【完結】ご褒美嫁として召喚されたのにガッカリされました。怒っていいよね?

香月ミツほ

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⑮まさかのシリアス展開!?

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バックハグを目論んでいたのに湯船では背後に隙間がなかった。それでオロオロしてるうちにエルピディオに肩を抱かれて大慌てになった。

そしてオレが目論んでいたことを黙秘している現在。

いや黙秘してちゃダメだろ!

「オレが……」
「ササが?」
「オレが肩を抱きたかった!!」
「そ、そうなの?」
「そうなの!」

だってそうすれば良かったのか、って目から鱗だったんだよ。オレが思いついて実行したかった。

「そ、それじゃあお願いします……」
「え……」

いいの?
エルピディオが手を下ろし、待ち構える。
オレはそっとエルピディオの肩を抱いた。

「「…………………………」」

沈黙が落ちる。
心臓が早鐘を打つ。
息が苦しい。

あれ?
ここからどうすればいいの?

「サ、ササ、その、これからどうしたらいい?」
「エ、エルピディオは! ……どう、する予定だった?」
「考えて……、なかった……」

お前もか!!

結局、先を思いついたら続きをするという約束をして風呂から出た。互いに反対を向くようにしているのは同じ理由だろう。

えぇ、勃ってます。

でも触りっこする流れじゃないことは知ってる。それより肩を抱いたら次は? 次は……。

キスじゃない!?

なんかそんな気がする!!

……キスって上手いと気持ちいいんだっけか?
下手だとどうなん? 口をくっつけるのって緊張するばっかりな気がするんだが、メリットはあるのか?

恥ずかしくて無理だろうとメリットなんて考えたこともなかったわ。エルピディオはキスしたいと思っているのだろうか。うぅむ……。

今夜は考えたいから、と言って背中合わせで寝た。エルピディオも神妙な顔で同意した。





*******





一晩、というか横になって眠るまでの数十分程度だがオレなりに考えた。でもキスのメリットが思い浮かばず、途方に暮れる。

「キスかぁ……」

思わずつぶやく。
声に出したところで何か思いつく訳ではないが、声に出てしまったのだ。

するとエルピディオがぐりんっ! とものすごい勢いで引き返してきた。

「いいい、今! き、きしゅって言った!?」
「え? あ、うん……?」

こっちではキシュって言うのか?

「き、きしゅって、好きな人としかできないっていう、アレのこと!?」

そうだっけ?
あー、でも聞いたことあるような、ないような……。

「口をくっつけるやつだよな?」
「それ! ササは、したいっ?」
「それを考えてるんだけど……。恥ずかしくて無理そうな気がする。お前はしたいのか?」

おい、返事は1回でいいだろう。
そんなに頭振ったら脳挫傷になるぞ。
頷くってレベルじゃない。

「エルピディオ、オレはな。キスなんてしたことがないからしたいかどうかすら分からないんだ」
「じゃ、じゃあ!! 試してみよぅ……?」
「う、ん、うぅん……。まぁ、試してみるか」

寝室で向かい合わせに立ち、深呼吸。
そして目をつぶって待つ。

待つ。

待つ……。

「オレがする方?」
「えっと、ササ、どこ?」
「手が届かない距離で何故目をつぶった!?」
「だ、だってきしゅする時は目をつぶるのがマナーって聞いたから……」

さすがに近づいてからでいいって知ってるぞ、オレでも。

「しゃーない、そのまま待ってろ」
「うん!」

一歩近づき、両手を伸ばして肩を掴む。さらに近づき、キスを……?

「エルピディオ、これじゃ届かない……」

身長差がありました。オレは170cm、エルピディオは185cmくらいある。背伸びしても微妙に届かない。

「あっ! そっか。目を開けていい?」
「あぁ。確認してくれ」

パチッ

「「○€#^4☆!」」

エルピディオが目を開けたら至近距離で目が合う形になり、2人して奇声を発して飛び退ってしまった。目が合うまでは覗き込んでる感じで近づけたのに、見られると途端に居た堪れなくなる。

誰か!
どこかに恋愛指南役はいませんか~?
ポンコツ達に合いの手……、じゃなくて愛の手を!!

「意識しちゃうと恥ずかしいね……」
「そうだな。落ち着いてからにするか」
「うん」

こうしてオレ達の挑戦はまた1歩後退したのだった。

どっちに向かえばいいのか。
何が正解なのか。

謎だらけにも程がある。



あらゆることを先送りにして日々が過ぎてゆく。ただ、オレの体重だけは着実に増えていた……。

まだ標準!
軽肥満ではない!!
あー、軽肥満てどれくらいからだっけ?

「ササ、素敵だねぇ……」

うっとりするな!
それにしても……。

「エルピディオは何故太らないんだ」
「うぅ……、なんでかなぁ?」

一緒に米と菓子を食べているのにエルピディオだけ変わらない。ハーブソルトの美肌効果でスベスベ美肌ではあるけど、スリムなまんま。

こうなったら……、粉もん、いってみよう!!





*******





小麦粉かどうか分からないけど麦の粉はある。
その粉と水、卵、キャベツのざく切りに小魚の焼き干しを粉にした物を入れ、薄切り肉と一緒に焼く。

ソースはウスターソースみたいなのがあったので果実糖を足して中濃ソースっぽくした。マヨネーズもどきもかけてお好み焼き定食!

どやっ!

味噌汁がないのが悔やまれるが、漬物はきゅうりの浅漬けです。うまうま。

たこ焼きは鉄板がないのとタコが手に入らないので保留。

あれ? オレ他に作れる粉もんないじゃん。
しゃーない、ドロップドーナッツでも作るか。



ドロップドーナッツが美味しくできたので瓢箪農家に持っていくことにする。旦那さんが食べ尽くさないよう、たくさん作った。

「エルピディオ、瓢箪農家さんちに行こう」
「うん! デートだね」
「デートだな」

デートなんですよ、多分。

オレ達はロバ車を買ったのだ。
オレの稼ぎがそこそこになり、エルピディオはデートが嬉しかったらしく、ノリノリで購入したのだ。ロバは瓢箪畑の周りで飼っている。なかなか可愛い。

いつものように薬を卸し、薬屋さんにもドロップドーナッツを差し入れ。それから店で食材を色々買いこんで町の人と交流する。

そう言えばこの世界に冒険者ギルドはあるのだろうか?





農家を目指してメインストリートをのんびり進んでいると、道の脇に薄汚れた身なりの痩せた子供がこちらを見ていた。6歳くらいかな。

この世界であれだけ痩せてたらいじめられてしまうんじゃないだろうか。

「なぁ、エルピディオ。あそこ……」
「え? あ……」

この町にスラムはない。
スラムは大きな都市にあるのだ。

ならあの子はいったい……?

「坊や、お父さんかお母さんは?」

ロバ車を停めて声をかけると、ふるふると首を横に振る。

「1人なの?」

またふるふるする。

「誰と一緒なの?」
「……おとうと」

こんな小さい子が弟と2人きり!?
ご飯は? 家は? 生活は!?

「どこに住んでるの? お家はある?」

こくり、と今度は頷いた。
良かった、家はあるんだ。

「おにいちゃん、たべもの、わけてください」
「おぅ、いいけど弟は何歳だ? どれくらい食べる?」
「ん、と、3さい……」
「3歳か。弟はどこ? そんなに小さい子を1人にしておけないだろう?」
「……おひるね」

人間の子供は犬猫じゃない。
簡単に拾ってはいけない。

でもあまりにも心配になって家に押しかけた。

「ぅわぁ~ん! ふぇ、うぐ、ひっく……。に、にぃちゃ! にぃちゃぁ~っ!」
「ノエ、ただいま」

やっぱり泣いてるよな。
外まで聞こえた幼児の泣き声に胸を締め付けられる。薄暗い家に1人置いていかれて3歳児が泣かないわけがない。それでも兄として弟が寝ている間に食べ物をもらいに行かないとならなかったんだろう。泣ける……!

「弟はノエか。坊やの名前は?」
「リノ」
「リノか。すぐに温かいスープを作ってやるからな。待ってろよ」
「あたたかいスープ!」

初めてリノが嬉しそうな声を出した。
ここまで、エルピディオは何も言わなかったが、心配そうにしている。何にしてもまずは水だ。水を汲んできてもらおう。

台所の水瓶には水が残っていたが汚れていた。リノでは背が届かないから使っていないのだろう。エルピディオが水瓶を洗ってくる、と言って倒して転がしていった。

オレは掃除道具を探す。
扉を開け放し、窓を開けてはたきで埃を落とし、箒で床を掃く。台所と居間だけは掃除をしないとな。寝室は後回しだ。

でも2人だけなのに食事だけ面倒を見て置いていくのは心配だ。
後で近所の人にこの2人のことを聞いてみよう。

エルピディオが水瓶をきれいに洗ってくれて、水を運んでくれた。それから掃除用の桶にも水を汲んできて拭き掃除をし、鍋も洗ってスープを作る。

買い物した後でよかった。

「このパンはスープでふやかして食べるんだぞ」
「うん」
「あい!」

キャベツ、ニンジン、じゃがいも、タマネギ、と翻訳される野菜を柔らかく煮てウインナーも入れて塩で味を整えたスープ。

泣き止んだノエはなかなか元気がいい。
いつから2人きりなのか、食べ物はどうしていたのか、これからどうするのか、聞きたいことは沢山あるけど、聞いていいのか分からない。

でもこれからどうしたいのかはリノに聞かないといけない。



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