いつまででも甘えたい

香月ミツほ

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第15話

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試着くらいで割引してもらえるなら安いものだ。さっそく試着室で着替える。

どう表現したら良いんだろう?服の部分名称なんて詳しくは知らない。えんじ色と白の2色の服で、ふんわり膨らんだ膝丈のスカートは真ん中がタテに白く、透ける素材でフリルが5段になっている。外側はえんじ色。境目に白いレース、そのレースの真ん中はえんじ色のリボンが重ねてある。襟はスクエアに開いてスカートから続くレースで飾られている。ウエストにはえんじ色のリボン。腰にもえんじ色の大きなリボン。

地味顔が存在感を手放した。

ニット生地がないのか靴下は伸縮性のない生地で、口ゴムだけがフィットするハイソックス。まるで伝説のルーズソックスだ。

試着したからには見せないとだよね。

と、往生際悪く考えていると、カーテンが開いた。

「…ぉおおお!素晴らしい!
なんて事だ!これほど服が映えるなんて!」
「いや、失礼だろ!こんなに可愛いのに!」

えーっと、つまりマネキンに顔は必要ない?存在感の薄いモブ顔だから服が引き立つって事?

仕立屋さんとイラリオさんの価値観の違いがちょっと面白い。

「その服で今日1日町を歩いてくれたら、全て無料で差し上げます!」
「やらせていただきます!」

客寄せのコスプレだね。タダになるんだね!

選んだ服は宿に届けてもらうようお願いして、靴屋さんに行く。
服のせいで女物の靴を勧められるが、丁重にお断りして男女共用の革製の紐靴をオーダーした。布製の靴もあってこっちは見習いの人が各種サイズ作っていたのでちょうどいい大きさの物があった。助かった。
布靴の予備も1足追加注文。

ちなみに今は試着中なのでこの服に合わせた靴を借りている。

「俺は嬉しいんだけど、自分のお金じゃないのにそんなに頑張らなくても良くない?」

「…すみません、貧乏性なんです。」

大阪のおばちゃんのようにはなれないけど、努力で価格が下がるならぜひ下げたい。オーダーなんて高いに決まっているし!!

広告役としては目立った方が良いだろうとオープンカフェみたいな店で遅いお昼を食べる。おれは朝食が遅かったから良いけど、イラリオさんはお腹空いたよね?

「気にしなくて良いよ。でもまぁ、がっつり食べたいかな?」

素直にそう言ってくれるので安心する。
メニューがなんだか分からないのでイラリオさんに選んでもらった。
川魚のステーキが美味しいらしい。

料理が届くまでお喋りしていると、若い男の人が話しかけて来た。

「その服、可愛いね。どこで買ったの?」
「えーっと…」

店の名前聞くの忘れてた。

「ガラの店だよ。」

イラリオさんがにっこりと補足してくれた。

「良いね。僕も可愛い恋人ができたらこんな服をプレゼントしたいな。」

おお!宣伝効果が現れている!!
…なんて素直に喜べるほど若くない。広告は好感触でも販売に2割繋がれば良い方だ。

「あなたの恋人になれた人は幸せですね。」

営業用スマイルで社交辞令を口にすると、男の人は一瞬ぽかんとした顔で固まってから顔を赤くして「そうかな?」とかもごもご言いながら去って行った。

タイミングよく料理が運ばれて来たので給仕の人にも笑顔でお礼を言っていただきますをした。

「そのイタダキマスも不思議だね。」
「そうですか?命を分けてくれた生き物と調理してくれた人と流通に携わった人にひと声かけてるだけなんですけど。」
「いや、ここにいるのは料理した人くらいだし、命は分けてもらったんじゃなくて奪い取ったんじゃないかな?」
「まぁ、そうなんですけど…小さい頃からの習慣ですから。」

「今も小さい」と言う失礼なツッコミは当然スルーします!

おススメだけあって川魚のステーキはとても美味しかった。
川魚と言ってもキングサーモンくらいあるんじゃないかな?って感じの切り身でハーブソルトが効いていて本当に美味しかった。サラダもいろいろな種類の野菜が入っていて複雑な味がする。ドレッシングも美味しい。ポタージュスープもほのかな甘みと深いコクが…パンも焼きたてだった。

食べ終わってごちそうさまを言う頃にエプロンをした男の人が出て来た。

「本日はご来店ありがとうございます。当店の料理はいかがでしたか?」
「とっても美味しかったです!サラダの複雑な味わいとスープの深いコクとハーブソルトの配合が最高でした!」
「…こんなに熱烈な感想を言ってもらえたのは初めてです。ありがとうございます。」

「あ…生意気な事言ってすみません。自分でも少し料理をするもので、いろいろ気になるんです。」
「生意気だなんてとんでもない!しっかり味わっていただけるのは作ったものとしてこの上ない喜びです。こんなに可愛らしいお嬢さんならなおさらね?」

「…っう、ごめんなさい。こんな格好ですが男なんです。ガラさんに頼まれて今日1日この服で町を歩く約束なんです。」
「あぁ、仕立て屋の。あそこの娘さんも美しいですがこう言う服はあまり似合いませんからね。」

美人系かな?

「またぜひおいでいただきたいので、こちらはサービスです。」

かわいいナッツのタルトをくれた。良い人だ!!
目を輝かせてお礼を言うとごゆっくり、と言って引っ込んだ。
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