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1章 転生勇者は追放される
第十五話:捕縛
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アルスはテオの制止を腕一本でいなし、宿屋の薄暗いエントランスへと足を踏み入れた。
板張りの床がギィと鳴る。立ち込める安っぽいランプの油の匂いと、煮炊きの湯気。
アルスは自分の昂った鼓動とのギャップを感じていた。
「……何ようか?」
低い声と共に、ゼノスが振り返った。その手にはすでに、簡素ながらも緻密な意匠が施された魔導杖が握られている。彼から放たれるプレッシャーは真実、本物のゼノスそのものだった。
「部外者が巫女の宿所に立ち入ることは禁じられている」
ゼノスの眼光が鋭さを増す。アルスは何も答えず、ただ階段の上――少女が降りてくるであろう場所を凝視した。
トタトタと、軽い足音が階段を叩く。
「ゼノス様、どうしたのですか? 」
階段の踊り場に現れた少女を間近に見て、アルスは息を呑んだ。
法衣の裾を揺らしながら降りてくる彼女の胸元。そこに、アルスの心臓を掴んで離さない「あるもの」が揺れていた。
『歪んだ銀のペンダント』それは初めて彼女と出会った時に着けていたものと同じに見えた。
(……そんなはずはない)
「リィン、下がってください」
ゼノスが冷たく命じる。その言葉に、アルスは弾かれたように思考を繋げた。
(若いゼノス……十歳程のリィン……ペンダント……。そして、十年前に死んだはずのテオ)
ありえない結論が、冷酷な事実として脳内で結実する。
ここは異世界でも、水晶の見せる幻覚でもない。
次元追放石を自分が次元断絶で破壊した時に『時空の事故』が起こり十年前の世界に転移したのだ。
「そんなバカな……」
アルスは自分の考えに驚愕して思わず声に出していた。
「それは私のセリフですね、さっさとここから出ていって頂きたいものです」
ゼノスは呆然としおかしな事を口走るアルスに向かい、やや命令のトーンを含み毅然と言い放つ。
アルスはゼノスの言葉をほとんど聞いていなかった。
彼は自分のその『恐ろしい結論』を拒絶したい衝動にかられ、思わず重剣の柄を握った。
「おっと、それはいけませんね」
その仕草を見たゼノスは緊張して魔道杖を前に翳し、呪文の詠唱を始めた。
「キャ!なんてこと!」
一気に二人の間に緊張が走るのを見たリィンは小さく叫んで階段を後退りし登っていく。
ゼノスの顔から余裕が消え、宿屋の空気が一気に氷点下まで凍りついた。
テオや村人たちが外で騒いでいる声が、遠くの出来事のように聞こえる。
アルスは確信していた。
「リィン、今助けるぞ」
「何!貴様は一体何をいっている?」
アルスの突然の決意表明にゼノスは思わず詠唱を中断して驚いていた。
「リィン!こっちに来い!」
アルスはゼノスに取り合わずリィンに向かって叫んでいた。
「嫌!ゼノス様!早く追い出して!」
「承知しております」
二人のやりとりを聞いたアルスはあんぐりと口を開けて動けなくなっていた。
この世界のリィンにとって自分はまだ見知らぬ他人。そしてゼノスは彼女の庇護者であったのだ。
その時テオに通報された護衛兵が一斉に駆け込んでくる。
ダダダダダダ……
「ヘルズ・エンブレイズ!(獄の抱擁)」
ゼノスの捕縛魔法によりアルスの全身が魔力のイバラで縛り上げる。
それで極端に体の自由が奪われ、何もかもが手遅れだとアルスは直感した。
「くそ!」
「この不審者を捕らえよ」
不意に魔法で捕縛されて悪態をつくアルス。
それを縛りあげろと、冷徹な声で兵士達に命令した。
アルスは大勢の兵士に囲まれ、重剣を抜くことすらできずに捕縛されてしまった。
板張りの床がギィと鳴る。立ち込める安っぽいランプの油の匂いと、煮炊きの湯気。
アルスは自分の昂った鼓動とのギャップを感じていた。
「……何ようか?」
低い声と共に、ゼノスが振り返った。その手にはすでに、簡素ながらも緻密な意匠が施された魔導杖が握られている。彼から放たれるプレッシャーは真実、本物のゼノスそのものだった。
「部外者が巫女の宿所に立ち入ることは禁じられている」
ゼノスの眼光が鋭さを増す。アルスは何も答えず、ただ階段の上――少女が降りてくるであろう場所を凝視した。
トタトタと、軽い足音が階段を叩く。
「ゼノス様、どうしたのですか? 」
階段の踊り場に現れた少女を間近に見て、アルスは息を呑んだ。
法衣の裾を揺らしながら降りてくる彼女の胸元。そこに、アルスの心臓を掴んで離さない「あるもの」が揺れていた。
『歪んだ銀のペンダント』それは初めて彼女と出会った時に着けていたものと同じに見えた。
(……そんなはずはない)
「リィン、下がってください」
ゼノスが冷たく命じる。その言葉に、アルスは弾かれたように思考を繋げた。
(若いゼノス……十歳程のリィン……ペンダント……。そして、十年前に死んだはずのテオ)
ありえない結論が、冷酷な事実として脳内で結実する。
ここは異世界でも、水晶の見せる幻覚でもない。
次元追放石を自分が次元断絶で破壊した時に『時空の事故』が起こり十年前の世界に転移したのだ。
「そんなバカな……」
アルスは自分の考えに驚愕して思わず声に出していた。
「それは私のセリフですね、さっさとここから出ていって頂きたいものです」
ゼノスは呆然としおかしな事を口走るアルスに向かい、やや命令のトーンを含み毅然と言い放つ。
アルスはゼノスの言葉をほとんど聞いていなかった。
彼は自分のその『恐ろしい結論』を拒絶したい衝動にかられ、思わず重剣の柄を握った。
「おっと、それはいけませんね」
その仕草を見たゼノスは緊張して魔道杖を前に翳し、呪文の詠唱を始めた。
「キャ!なんてこと!」
一気に二人の間に緊張が走るのを見たリィンは小さく叫んで階段を後退りし登っていく。
ゼノスの顔から余裕が消え、宿屋の空気が一気に氷点下まで凍りついた。
テオや村人たちが外で騒いでいる声が、遠くの出来事のように聞こえる。
アルスは確信していた。
「リィン、今助けるぞ」
「何!貴様は一体何をいっている?」
アルスの突然の決意表明にゼノスは思わず詠唱を中断して驚いていた。
「リィン!こっちに来い!」
アルスはゼノスに取り合わずリィンに向かって叫んでいた。
「嫌!ゼノス様!早く追い出して!」
「承知しております」
二人のやりとりを聞いたアルスはあんぐりと口を開けて動けなくなっていた。
この世界のリィンにとって自分はまだ見知らぬ他人。そしてゼノスは彼女の庇護者であったのだ。
その時テオに通報された護衛兵が一斉に駆け込んでくる。
ダダダダダダ……
「ヘルズ・エンブレイズ!(獄の抱擁)」
ゼノスの捕縛魔法によりアルスの全身が魔力のイバラで縛り上げる。
それで極端に体の自由が奪われ、何もかもが手遅れだとアルスは直感した。
「くそ!」
「この不審者を捕らえよ」
不意に魔法で捕縛されて悪態をつくアルス。
それを縛りあげろと、冷徹な声で兵士達に命令した。
アルスは大勢の兵士に囲まれ、重剣を抜くことすらできずに捕縛されてしまった。
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