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新たな門出
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ミレーネはアツシリム皇国、勇者の子孫12血族の一人だった。
しかしある時、流行病で父と母が死亡してしまう。
当時ミレーネはまだ未成年であったため、それを親族から政治利用されてしまった。
その後、親族同士の権力闘争に巻き込まれた結果彼女は皇国を追われる事になったのだ。
側近と共に祖国を追われて逃亡する中、ラセルと出逢い二度助けられた事により彼女は運命を感じていた。
「彼こそが私の騎士なのだと思います」
ミレーネは翌朝、それを側近の二人に宣言するかのように言う。
「ですが姫、彼の者の素性すら知らぬのですぞ」
「そんな事、関係ありますか?」
「もし、敵対する勢力かその関係者であれば深入りは危険であります」
「既に命の危機を二度も助けられたのですよ」
「それは……我々の力が及ばず言葉もございません」
「ラセル様が居なければ、この命は無いも同然でした」
「……ではラセル殿に直接お訊ねいたしましょう」
ミレーネは半ば強引に側近の反対を押し切り話を進めた。
だが、バルデス達の心配は杞憂に終わった。
その朝ラセルの泊まる宿屋に向うと彼は既に出発したあとだったのだ。
それを知った三人は急いで馬を調達して駆けて行ったが、所詮馬ではラセルの脚には及ばなかった。
当のラセルは隣接する地方の中核都市アーテムに到着すると火と氷の魔法剣を売り払ってしまった。
その金を元に魔法鍛冶屋を開こうと決めていたのだ。
剣を売った金で街の大通り裏にある工房付きの不動産を購入し、道具を一通り揃えてもお釣りが来た。
その工房からは、ギルドや各種ショップが至近距離で大満足であった。
「これでよし!」
中古だが工房の鍛冶設備は万全だし、魔法陣もすぐに使用可能だ。
隣棟には事務所兼自宅も整い問題がなく仕事を始めることができる。
ただ、商人用の安い価格での材料の買い付けなどは街の商工会に入らないといけないのでそれだけが未だだ。
それでも、魅力的な商品を開発すれば多少材料の仕入れが高くても問題はないはず、という目論見で見切り発車した。
「始めるぞー」
ラセルはそれまで冒険者としての経験を活かし、便利な魔法グッズを次々と発案して試行錯誤していった。
そして、初日にいくつかの試作品が完成したのでそれを持ち魔道具屋に掛け合いに行く。
アーテムは人口数百万の大都会である、その大通りに面しているショップは全て繁盛しているように見えた。
実際、大勢がひっきりなしに出入りしていて非常に活気があった。
「こんにちわー」
「いらっしゃい」
その魔法アイテムショップ「トトの店」の老店主はラセルを初め客と思いニコニコして迎える。
「あのー、実は僕は魔法鍛冶屋をしてまして本日出来上がった商品を見てもらいたく持ってきたのですが」
「へぇ、その若さで自分の工房を持っているのかね?」
店主は初めこそ怪訝そうな顔で言ったが、ラセルが袋から商品を取り出して見せると直ぐに目の色が変わった。
「これは……風魔法の掛かった靴だね、ふーん」
店主のスキルでアイテムの鑑定をして言う。
「はい、これを履いて跳ねると魔力次第で通常の数十倍は飛べますよ」
「ほほう良いね、それで値段はいくらかね?」
「そうですね、買取なら一足で一千金と言いたい所ですが、お試し価格で五百金で良いですよ」
「ううん?それはいくらなんでも安過ぎなのではないかな、少し試してみても良いですかな?」
「もちろんどうぞ」
「……おや、体がすごく軽い!しかも……バランスが絶妙だね!」
「はい、風の魔法石をふんだんに使ってますので少しの魔力で体が軽くなるはずです」
それで老店主が足首だけでピョンと跳ねると、天上付近まで簡単に飛んでいった。
「ワハハ、これは愉快愉快!」
「でしょう?」
「気に入ったよ!他にもあるのかね?」
「ええ、実は色々と試作してきました」
ラセルは、魔法の衣服、帽子、杖など日常生活で良く使われて便利になる魔法グッズを袋から取り出して並べていった。
大都市には金持ちが多い、その金持ち向けのアイテムを多数作ればどれかがヒット商品になるはずだという狙いがあったのだ。
「この風の魔法セットを身につけると、ホンの少しの魔法で飛べるはずです」
「なんと、フライの超A級魔法をアイテムで可能にしたのかい?」
「ええ、限界は低いですが」
数時間後、店主はラセルの試作品を全部買い取ってくれた。
「また、新しいのが出来たらウチの店に持ってきてくださいね!」
「ええ、お約束します」
事務所に戻り金庫に金を移すとその小さい金庫は直ぐに一杯になりそうに思えた。
「すごい、五千金も儲かったぞ」
あまりにも簡単に儲かってしまい拍子抜けしたが、新たなアイテム開発の意欲が高まった。
その晩、意外な客が工房にやってきた。
「ここが魔道具を作っているという工房であるかな?」
「ええ、どうも」
「私はこういうものである、少し話を聞かせていただきたい」
その紳士ふうの男は見慣れない紋章の入ったカードを見せて言う。
ラセルのパッシブスキルが反応して、カードに印加された隷従魔法を読み取った。
それはカードを見たものを強制的に従わせる魔法が掛かっている危険なものだ。
「僕には効きませんよ」
「ほぅ……なかなか面白い青年だね」
紳士はニヤリとして帽子を脱いだ。
「では改めて、私はグリドリッジ公爵の使いで来たものだ、大人しく一緒に来ていただきたい」
しかしある時、流行病で父と母が死亡してしまう。
当時ミレーネはまだ未成年であったため、それを親族から政治利用されてしまった。
その後、親族同士の権力闘争に巻き込まれた結果彼女は皇国を追われる事になったのだ。
側近と共に祖国を追われて逃亡する中、ラセルと出逢い二度助けられた事により彼女は運命を感じていた。
「彼こそが私の騎士なのだと思います」
ミレーネは翌朝、それを側近の二人に宣言するかのように言う。
「ですが姫、彼の者の素性すら知らぬのですぞ」
「そんな事、関係ありますか?」
「もし、敵対する勢力かその関係者であれば深入りは危険であります」
「既に命の危機を二度も助けられたのですよ」
「それは……我々の力が及ばず言葉もございません」
「ラセル様が居なければ、この命は無いも同然でした」
「……ではラセル殿に直接お訊ねいたしましょう」
ミレーネは半ば強引に側近の反対を押し切り話を進めた。
だが、バルデス達の心配は杞憂に終わった。
その朝ラセルの泊まる宿屋に向うと彼は既に出発したあとだったのだ。
それを知った三人は急いで馬を調達して駆けて行ったが、所詮馬ではラセルの脚には及ばなかった。
当のラセルは隣接する地方の中核都市アーテムに到着すると火と氷の魔法剣を売り払ってしまった。
その金を元に魔法鍛冶屋を開こうと決めていたのだ。
剣を売った金で街の大通り裏にある工房付きの不動産を購入し、道具を一通り揃えてもお釣りが来た。
その工房からは、ギルドや各種ショップが至近距離で大満足であった。
「これでよし!」
中古だが工房の鍛冶設備は万全だし、魔法陣もすぐに使用可能だ。
隣棟には事務所兼自宅も整い問題がなく仕事を始めることができる。
ただ、商人用の安い価格での材料の買い付けなどは街の商工会に入らないといけないのでそれだけが未だだ。
それでも、魅力的な商品を開発すれば多少材料の仕入れが高くても問題はないはず、という目論見で見切り発車した。
「始めるぞー」
ラセルはそれまで冒険者としての経験を活かし、便利な魔法グッズを次々と発案して試行錯誤していった。
そして、初日にいくつかの試作品が完成したのでそれを持ち魔道具屋に掛け合いに行く。
アーテムは人口数百万の大都会である、その大通りに面しているショップは全て繁盛しているように見えた。
実際、大勢がひっきりなしに出入りしていて非常に活気があった。
「こんにちわー」
「いらっしゃい」
その魔法アイテムショップ「トトの店」の老店主はラセルを初め客と思いニコニコして迎える。
「あのー、実は僕は魔法鍛冶屋をしてまして本日出来上がった商品を見てもらいたく持ってきたのですが」
「へぇ、その若さで自分の工房を持っているのかね?」
店主は初めこそ怪訝そうな顔で言ったが、ラセルが袋から商品を取り出して見せると直ぐに目の色が変わった。
「これは……風魔法の掛かった靴だね、ふーん」
店主のスキルでアイテムの鑑定をして言う。
「はい、これを履いて跳ねると魔力次第で通常の数十倍は飛べますよ」
「ほほう良いね、それで値段はいくらかね?」
「そうですね、買取なら一足で一千金と言いたい所ですが、お試し価格で五百金で良いですよ」
「ううん?それはいくらなんでも安過ぎなのではないかな、少し試してみても良いですかな?」
「もちろんどうぞ」
「……おや、体がすごく軽い!しかも……バランスが絶妙だね!」
「はい、風の魔法石をふんだんに使ってますので少しの魔力で体が軽くなるはずです」
それで老店主が足首だけでピョンと跳ねると、天上付近まで簡単に飛んでいった。
「ワハハ、これは愉快愉快!」
「でしょう?」
「気に入ったよ!他にもあるのかね?」
「ええ、実は色々と試作してきました」
ラセルは、魔法の衣服、帽子、杖など日常生活で良く使われて便利になる魔法グッズを袋から取り出して並べていった。
大都市には金持ちが多い、その金持ち向けのアイテムを多数作ればどれかがヒット商品になるはずだという狙いがあったのだ。
「この風の魔法セットを身につけると、ホンの少しの魔法で飛べるはずです」
「なんと、フライの超A級魔法をアイテムで可能にしたのかい?」
「ええ、限界は低いですが」
数時間後、店主はラセルの試作品を全部買い取ってくれた。
「また、新しいのが出来たらウチの店に持ってきてくださいね!」
「ええ、お約束します」
事務所に戻り金庫に金を移すとその小さい金庫は直ぐに一杯になりそうに思えた。
「すごい、五千金も儲かったぞ」
あまりにも簡単に儲かってしまい拍子抜けしたが、新たなアイテム開発の意欲が高まった。
その晩、意外な客が工房にやってきた。
「ここが魔道具を作っているという工房であるかな?」
「ええ、どうも」
「私はこういうものである、少し話を聞かせていただきたい」
その紳士ふうの男は見慣れない紋章の入ったカードを見せて言う。
ラセルのパッシブスキルが反応して、カードに印加された隷従魔法を読み取った。
それはカードを見たものを強制的に従わせる魔法が掛かっている危険なものだ。
「僕には効きませんよ」
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