パラレルワールド桃太郎

伊崎夢玖

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猿の裏の顔

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猿は一匹拓けた場所から通路の方へ移動しました。

(人質でも探すか…)

猿は外面だけは完璧に作って、『弱い』ということを演じていました。
好戦的な性格なのに、戦闘が面倒という理由なだけで、今回の戦闘に参加しなかったのです。
しかも、桃太郎のパーティーに入るまで、様々なパーティーに参加していました。
いろんなダンジョンに行く機会があったおかげで、ダンジョンパターンや敵の習性を知っていました。
オーガは偵察能力が低いため、隠れていれば見つかることはないのです。
桃太郎たちが派手に戦闘してくれているおかげで、誰も猿が一匹でダンジョンを歩き回っていることに気付かなかったのです。
今回の鬼ヶ島もパターンに則って人質が監禁されているであろう場所もすぐに目星がつきました。

「誰かいるか?」
「誰?」
「助けに来た者だ。今から鍵を開けるから逃げろ」
「ありがとうございます」

キーピックで解錠すると、監禁されていた人質が次々と出てきました。
猿は安全なルートで人質を解放しました。

「助けて下さって、ありがとうございました」
「いいから逃げろ」
「いつかどこかでまた会いましょう」

白髪に見える銀髪で白磁の肌をした赤い目の少女が猿の頬に一つキスをし、用意してあった船に乗り込むと、本土方面に漕ぎ出しました。
人質が全員逃げたのを確認して、桃太郎たちが戦闘している拓けた場所へ向かいました。
猿が到着した時には、戦闘は終了していました。
オーガマスターは桃太郎によって首を落とされて絶命していました。
多くの雑魚たちはフェンリルとフェニックスによって惨殺されていました。

「猿さん、どこへ行っていたんですか?」
「激しい戦闘だったから、この場から離れて人質を探していましたウキ」
「人質はどうなりましたか?」
「全員逃がしましたウキ」
「それはよかったです」
「俺の方が多く倒しただろうが!」
「いや、自分の方が多く倒したでありますよ。この山を見れば分かるでしょう」
「それを言うなら、俺の山だって――」

フェンリルとフェニックスは再び不毛な言い争いを始めていました。
桃太郎が二匹を宥めて、鬼ヶ島を後にしました。
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