墜ちた英雄が隠居したが...

キリ

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一休み

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 ルナにまさかの再会を果たした俺だが、今はというと少し早めの夕食の準備をしている。
 境界削りは昼間の暖かい時間帯でしか活動できない弱みがある。その間を縫って脱出する算段であるため、今は休息の時間に当てることにしたのだ。
 
 夕飯はというと焚き火で作ったスープにするつもりだ。
 そして、現在はルナと材料集めをしている。他のメンバーは俺がスクロールから出した調理器具の用意と焚き火の準備をしてもらっている。
 材料はというと、この縦横10m ほどの空間に自生するキノコやコケだ。前にここに来た時、ここに生えているものは全て食べられることは確認している。
 最初はコケを食べるのかと、嫌がっていた3人だったが、試しに食べさせてみると、以外に食べられると許容された。

 俺は念のため種類を確認しながら、キノコを引っこ抜いていく。

「グ……フォルンさん、物知りなんですね、こんな種類の事まで知っているなんて」

 彼女には俺の名前はフォルンと呼ぶようにと伝えてある。余計な誤解を招かないためと、万が一ここにいる奴らが俺のことを口走らないとは限らないからだ。

「ああ、昔来た時に全部食べて試した」

「全部食べたんですか!」

 俺は彼女に対して頷くと、彼女は呆れたようにため息をついた。
 何かおかしなところでもあったのだろうか、常に見ず知らずの土地にいたせいでこれが常識になってしまっていたが、これは非常識なことなのだろうか。

「普通は毒とかを考えて食べたりなんてしませんよ!」

「そうだったのか。肝に命じておこう」

 俺は彼女の言葉を聞き流すと、最後のキノコを抜いた。
 これで4人分の量にはなるだろう。片腕一杯に抱えられたキノコを見て俺はそう判断した。

「もういいだろう。飯の時間だ」

 俺たちは他の2人のところに戻った。ちょうど火もついたようで、辺りが急に明るくなった。

「準備できてるか?」

「はい、できてます」

 チセ、と言う名の助けた少女がそう言って、三脚の上に金具で固定された焚き火の上にある水の入った鍋を指した。彼女はもう魔力も十分に回復したらしく、顔色の血の気も戻ったようだ。

「よし、始めるか」

 俺が全てやってもいいのだが、このメンバーの中で俺の他にスープが作れるのはルナだけで、彼女が手伝うと言ったので、俺は材料を切るだけだ。
 
 右太ももに挿してあるナイフを抜き、手で持ちながらキノコを乱雑に切りながら、順次鍋に落としていった。
 最後に細かくちぎったコケを入れ、火に近づけた。しばらくして、グツグツ、と水が沸騰を始め、ルナが黙々と味付けをしていった。

 味付けが終わり、鍋のスープを十分にかき混ぜたら、完成だ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「うまぁ!うまぁ!」

「まさかキノコとコケだけでこんなに美味しいなんて」

「信じられない」

「まじかよ!、詐欺じゃん!、詐欺!」

 3人は三者三様の反応をしている。というより、ルナが味付けをしたはずなのに、なぜ彼女が驚いているのか。
 取り敢えず余計なことを考えるのをやめ、俺もスープを一口飲んだ。

 うん、うまい。流石は宿屋の娘だ。

「そういえば、なんでお前達はこんなところにいたんだ?」

 俺の疑問に対して、スター、という男が答えた。

「はぁ?、何言ってんだあんた。ここは迷宮の本部につながる道だろう?、狩だよ」

 この男は何を言っているのだろうか。

「何をバカな。ここは鉱脈への道だぞ」

「へ?、ここって本部への道じゃ?」

 俺が違うと首を振ると、途端に4人が慌てだした。

「どうするのよバカスター!、あんたが右だって言ったから右に行ったんじゃない!」

「仕方ねえだろ!、暗くて見えづらかったんだよ!」

 そもそも右と左の問題に明るさは問題ではないのではないだろうか。
 俺がこの男のアホさ加減に呆れていると、ルナが口を開いた。

「皆さん、落ち着いてください。今必要なのは慌てる事ではなく、落ち着く事です。
 フォルンさん。何か打開策はありませんか?」

 助けた時に泣きべそをかいていた少女が強く成長したものだ。
 俺は場の張り詰めた雰囲気とは真逆にルナの成長に内心ですごく喜んでいた。

「ん?、あ~…………あいつらは夜には動けない。現在時刻は多分3時くらいだろう、あいつらが本格的に休眠状態に入る午後9時にここから脱出しよう。それまで寝ておけ」

「どうして寝る必要があるんだよ?」

「夜からは初めに通って来た道からも魔獣が出現する。それまで一切寝なかったらきついぞ」

「それもそうか。じゃあみんなそうしようぜ」

 彼の言葉を皮切りに全員が準備を始める。
 彼らは背負っていたバックパックから寝具代わりである布と空気で膨らませる枕を取り出している。
 俺は適当な壁にもたれ掛かると、そのまま腰を下ろして、眠ろうとした。

「フォルンさん、寝具はいらないんですか?」

「もともとこんな手間は考えてなかったからな、準備してこなかった」

 嘘ではないが真実ではない。そもそも、俺一人であれば今すぐにでもここから脱出できる。
 俺はあまりこういった状況では寝具を使わない。いつ魔獣に襲われるかわからないからだ。

「すみません、私たちのせいで………」

「気にするな、俺の心配をするならさっさと睡眠を取れ」

 俺はそのまま目を閉じて眠りにつこうとしたら、肩を揺らされて目を覚ました。

「駄目です!、そんな体勢で寝たら起きた時に大変ですよ!」

「俺のことは放っておけ………寝かせろ……」

 つい不機嫌にそう言ってしまって、失言だと気づいた。
 
「そうですか……………すみません」

 彼女は頭についている狼耳をシュン、として垂れさせると、そのまま横になって大人しく眠ってしまった。

 やれやれ、と俺は思い、俺は再度眠りに落ちた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 妙な暑苦しさを感じて、私は目を覚ましました。
 どれくらい時間が経ったのだろう、壁の温度がそこまで変わっていないところから考えると時間はあまり経ってはいないようだ。
 それにしてもこの妙な体の熱さはなんなのだろうか、それに何かいい匂いがするし。
 私がぽーっ、とした表情で臭いの原因を探ると、すぐにわかった。

 彼だ。

 私を昔救ってくれた恩人である、グレイ・フォールンさんだ。
 彼は会った当初からそうであったが、とてもいい匂いがするのだ。それも、女性特有の甘ったるい匂いではなく、一度嗅いだら鼻から取れなくなる類のものだ。
 
 私は花の蜜に誘われる蝶のように、ふらふら、と彼に近づいていった。
 
 近づくにつれ、どんどん濃くなっていく芳醇な香りに、私の理性はどんどん削られていく。
 どうしようもない欲求にかられ、彼の目の前まで近づくと、四つん這いになって彼の匂いが最も強い首元に顔を近づけた。

 すると、私の体に今まで感じたこともない電流が駆け巡った。

 ビクビクと痙攣する体に不安を覚えながらも、体は新たに匂いを嗅ごうとどんどん近づいていく。
 そして、すんすん、と匂いを嗅ぐたびに体の痺れは強くなっていく。

 だめぇ……….この匂い………だめぇ

 どれだけ心が拒んでも体は正直でもう肌と花がくっつく程に密着して、這うようにして匂いを嗅いでいた。
 そして、とうとう我慢ができなくなった私は彼の体を舐め始める。
 彼の甘酸っぱい汗の匂いと味が口に広がり、また体の震えがさらに強くなっていった。

 それから、しばらくの間私は夢中で彼の首を舐め続け、気づけば意識を失っていた。
 

 
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