AT LONG LAST

第二章

side一縷 ㉖

入籍してからお互いの実家と会社に近い332E地区に新居を構えた。
条件に関して細かい俺が物件探しをして、蒼と二人でどの物件にするか内見した。
最終的に最上階のワンフロアのマンションに決めた。
セキュリティー面も充実していて、コンシェルジュもついている。
賃貸にしようかとも思ったが、いつかは家族が増えるかもしれないし、買ってしまおうと思い立ち、二人の名義で購入した。
引っ越すにしても、今使っている家具等は全部買い直すつもりだったから、俺の手荷物はほんの少しだけで、業者を呼ぶ程ではなかった。
その点は蒼も同じだったようだ。
とりあえず寝る所を確保しなければならないから、二人でベッドだけはすぐ買いに行った。
俺が気に入ったベッドは中世スタイルのフレームが柵状になっていて、少し華美な物だった。
蒼は、寝るだけなのだからそこまで華美な装飾は必要ない、と一般的な枕元に物が置ける物がいいと言った。
ここまで二人の意見が真っ向から対立することがなかったので、収集がつかなかった。
様々な家具屋を転々とはしごした結果、二人して一瞬で一目惚れしたベッドに出会った。
フレームにはレザーが使われているウォーターベッドで、枕元はフレームで覆われていて、リラックス効果がある青いライトが付いていた。
値段はかなり予算オーバーだったが、二人で使う物だし、睡眠は大事だからと購入することにした。
数日後、業者がベッドの搬入をしに来た。
業者が帰った後、蒼と二人で寝てみた。
目を閉じて横になってみると、店で寝た感覚とはまた違った感覚で、体がふわふわと浮いているような落ち着かない感覚になった。
目を開け、隣を見ると、蒼も同じようだったのか、今にも泣きそうな顔で俺を見る。
「どうした？」
「何か体がふわふわして落ち着かない…」
「大丈夫。俺はここにいる」
「うん」
蒼が俺に擦り寄って、しがみつく。
本当に蒼はかわいい。
自然にかわいいことをするから俺の理性がぶっ飛びそうで怖い。
「いち…」
余程怖いと思ったのか、目に涙を浮かべて俺を見る蒼。
それを見ただけで俺の僅かに残っていた理性がぶっ飛んだ。
俺は気付くと、蒼にキスをしていた。