【本編完】呪いで服がハジけ飛ぶ王様の話 〜全裸王の溺愛侍女〜

依智川ゆかり

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第二章 その感情の名を知る

37、無自覚ラブコメは波乱の予感

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(あ、じゃないんですよね───!!!)


 王付き一同、特に騎士達が困惑していた理由がこれだ。
 王妃に贈られた物だけあって、『ヴィオルの涙』のデザインは無骨な騎士には些か可憐すぎる。あれを肌身離さず付けろというのは、流石に不憫だ。

 しかも、それだけではない。
 ラームニードがヴィオルの涙を思い浮かべるきっかけを察してしまい、先程までの王付きの面々と同じように頭を抱えたい気持ちになってしまった。


『ヴィオルの涙』のエメラルド。
 あれは、リューイリーゼの瞳の色によく似ている。
 
 ラームニードは、リューイリーゼに対してアクセサリーを贈りたいと思っているのだ。 
 ───つまり、彼は彼女を一人の女性として意識している。



(でも、きっと無意識ですよねー。それがどういう意味であるかも、あまり理解してなさそうですよね───!!)


 
 チラリとラームニードの方へ視線をやると、彼は「なら、やはりシンプルなブローチとかの方がいいだろうか」と真剣に考え込んでいた。

 もし、それを理解していたならば、先程の件を指摘されて尚、ここまで平然としていられる筈がない。
 顔を赤らめるか、気不味そうな顔をするくらいはする筈だ。

 ラームニードという人間をよく理解している宰相は、そう断定する。



(……まあ、これは少し想定外、でしたねぇ……)



 確かに宰相は王付きを長く勤められるような、ラームニードに好まれやすい、相性の良い人材を探した。
 
 しかし、『ラームニードの好みで相性が良い女性』だという条件は、彼の異性の好みとも合致し得るのだ。
 
 王付き侍女の増員があまりに切実な問題過ぎて、そんな当たり前の考えがすっぽり頭から抜けていた。完全にノーマークだった。
 

 そこまで考えて、これからどうしたものかと思案する。


 ラームニードは確かにリューイリーゼに対し、好意を持っている。
 執着もしているし、傷付いて欲しくないと思う程に大切にも思っているだろう。


(身分差は後でどうとでも出来ます。臣下としては、このまま二人の関係が進めば良いと思いますが)


 母親との確執から、女性嫌いの気があるラームニードが漸く興味を持った女性だ。逃す手は無い。

 だがしかし、ラームニードがそれを第三者から指摘されて、素直に受け入れるとは到底思えなかった。
 そんな筈があるかと一蹴し、最悪リューイリーゼを遠ざけたり、余計に拗れる事が目に見えている。


 つまり、ここで選ぶべきは静観だ。
 ラームニードが自分で理解し、彼女に手を伸ばすかを選ぶまで待つ他ない。



(でも、少しくらいは突きたいですよね! 面白そ……心配ですし!!)



 宰相は内心ワクワクだった。
 長らく触れる機会から遠ざかっていた恋愛絡みのあれこれだ。所謂『恋バナ』というものは、幾つになっても楽しい。

 後で王付き達にも共有しなくては。
 時間にして十秒程、爆速でそんな結論に至った宰相は、そこで漸く気が付いた。



「おや……? そういえば、リューイリーゼ嬢の姿が見えないようですが」



 渦中の人であるリューイリーゼの姿がどこにもない。
 どうかしたのか、と視線で問うた宰相に、アリーテが答えた。


「リューイリーゼは本日、休暇を貰っています」
「成程、王付きになって初めての休暇になりますか、良いですね」


 これまで王付き侍女はリューイリーゼ一人しかいなかった為、碌な休暇も取れていなかった筈だ。少しでも気分転換になれればいい。
 
 宰相が頷くと、ノイスがいつもの調子で口を挟んできた。


「リューイリーゼ嬢、お休み良いなー。遊びに行ってるのかな」
「王都内を散策するって言ってましたよ。人と会うとか」
「先輩、ちゃんとお洒落して可愛かったですよねぇ。あんなに浮き浮きとしている姿、初めて見たかもしれません」
「それはそれは……。……ん?」


 彼女にも年相応な姿があるのだなぁ、と微笑ましく思っていたのも束の間、何か引っ掛かるものを感じた。

 リューイリーゼが休暇を取って、誰かと待ち合わせて街に遊びに行ったらしい。
 可愛らしくお洒落をして、浮き浮きとした様子だったという。



(……まさか、いや……まさか?)



 嫌な予感がした。
 先程までの希望だったり、計画だったりが全て前提から覆されてしまいそうな、そんな疑惑が浮かび上がる。

 宰相と同じ事に思い至ったのだろう。
 察しの良いノイスとアリーテはハッとして、顔を引き攣らせてラームニードの方へチラリと視線を向ける。
 アーカルドとナイラは一瞬キョトンとして、じわじわとその眉間の皺を深めていく。

 勿論というべきか、ラームニードも例外では無かった。
 まるで雷にでも打たれたかのような衝撃を受けた様子の彼は、わなわなと震え、ドンと執務机を叩く。
 居ても立っても居られないというように、勢い良く立ち上がった。



「──まさか、デートか!? リューイリーゼにはまだ早い!!」



 ……お父さんかな!?
 恐らく、その場の全員がそう思った。


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