【完結】ご褒美嫁として召喚されたのにガッカリされました。怒っていいよね?

香月ミツほ

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⑭先達の知恵は偉大なり

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瓢箪米が上手く作れなかったので、プロに教えを乞うことにした。

瓢箪を買った調味料屋さんにはスパイスソルトを卸す関係で知り合いになっているので瓢箪農家さんを紹介してもらう。

「こんにちはー! お姉さん、今日もふっくらツヤツヤだね~!」
「いやぁねぇ。おばちゃんおだててどうすんのよぅ」

調味料屋の店長ははふくよかなおばちゃんだ。異世界共通語として女性はお姉さんと呼ぶべし、と決まっている。そしてこっちの感覚では『ぽっちゃり美肌』が美人の条件なのでこんな風に挨拶をしている。

実際、この店主は町で評判の美人さん(こちらの世界基準)だ。平民なので自分のことをおばちゃんと言うが、町娘の憧れで少年たちの初恋泥棒でもあるらしい。

分からん。

それはそれとして。

「実は……」

オレは瓢箪を育てたけど上手くいかなかったので農家を紹介して欲しい、と素直にお願いした。

「紹介するのは構わないんだけどねぇ。ちょっと変わり者なのよ。まぁ、悪い人ではないから会ってごらん」
「ありがとう!!」

このやり取りの間、エルピディオは空気だった。それを嫌われない、と嬉しそうにしているのが不憫だ。太らせてやる。太らせてやるぞ!

米で!!





さて。
瓢箪農家はエルピディオの家とは反対側だ。町のメインストリートを通り抜け、そのまま進む。麦畑の向こうに数軒の集落があり、その中の1軒が瓢箪農家。

人の胸あたりまで緑の葉が生い茂っている。
それが何列にもなってポツポツと瓢箪をぶら下げている。棚じゃなくて柵みたいなので栽培するのか。オレの記憶とは違うんだな。あと実が少ない。

その畑の中でムッキムキなおっさんが作業をしていた。

「こんにちは! この瓢箪を育ててらっしゃるのはあなたですか?」
「……おぅ」
「瓢箪の育て方を教えて欲しいのですが、お願いできますか?」
「ふんっ」

あれ? 門外不出とかそんな感じ?

「ササ、これ……」
「あ、そうだ! これお土産です! 甘い物はお好きですか?」
「むっ?」

反応した!
よし、お茶も出して休憩に誘おう。

麦畑と違って瓢箪畑には低い石垣があった。畑と道を隔てる感じで、そこに並んで腰掛ける。
瓢箪水筒からまだ温かいお茶をカップに注いでクッキーを差し出した。

「お口に合うといいんですが」
「うむ」

サク。
サクサクサク……。

くわっ!

「美味いっ!! さっくりとした食感、バターの香り、程よい甘さと香ばしい香り! 美味すぎる! おかわり!!」
「ど、どうぞ……」

無口だったのに突然しゃべり出した。
内容はシンプルな感想だけど喜んでくれているのが良く分かる。そのまま彼は持ってきたクッキー10枚をぺろりと平らげた。

「お前、いい奴だな」

クッキーで餌付けしてしまったようだ。
また差し入れに来ることを条件に瓢箪の育て方を教えてもらえることになった。チョロい。

で、ポイントは受粉と摘果、あと水をやり過ぎないこと。温泉水でいいのかどうかは不明。とりあえず教えを守って育ててみよう。

幸い、瓢箪は年中無休なので種まきの時期はいつでもいいらしい。種を蒔いてから約4ヶ月で収穫できる、と言われたがうちでは2ヶ月で収穫できたな。





そろそろ帰る、とクッキー以外のお土産も渡すととても喜ばれた。遠くから様子を見にきた奥さんと子供が手を振ってくれた。

えっ!?
奥さんと子供がいるのにクッキー全部食べちゃったの? このおっさん!

今度来る時は2人の分を分けて持ってこよう。






さて。

異世界の正しい瓢箪栽培

瓢箪の中に数粒の米を残して水で満たし、土に半分植える。蔓が絡まるための柵を作る。花が咲いたら半数をむしる。虫が受粉させてくれるので花が終わるまで近づかない。実が出来始めたらまた半分減らす。

あとは葉がパリパリにならない程度に水をやり、実が乾燥し始めたら水やりを止める。

完全に乾燥したら収穫。



ここまでやっぱり2ヶ月。

さぁて、出来栄えは?






ザラザラザラザラ~!!

「やった!」
「すごいよササ! 大豊作だね!!」

まぁ、持った時にずっしりしてたから米がたくさん入っているのは知ってた。瓢箪の数は少ないけど中身が詰まってて結果、豊作だ。

あとは味!!

細かく切ったバラ肉をニンニクで炒めて塩胡椒したら炊いたご飯を投入。ネギを散らして焼き飯の完成だ。

「いただきます! エルピディオ、どうだ?」
「いい香りだねぇ。イタダキマス! あむっ! もぐもぐ……、ほわぁぁ……!」

どやぁぁぁっ!!
めちゃくちゃ美味いだろう!
オレは塩むすびでもよかったんだがエルピディオにはどうかと思ってデブ飯にした。これはヘビロテ決定だ。

もちろん、確認のために味付けなしの米も一口食べている。美味かった。感動した!!



実は最初に植えた瓢箪は家の敷地に虫除けハーブを植えていたので虫による受粉を阻害していたらしい。今回は敷地の端に瓢箪を植え、虫除けハーブはそこを避けるように移動させたそうだ。こんなにはっきり結果が出るとやりがいがあるな。

前の世界の農家から農業舐めんなって言われそうだけど、こんな世界なのでありのままに受け入れよう。ありがたやありがたや~。

人工授粉を試したところも、さらに収穫量が増えてた。でも面倒くさいから気が向いた分だけだな。何しろ虫が優秀だ。はちみつもそれほど高くないのでこの世界の虫は全体的に優秀なのかも知れない。知らんけど。

あ!
農業の手伝いを募集してもいいんじゃない?

「残念だけどそれも制限されててね……」

購入量だけでなく、栽培する場合に家族以外に手伝わせた場合に税金がかかってくるとかなんとか。……やっぱ米は太るって知ってるんだろ貴族はさぁ。いや、そんな法律作るのは王様か?

まぁオレ達が食べる分は充分収穫できそうなのでよしとする。植えるタイミングをずらしていつでも新米を食べられるようにしよう。

こうしてオレの米欲求は満たされた。

すると次の欲求は……。



いかがわしいことだー!!
いゃっふー!!!!



ハグは恥ずかしくてできないのに、抜きっこは平気なのは何故なのか。

……顔見てないからか?

キスもきっと恥ずかしいです、はい。
あんなに顔近づけるんだもんなぁ。

まぁ、気持ちいいことができれば問題ない。

そしてオレは積極的にいこうと思います。
何故ならば主導権を握った方が恥ずかしくないから。

ということで甘えるぜ!

「エルピディオ、仕事終わった?」
「うん、今日の分は終わったよ。夕飯にしようか」
「おう!」

さぁ、食べたら風呂だ。
甘えるぞー!
具体的にはバックハグだ。

顔が近いと恥ずかしいのなら、背後から近づけばいいじゃない。 オレ、賢い!!

うきうきしながら風呂に向かったら、エルピディオに不思議がられた。

「なんだか楽しそうだね」
「へっへー、まぁな!」

ぱぱっと服を脱いで浄化して湯船で待つ。
そこへエルピディオがゆったりと入ってくる。

よし!
距離を詰めて……、あれ?
背後に隙間がない、だと……!?
あれあれあれ?
これ、どうしたらいいの?
いきなり目論見がダメになったんだが?

オレが内心慌てまくっていると、エルピディオが顔を背けながらくっついてきた。

「ササ、あの、嫌だったら言ってね……」
「うん? ぴっ! ぴょっ!?」

か、肩を抱かれた!
裸同士でくっついてる!
肌の柔らかさが、お湯とは違う温度が、ぴったりと!!

「いいいいいっ、いやじゃ、ない、けど!」
「良かった! 嫌じゃないんだね。頑張って良かったぁ……」
「嫌じゃない、けど! 予定と違う!!」
「予定って?」
「…………………………」

バックハグする予定だったとか、オレが主導権を握るはずだったとか、関係を進める気満々だったとか。



………………黙秘します。
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