パラレルワールド桃太郎

伊崎夢玖

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桃太郎、成長した

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桃を拾ってから15年が経ちました。
お爺さんとお婆さんは赤ん坊を大層大事に育てました。
赤ん坊は桃から生まれたということで桃太郎と名付けられました。
この国では15歳になると職に就かなければなりません。
桃太郎は剣術のステータスを多く所持していたことから、剣士になりました。

「お爺さん、お婆さん。今までお世話になりました」
「おぉぉ…行ってしまうのじゃな…」
「お願い、行かないで。桃太郎」
「お爺さん、お婆さん。悲しませてしまってごめんなさい。この国に生まれたからには行かなければなりません」
「婆さんや、悲しいのは分かる。桃太郎の門出じゃ。笑顔で行かせてやろう?」
「えぇ、えぇ。分かっています。そうなんだけど、涙が勝手に溢れてくるの」
「王都に行って、しばらくは帰ってこれないかもしれないけれど、まとまった休みが取れるようになったら絶対に帰ってきます。約束します」
「本当ね?桃太郎」
「もちろんです、お婆さん。絶対に戻ってきます」
「もう行かねば王都に着くのが遅れてしまうじゃろう。行くのじゃ、桃太郎」
「お婆さんのこと、よろしくお願いします」
「大丈夫じゃ。お前さんが来るまでずっと二人でやって来たんじゃから」
「では、行ってきます」
「体に気を付けるんじゃぞ」
「インスタントばかり食べては駄目よ?」
「はい」

桃太郎は二人に手を振り、王都に向けて出発しました。
桃太郎はお婆さんが大切にしていた先祖代々から受け継いできた着物を売ったお金で買ってくれた魔法が付与された布で一から作ってくれた戦闘服を身に纏い、お爺さんが家宝を売ったお金で買ってくれた一流鍛冶師が作った折れることのない剣を腰に差して王都に向かいました。
二人がそこまでするのは、それだけ桃太郎を愛していて、期待しているという証でもありました。
二人の気持ちを桃太郎は知っていました。
だからこそ、一日も早く武勲を挙げて二人の期待に応えたいと思っていました。
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