十字架のソフィア

カズッキオ

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第三章

再戦

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 「親父に会わせろ 」

ライルは甲板で自分の周りを囲む船員達に言う。
すると褐色肌の左目に眼帯を付けた女性と細身の男が出てくる。
ヘレン・サレージとアダム・ブルゴッティだ。バルフリートが船長になる前から付き従っているメンバーでその実力はかなりのものだろう。その二人がライルに言う。

「よぉライル、船長に会いたきゃまずはアタシ達を倒してからにしな 」

「そうだぜ、勝手に食糧庫から出たんだ、覚悟は出来てるんだろう? 」

二人を見てライルは笑う。

「いいぜ、鈍った体をほぐすには丁度いい準備運動だ 」

ライルは腰のサーベルを抜く。

ヘレンは短剣使い、アダムはサーベルの二刀使いだ。

「ふん、言ってくれるねぇ。後悔するんじゃないよ! 」

ヘレンが短剣を突き出す。

ライルはそれを半身で躱す。するとアダムが剣を振るう。だがライルは剣で受けると直ぐにアダムの片方の剣を弾き飛ばし更にアダムの腹を蹴り飛ばす。

「おわっ! 」

アダムは吹き飛び樽に打つかる。

「やってくれるじゃないか! 」

ヘレンとライルは数合打ち合う。
そのうちにアダムがまた剣を上段から振り下ろす。
ライルはヘレンの短剣を紙一重で避けるとアダムの剣をサーベルの反りで受け流しアダムの重心が傾いた瞬間、サーベルの柄尻で殴りつけ気絶させる。

そして二撃目でヘレンの短剣を弾き飛ばし首元に剣を突きつける。

「俺の勝ちだ。ヘレン、アダム  」

するとヘレンは笑いながら言う。

「驚いた、本当に強くなったんだね 」

「そりゃ、魔王を倒すには強くならなきゃいけなかった。それに俺はもうあんた達の知ってる俺じゃない 」

「ははっ、ならそれをそのまま船長に伝えればいいんじゃないか? 」

ライルはそれを聞いた後、剣を鞘に収め言う。

「……ああ、もちろんそうする 」

ライルは一歩前に出て船長室の方を向いて叫ぶ。

「キャプテンバルフリート!あんたに再戦を申し込む、船長室から出てこい! 」

すると船長室のドアが勢いよく開く。

「ええいうるせぇガキだ!言われなくとも出てくるわ! 」

バルフリートは船長室のある階段から飛び降りてライルの前に出てくる。そして船長室の開いたままの扉の向こうには金糸の様な髪の少女。

「ソフィア…… 」

ライルはソフィアの名を呼ぶ。するとソフィアがライルに向けて微笑む。

「ライル、貴方なら勝てます。私は信じてますから 」

「はは、そうか、なら絶対に勝たなくちゃな! 」

ライルは剣を抜きバルフリートに向かい駆け出す。

「ふん、いいだろうもう一回ぶん殴ってやる! 」

バルフリートは剣を構える。
そして二人は交錯する。

甲高い金属音と火花が散る。

さらに数合打ち合う。

「はッ! 」

「ぐぬぅ  」

ライルの一撃でバルフリートは数歩下がる。

「バカが、二本目を抜いていれば俺の首をはねれたものを 」

しかしライルは何も言わない。
それを見た船員達がざわめく。

「おい、なんでライルは二本目を抜かない? まさかライルの野郎船長相手に手加減してんのか? 」

それを聞いたヘレンが言う。

「いや、ライルは手加減してるわけじゃない。だがあの剣技、あれは船長と同じ剣技だ 」

そしてソフィアもまたライルの剣技を見て小さく言う。

「ライル……貴方は過去の弱かった自分を父親を超える事で塗りかえようというのですね 」

   

  昔、ある剣士に言われたことがある。

『ライルよ、剣士たるもの初心を忘れるでないぞ。初心とは即ち剣を始めて学んだ時の事、分からなければライルの心に聞いてごらん 』

その剣士の言葉をライルは食糧庫で思い出していた。
今の自分の剣が父に届かないのならば自分の過去を超えるしかない。それが未来になるのだから。

「はあぁぁぁぁぁぁ! 」

だからライル・シュビレブラウは一歩踏み込んで父親に向かい剣を振るった。

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