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元人間の魔族
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全員が食べ終わる頃に、奥の扉が開いた。
現れたラータは、何かびっしりと文字を書き込んだ紙束を持っていた。
「できたよ、さっそくやってみようか? 表出る? あれ?」
いつの間にみたいな顔で固まるラータに、ディアがにっこり笑いかけた。
「なんでもいいけど。先、食べてくれる?」
「あ、ハイ……」
ソロが眠そうに目をこするラヴィを抱えて、椅子から立ち上がり、そこにラータが座る。ソロはディアに断りを入れ、右手側の扉を開けて、その奥に消えた。
ディアがスープの残りと魚料理を盛りつけた皿をラータの前に置く。
ラータは急いでそれらを食べ、最後は水で胃に流し込んでいた。口元を拭って言う。
「さて、お待たせしてごめん。とりあえずティラン、君にかけられた魔法の解除魔法の術式が完成したよ。解くのは今日でも明日でもいいけど、どうする?」
「明日にしたら? もう遅いし。あなた達、よかったら泊まっていく? ちょっと狭いけど、布団ならあるからそれでいいなら」
ディアが食器を片付けながら言った。
ルフスはティランを振り向いて尋ねる。
「どうする?」
「あー……まあそうやな」
ティランは少し考えて、頷く。
ラータが腰を上げ、思い出したように言った。
「それじゃ、ちょっと向こうの部屋を片づけてくるよ。そうだ、ディア。ソロさんに後で話があって、帰るの待っててもらえるように言ってくれる?」
ソロの方が先に戻ってきて、ディアがラータの言葉を伝えると、空いた椅子に座った。
ティランが頬杖をついたまま、目を細めて不躾にソロを見た。
その向こうでは、ディアが汚れを拭った皿を棚にしまっていて、カチャカチャと小さく音がする。
「あんた、人間やないな?」
ルフスは驚き、目を丸くする。
ソロは挑発的な笑みを浮かべた。
「なんでそう思う?」
「理論や原理どうこうなく、魔法を使えるのは魔に属する者だけや。見た目には全然わからんけど、ひょっとして魔族か?」
「へえ、よく知ってんじゃねぇか。でも惜しいな。半分だけ正解だ」
「半分?」
「うん、めんどくせぇから説明はラータから聞いてくれ」
「あん?」
言って、ティランが眉を跳ね上げる。
その時ちょうどラータがやってきて、ソロは立ち上がった。
「ソロさん、お待たせしてしまってすみません。実はちょっとお願いがありまして」
ラータはルフスを一瞥し、ソロも同じように目線を動かした。
そうして何故かルフスの呪いについて説明をした。
「そういうわけなんで、ソロさんにはこの世界の魔王に協力を仰いでほしいんです。魔王なら神様方にも多少は顔が利くでしょうし」
「つってもあいつならともかく、オレがまずここの魔王に相手にされないだろ」
「それは大丈夫でしょう、何せソロさんはあちら側の魔王の最も近しい存在なわけですし」
「わかった。まあやるだけやってみるわ」
ソロはひとつ息を吐き出す。
「そうそう、クレピスキュルから言伝あずかってんだ。お前たちも、たまには顔見せろとさ」
「あーはい。いろいろ落ち着いたらそのうちに」
ラータが言い終えるのと同時に、ソロが消えた。現れた時とは反対に、体が光となり、金の粒となって散る感じだった。
それまで黙って聞いていたティランが口を開いた。
「伝手って言うてたのは、今の男のことか?」
「うん、ソロさん。彼はこの世界の魔族の間でも顔が知れてるからね」
「魔族かって訊いたら、半分正解やち言うとったけど。どういう意味かはあんたに聞けとさ」
「あっちの部屋、ふとんの用意しておくわね」
ディアが言い、ラータが出てきた部屋に入る。
ラータが声を投げる。
「ありがとう、君もそれが終わったら休んで」
ラータは椅子を引いて座って、なんだったっけと呟く。それから言う。
「ええと。ソロさんだけどね、彼は元人間なんだよね。で、今は魔族みたいなもんで、だから半分正解ってこと」
「元人間の魔族?」
「うん。あちら側の、僕たちが元々いた世界の魔王に魅入られてね。それで」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
話についていけず、ティランは途中で思わず口を出す。
魔族の中には元は動物や植物であったものがいるから、別にそれが人間だったと言われても別にそれほど意外でもない。引っかかるのはその後だ。
「元々いた世界って……」
ラータはテーブルの上で両掌を上に向けて、説明する。
「僕やディア、ソロさんが生まれ住んでいた、この世界とは別の世界。まあ簡単に言ってしまうと、世界っていうのは実はたくさんあってさ。君たちと、僕たちが今存在しているこの世界以外にたくさんね。それでまあ、その僕らが元いた世界での魔王とソロさんは懇意の仲、ていうかぶっちゃけちゃうと、そういう関係なわけで、魔王はソロさんの願いを叶えソロさんもその代償に魔王の願いを聞き入れて、魔族に近い存在になったって経緯でね。もう少し詳しく聞きたいっていうのなら話すのは別に構わないんだけど、これが結構長くてさ。どうする?」
開いた手の指を組んで、肘をつき、ラータはそこに顎を乗せて問いかける。
ティランは挑むように笑った。
「ますます興味深いな。あんたさえ構わんのなら、夜話に聞かせてもらおうやないか」
現れたラータは、何かびっしりと文字を書き込んだ紙束を持っていた。
「できたよ、さっそくやってみようか? 表出る? あれ?」
いつの間にみたいな顔で固まるラータに、ディアがにっこり笑いかけた。
「なんでもいいけど。先、食べてくれる?」
「あ、ハイ……」
ソロが眠そうに目をこするラヴィを抱えて、椅子から立ち上がり、そこにラータが座る。ソロはディアに断りを入れ、右手側の扉を開けて、その奥に消えた。
ディアがスープの残りと魚料理を盛りつけた皿をラータの前に置く。
ラータは急いでそれらを食べ、最後は水で胃に流し込んでいた。口元を拭って言う。
「さて、お待たせしてごめん。とりあえずティラン、君にかけられた魔法の解除魔法の術式が完成したよ。解くのは今日でも明日でもいいけど、どうする?」
「明日にしたら? もう遅いし。あなた達、よかったら泊まっていく? ちょっと狭いけど、布団ならあるからそれでいいなら」
ディアが食器を片付けながら言った。
ルフスはティランを振り向いて尋ねる。
「どうする?」
「あー……まあそうやな」
ティランは少し考えて、頷く。
ラータが腰を上げ、思い出したように言った。
「それじゃ、ちょっと向こうの部屋を片づけてくるよ。そうだ、ディア。ソロさんに後で話があって、帰るの待っててもらえるように言ってくれる?」
ソロの方が先に戻ってきて、ディアがラータの言葉を伝えると、空いた椅子に座った。
ティランが頬杖をついたまま、目を細めて不躾にソロを見た。
その向こうでは、ディアが汚れを拭った皿を棚にしまっていて、カチャカチャと小さく音がする。
「あんた、人間やないな?」
ルフスは驚き、目を丸くする。
ソロは挑発的な笑みを浮かべた。
「なんでそう思う?」
「理論や原理どうこうなく、魔法を使えるのは魔に属する者だけや。見た目には全然わからんけど、ひょっとして魔族か?」
「へえ、よく知ってんじゃねぇか。でも惜しいな。半分だけ正解だ」
「半分?」
「うん、めんどくせぇから説明はラータから聞いてくれ」
「あん?」
言って、ティランが眉を跳ね上げる。
その時ちょうどラータがやってきて、ソロは立ち上がった。
「ソロさん、お待たせしてしまってすみません。実はちょっとお願いがありまして」
ラータはルフスを一瞥し、ソロも同じように目線を動かした。
そうして何故かルフスの呪いについて説明をした。
「そういうわけなんで、ソロさんにはこの世界の魔王に協力を仰いでほしいんです。魔王なら神様方にも多少は顔が利くでしょうし」
「つってもあいつならともかく、オレがまずここの魔王に相手にされないだろ」
「それは大丈夫でしょう、何せソロさんはあちら側の魔王の最も近しい存在なわけですし」
「わかった。まあやるだけやってみるわ」
ソロはひとつ息を吐き出す。
「そうそう、クレピスキュルから言伝あずかってんだ。お前たちも、たまには顔見せろとさ」
「あーはい。いろいろ落ち着いたらそのうちに」
ラータが言い終えるのと同時に、ソロが消えた。現れた時とは反対に、体が光となり、金の粒となって散る感じだった。
それまで黙って聞いていたティランが口を開いた。
「伝手って言うてたのは、今の男のことか?」
「うん、ソロさん。彼はこの世界の魔族の間でも顔が知れてるからね」
「魔族かって訊いたら、半分正解やち言うとったけど。どういう意味かはあんたに聞けとさ」
「あっちの部屋、ふとんの用意しておくわね」
ディアが言い、ラータが出てきた部屋に入る。
ラータが声を投げる。
「ありがとう、君もそれが終わったら休んで」
ラータは椅子を引いて座って、なんだったっけと呟く。それから言う。
「ええと。ソロさんだけどね、彼は元人間なんだよね。で、今は魔族みたいなもんで、だから半分正解ってこと」
「元人間の魔族?」
「うん。あちら側の、僕たちが元々いた世界の魔王に魅入られてね。それで」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
話についていけず、ティランは途中で思わず口を出す。
魔族の中には元は動物や植物であったものがいるから、別にそれが人間だったと言われても別にそれほど意外でもない。引っかかるのはその後だ。
「元々いた世界って……」
ラータはテーブルの上で両掌を上に向けて、説明する。
「僕やディア、ソロさんが生まれ住んでいた、この世界とは別の世界。まあ簡単に言ってしまうと、世界っていうのは実はたくさんあってさ。君たちと、僕たちが今存在しているこの世界以外にたくさんね。それでまあ、その僕らが元いた世界での魔王とソロさんは懇意の仲、ていうかぶっちゃけちゃうと、そういう関係なわけで、魔王はソロさんの願いを叶えソロさんもその代償に魔王の願いを聞き入れて、魔族に近い存在になったって経緯でね。もう少し詳しく聞きたいっていうのなら話すのは別に構わないんだけど、これが結構長くてさ。どうする?」
開いた手の指を組んで、肘をつき、ラータはそこに顎を乗せて問いかける。
ティランは挑むように笑った。
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