【完結】ご褒美嫁として召喚されたのにガッカリされました。怒っていいよね?

香月ミツほ

文字の大きさ
18 / 24

⑱ササの出張料理教室

しおりを挟む
寂しさのあまりお菓子を量産してしまったので、リノ達にお菓子を届けに行くことにした。

隣の町はこの町のメインストリートになっている街道を進めばつく。ロバ車で6時間かかるけど。

お弁当作ってロバ車を用意してお菓子を乗せたら、いざ出発~!!





と、気合を入れたのだが。
こっちの町の広場でばったりとリノ達と叔母さんに会った。

「しゃしゃー!」
「ノエ!」
「ササさん……」

ノエは何故か泣きながら全力で走ってくる。それをリノが追いかけ、叔母さんはその場でくずおれた。

「しゃしゃ、ごはん! ノエ、しゃしゃのごはんたべる!!」
「ノエ、ワガママ言っちゃダメでしょ! ワガママ言う子はダメなんだよ!!」
「わがまがちなう! ダメじゃないっ!」

えっと、ノエがオレのご飯を食べたいと言って、それは我儘だから我慢するようにリノが言ったのかな? リノは良い子でいないとダメだって思っているもんなぁ。

叔母さん、2人を甘やかしてごめんなさい!!

「ササさん、す、すみません……。料理を、料理を教えて、いただけ、ませんか……?」
「もちろん良いですよ。あ、そっちで休みましょう」

すれ違わなくて良かった!!





広場にはひと休みできるようにシンプルなベンチがある。昼にはまだ早いが、そこに座っておにぎりを食べさせることにした。

「はい、おにぎり。よく噛んで食べるんだぞ」
「おににり?」
「ほら、リノも、えっとアナタも」
「うん!」
「ありがとうございます」

肉そぼろ入りと菜っぱの漬物入りだ。
海苔はないのでそのまま、殺菌効果のある葉で包んである。時代劇に出てくるお弁当のような見た目だ。

「美味しいですね。これは何ですか?」
「これはコメです。たくさん買えないから家で育ててます」
「まぁ! コメをこんな風に食べるなんて初めてです」
「おばちゃん、おいちでちょ?」
「えぇ、とっても美味しいわ」

エルピディオがお茶を用意してくれたのでそれも飲むと、みんな少し落ち着いたようだ。

「どちらかに行くところでしたか?」
「えぇ、リノとノエに会いたくなってしまって。すれ違わなくて良かった」

叔母さんから用事があるのに引き留めてしまったかと心配されたが、目的はリノ達なので何も問題ない。

「そちらは?」
「実は……」

叔母さんは家に2人を連れて行ったのだが、オレ達と別れてしばらくしたら徐々にノエの機嫌が悪くなり、家に着くころにはぐずって泣いて大変だった。それで困っていたらリノがワガママ言うなと怒り出して言い合いになり、収拾がつかなくなった。そして泣き疲れて眠ったものの、起きたらまたぐずってケンカして、ノエは泣きすぎて吐いてしまい、それ見てリノがまた泣いて……、と。

「それは何だか申し訳ない……」

うちで甘やかし過ぎたってことだよね!?
でもあの状況で甘やかさないなんて選択はできないよね……?

「ノエはきっと、助けられてホッとしたのも束の間、すぐまた別の知らないところに連れて行かれて不安になってしまったんだと思います」
「なるほど。せっかく安心できる場所が見つかったのに移動することになって不安定になってしまったんですね」

愛情を確かめたくてぐずったりすることもあるしな。

「それでノエが気に入ってる料理を覚えようと思ったんですか」
「はい。お願いできますか?」
「もちろんです。でも、お家の方は大丈夫ですか?」

ロバ車で片道6時間はかかるから何度も往復するのは大変だ。泊まりがけになるんなら宿に泊まる? うちは男所帯だから女性を泊めるのは躊躇してしまう。どうするんだろう?

「大丈夫です! 部屋はあります!」
「ちょっと待って! ササが泊まって教えるの!?」
「通うには遠いのでそうなるかと……」
「だ、だめ! ササは私と一緒にいないといけないんです!!」

えーっと?

「奥さんの家に料理を教えに行く、ということ?」

泊まり込みで?

「うーん……。エルピディオも一緒でいいですか?」
「空いている部屋は1人用のベッドしかないけど、それで良ければ」
「だい「大丈夫です!」……」

返事をかぶせられたけどオレは構わない。
けど男だらけになるの、奥さんは問題ないの?

「うふふ、空いている部屋は離れなの。だから遠慮しないでね」
「へー! 離れかぁ。じゃあお邪魔します」

ここまてきてようやくこの人の名前を知った。
イルダさん22歳だって。色白ぽっちゃりでソバカスがチャームポイント……、かも知れない。明るい茶色の髪にグレーの瞳でリノと似ている。ノエはプラチナブロンドでブルーグレイの瞳なので父親似か隔世遺伝か。

エルピディオは薬屋さんへ納品の調整をしに行った。毎日真面目に作ってるから大丈夫だと思うけど、急な依頼があると困るからね。行き先も伝えておかなくちゃ。

ジャコッペへの連絡も薬屋さんが手配してくれるそうだ。

ついでにコメも買った。
制限があるとか言ってたけど、1度に買う量しか分からないんじゃない? あ、何度も買ってたら覚えられちゃうか。他の店とか他の町とか、遠出すれば買えるだろう。

栽培は簡単だから別にいいか。





イルダさん達はロバ車を借りてこの町に来ていた。昼食は先ほど食べたおにぎりだけだと物足りないので屋台で串焼きを買ってそれも食べた。イルダさんが買ってくれた。

オレはまだロバ車を運転(?)できないけどエルピディオはオレがこの世界に来る前に練習したらしい。イルダさんは慣れているようで堂に入ってる。

「しゃーしゃー、こっちよー」
「まてまてー」
「くふふふふ、きてー!」
「行くぞー」

他愛のないやり取りをしながら前後に並んで進む2台のロバ車。

これで6時間かかるのか……。
ノエは飽きないのかな。

トイレ休憩を3回はさみ、ようやく隣町に着いた。うー、さすがに身体が固まってる……。

ノエは途中でお昼寝をしたので元気だ。
リノもお昼寝はしたけど、まだノエがわがままを言ったと思っているためか、元気がない。

「おかえり! 無事で良かった!!」
「ただいま~。魔獣避けがあるから大丈夫よ~」
「それでも心配なものは心配だよ。子供達は?」
「おじちゃん、たらいまー!」
「ただいま」
「おお、機嫌が治ったようだな。良かった、良かった!」

この前会った時はこんなに喋らなかったけど、この人意外とお喋りなんだな。それはそれとして、挨拶しないと。

「「こんばんは」」
「おや! アナタ達はリノとノエを預かってくださった方達ですね」
「そうなのよ! 料理を教えてもらうのよ!」
「そ、そうなのかい?」

あれ?
旦那さんに言ってあったんじゃないのか。
泊まり込みとか、大丈夫か?
まぁ、ダメなら宿に泊まるけど。

イルダさんがきゃっきゃと説明しているけど、リノとノエを降ろしてあげようよ。

「しゃしゃ、ぴょーん!」
「こら!」
「リノ、1人で降りられるか? ノエはぴょーんだな」
「ぴょーんしゅる!」

両手を繋いでジャンプで降りるノエを補助する。ジャンプする時、軽くリフトするとふわっとして大喜びだ。リノも喜ぶはずなんだけど、しないの?

「ひとりでおりる」

むすっとした顔で降りるリノ。
ロバ車は荷台が低いのでノエだって1人で降りられるのだが、せっかくだから楽しく降りればいいのに。

ノエの分まで良い子になろうとしてるのかな。





家にお邪魔し、イルダさんに教えながら料理をする。コメの炊き方と生姜焼きだ。醤油がないので塩と玉ねぎと生姜で肉を炒める。サラダにはマヨ風ソース、根菜のスープ。

ハーブソルトは手土産として持ってきていたので、それを使ってスープの味を整えた。

「さぁどうぞ」
「いたーきましゅ!」
「「「「いただきます」」」」

異世界あるあるとして『いただきます』を説明したらノリノリで採用された。

さぁ、お味はいかが?




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!

永川さき
BL
 魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。  ただ、その食事風景は特殊なもので……。  元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師  まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。  他サイトにも掲載しています。

伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

メグエム
BL
 伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。

余命半年の俺を、手酷く振ったはずの元カレ二人が手を組んで逃がしてくれません

ユッキー
BL
半年以内に俺は一人寂しく死ぬ。そんな未来を視た。きっと誰も悲しむ人は居ないだろう。そう思っていたから何も怖くなかった。なのにそんな俺の元に過去手酷く振り、今では世界的スターとなった元カレ二人がやってきた。彼らは全てを知っていた。俺がどうして彼らを振ったのか、そして俺の余命も。 全てを諦めた主人公と、主人公を諦めきれないイケメンサッカー選手とシンガーソングライターの再会が導く未来は?

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

令嬢に転生したと思ったけどちょっと違った

しそみょうが
BL
前世男子大学生だったが今世では公爵令嬢に転生したアシュリー8歳は、王城の廊下で4歳年下の第2王子イーライに一目惚れされて婚約者になる。なんやかんやで両想いだった2人だが、イーライの留学中にアシュリーに成長期が訪れ立派な青年に成長してしまう。アシュリーが転生したのは女性ではなくカントボーイだったのだ。泣く泣く婚約者を辞するアシュリーは名前を変えて王城の近衛騎士となる。婚約者にフラれて隣国でグレたと噂の殿下が5年ぶりに帰国してーー? という、婚約者大好き年下王子☓元令嬢のカントボーイ騎士のお話です。前半3話目までは子ども時代で、成長した後半にR18がちょこっとあります♡  短編コメディです

処理中です...