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桃太郎、拾われる
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むかしむかし、ピーチ王国の王都から遠く離れた田舎にお爺さんとお婆さんがいました。
お爺さんは山へ薪を拾いに、お婆さんは川へ洗濯をしに行きました。
お婆さんが川で洗濯をしていると、川上からどんぶらこ、どんぶらこと自分の背よりも大層大きな桃が流れてきました。
(こんな大きな桃を持って帰ったらお爺さん驚くかしら?)
お爺さん思いのお婆さんは川に罠を仕掛け、やっとの思いで大きな桃を手に入れました。
ここでお婆さんは困ってしまいました。
お婆さんは年相応の力しかありません。
こんな大きな桃を持ち上げることができなかったのです。
(どうしましょう…困ったわ…)
大きな桃の傍らで持って帰る方法を悩んでいると、草むらの中から犬と猿と雉が現れました。
「あのお婆さん、悩んでいるワン」
「助けてあげたいケーン」
「…あの桃、おいしそうウキ」
三匹は話し合って、お婆さんの手助けをしてあげることにしました。
「お婆さん、お困りのようですねワン」
「そうなの、どうにかして持って帰りたいの」
「私たちが手伝ってあげましょうかケーン?」
「本当!?それはすごく助かるわ」
「その代わり、少しでいいからこの桃を分けてほしいウキ」
「それくらいのお礼はさせてもらうわ」
「交渉成立ウキ!」
雉は大きな桃に縄を巻き付け、その縄を首に掛け、持ち上げることにしました。
猿は雉のサポートのためにお婆さんと一緒に下から支えます。
二匹と一人の渾身の力で陸に上げ、犬がどこからか持って来たソリに乗せました。
犬と雉はソリを曳き、お婆さんと猿は後ろからソリを押します。
あとは桃をお婆さんの家まで持って帰るだけ。
ゴリゴリとソリが地面を擦る音が辺り一面に響きました。
「この桃、どうしたんじゃ?」
響き渡る音に驚いたお爺さんが家から出てきました。
「川で洗濯していると流れてきたんですよ」
「えらく大きな桃じゃな」
「今年はまだ桃、食べてなかったでしょう?」
「今年は不作で値が高騰しておるからな」
「お爺さん、桃好きですからね。少しでも食べさせたくて、がんばって持って帰ってきました」
「すまねぇな…」
「お爺さんのためですよ」
「ありがとう。それはそうと、このお供はどうしたんじゃ?」
「持って帰るのに困っていたところを助けてくれたんです」
「そうか、そうか。世話になったなぁ」
「いいんですワン」
「お役に立てて嬉しいですケーン」
「約束、忘れないでくれよウキ」
「分かってますよ」
「約束?」
「手伝ってくれたお礼に、この桃を少し分ける約束をしたんです」
「そうか。儂ら二人じゃ、こんな大きな桃食べきれんから、ちょうどいいな」
「早く食べようウキ」
「そうね。今切るから少し待ってて」
そう言って、お婆さんは家から包丁を持って出てきました。
こんな大きな桃を切るのは初体験。
中程まで慎重に包丁を入れると突然、パカーン、と桃が割れました。
皆、驚いて家の中に逃げ込みます。
しばらくしても何の音沙汰もないので、ゆっくり玄関から顔を外へ覗かせました。
そこには割れた桃の真ん中で赤ん坊がすよすよと寝ているではありませんか。
お爺さんとお婆さんは神に感謝しました。
二人がまだ若かった頃、なかなか子供を授かりませんでした。
周りからは多くのプレッシャーや嫌味を受けました。
何とか子供が欲しいとありとあらゆる方法を試すも、結果として子供を授からず、最終的には諦めたものの悲しみに暮れる日々でした。
(いつか、死ぬまででいいから、子供が欲しい)
二人は口に出すことはしないまでも、毎年初詣で祈っていたのでした。
それがとうとう叶ったのです。
お婆さんは泣いて喜びました。
お爺さんもお婆さんにつられてもらい泣きをしています。
そんな二人を横目に猿は割れた片方の桃に齧りついています。
「猿さん、まだ許可は得てないですワン」
「そうです、よくありませんケーン」
「さっき婆さんは『分けてくれる』って言ったからいいんだウキ」
「よくこの状況で自分勝手なことができるワン」
「呆れますケーン」
そんな二匹を横目に猿はより多くの桃を食べようと無我夢中になって食べました。
お爺さんとお婆さんは桃のことはもう眼中にありませんでした。
「桃はもうお前たちで分けてくれ」
「私たちはこの子の世話があるから、桃を食べる時間が惜しいの」
赤ん坊を毛布に包み、大事そうに家に連れていきました。
玄関の外に残された犬と雉と猿。
猿は割れた桃の片方の大半を既に食べてしまっています。
犬と雉は仕方なく残りの半分を二匹で仲良く半分にして食べました。
お爺さんは山へ薪を拾いに、お婆さんは川へ洗濯をしに行きました。
お婆さんが川で洗濯をしていると、川上からどんぶらこ、どんぶらこと自分の背よりも大層大きな桃が流れてきました。
(こんな大きな桃を持って帰ったらお爺さん驚くかしら?)
お爺さん思いのお婆さんは川に罠を仕掛け、やっとの思いで大きな桃を手に入れました。
ここでお婆さんは困ってしまいました。
お婆さんは年相応の力しかありません。
こんな大きな桃を持ち上げることができなかったのです。
(どうしましょう…困ったわ…)
大きな桃の傍らで持って帰る方法を悩んでいると、草むらの中から犬と猿と雉が現れました。
「あのお婆さん、悩んでいるワン」
「助けてあげたいケーン」
「…あの桃、おいしそうウキ」
三匹は話し合って、お婆さんの手助けをしてあげることにしました。
「お婆さん、お困りのようですねワン」
「そうなの、どうにかして持って帰りたいの」
「私たちが手伝ってあげましょうかケーン?」
「本当!?それはすごく助かるわ」
「その代わり、少しでいいからこの桃を分けてほしいウキ」
「それくらいのお礼はさせてもらうわ」
「交渉成立ウキ!」
雉は大きな桃に縄を巻き付け、その縄を首に掛け、持ち上げることにしました。
猿は雉のサポートのためにお婆さんと一緒に下から支えます。
二匹と一人の渾身の力で陸に上げ、犬がどこからか持って来たソリに乗せました。
犬と雉はソリを曳き、お婆さんと猿は後ろからソリを押します。
あとは桃をお婆さんの家まで持って帰るだけ。
ゴリゴリとソリが地面を擦る音が辺り一面に響きました。
「この桃、どうしたんじゃ?」
響き渡る音に驚いたお爺さんが家から出てきました。
「川で洗濯していると流れてきたんですよ」
「えらく大きな桃じゃな」
「今年はまだ桃、食べてなかったでしょう?」
「今年は不作で値が高騰しておるからな」
「お爺さん、桃好きですからね。少しでも食べさせたくて、がんばって持って帰ってきました」
「すまねぇな…」
「お爺さんのためですよ」
「ありがとう。それはそうと、このお供はどうしたんじゃ?」
「持って帰るのに困っていたところを助けてくれたんです」
「そうか、そうか。世話になったなぁ」
「いいんですワン」
「お役に立てて嬉しいですケーン」
「約束、忘れないでくれよウキ」
「分かってますよ」
「約束?」
「手伝ってくれたお礼に、この桃を少し分ける約束をしたんです」
「そうか。儂ら二人じゃ、こんな大きな桃食べきれんから、ちょうどいいな」
「早く食べようウキ」
「そうね。今切るから少し待ってて」
そう言って、お婆さんは家から包丁を持って出てきました。
こんな大きな桃を切るのは初体験。
中程まで慎重に包丁を入れると突然、パカーン、と桃が割れました。
皆、驚いて家の中に逃げ込みます。
しばらくしても何の音沙汰もないので、ゆっくり玄関から顔を外へ覗かせました。
そこには割れた桃の真ん中で赤ん坊がすよすよと寝ているではありませんか。
お爺さんとお婆さんは神に感謝しました。
二人がまだ若かった頃、なかなか子供を授かりませんでした。
周りからは多くのプレッシャーや嫌味を受けました。
何とか子供が欲しいとありとあらゆる方法を試すも、結果として子供を授からず、最終的には諦めたものの悲しみに暮れる日々でした。
(いつか、死ぬまででいいから、子供が欲しい)
二人は口に出すことはしないまでも、毎年初詣で祈っていたのでした。
それがとうとう叶ったのです。
お婆さんは泣いて喜びました。
お爺さんもお婆さんにつられてもらい泣きをしています。
そんな二人を横目に猿は割れた片方の桃に齧りついています。
「猿さん、まだ許可は得てないですワン」
「そうです、よくありませんケーン」
「さっき婆さんは『分けてくれる』って言ったからいいんだウキ」
「よくこの状況で自分勝手なことができるワン」
「呆れますケーン」
そんな二匹を横目に猿はより多くの桃を食べようと無我夢中になって食べました。
お爺さんとお婆さんは桃のことはもう眼中にありませんでした。
「桃はもうお前たちで分けてくれ」
「私たちはこの子の世話があるから、桃を食べる時間が惜しいの」
赤ん坊を毛布に包み、大事そうに家に連れていきました。
玄関の外に残された犬と雉と猿。
猿は割れた桃の片方の大半を既に食べてしまっています。
犬と雉は仕方なく残りの半分を二匹で仲良く半分にして食べました。
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