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④お菓子がない、だと……?
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「それ、もしかして黒曜石?」
「うん、たぶん。まるでササの瞳だ……」
エルピディオが最後に見つけた石は黒曜石らしい。石器時代に鏃を作ったアレだな。天然のガラスだから割ったら斬れ味がいいのは納得だよな。
薄くなったところが少し茶色がかっているそれは確かに黒と焦茶が混ざる俺の瞳の色だろう。いや、髪の色もそうだ。淡い金髪に翠の瞳のエルピディオの色はそこらに落ちてない。
比べてどうなるもんでもないけど何となくチベットスナギツネになってしまう。別に悔しくはないが。
……むずっ
「ぷしゅっ!」
「え?」
「あー、寒くなってきたな。帰って温泉入ろうぜ!」
「今の、クシャミ?」
「それ以外の何に聞こえたんだよ」
人のくしゃみに文句つけてんじゃねぇ。
小型犬とか言われたことなんてない。
俺のクシャミがツボったらしいエルピディオを放置して帰る。道は覚えているので1人で帰れる。ついてくんな!!
お前んちだけどついてくんな!
ファンタジーな生き物どころか普通の生き物にすら会えなかったと気づいたのは夜、ベッドに入ってからだった。
薬師だもんね。
魔物避けとか作れるよねー。
がっかりだよっ!!
家の鍵は魔紋認証だそうだ。
つまりエルピディオと俺はいつでも入れるし、他人は入れない。ジャコッペには認証用の鍵を預けてあるという。
「え? 俺にも魔力あんの?」
「生き物全てに魔力はあるよ。生命力でもあるからね」
一緒にすんな!
魔力には夢があるけど生命力に夢はないぞ。(※個人の感想です)
とか言ってもこの世界のことわりなんだとしたら噛みついても意味がない。それに魔力枯渇が生命力枯渇とイコールだとしたらヤバい。怖い。無理のない範囲で試してみよう。
河原で遊んで身体が冷えていたので家に着いてすぐお風呂に入って温まる。浄化魔法が付与されたマットの上に立つだけで身体がきれいになるので垢すりとかナイロンタオルみたいなものがない。
マッサージ的に気持ちいいのになぁ。ボディブラシでも作ってもらおうかな。
浄化魔法マットで髪もツヤサラになるらしいが俺は短髪なので分からない。エルピディオは初めて見たときから艶サラだしな。
「なんだ?」
「うっ、ううん。何でもない、よ?」
「そうかよ」
何でもないならチラチラ見るんじゃねぇ。
痩せててガッカリとか色気がないとか考えてんのか? どうやって太らせるか計画してないよな?
「ササは、裸見られるのは……、嫌じゃないの?」
「……嫌だが?」
「なら何で一緒にお風呂に入ってくれるの?」
「俺のいた国では同性なら一緒に風呂に入るのは普通のことだったんだ。それに、俺がエルピディオのことを嫌いじゃないからだな」
強制的に呼び出された訳だけど嫌いじゃないんだよな。同情かも知れん。それか美形だけどモテなくて情けない感じのエルピディオに優越感持ってるのかも。俺、性格悪いな。
「私の身体、気持ち悪くない……?」
「はぁっ!?」
高身長に長い手脚、引き締まった身体。ほぼ理想じゃねーか。だからそんな泣きそうな顔すんじゃねぇよ。
「俺からしたら憧れだぞ」
「あこがれ……」
「俺もそんな体型だったら良かったのになぁ」
「それはダメ!!」
エルピディオにとっては嫌な体型らしい。
食い気味に叫ぶ言葉に笑ってしまった。
温まって風呂から上がり、夕飯を食べる。
基本的に肉のソテーとシチューとサラダ、パンでデザートはない。
甘味は高いとかそういうやつ?
「なぁ、果物とか甘いものとかってないの?」
「私があまり好きじゃないから用意してないけど、ササは好き?」
「たまに食べたくなる程度だけどな」
なんて嘘をついてみる。ほんとは大好きだけど太りたくないから我慢しようとか、高かったら申し訳ないかな~、とか。でも全く食べないと禁断症状がでてドカ食いしそうだから確認してみた。
「あ、でもこっちの甘いものに興味ある!」
そうだ、味見しておかないと禁断症状のあげくに食べたら美味しくないとかブチギレかねない。無理は禁物です。
「じゃあ、ジャコッペに頼んでおくね」
「おう! 楽しみにしとく」
ブルーハワイみたいな苺とかだったらどうしよう! 紫の柿とか茶色のりんごとか。
草や葉っぱはこっちでも緑だったからそんなに違いはないかな? 血の色も赤いらしいし、生き物として同じようでよかった。血が青かったら興奮した時顔が青くなるもんな。勘違いしそうだわ。
そして2日後。
冬だからか、出されたのはリンゴだった。めっちゃピンクでハート型にも見えるかわいいリンゴ。サイズは普通。食べてみたら瑞々しくて甘い。
「美味っ! こんなリンゴ初めて食った!!」
「そんなに美味しい?」
「おう! ありがとうな。でもこれ、高いんじゃないか?」
「ううん。植えれば手入れしなくても簡単に実るよ。うちの庭にも植えようか?」
「いいな! そしたら毎日食えるのか!」
これは飽きない。
これならリンゴダイエットも苦にならない。
あれ? リンゴダイエットって同じものばかり食べると飽きて食欲が落ちるから痩せられるんだっけ?
違ったっけ?
まぁ、いいや。
その日から毎日、おやつと夕飯に果物を出してくれるようになった。
リンゴ、ミカン、冬ブドウ。
季節が進むとイチゴやビワ、さくらんぼ。夏にはメロンにライチにスモモ。秋には梨、ブドウ、柿。
名前は同じでも形や色が微妙に違うっぽい。
でもみんな甘いんだって。
多分、俺に馴染みのある名前で理解しているけど本当の名前は違うんだろうな。ちっちゃいことだから気にしないけど。
なぁんて呑気にうまうま楽しんでいた俺が我に返ったのは3ヶ月後。
……お気づきだろうか。
こっちの果物は甘い。
甘いということは高カロリー。
それを、うっかり喜んでしまった俺のために毎日出してくれるエルピディオ。
何がどうなったかというと……。
太った。
まだ3ヶ月なのでほんの少しではあるけど、骨ばっていた身体にうっすら脂肪がついてきた。
ヤバい!!
太ったら美味しくいただかれちゃう!
気分はヘンゼルとグレーテルだよ!
でも急に果物を拒否したら原因を探られてしまうだろう。俺しか気づいてないうちに運動して痩せないと! いや、いきなり運動するのもアレだよなぁ。
果物に飽きた、とは言いたくない。
美味しいから。
いっそ健康的なぽっちゃりを通り過ぎれば……、ってちょうどいいところでいただかれるよ!
「ササ、どうかした?」
「いっ!? いや、なんでもない!!」
「そう? なにかあったら相談してね。私たち、友達、だよね?」
「あぁ、そうだな」
……エルピディオっていいやつだよな。
俺を尊重してくれるし、喜ばせようとしてくれるし、地道な仕事を黙々とこなすし。
太ったからって無理やり手を出そうとなんてしないか。
うん……、信じよう。
そうだよ、友達だっていうなら信じなくてどうするんだよ。俺が一方的に決めた関係だとしてもエルピディオは受け入れてくれている。それなのに俺が疑うなんて失礼だよな!
よし、今まで通りの自然体でいよう。
と、いうことでクッキーとかケーキとかタルトとか、聞いてみようっと!
「なぁ、なぁ、ケーキとかクッキーみたいなお菓子ってある?」
「聞いたことくらいは……」
「え……」
「確か果物があまりとれない西の方の国にあると聞いたことが……」
「マジか……」
この国の果物は甘く、ほぼ1年中食べられる。わざわざ手間暇かけてお菓子を作る必要がない。確かにお菓子作りって手間かかるけど。
かかるけど!!
「あんまりだぁぁぁぁっ!!」
思わず声に出して崩れ落ちる俺にただオロオロするエルピディオ。大袈裟ですまん。でもさ、高級だから食べられないとかじゃなく、この国にはほぼ存在しないってことじゃん。
こうなったら自分で作るしかない!
だって食べられないと思うと無性に食べたくなるじゃん!!
「うん、たぶん。まるでササの瞳だ……」
エルピディオが最後に見つけた石は黒曜石らしい。石器時代に鏃を作ったアレだな。天然のガラスだから割ったら斬れ味がいいのは納得だよな。
薄くなったところが少し茶色がかっているそれは確かに黒と焦茶が混ざる俺の瞳の色だろう。いや、髪の色もそうだ。淡い金髪に翠の瞳のエルピディオの色はそこらに落ちてない。
比べてどうなるもんでもないけど何となくチベットスナギツネになってしまう。別に悔しくはないが。
……むずっ
「ぷしゅっ!」
「え?」
「あー、寒くなってきたな。帰って温泉入ろうぜ!」
「今の、クシャミ?」
「それ以外の何に聞こえたんだよ」
人のくしゃみに文句つけてんじゃねぇ。
小型犬とか言われたことなんてない。
俺のクシャミがツボったらしいエルピディオを放置して帰る。道は覚えているので1人で帰れる。ついてくんな!!
お前んちだけどついてくんな!
ファンタジーな生き物どころか普通の生き物にすら会えなかったと気づいたのは夜、ベッドに入ってからだった。
薬師だもんね。
魔物避けとか作れるよねー。
がっかりだよっ!!
家の鍵は魔紋認証だそうだ。
つまりエルピディオと俺はいつでも入れるし、他人は入れない。ジャコッペには認証用の鍵を預けてあるという。
「え? 俺にも魔力あんの?」
「生き物全てに魔力はあるよ。生命力でもあるからね」
一緒にすんな!
魔力には夢があるけど生命力に夢はないぞ。(※個人の感想です)
とか言ってもこの世界のことわりなんだとしたら噛みついても意味がない。それに魔力枯渇が生命力枯渇とイコールだとしたらヤバい。怖い。無理のない範囲で試してみよう。
河原で遊んで身体が冷えていたので家に着いてすぐお風呂に入って温まる。浄化魔法が付与されたマットの上に立つだけで身体がきれいになるので垢すりとかナイロンタオルみたいなものがない。
マッサージ的に気持ちいいのになぁ。ボディブラシでも作ってもらおうかな。
浄化魔法マットで髪もツヤサラになるらしいが俺は短髪なので分からない。エルピディオは初めて見たときから艶サラだしな。
「なんだ?」
「うっ、ううん。何でもない、よ?」
「そうかよ」
何でもないならチラチラ見るんじゃねぇ。
痩せててガッカリとか色気がないとか考えてんのか? どうやって太らせるか計画してないよな?
「ササは、裸見られるのは……、嫌じゃないの?」
「……嫌だが?」
「なら何で一緒にお風呂に入ってくれるの?」
「俺のいた国では同性なら一緒に風呂に入るのは普通のことだったんだ。それに、俺がエルピディオのことを嫌いじゃないからだな」
強制的に呼び出された訳だけど嫌いじゃないんだよな。同情かも知れん。それか美形だけどモテなくて情けない感じのエルピディオに優越感持ってるのかも。俺、性格悪いな。
「私の身体、気持ち悪くない……?」
「はぁっ!?」
高身長に長い手脚、引き締まった身体。ほぼ理想じゃねーか。だからそんな泣きそうな顔すんじゃねぇよ。
「俺からしたら憧れだぞ」
「あこがれ……」
「俺もそんな体型だったら良かったのになぁ」
「それはダメ!!」
エルピディオにとっては嫌な体型らしい。
食い気味に叫ぶ言葉に笑ってしまった。
温まって風呂から上がり、夕飯を食べる。
基本的に肉のソテーとシチューとサラダ、パンでデザートはない。
甘味は高いとかそういうやつ?
「なぁ、果物とか甘いものとかってないの?」
「私があまり好きじゃないから用意してないけど、ササは好き?」
「たまに食べたくなる程度だけどな」
なんて嘘をついてみる。ほんとは大好きだけど太りたくないから我慢しようとか、高かったら申し訳ないかな~、とか。でも全く食べないと禁断症状がでてドカ食いしそうだから確認してみた。
「あ、でもこっちの甘いものに興味ある!」
そうだ、味見しておかないと禁断症状のあげくに食べたら美味しくないとかブチギレかねない。無理は禁物です。
「じゃあ、ジャコッペに頼んでおくね」
「おう! 楽しみにしとく」
ブルーハワイみたいな苺とかだったらどうしよう! 紫の柿とか茶色のりんごとか。
草や葉っぱはこっちでも緑だったからそんなに違いはないかな? 血の色も赤いらしいし、生き物として同じようでよかった。血が青かったら興奮した時顔が青くなるもんな。勘違いしそうだわ。
そして2日後。
冬だからか、出されたのはリンゴだった。めっちゃピンクでハート型にも見えるかわいいリンゴ。サイズは普通。食べてみたら瑞々しくて甘い。
「美味っ! こんなリンゴ初めて食った!!」
「そんなに美味しい?」
「おう! ありがとうな。でもこれ、高いんじゃないか?」
「ううん。植えれば手入れしなくても簡単に実るよ。うちの庭にも植えようか?」
「いいな! そしたら毎日食えるのか!」
これは飽きない。
これならリンゴダイエットも苦にならない。
あれ? リンゴダイエットって同じものばかり食べると飽きて食欲が落ちるから痩せられるんだっけ?
違ったっけ?
まぁ、いいや。
その日から毎日、おやつと夕飯に果物を出してくれるようになった。
リンゴ、ミカン、冬ブドウ。
季節が進むとイチゴやビワ、さくらんぼ。夏にはメロンにライチにスモモ。秋には梨、ブドウ、柿。
名前は同じでも形や色が微妙に違うっぽい。
でもみんな甘いんだって。
多分、俺に馴染みのある名前で理解しているけど本当の名前は違うんだろうな。ちっちゃいことだから気にしないけど。
なぁんて呑気にうまうま楽しんでいた俺が我に返ったのは3ヶ月後。
……お気づきだろうか。
こっちの果物は甘い。
甘いということは高カロリー。
それを、うっかり喜んでしまった俺のために毎日出してくれるエルピディオ。
何がどうなったかというと……。
太った。
まだ3ヶ月なのでほんの少しではあるけど、骨ばっていた身体にうっすら脂肪がついてきた。
ヤバい!!
太ったら美味しくいただかれちゃう!
気分はヘンゼルとグレーテルだよ!
でも急に果物を拒否したら原因を探られてしまうだろう。俺しか気づいてないうちに運動して痩せないと! いや、いきなり運動するのもアレだよなぁ。
果物に飽きた、とは言いたくない。
美味しいから。
いっそ健康的なぽっちゃりを通り過ぎれば……、ってちょうどいいところでいただかれるよ!
「ササ、どうかした?」
「いっ!? いや、なんでもない!!」
「そう? なにかあったら相談してね。私たち、友達、だよね?」
「あぁ、そうだな」
……エルピディオっていいやつだよな。
俺を尊重してくれるし、喜ばせようとしてくれるし、地道な仕事を黙々とこなすし。
太ったからって無理やり手を出そうとなんてしないか。
うん……、信じよう。
そうだよ、友達だっていうなら信じなくてどうするんだよ。俺が一方的に決めた関係だとしてもエルピディオは受け入れてくれている。それなのに俺が疑うなんて失礼だよな!
よし、今まで通りの自然体でいよう。
と、いうことでクッキーとかケーキとかタルトとか、聞いてみようっと!
「なぁ、なぁ、ケーキとかクッキーみたいなお菓子ってある?」
「聞いたことくらいは……」
「え……」
「確か果物があまりとれない西の方の国にあると聞いたことが……」
「マジか……」
この国の果物は甘く、ほぼ1年中食べられる。わざわざ手間暇かけてお菓子を作る必要がない。確かにお菓子作りって手間かかるけど。
かかるけど!!
「あんまりだぁぁぁぁっ!!」
思わず声に出して崩れ落ちる俺にただオロオロするエルピディオ。大袈裟ですまん。でもさ、高級だから食べられないとかじゃなく、この国にはほぼ存在しないってことじゃん。
こうなったら自分で作るしかない!
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