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桃太郎、別れる
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「桃太郎様、待ってください」
「待ちません」
「どちらへ行くんですか?」
「黙ってついて来てください」
そう言った桃太郎が連れてきたのは鬼ヶ島でした。
どうしてここに連れて来られたのか分かりません。
アンナはまた牢に入れられるのではないかと不安になりました。
「ここまで来ればいいでしょう」
「どうしてここへ?」
「ここは国境近くです。海から出ればすぐ隣国です」
「どういうこと?」
「この国から逃げてください」
「逃げる?」
「ここにいたらあなたは殺されるでしょう」
「一人では逃げられません」
「では護衛に誰か一匹付けましょう。三匹共、いるんでしょう?出てきてください」
「バレてたのかよ」
「さすが桃太郎殿ですな」
「見つかったウキ」
「あなたは…!?」
「???」
アンナが突然泣き出しました。
狼狽えるのは一人と二匹。
残る一匹は微動だにしませんでした。
「猿さん、ついて来てくれますか?」
「「えっ!?」」
「アンナ様、猿さんでいいんですか?彼は今回の作戦でも戦闘は一切しなかったんですよ?戦闘になった時困りますよ?」
「いいんです。彼は私を助けてくれた。それだけで十分なんです」
アンナは熱い眼差しを猿に向けています。
猿は居心地が悪いのか、ずっとそっぽを向いたままだんまりを決め込んでいます。
こんな状況になれば冷やかしたくなるのが本能です。
「ヒューヒュー。お熱いねぇ」
「これ、フェンリル殿。冷やかすものではないですぞ」
「こんなリア充見せつけられて冷やかさずにいられないだろう?」
「そんな子供じみたことをするから、いつまで経っても子供っぽいのです」
「てめぇ、言わせておけばぬけぬけと…!」
「やりますか?」
「やってやろうじゃねぇかっ!!」
フェンリルとフェニックスは喧嘩を始めてしまいました。
この二匹が喧嘩を始めてしまっては止めようがありません。
二匹が飽きるか自分たちで止めるまで続きます。
そんな二匹をよそ目に桃太郎は猿とアンナに近づきました。
「これを」
「これは受け取れないウキ」
「もしどこかで戦闘になった時は誰が彼女を守るんですか?猿さん、あなたしかいないんですよ。自分の命を代えてでも彼女を守ってください。あと、これはあなた方への餞別です。受け取ってください」
「そ、そういうことなら…」
おずおずと猿は桃太郎から剣と報奨金を受け取りました。
自分の腰に差すには長すぎる剣を両手でしっかり握りしめ、船に乗り込みました。
アンナも猿に続き、船に乗り込みます。
まだフェンリルとフェニックスの喧嘩は続いているようで、船着き場まで声がこだましています。
「さぁ、お行きなさい」
「ありがとうウキ」
「お世話になりました」
「あなた方の門出に祝福があらんことを」
猿がオールを握って船を漕ぎ、アンナは桃太郎に別れを告げるため手を振ります。
どんどん船は潮の流れに乗って、あっという間に見えなくなりました。
「行ったか」
「えぇ。あなたたちは別れを言わなくてよかったのですか?」
「生きていればいつかどこかでまた会えるはずでありますからな」
「だな。元気でなぁー!!」
本当はフェンリルとフェニックスも別れを言いたかったはずです。
でも二匹共恥ずかしがり屋でした。
どうしても別れを言いだすのが躊躇われた結果、下手な芝居をうつことにしたのでした。
きっと勘のいい猿は気付いていたかもしれません。
それでも敢えて触れないでいたのは猿の優しさ故だったのです。
桃太郎たちは残りの報奨金をきっちり三等分して別れました。
「待ちません」
「どちらへ行くんですか?」
「黙ってついて来てください」
そう言った桃太郎が連れてきたのは鬼ヶ島でした。
どうしてここに連れて来られたのか分かりません。
アンナはまた牢に入れられるのではないかと不安になりました。
「ここまで来ればいいでしょう」
「どうしてここへ?」
「ここは国境近くです。海から出ればすぐ隣国です」
「どういうこと?」
「この国から逃げてください」
「逃げる?」
「ここにいたらあなたは殺されるでしょう」
「一人では逃げられません」
「では護衛に誰か一匹付けましょう。三匹共、いるんでしょう?出てきてください」
「バレてたのかよ」
「さすが桃太郎殿ですな」
「見つかったウキ」
「あなたは…!?」
「???」
アンナが突然泣き出しました。
狼狽えるのは一人と二匹。
残る一匹は微動だにしませんでした。
「猿さん、ついて来てくれますか?」
「「えっ!?」」
「アンナ様、猿さんでいいんですか?彼は今回の作戦でも戦闘は一切しなかったんですよ?戦闘になった時困りますよ?」
「いいんです。彼は私を助けてくれた。それだけで十分なんです」
アンナは熱い眼差しを猿に向けています。
猿は居心地が悪いのか、ずっとそっぽを向いたままだんまりを決め込んでいます。
こんな状況になれば冷やかしたくなるのが本能です。
「ヒューヒュー。お熱いねぇ」
「これ、フェンリル殿。冷やかすものではないですぞ」
「こんなリア充見せつけられて冷やかさずにいられないだろう?」
「そんな子供じみたことをするから、いつまで経っても子供っぽいのです」
「てめぇ、言わせておけばぬけぬけと…!」
「やりますか?」
「やってやろうじゃねぇかっ!!」
フェンリルとフェニックスは喧嘩を始めてしまいました。
この二匹が喧嘩を始めてしまっては止めようがありません。
二匹が飽きるか自分たちで止めるまで続きます。
そんな二匹をよそ目に桃太郎は猿とアンナに近づきました。
「これを」
「これは受け取れないウキ」
「もしどこかで戦闘になった時は誰が彼女を守るんですか?猿さん、あなたしかいないんですよ。自分の命を代えてでも彼女を守ってください。あと、これはあなた方への餞別です。受け取ってください」
「そ、そういうことなら…」
おずおずと猿は桃太郎から剣と報奨金を受け取りました。
自分の腰に差すには長すぎる剣を両手でしっかり握りしめ、船に乗り込みました。
アンナも猿に続き、船に乗り込みます。
まだフェンリルとフェニックスの喧嘩は続いているようで、船着き場まで声がこだましています。
「さぁ、お行きなさい」
「ありがとうウキ」
「お世話になりました」
「あなた方の門出に祝福があらんことを」
猿がオールを握って船を漕ぎ、アンナは桃太郎に別れを告げるため手を振ります。
どんどん船は潮の流れに乗って、あっという間に見えなくなりました。
「行ったか」
「えぇ。あなたたちは別れを言わなくてよかったのですか?」
「生きていればいつかどこかでまた会えるはずでありますからな」
「だな。元気でなぁー!!」
本当はフェンリルとフェニックスも別れを言いたかったはずです。
でも二匹共恥ずかしがり屋でした。
どうしても別れを言いだすのが躊躇われた結果、下手な芝居をうつことにしたのでした。
きっと勘のいい猿は気付いていたかもしれません。
それでも敢えて触れないでいたのは猿の優しさ故だったのです。
桃太郎たちは残りの報奨金をきっちり三等分して別れました。
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