【完結】ご褒美嫁として召喚されたのにガッカリされました。怒っていいよね?

香月ミツほ

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⑪町デート という名のリサーチ

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エルピディオを町デートに誘ってみた。

ぽっちゃりがもてはやされると聞いたけど、どの程度なのか実感したい。人気の役者がいればブロマイドとか見られるかも知れない。

町の人たちのぽっちゃりレベルも気になってきたし。

で、町に行くのに消極的なエルピディオに胴回りに布を巻き、ゆったりした服を着せる。シャープな顔立ちがダメらしいので含み綿をさせる。細い首が見えないよう、スカーフをまく。そしていつものローブを羽織って完成!!

「どう?」
「こ、これが私……?」

『これが私?』いただきました!!

まぁ、そこまで変わってないけどフェイスラインがまろやかになるだけで印象って変わるよね。

ってことで、デートだデートだー!!





エルピディオの家は町外れにあるので、町の中心部まで徒歩だと3時間。なかなかの距離がある。なので、ロバ車で行きます。ロバ車はジャコッペの家から借りた。

変装したエルピディオを見てすごく驚いていたのが面白かった。

ロバ車は小さな荷車で幌はない。
そして御者台(?)には2人並んで座れたのでよりデート感が増している。エルピディオが用意したクッションがなかなかいい感じだ。

「エルピディオ、このクッションいいな」
「良かった! バネ羊の毛は弾力があってへたりにくいから馬車のシートに最適なんだ。ベッドにも使われてるよ」
「そうだったのか。高いんじゃないのか?」
「そうだね、それなりに高級品だね。でもお嫁さんのためなら用意するでしょ?」
「お、おう。……ありがとな」
「えへへ……」

嫁入り道具ならぬ嫁取り道具か。

などとしょうもないことを考えながら道の両脇に広がる麦畑を眺めながら進む。

この麦が小麦なのか大麦なのか。

どうでもいいか。

押し固めただけの道だったのが石畳の道に合流する。私道と公道みたいな違いだろうか。道沿いにところどころまばらに木が生えていて、その近くには数軒の家があり、集落が作られている。

農作業している人を見かけたがぽっちゃりなのか中年太りなのか遠くからでは分からない。中年太りもマッチョも人気だそうだが……。





集落を2つほどを通り過ぎて町が見えてきた。
町を囲むような外壁はなく、たくさんの建物が密集している。高い塔は宗教施設だろうか。

検問とかはないらしい。

「ササは何か見たいものある?」
「朝市かな」
「朝市……、まだやってるかな……」

朝市へ行くなら夜明けと共に家を出るべきだった。のんびり起きてご飯を食べて、家を出て1時間くらいたっている。

終わってたら終わってたでいいや。




「やっぱりもう片付けてる……」
「しゃーない。あ、でも屋台があるな」
「そっちはまだ準備中だけど、もうお腹すいた?」
「いいや、後で食べるためのチェックだ」

中央通りはかなり広く、両脇に屋台が並ぶ。
朝市の売り物は野菜と肉が主で荷車の上に置いてそのまま販売していたようだ。多少売れ残った野菜や果物もあるが……。果物は買おう。

「エルピディオ、あの動物も売ってるの?」
「あぁ、あれは注文されたら乳を絞って売るんだよ」
「産直にも程がある!!」

でも興味があるので注文してみる。

煮沸とかしなくて平気なのかな?

「おっちゃん、1杯ちょうだい」
「なんだ、1杯だけか?」
「まだお腹いっぱいなんだ」
「はははっ、そうかそうか。まぁ2人でゆっくり飲んでくれ」

乳屋(?)のおっちゃんは愛想良く売ってくれた。

あれ?
そう言えばエルピディオは醜いって忌避されてたんじゃないの? おっちゃんは普通に対応してるよ。思い込み?

「こ、こんなに優しくされるなんて……!」

優しい……? 含み綿&腹巻き効果か。
屋台から少し離れてエルピディオに聞くと、今までは聞こえないふりされたり、追い払われたりして売ってもらえなかったらしい。ここの乳を飲んだら痩せました、なんて思われたら困るって店の人から気配が伝わってきてたんだと。

考えすぎ、とは言えないな。





ところで含み綿してたら飲み物飲めないか。

「あ、味はどう?」
「サッパリしてるかな。なかなか飲みやすいよ」

乳を出してくれたのはヤギサイズの茶色い牛で、濃厚ではないけど美味しかった。浄化魔法陣のおかげで煮沸は不要。あと香り付けに入れられた薬草の香りが爽やかだ。

浄化魔法陣の付与された箱に木のカップを返却し、ぶらぶらする。ロバ車は降りて引いてます。

「あ、ササ、私はここに薬を卸してるんだよ」
「おぉ、薬屋か」

小さなガラス窓のついた玄関ドアにつけられた小さなレリーフ。オレには読めない文字とガラス瓶とそれを囲む植物の絵が彫られている。

カラララン

「いらっしゃ……」
「こ、こんにちは……」

ドアベルを鳴らして扉を開けるとそこそこぽっちゃりした初老の紳士が驚いた顔でエルピディオを見ていた。

「驚いた。エルピディオかい? 魅力的になったね」
「そっ、その、これは……」
「うんうん。素敵だよ。で、そちらは……」
「あっ、はい! 彼は私の……、その……」

エルピディオは含み綿で整形メイクをしたみたいなものだから、嘘をついてる気分なのか? でもそんなことは構わず褒めてくれる薬屋さん。

そしてエルピディオがオレの説明に困ってるな。褒美嫁ではあるが先日までオレは嫌がっていた。内情を知らない人にいちいち言いふらす事ではないがオレの機嫌を損ねるかも、と心配するエルピディオにとって、これは説明が難しいだろう。

もう普通に褒美嫁と言っても構わないんだけどな。

「初めまして、ササです。エルピディオには世話になってます」
「ほぅ、噂の褒美嫁か。なかなか素敵な人だね」

穏やかに微笑む姿はとにかく人が良さそうだ。
明るい茶髪に明るい茶色の瞳でとにかく和やか。

「今日は今週の納品と、差し入れです」
「おぉ、ありがとう。届けてくれるなんて助かるよ。それに差し入れ?」
「ササの作ったクッキーというお菓子です。甘くて美味しいのでぜひ」

ジャコッペにも教えたけどオレの手作りを喜ぶエルピディオのためにちょこちょこ作っているズボラクッキー。それを世話になってるという薬屋さんにお裾分けしに来たのだ。

この薬屋さんはエルピディオの祖父の幼馴染で天涯孤独になったエルピディオをいつも気にかけてくれているという。

「それはありがたい。旦那と2人でいただくよ」





クッキーの香りにゆるゆる笑顔になった薬屋さんに暇を告げ、店を出るとエルピディオがため息をついた。

「はぁ……。魅力的になった、なんて言われちゃったけど、太れたわけじゃないんだよねぇ」
「オレは今のままのエルピディオがいいと思うぞ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、この姿での町の人の対応をみると複雑なんだ」

そうだよなぁ。
普段の反応を知らないけど、ジャコッペも初めは感じ悪かったもんな。それがこの姿になった途端に褒められたり愛想良くされたりしてまるで騙してるみたいな感じがするのだろう。

「エルピディオの薬で美的感覚が変わるかも知れないし、気長に待とうぜ」
「うん、そうだね」

とりあえず買い物くらいなら変装してくれば楽になりそうだな。

それから昼飯を食事処の奥の席で食べ、美人で有名な看板娘のいる雑貨屋を冷やかし、仕立て屋のトルソーのふとましさに驚く。本屋で見た姿絵で美人の定義(太り具合)がなかなか幅広いと感じた。結構、好みの太さにばらつきがあるらしい。

そんな1日を過ごして帰路に着いた。

2人分の米を購入して。

だって食べたいじゃん?
制限は1人あたりだったので2人で買った。1人あたり3kgくらいで大銀貨2枚。1ヶ月あたり2人分の食費が大銀貨6枚だそうなのでかなりの金額だと思う。

制限されなくてもそうそう買えないな。

今回は初デート記念だから!
前のピクニックはまだデートじゃなかったから、今回が初デートです!!

まだ気持ちはすれ違っているような気がしなくもないが。いや、すれ違ってはいない。オレはエルピディオに絆されていて、エルピディオはオレを好きだと分かっている。

……ただ、オレの気持ちをエルピディオがまともに受け取れていないだけだ。

いや、どうなのか。

分からん。



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