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桃太郎、王女を庇う
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国王はとても悲しみました。
なぜなら、自分の娘が英雄の元へ嫁に行ったということは自分に箔が付くも同然です。
近隣諸国との会合の時に自慢してやろうと思っていた目論見が全部白紙になってしまったのです。
悲しんだのも束の間、怒りが国王の中で沸々と湧き上がってきました。
「本当にお前はクズだ、アンナっ!」
国王は玉座から下りると、桃太郎の隣にいるアンナに掴みかかり、罵りながら平手打ちをしました。
桃太郎は突然のことに体が動きませんでした。
「忌み嫌われるお前をここまで育ててやった恩も返せぬようなろくでなしは生まれてすぐに殺しておけばよかった!」
「ごめんなさい、お父様」
「お前にお父様と呼ばれたくないわっ!」
「ごめんなさい。ごめんなさい」
何度も何度も国王はアンナをぶちました。
さすがの国王の仕打ちに桃太郎も堪忍袋の緒が切れました。
無礼は承知で、国王を突き飛ばし、アンナを自分の背に庇いました。
「お待ちください、国王様」
「うるさい!外野は黙っとれ!」
「いくら何でも女性を殴っているのをみすみす見逃せません。理由はなんですか?」
「こいつの容姿が悪いんだ」
「容姿?」
「銀髪に白磁の肌、赤い目…これはかつてこの国を襲った魔女の容姿そのものなのだ。だからこいつは魔女の生まれ変わりなんだ」
あまりに理不尽な理由でした。
国王は古い人間故に”アルビノ”を知りませんでした。
アンナは生まれつきメラニンが欠乏しているただのアルビノの少女なだけです。
しかし、この国では昔の伝承の魔女の姿に似ているからという理由でこの歳まで忌み嫌われてきたのです。
どれだけ理不尽なことをされてきたのでしょう。
考えるだけで背筋が凍ります。
それなのにアンナは抵抗しませんでした。
それが彼女の今まで生きてきた人生での処世術だったのです。
『抵抗しなければ早く終わる』
『気が済むまでやればしばらくは平和が訪れる』
あまりに悲しい事実に桃太郎はアンナとの約束を反故にしました。
「国王様、彼女は私が嫁に貰います」
「しかし、先程破棄すると言ったばかりではないか」
「彼女のこんな状況を見て、あなたの手元に置いておくことはできません。私が貰います」
「そうか、そうか」
その言葉を聞いただけで、国王は満面の笑みを顔に張り付けて玉座に戻って行きました。
桃太郎の手は硬く握りしめられ、血が滴っています。
そんな国王の姿を見て殴らなかった自分を褒めてやりたい、桃太郎は思いました。
「行きましょう、王女様」
「でも…」
「大丈夫です」
桃太郎はアンナの手を取り、早々に王城から出ました。
三匹もそっと桃太郎の後に続きました。
なぜなら、自分の娘が英雄の元へ嫁に行ったということは自分に箔が付くも同然です。
近隣諸国との会合の時に自慢してやろうと思っていた目論見が全部白紙になってしまったのです。
悲しんだのも束の間、怒りが国王の中で沸々と湧き上がってきました。
「本当にお前はクズだ、アンナっ!」
国王は玉座から下りると、桃太郎の隣にいるアンナに掴みかかり、罵りながら平手打ちをしました。
桃太郎は突然のことに体が動きませんでした。
「忌み嫌われるお前をここまで育ててやった恩も返せぬようなろくでなしは生まれてすぐに殺しておけばよかった!」
「ごめんなさい、お父様」
「お前にお父様と呼ばれたくないわっ!」
「ごめんなさい。ごめんなさい」
何度も何度も国王はアンナをぶちました。
さすがの国王の仕打ちに桃太郎も堪忍袋の緒が切れました。
無礼は承知で、国王を突き飛ばし、アンナを自分の背に庇いました。
「お待ちください、国王様」
「うるさい!外野は黙っとれ!」
「いくら何でも女性を殴っているのをみすみす見逃せません。理由はなんですか?」
「こいつの容姿が悪いんだ」
「容姿?」
「銀髪に白磁の肌、赤い目…これはかつてこの国を襲った魔女の容姿そのものなのだ。だからこいつは魔女の生まれ変わりなんだ」
あまりに理不尽な理由でした。
国王は古い人間故に”アルビノ”を知りませんでした。
アンナは生まれつきメラニンが欠乏しているただのアルビノの少女なだけです。
しかし、この国では昔の伝承の魔女の姿に似ているからという理由でこの歳まで忌み嫌われてきたのです。
どれだけ理不尽なことをされてきたのでしょう。
考えるだけで背筋が凍ります。
それなのにアンナは抵抗しませんでした。
それが彼女の今まで生きてきた人生での処世術だったのです。
『抵抗しなければ早く終わる』
『気が済むまでやればしばらくは平和が訪れる』
あまりに悲しい事実に桃太郎はアンナとの約束を反故にしました。
「国王様、彼女は私が嫁に貰います」
「しかし、先程破棄すると言ったばかりではないか」
「彼女のこんな状況を見て、あなたの手元に置いておくことはできません。私が貰います」
「そうか、そうか」
その言葉を聞いただけで、国王は満面の笑みを顔に張り付けて玉座に戻って行きました。
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そんな国王の姿を見て殴らなかった自分を褒めてやりたい、桃太郎は思いました。
「行きましょう、王女様」
「でも…」
「大丈夫です」
桃太郎はアンナの手を取り、早々に王城から出ました。
三匹もそっと桃太郎の後に続きました。
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