいた。
黄色の騎士を動かせば…姫を取れる事に。
…つまり…レイファスに勝てるのだ。
いつも、ファントレイユは家庭教師やセフィリア、執事相手に勝っていたから、幻の自分が、騎士を動かし敵の姫を取る様子が容易に浮かんだ。
レイファスを、チラ…と見た。
凄く、悔しそうだった。
途端…ファントレイユは幻を、遠ざけた。
姫が取れる位置から…黄色の騎士を、遠ざけたのだ。
レイファスは…びっくりして顔を上げて見た。
大きく見開かれた青紫の瞳。
そのピンクの小さな唇がやっぱりとても愛らしくて、ファントレイユは
『これでいいんだ』
と心から、納得した。
レイファスは
『ありがとう』
とも
『手加減したの?』
とも、言わなかった。
お礼を言われるか、微笑ってくれたら…凄く、嬉しかったけど…。
でも、レイファスがそこに居て、見つめる事が出来る。
それだけで幸福だったから、ファントレイユはやっぱり、我慢した。
自分の部屋に向かう途中、何度も横の、レイファスの温もりを感じ頬が熱くなる。
突然。
突然この後、一緒の寝台で眠るんだ。
と意識した途端、狼狽えきって転びそうになって、動く度レイファスに踏まれた足の指が、痛む事すら忘れた。
とセフィリアに言われた時には、心臓が口から出そうになった。
二人きりだ………。
どうしよう?
頬が真っ赤で、心臓がばくばく言うから、ファントレイユは出来るだけレイファスを、見ないようにした。
レイファスに会って熱を出したりしたら…セフィリアは二度と、レイファスを自宅に招かなくなるに違いない。
レイファスを二度と見られなくなるなんて…!
ファントレイユは絶望が心を真っ黒に染めるのが、解ったから、会った途端大好きになったレイファスを、熱が出るのが怖くてじっと見るのを、我慢した。
でも、レイファスが僕を見てる。
部屋で二人きりになって…だから、必死で喋り続けた。
ちょっと、拗ねたような表情。
気に入られなかったのかな?
それも不安で、ファントレイユは一人で…喋り続けた。
何喋ってるか、自分でもまるで、解らなかったけど……………。
昼食の支度が出来た。
と女中のマリーアンが来て告げられ、レイファスと一緒に部屋を出たけど、足が宙に、浮いてる感じで…足元がふわふわした。
部屋を出る時、憧れのマリーアンに
「とても綺麗で愛らしい方ですね?」
と笑ってウィンクされて言われ、頬がまた、熱くなったので必死に、熱を出さないよう祈った。
レイファスを、二度と招待しないわ。
とセフィリアに言われるのだけは、絶対嫌だった。
食事の味なんか、まるで解らなかった。
窓が開いていて、風がレイファスの巻き毛を揺らしてる。
鮮やかで明るい栗毛。
顔上げると、くっきりと大きな青紫の瞳。
食卓の、ピンクの薔薇が目に入る。
もし…出来るなら、レイファスにとても似合う…ピンクの薔薇の花束を、プレゼントしたかった。
…そんな事考えていたし、ずっとぽーっと成って、もし熱が出ていてもセフィリアには絶対気づかれないように。
と気を引き締めていたから…昼寝の時間、横の籐椅子に横たわるレイファスの寝顔を見、女中に毛布かけられ、微笑んでお礼を言って…二人、だけで昼寝の時間を過ごした時ようやく…レイファスの、寝顔をたっぷりゆっくり、見られた。
色が白くて…ぷっくりとした頬は愛らしいし、唇はとても、可愛らしかった。
レイファスは直ぐ、寝息立てたけど、ファントレイユは心臓がどきどき言い続けて、頬がずっと熱くなって眠れず…いつ迄もいつ迄も、隣の籐の寝椅子で眠る、レイファスの顔を見続けていた。
…だから陽が傾いて、夕べの冷えた風が開け放たれた窓から差し込むと、ファントレイユはレイファスが、寒く無いかを伺った。
けど女中が夕食を告げ…レイファスはむずったけど目を覚まし…ファントレイユは彼女を導いて、夕飯の席に誘った。
幾度も小さな…可愛らしい手を見たけど…どうしても掴んで
「こっち」
が出来なかった。
凄く、したかったけど、それで一発で熱を出したりしたら、もう最後でレイファスには二度と、会えなくなる。
ファントレイユはしたい事を極力我慢し続け、熱が出ない事とレイファスにこの先…もうずっと、会える事を願い続けた。
けど、部屋に入った途端、もう座っていたアリシャに言われた。
「今夜は泊めて頂くわ。
ファントレイユのお部屋でお休みなさい。って。
セフィリアが」
ファントレイユはびっくりした。
が、し過ぎて逆に、表情に出なかった。
顔が、一瞬で固まったから。
つい…一晩レイファスと一緒。
なんて具体的に考えたりすると、ぼっ!と顔が沸騰して、一発で熱を出し、レイファスとアリシャが馬車で帰る図が、想像出来たので。
けど…レイファスが振り向く。
途端、ファントレイユの方が意識して、顔下げた。
それでも頬が熱かったから…真っ赤にならないよう必死で心の中で、祈った。
レイファスが横を通り過ぎた時、足先に一気に重みがかかり…レイファスに、踏まれた。と解った。
突然ですっごくびっくりしたし、痛かったけど…ゼイブンの言葉が心に蘇り、何とか…声を、上げずに済んだ。
レイファスが、振り向く。
ファントレイユは一生懸命、痛くないフリをした。
レイファスに“弱っちい、男じゃない奴”
と思われたくなくて。
レイファスが、何かじーーっ。と見ていたから
『大丈夫だよ』
と言いたかったけど、今夜一緒。を意識して緊張が極限だったから、微笑むのが精一杯。
けど…レイファスが、ちょっと惚けた表情で見つめるので、ファントレイユはまた、少し開いた赤い柔らかそうな唇が可愛らしい。
と見つめてしまい、頬が熱くなって凄く、自制した。
…だから…セフィリアに
「レイファスとゲームをしたら?」
と言われたので、どれだけほっとしたか知れない。
ファントレイユは盤の上で、透ける石に綺麗に掘られた騎士やら姫君の駒を動かすゲームにこの所、夢中だったし、始めると空腹も忘れた。
姫君の駒は、ピンクの透ける石。
騎士は群青色と緑。それに黄色とそして…黒があった。
ファントレイユは群青の騎士が一番格好良くて、好きだった。
意地悪な魔女は紫。
この気まぐれ魔女は、下手をすると敵に寝返ったりもする。
黒の騎士は…凄く恐ろしい呪いの剣を持っていて…あまり好きでは無かったけど、ここ一番の時に使う。
威力は凄いけど…姫君のお付きの貴婦人に凄く弱くて…直ぐ、やられちゃうから姫の護衛の騎士が、うんと姫から離れてる時じゃないと、使えなかった。
目前にレイファスが居たから…最初は集中できなかったけど…レイファスは強くて、ぼっ。としてると、直ぐ手持ちの騎士達でファントレイユの駒の姫君を取り囲む。
姫を取られたらそれで負け。
ファントレイユは必死で駒の姫を、目前のお姫様(レイファス)から、護り始めた。
「(可愛くて、綺麗なだけじゃ無くって、かしこいんだ…)」
心の中でそう、呟きながら。
ファントレイユは最初、駒勧める毎にレイファスを盗み見してたけど、レイファスがあんまり強くて、ゲームに熱中した。
緑の騎士が華麗に盤の上を移動する。
黄色の騎士の使い方が突拍子も無くて、ファントレイユは進行を塞ぎ姫を護るのに、必死に成った。
レイファスは接近戦が好きみたいで、突然斬り込んで来る。
でもファントレイユは遠隔戦が好きだったから、その騎士の動きを離れた場所から、留めた。
レイファスは敵目前に、討ち取ろうとして毎度、遠く離れたマスから狙う敵の刺客に、足を止められ、騎士を討ち取れなかった。
ふ…と突然…。
レイファスも盤の上を凝視していたけど、ファントレイユも気づいた。
黄色の騎士を動かせば…姫を取れる事に。
…つまり…レイファスに勝てるのだ。
いつも、ファントレイユは家庭教師やセフィリア、執事相手に勝っていたから、幻の自分が、騎士を動かし敵の姫を取る様子が容易に浮かんだ。
レイファスを、チラ…と見た。
凄く、悔しそうだった。
途端…ファントレイユは幻を、遠ざけた。
姫が取れる位置から…黄色の騎士を、遠ざけたのだ。
レイファスは…びっくりして顔を上げて見た。
大きく見開かれた青紫の瞳。
そのピンクの小さな唇がやっぱりとても愛らしくて、ファントレイユは
『これでいいんだ』
と心から、納得した。
レイファスは
『ありがとう』
とも
『手加減したの?』
とも、言わなかった。
お礼を言われるか、微笑ってくれたら…凄く、嬉しかったけど…。
でも、レイファスがそこに居て、見つめる事が出来る。
それだけで幸福だったから、ファントレイユはやっぱり、我慢した。
自分の部屋に向かう途中、何度も横の、レイファスの温もりを感じ頬が熱くなる。
突然。
突然この後、一緒の寝台で眠るんだ。
と意識した途端、狼狽えきって転びそうになって、動く度レイファスに踏まれた足の指が、痛む事すら忘れた。
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