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第三章
アレクシスの頼み
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ソフィア達がブロンに来てから数日が過ぎたある日の昼間。ライルは城内の書庫に向かっていた。
両手には皿一杯に積まれたクッキーと紅茶が入ったティーポット、それからティーカップを三つ乗せたお盆を抱えている。ソフィアとレティシアに届ける為だ。
ソフィアは今レティシアに文字や軍隊の動かし方、交渉の仕方などのこれから先必要とされるであろう事を教えてもらっていた。
書庫の扉をなんとか開けると書庫内の机にソフィアが座り隣でレティシアがなにやら話し込んでいた。
「よ、しっかりやってるか? 」
ライルは隣の机にお盆を置いて話しかける。
「あ、ライル。今レティシアさんに交渉術を教えて貰っていたところです 」
「そうか、上手くいってるのか? 」
するとレティシアは頷く。
「うん、彼女はかなり交渉上手だよ。それに軍を動かすカリスマ性もある 」
するとソフィアは照れ臭そうにクッキーを手に取り齧る。
それを見てライルは苦笑する。
「まぁそうだよな、交渉相手の机に剣を突き立てるくらいだしなぁ 」
ソフィアはそれを聞いて顔が赤くなる。
「ラ、ライル!それは言わないで下さい! 」
それを見てレティシアは笑う。
それからライルに言う。
「そういえばライル、アレクシスが君を呼んでたよ 」
「俺を?……わかった 」
ライルは書庫を後にする。それから執務室に向かう。
「アレクシス、居るか? 」
執務室の扉を開けるとアレクシスは椅子にもたれて寝ていた。
「ん、あ、ああライルかレティシアに聞いて来たのか? 」
「ああ、それで人を呼んどいて居眠りかよ 」
「はは、俺は一応お前の上官だぞ 」
「元、だろ。で?何の用事だ 」
するとアレクシスは一枚の羊皮紙を出す。
「これは…… 」
ライルは羊皮紙を見る。するとそれは何かの報告書のようだった。
「大海賊海蛇がブロン近隣の港町に向かっているとの報告があった。速やかに討伐しろとの事だ 」
「……報酬は? 」
「無い 」
ライルは苦笑する。
「実の父親を牢屋にぶち込むのにタダ働きかよ 」
「いいのか?お前の軍規違反今ここで処罰してもいいんだぞ 」
「はっ!お前じゃ俺を殺せない 」
二人は少し睨み合う。しかしすぐにライルは聞く。
「まあいいか、分かった、いつ行けばいい?
「今からだ 」
「急だな 」
「現地にいる俺の部下と話し合う必要がある 」
「分かった、準備してくる 」
ライルは執務室を出る。それから自分用に用意された客室に向かう。
部屋で旅の支度をする。
といってもそこまで遠くに行くわけでも無いので荷物は少ない。
多分ライルの愛馬ユニコーンのユグドに乗れば一日あれば目的地に着くはずだ。
リュックに着替えと包帯や消毒液などの簡単な医療具を入れ金銭を入れた革袋を腰のベルトに吊るしそれからサーベルを六本吊って準備完了。
部屋を出てソフィアに会いに行く。
すると丁度ソフィアがこちらに来ていた。
それも背中に荷物を背負い腰に剣を吊っている。
「あ、ライル。準備できたようですね。それでは行きましょう 」
「行きましょうじゃねーよ!ソフィアは行く必要無いだろ! 」
「いえ、私もお手伝いします。最近座学だけで身体が鈍ってしまうので 」
ソフィアはやる気満々の様だ。
ライルはため息を吐くと言う。
「分かったよ、じゃあ行くか 」
それにソフィアは「はい」と返事をすると城を後にした。
その頃、エルザーク帝国領海内のとある船。
「シュビレヴラウ船長、後一日で港町に着きやす 」
頭に青色のバンダナを巻いた男が言う。それに船端で腕を組んでいる身長が二メートルはあるであろう大男が言う。
「うむ、このまま直進する! 」
その言葉に甲板で働いていた船員が一斉に返事をする。
その声に呼応する様に黒い帆に描かれた女神に巻きつく海蛇がなびいた—————。
両手には皿一杯に積まれたクッキーと紅茶が入ったティーポット、それからティーカップを三つ乗せたお盆を抱えている。ソフィアとレティシアに届ける為だ。
ソフィアは今レティシアに文字や軍隊の動かし方、交渉の仕方などのこれから先必要とされるであろう事を教えてもらっていた。
書庫の扉をなんとか開けると書庫内の机にソフィアが座り隣でレティシアがなにやら話し込んでいた。
「よ、しっかりやってるか? 」
ライルは隣の机にお盆を置いて話しかける。
「あ、ライル。今レティシアさんに交渉術を教えて貰っていたところです 」
「そうか、上手くいってるのか? 」
するとレティシアは頷く。
「うん、彼女はかなり交渉上手だよ。それに軍を動かすカリスマ性もある 」
するとソフィアは照れ臭そうにクッキーを手に取り齧る。
それを見てライルは苦笑する。
「まぁそうだよな、交渉相手の机に剣を突き立てるくらいだしなぁ 」
ソフィアはそれを聞いて顔が赤くなる。
「ラ、ライル!それは言わないで下さい! 」
それを見てレティシアは笑う。
それからライルに言う。
「そういえばライル、アレクシスが君を呼んでたよ 」
「俺を?……わかった 」
ライルは書庫を後にする。それから執務室に向かう。
「アレクシス、居るか? 」
執務室の扉を開けるとアレクシスは椅子にもたれて寝ていた。
「ん、あ、ああライルかレティシアに聞いて来たのか? 」
「ああ、それで人を呼んどいて居眠りかよ 」
「はは、俺は一応お前の上官だぞ 」
「元、だろ。で?何の用事だ 」
するとアレクシスは一枚の羊皮紙を出す。
「これは…… 」
ライルは羊皮紙を見る。するとそれは何かの報告書のようだった。
「大海賊海蛇がブロン近隣の港町に向かっているとの報告があった。速やかに討伐しろとの事だ 」
「……報酬は? 」
「無い 」
ライルは苦笑する。
「実の父親を牢屋にぶち込むのにタダ働きかよ 」
「いいのか?お前の軍規違反今ここで処罰してもいいんだぞ 」
「はっ!お前じゃ俺を殺せない 」
二人は少し睨み合う。しかしすぐにライルは聞く。
「まあいいか、分かった、いつ行けばいい?
「今からだ 」
「急だな 」
「現地にいる俺の部下と話し合う必要がある 」
「分かった、準備してくる 」
ライルは執務室を出る。それから自分用に用意された客室に向かう。
部屋で旅の支度をする。
といってもそこまで遠くに行くわけでも無いので荷物は少ない。
多分ライルの愛馬ユニコーンのユグドに乗れば一日あれば目的地に着くはずだ。
リュックに着替えと包帯や消毒液などの簡単な医療具を入れ金銭を入れた革袋を腰のベルトに吊るしそれからサーベルを六本吊って準備完了。
部屋を出てソフィアに会いに行く。
すると丁度ソフィアがこちらに来ていた。
それも背中に荷物を背負い腰に剣を吊っている。
「あ、ライル。準備できたようですね。それでは行きましょう 」
「行きましょうじゃねーよ!ソフィアは行く必要無いだろ! 」
「いえ、私もお手伝いします。最近座学だけで身体が鈍ってしまうので 」
ソフィアはやる気満々の様だ。
ライルはため息を吐くと言う。
「分かったよ、じゃあ行くか 」
それにソフィアは「はい」と返事をすると城を後にした。
その頃、エルザーク帝国領海内のとある船。
「シュビレヴラウ船長、後一日で港町に着きやす 」
頭に青色のバンダナを巻いた男が言う。それに船端で腕を組んでいる身長が二メートルはあるであろう大男が言う。
「うむ、このまま直進する! 」
その言葉に甲板で働いていた船員が一斉に返事をする。
その声に呼応する様に黒い帆に描かれた女神に巻きつく海蛇がなびいた—————。
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