【完結】ご褒美嫁として召喚されたのにガッカリされました。怒っていいよね?

香月ミツほ

文字の大きさ
19 / 24

⑲お持ち帰りが許された!

しおりを挟む
ノエ達に作りすぎたお菓子を差し入れしようと出かけたら泊まり込みで料理を教えることになった。

いや、良いんだけど。

普段はジャコッペに作ってもらってるけど、何故か料理もできるオレ。その辺、前世の記憶はないんだけど、何故かレシピが浮かぶし、手も動く。

チートかな?

エルピディオの仕事の都合もあるし、急なことだったのであまり長居もできない。2泊4食分の料理を教えるだけだ。焼く、煮る、蒸す、揚げる、炒める、和える。それらで思いついたものを料理した。それからお菓子もついでに教えた。クレープやパンケーキは教えるまでもない気がするけど、ノエのリクエストだったのでおやつとして作った。

食べ物のおかげか、ノエが機嫌良く過ごしていたので、リノの機嫌も治った。



そして、あっという間にやってくる別れ。



「それじゃあ、またね」
「ヤダ!」
「また来るよ?」
「やーだー!!」

困った。ノエが離してくれない。
嬉しくてニヤけるけど、喜んでいる場合じゃない。

「イルダさんが美味しいご飯作ってくれるよ」
「おばちゃん、おちごとだもん! あしょべないもん!」
「あー……」

イルダさんに子供はいない。
旦那さんは染め物屋でイルダさんはお針子。

お仕事中は針が危ないから仕事部屋には入れないので、リノと遊ぶしかない。近所の子供とはまだ接点がなく、挨拶はしたものの仲良く遊ぶほどにはなっていない。

子供ってすぐ仲良くなるものだと思ってたけど、そうでもないらしい。リノが痩せてるせいもあるのかな。

そんな状況でオレに執着するのは仕方ない事だろう。

「ノエ、しゃしゃのおうち いく!」
「うん?」
「しゃしゃのおうちで おてちゅだい しゅる!」

そんなに楽しかったのか。
でもそんなにゴネるとリノの機嫌ががが。
どうしたもんか……。

「イルダ! 大変だよ!!」
「あら店長、どうしたんですか?」
「それがね、今アンタに預けているドレス、着る日が早まったなんて言うのよ!!」
「えぇっ!? どうしてそんな……」

仕事で大変な事が起きたらしい。

オレはエルピディオと顔を見合わせ、出発を遅らせることにした。

「ササさん~! 図々しいお願いなんですが、この子達を数日預かってくれませんか? 貴族の方の仕事が急ぎになってしまって……」

元々、子供達を迎えにきたり、オレに会いに来たりで時間を取られてたから予定より遅れていたらしい。それがお客さんの都合で急ぎになった、って大変じゃん!

「エルピディオ、良いよね?」
「うん、うちは構わないよ」
「しゃしゃのおうち!」
「で、でも……」

ノエは聞くなり大喜びだけど、リノは遠慮しているみたい。大丈夫、大丈夫。

「リノ、こういう時は良い子でお出かけした方がお手伝いになるんだよ」
「そうなの?」
「ですよね、イルダさん」

急ぎの仕事をするのに家事と慣れない育児をしなくちゃならないとなるとかなりの負担だろう。正直に言っていいんですよ?

「えぇ、そうね。おばちゃんご飯作る時間もないかも知れないから、ササさんのお家で良い子に待っていてくれると助かるわ」
「うん! ノエのお世話しながら待ってる! エルピディオさんのお手伝いもする!」

うんうん。
では荷車に乗ったら出発だ。
ちょっと遅くなったから急がないとね。

普通なら赤の他人のオレ達より近所の人とかにお願いするものなんだろうけど。リノ達の両親は痩死病に罹っていて、リノは食が細いのか痩せているから何となく腫れ物扱いをされているんだそう。

すでに治る病気なのにおかしい!

と、言ったところで価値観てものはそう簡単には変わらない。だから痩せてることを気にしないオレ達に預ける方がイルダさんとしても安心なのだ。

なにしろオレは子供大好きなので。
全力で遊ぶぞー!!

そう言えばエルピディオはオレ達が遊んでいるところにあんまり入ってこないな。一緒に遊びたくないのか?

「エルピディオは子供と遊ぶのは苦手か?」
「かわいいけど、どう遊んだら良いのか分からないんだ。それに……」
「それに?」
「子供と戯れるササが尊いから影から見守りたい!」

……まぁ、気が向いたら入って来いよ。





*******





昼過ぎに出発したのでうちの町に着く頃には真っ暗だった。エルピディオの家は少し離れているので夜間の移動は少し不安がある。だから今日は宿に泊まることにした。

「しゃしゃのおうちはー?」
「遅くなったから今日はここにお泊まりだ」
「しょかー」

ノエは素直に頷いた。

ツインの部屋をとって宿の食堂で夕食を食べる。こっちの世界で食事といえばパンとシチューと肉か魚のソテー、果物。朝食はシチューがスープになり、タンパク質は卵になる。卵は少し高いけど大きいのでスクランブルエッグとか作ると数人分になる。目玉焼きは卵1つでフライパンいっぱいになってしまってコレジャナイ感がヤバかった。

「……エーピー、おかお ちなう……」
「ないしょだよ?」

ノエはエルピディオをエーピーと呼ぶ。かわいい。家では素顔だったのに今更気づいたの? あ、含み綿を外す瞬間を見たからか。

「すごい……。ぼくもやりたい……」
「じゃあ、今度やってみるか」
「うん!」

そんな約束をして食事をする。
うーん、やっぱりリノは食が細い。

「リノはそれで足りるのか?」
「……ぼく、食べすぎると具合が悪くなっちゃうの。ごめんなさい……」
「そうなのか。謝らなくたっていいよ。ちょうどいい分量ってあるもんな」

胃腸が弱いんだとしたら消化のいいものにするべきか。様子見だな。






「しゃしゃとねるー!」
「おう。リノはエルピディオとでいいか?」
「うん」
「緊張するなぁ……」

エルピディオは子供と一緒に寝たことがないから緊張している。親と一緒に寝た記憶もないらしいのでベビーベッドで寝てたのかもな。

2人が落ちないようにベッドをくっつけ、両サイドにオレとエルピディオが寝る。

さて、寝る前にトイレだ。

「ちょんちょこりん ちょんちょこりん ちょんちょ~こり~ん あなたの小さなちょんちょ~こりん♪」
「きゃははははっ!」

チムチムチェリーの替え歌を歌ったら意味は分からないはずだが、ノエ爆笑。リノもくすくす笑っている。エルピディオは不思議そうだ。

「ちょんちょこりんて何?」
「子供のちんちんのことだ」
「きゃははははっ!!」

方言なんですよ。
かわいいだろ?

順番にトイレを済ませ、部屋に戻って並んで横になる。さらに子守唄を歌いながら胸をとんとんするとノエはあっという間に眠りに落ちた。リノもすんなりと眠れたようだ。

「エルピディオ、ありがとな」
「え?」
「この子達を預かるの、許してくれて」
「許すも何もないよ。私が役に立てるならこんなに嬉しいことはないし、リノを見ていると放っておけないし」
「両親が迎えにくるまで、オレ達で守ってやろうな……」

オレも疲れていたので、エルピディオの返事を聞かずに意識を手放したが、こいつに否やはないだろう。差別的な扱いをされていても人の役に立つことを良しとする男だ。特効薬を見つけるのは大変だっただろう。

そう言えば詳しい症状とか聞いてないけど、ちゃんと聞いておいた方がいいかな。

リノの具合が悪くなるというのも、どう具合が悪くなるのかで対応も変わるし、よく話を聞こう。






「ぶはぁっ!!」

ごろん

「……あぁ、宿屋か。風邪ひくぞ……」

オレは顔の上に乗っていたらしいノエを転がして布団に戻す。寝ぼけて投げ飛ばさなくて良かった。あっぶな。

「ササ、おはよう……」
「お、おはよう。リノの寝相はどうだった?」
「2回蹴飛ばされた程度だよ……」

おぉ、それは……、大丈夫か?
家に帰ればゆっくり眠れるからな。あれ? ノエと2人でオレ達と違う部屋で寝かせておくの大丈夫か?

ちょっと心配になってきた。

夜までに相談しよう。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!

永川さき
BL
 魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。  ただ、その食事風景は特殊なもので……。  元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師  まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。  他サイトにも掲載しています。

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

メグエム
BL
 伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

余命半年の俺を、手酷く振ったはずの元カレ二人が手を組んで逃がしてくれません

ユッキー
BL
半年以内に俺は一人寂しく死ぬ。そんな未来を視た。きっと誰も悲しむ人は居ないだろう。そう思っていたから何も怖くなかった。なのにそんな俺の元に過去手酷く振り、今では世界的スターとなった元カレ二人がやってきた。彼らは全てを知っていた。俺がどうして彼らを振ったのか、そして俺の余命も。 全てを諦めた主人公と、主人公を諦めきれないイケメンサッカー選手とシンガーソングライターの再会が導く未来は?

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

処理中です...