いばら姫

伊崎夢玖

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停学

十六話

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奴らは桃は非処女だと言ったが、処女だった。
体育倉庫は暗がりだから見えづらいが、保が桃を助けに行った時、桃の下腹部から出血していた。
保が貰うはずだった処女を奴らは散らしたのだ。
奴らは保の逆鱗に触れてしまった。これくらいの制裁で済んでいるのは多少の慈悲である。
奴らの始末が全部終わったところで、奴らの元へ再度行く。
「これに懲りたら、もう俺にも桜井にも関わるな」
『……はぃ…』
「今日の出来事は他言無用だ。誰かに話したら次はどうなるか分かるよな?」
『……はぃ…』
これで全部終わった。車に戻る。
桃の停学の件は理事長から取り下げてもらうようお願いすることにしよう。
保はスマホを取り出し、理事長へ電話する。
「お忙しいところ、申し訳ございません。久世でございます。度々申し訳ないのですが、折り入ってお話したいことがあります。お時間作っていただけませんでしょうか。…では、明日の二十一時にいつもの店で。よろしくお願い致します。失礼致します」
あまり理事長に借りを作りたくなかったが、致し方ない。
翌日の二十時半、老舗割烹に保は理事長と交渉するために訪れた。
理事長は二十一時ちょうどに現れた。
「お忙しいところ、申し訳ございません」
『いいよ、久世君。今回はどうしたんだい?』
「桜井桃が只今停学処分になっていることはご存知でしょうか?」
『報告で聞いているよ。それが?』
「校長、教頭、学年主任が強制的に推し進めたようです。彼女は何も悪くないのです」
『久世君を誑かしたと聞いていたが…?』
「それは校長達がでっち上げたのです。桜井は違うと言っても聞かなかったそうです」
『そうだったのか…』
「校長達に処分をお願いします」
『本当に久世君は桜井君が好きだね』
「運命の番ですから。守るのは当然です」
『了解したよ。早急に処分を決めよう』
「よろしくお願い致します」
校長達への処分は翌日発表され、やりもしない罪をでっち上げられ、懲戒解雇となった。
最後まで『違う』だの『やってない』だの、ごちゃごちゃゴネていたが、桃も同じことを言ったにも関わらず奴らは聞く耳を持たなかったのだ。
同じ目に合って当然なのだ。
桃は停学処分が不当だったとして、即日復学となった。
これで、桃を脅かす害虫がまた減って、穏やかな毎日が過ごせるようになるはずだ。
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