いつまででも甘えたい

香月ミツほ

文字の大きさ
26 / 39

第26話

しおりを挟む

それから2週間ほど平和な時が続いた。
毎日調理補助として働いて夜はガウルの部屋でセサルと3人で寝たし、元気になったイラリオは剣の稽古や体術に真剣に取り組むようになり、隙を見ては誘いをかけて来る。ガリコとはとっても仲の良い友達になった。

結局、副隊長以外は敬語不要で呼び捨て推奨だったので全員友達みたいだ。

毛馬の毛刈りもした。…近づくと遊ばれるので、見てただけ。

そうして楽しい毎日を過ごしていたら、パスクが馬車を返しに来た。
なんと、鑑定能力持ちの魔術師を連れて。

魔術師、いたんだ!

それはともかく、やっぱり異世界から来た存在は表面化していない悪意がある可能性が捨てきれないので鑑定を受けなくてはならないそうだ。表面化してない悪意を調べるのって、いじわるされたり酷い事言われて怒らないか調べるんだったらやだなぁ。

不安はあってもやましい気持はないので拒否する気はない。
大人しく隊長室の続きの応接室へ行った。
立会人はガウル、フランセスク副隊長、セサル、イラリオ、パスク。

簡単な質問に答えた後、両手を差し出すように言われた。

魔術師に言われるがまま彼の手を取り、深呼吸をすると触れ合う指先から暖かいエネルギーが流れ込んで来るのが分かった。そのエネルギーは探るように全身を緩やかに駆け巡り、また指先から魔術師に戻って行く。何か分かったのだろうか?



「…悪意がない事が分かりました。」

そんな簡単に!?

「悪意がない、つまりあなたは人間ではありません。」

「「「「「えぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」」」」」

僕、人間じゃないの!?
え?え?それ、幽霊とか?まさか本当に妖精とか?

「ええと…はっきりと断定ができないのですが…おそらく…夢魔のような存在ではないかと推測します。」

「夢魔…?」

夢に出てくる魔物?悪夢を見せたりするの?

「悪夢ではなく性的な夢を見せる存在です。夢に現れてその人の理想の姿で精を貪る。」

それってインキュバスとかサキュバスとか?
じゃぁそのうちコウモリの羽と細いしっぽが生えて来るの?

ポンッ!

「え?」

「自身が何者かを自覚する事で能力が解放されたようですね。」

コウモリ羽としっぽが生えた。うそぉ…しかもちゃんと動かせるし!

「いままで自分を人間だと思っていたせいで無意識に能力を封印していたようです。これからは夢魔としての本能が目覚め、行動に現れて行くでしょう。…あなたはこれから、何がしたいですか?」

僕がしたいこと…?

「うーん… あっ!毎日温泉入りたい!あと料理のメニュー増やしたいし、家畜を飼って毎日新鮮な牛乳が飲みたい!」

「それが夢魔のやりたい事ですか!!」

「なんで怒るの…?」
「夢魔なら聖職者を堕落させたいとか男を喰いまくるとか王を籠絡して国を傾けたりしたいんじゃないんですか!?」

「ぜんっぜん興味ない。」

それ、何が楽しいの?

「それじゃぁもしかして、死んだりしないのかな?」
「精液が足りなくなれば死ぬかもしれません。」

「…寂しいと死んじゃう、みたいな?」

ウサギか!?

ポポンッ!

コウモリの羽としっぽが消えてウサ耳とウサギしっぽが生えた。

「イメージした物に変化できるようですね。」
「本当かなぁ?」

イメージして気合いを入れて…

「女の子になれ!」

ポポンッ!

「うわぁ!おっぱいだ!うわうわうわ!軟らか~い!」

普通サイズのふくらみが僕の胸に付いている。

「ふぁっ!ちょ、やぁん!」

みんなが寄ってたかって触りに来る。ふにゅふにゅされるの気持良い。誰かが股間に触れたけど、たしかにあるべきものが無く、あるはずの無いものがあるようだ。

「も、もどれ…!」

息も絶え絶えに元に戻ったけど、乳首を触られる気持良さは変わらなかった。…そうじゃなくて!!

「危険だ。砦で女になんかなったら俺が睨みを利かせた所で暴走は止められないだろう。俺達以外の前で女になるんじゃないぞ。」
「うん、気をつける…」

「魔物だったんじゃぁ、独り占めなんてできない相談だな。」

え?

「そうですね。分け隔てなく愛を注いでもらえば良いんじゃないですか?皆さん。」

副隊長が他人事のように言う。いや、他人事なんだけどさ。

「それって、1人を選ばなくて良いって事?」
「1人を選んでその人が死んだら、寂しくて死んじゃうんでしょう?そんなの嫌だよ。」
「複数の相手がいればずっと寂しくならないね?」
「あんまり相手が多すぎると順番が回って来ないからイヤだがな。」
「4人ならいいだろ。」

なんか勝手に人数が決められてますけど。

「いいの?ハーレムエンドなの?」
「ハーレムエンド?」
「全員とずっと仲良く幸せに暮らしました、って終わるお話だよ。」
「「「「それだ!」」」」



鑑定魔術師さんはおれに悪意がない事と野望がない事を報告すると言って1泊してから帰って行った。

町までは馬車で送るので結局また馬車で町へ行く。ついでにお酒の補充と靴の受け取りに行った。それで宿屋では料理人見習いの彼と仲良くなりつつも微妙に距離を取って甘酸っぱさにドキドキした。宿屋の主人から客に惚れるな、って釘を刺されてたみたい。

そんなこんなで町へ行っては宿屋でパスクの仲間達と酒を飲み、イラリオにエロい下着を着せられたり、パスクの筆下ろしもできちゃったりした。パスクはそのままの方が良いって言うから男のままでした。

夢魔だって分かる前に3人とは最後までしたけど、夢魔になってからの方が更に気持良い。
心の枷が外れたみたい。

この先、僕は年を取るのか、死ななかったら皆を見送る事に耐えられるのか、想像もつかないけど考えても仕方がないと思っている。

いまはただ、ずっとずっと甘えていたい…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

変態しかいない世界に神子召喚されてしまった!?

ミクリ21
BL
変態しかいない世界に神子召喚をされた宮本 タモツ。 タモツは神子として、なんとか頑張っていけるのか!? 変態に栄光あれ!!

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...