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桃太郎、結婚する?
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「今回の殲滅作戦、ご苦労だった」
「とんでもありません」
「これが今回の報酬になる」
側近から渡されたのは金貨の山。
どれだけの枚数があるのか分かりません。
桃太郎たちは大層喜びました。
「桃太郎は今回の作戦の追加報酬として、我が娘を嫁として嫁がせようと思うがどうだろうか?」
「国王様の娘さん…王女様ですか?」
「そうだ。こっちに来なさい」
「はい」
そこに現れたのは、猿が鬼ヶ島で助けた銀髪の少女でした。
オーガを殲滅した立役者である桃太郎に嫁げるのはかなり栄誉なことのはず。
それなのに、どこか表情が晴れていません。
桃太郎は何かあると思いました。
「国王様、王女様と二人で話しても構いませんか?」
「もちろんだとも」
「では、王女様行きましょうか」
「はい」
王女は終始「はい」しか話しません。
それが桃太郎には違和感にしか感じませんでした。
国王の間から出て、中庭のバラ園へ向かいました。
周りには桃太郎と王女以外誰もいません。
「王女様、お名前は何とおっしゃるのですか?」
「アンナです」
「アンナ様、私と結婚してもいいと思っていますか?」
「はい」
「本当のあなたの気持ちはどうなんですか?」
「私の気持ち?」
「国王様に呼ばれて、私の前に現れてここに連れてくるまであなたはずっと曇った表情でした。本当は結婚なんかしたくないんじゃないですか?」
「それは…」
「それは?」
「桃太郎様のおっしゃる通りです。私には心に決めた人がいます。お名前も何も知らない人です。相手の方は私のことは覚えていないでしょう。それでもいいんです。私の心にあの方がいる限り、私は幸せなのですから」
自分の気持ちを吐露するアンナはとても晴れやかな表情をして、それはそれは美しいのでした。
桃太郎は決めました。
「この縁談はお断りさせてもらいます」
「えっ!?私に好きな方がいたからですか?」
「それもありますが、私があなたを嫁に貰いたくなかったということにしましょう」
「どうして…?」
「もしそうすれば、好きな人と一緒になるチャンスがあるかもしれません。結婚とは本当に好きな人とするものです。誰かに強制されてするものじゃない。あなたは幸せになるべきです」
「…ぅぅ…ありがとう…ございます…」
「涙を拭いてください。綺麗なお顔が台無しですよ?」
紳士な桃太郎はそっとアンナの涙を拭いてあげました。
その様子を影から見守る者がいました。
フェンリルとフェニックスと猿です。
三匹は隠密を使って二人の様子を隠れて見ていました。
「あの女、馬鹿だろ」
「そんなこと言うものではないでありますぞ」
「そうですウキ」
「いやいや、相手は国を守った英雄だぞ?こんな上玉逃すなんてあり得ねぇ」
「まぁ、その意見には賛成ではありますが…」
「桃太郎さんの言うのも一理ありますウキ」
「好きな相手と――ってやつなんか、英雄の前に霞んじまうよ。どんな奴か知らねぇけど」
「まぁ、お二人が縁談破棄したことに納得しているのだからいいのでは?」
「そうですウキ」
三匹が話している間に桃太郎とアンナは国王の間へ戻り、縁談を破棄する旨を伝えました。
「とんでもありません」
「これが今回の報酬になる」
側近から渡されたのは金貨の山。
どれだけの枚数があるのか分かりません。
桃太郎たちは大層喜びました。
「桃太郎は今回の作戦の追加報酬として、我が娘を嫁として嫁がせようと思うがどうだろうか?」
「国王様の娘さん…王女様ですか?」
「そうだ。こっちに来なさい」
「はい」
そこに現れたのは、猿が鬼ヶ島で助けた銀髪の少女でした。
オーガを殲滅した立役者である桃太郎に嫁げるのはかなり栄誉なことのはず。
それなのに、どこか表情が晴れていません。
桃太郎は何かあると思いました。
「国王様、王女様と二人で話しても構いませんか?」
「もちろんだとも」
「では、王女様行きましょうか」
「はい」
王女は終始「はい」しか話しません。
それが桃太郎には違和感にしか感じませんでした。
国王の間から出て、中庭のバラ園へ向かいました。
周りには桃太郎と王女以外誰もいません。
「王女様、お名前は何とおっしゃるのですか?」
「アンナです」
「アンナ様、私と結婚してもいいと思っていますか?」
「はい」
「本当のあなたの気持ちはどうなんですか?」
「私の気持ち?」
「国王様に呼ばれて、私の前に現れてここに連れてくるまであなたはずっと曇った表情でした。本当は結婚なんかしたくないんじゃないですか?」
「それは…」
「それは?」
「桃太郎様のおっしゃる通りです。私には心に決めた人がいます。お名前も何も知らない人です。相手の方は私のことは覚えていないでしょう。それでもいいんです。私の心にあの方がいる限り、私は幸せなのですから」
自分の気持ちを吐露するアンナはとても晴れやかな表情をして、それはそれは美しいのでした。
桃太郎は決めました。
「この縁談はお断りさせてもらいます」
「えっ!?私に好きな方がいたからですか?」
「それもありますが、私があなたを嫁に貰いたくなかったということにしましょう」
「どうして…?」
「もしそうすれば、好きな人と一緒になるチャンスがあるかもしれません。結婚とは本当に好きな人とするものです。誰かに強制されてするものじゃない。あなたは幸せになるべきです」
「…ぅぅ…ありがとう…ございます…」
「涙を拭いてください。綺麗なお顔が台無しですよ?」
紳士な桃太郎はそっとアンナの涙を拭いてあげました。
その様子を影から見守る者がいました。
フェンリルとフェニックスと猿です。
三匹は隠密を使って二人の様子を隠れて見ていました。
「あの女、馬鹿だろ」
「そんなこと言うものではないでありますぞ」
「そうですウキ」
「いやいや、相手は国を守った英雄だぞ?こんな上玉逃すなんてあり得ねぇ」
「まぁ、その意見には賛成ではありますが…」
「桃太郎さんの言うのも一理ありますウキ」
「好きな相手と――ってやつなんか、英雄の前に霞んじまうよ。どんな奴か知らねぇけど」
「まぁ、お二人が縁談破棄したことに納得しているのだからいいのでは?」
「そうですウキ」
三匹が話している間に桃太郎とアンナは国王の間へ戻り、縁談を破棄する旨を伝えました。
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