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おっさんの居なくなった王都は大変なことに
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そのころ、アキの勤めていたマルター王国では大騒ぎになっていた。
土の精霊が寝入ってしまい、全ての土依存の魔法が止まってしまったのだ。それにより、王都の防御壁は機能を失い、今では外敵の侵入を防ぐことは不可能になっている。更に悪い事に農作物の収穫が激減しているのだ。このままでは軍事力と生産力が大ダメージを受けて、今でさえ厳しい国庫が完全に破たんしてしまう。そして今度は、追い打ちを掛ける様にして王都で疫病が蔓延し始めた。
「まだ見つからんのか?!」
王は自分の言葉の節々に怒りがこもってしまうのを抑える事が出来なかった。
「はい、派遣したサルーク岬に使いの者を飛ばしたのですが、すでにアキ殿は何処かへ去られた様子でして」
「全く……」
このままでは間違いなく侵略の好機とみた隣国、アガターヌ国が攻めてくるだろう。それは時間の問題におもえていた。
たった一人の精霊守護騎士(雑用係り)を首にしただけでこのあり様だった……。
以前の王は高をくくっていたのだ。精霊の守護などと言う雑用はだれにでも務まる簡単な業務に過ぎない……と。だが、実際にここまで窮地に追い込まれてから王都の中で求人をだしても”自称精霊のエキスパート”という中途半端な者ばかりが集まってきて、肝心の土の精霊と心を通わせるものが1人も居なかった。
「一体どうなっているのだ!!?」
「は、アキ殿の追跡は困難を極め、求人をつづけております」
「そんな事は判って居る」
「は……」
「次の手を打たねばな……同盟諸国へ軍事支援の書簡をだすぞ」
「は、して兵、物資の総量はいかほどにいたしましょうか?」
王は、プランBとして同盟への臨時支援を要請することにしていた。
「可能なら精霊の守護騎士の派遣も依頼しといてくれ」
「……は」
それは、恥を捨ててなりふり構わない王の覚悟だった。自国の恥を晒そうが、窮状を脱出する為にはなんだってやるというものだ。
「ですが、同盟諸国には土の精霊は居りませんので……」
「判っておる、たまたま土の精霊ではないが、元々土の精霊とも心を通わせることが可能かも知れぬだろう?」
「……なるほど、仰る通りでございます」
だが、実際にやって来た火の精霊使いと、水の精霊使いは多少は土の精霊とも交信できるとの事であったが、マルター王国の超大物の土の精霊とは格が二つ三つ違うので、まともに対話すら許してもらえなかったのだ。それで一瞬だけ目を覚ました土の精霊が又眠り込んでしまった。
「初めて拝見しましたが、これほどの大物とは思っていませんでした」
と、悔しそうに水と火の精霊使いが言う。実際に対峙した土の精霊の眼光にビビってしまって交流どころではなかったのだ。自分が数段格下であると言う事を認める代わりに、土の精霊が数段格上であると言う事にしたのだが、どちらでも同じ意味だった。
「ダメであったか……」王の落胆は激しかった。
いよいよ、王国は困窮を極めて行った。街は飢える者、疫病で倒れるもので溢れかえり、兵士の兵糧(食料)ですら今は在庫が厳しくなってきているのだ。このままでは自分の代で王国は崩壊してしまう。
精霊守護騎士をだたの雑用係りと侮っていたが、彼は王国の柱そのものだったのだ。宮廷の文官武官全員と交換しても良いくらい重要な人物だったのである。
・
・
・
俺が王宮を去ってから半年が経つころにはマルター王国の窮状は周辺諸国に筒抜けとなっていた。だが隣国、アガターヌ国のそれも隔絶した孤島に居る俺にそれを知るすべはない。
そのころ、俺は新しく生命の楽園として復興したこの島でスローライフを満喫し始めていた。
まずは、掘立小屋からビーチでの昼寝設備、畑の開拓と釣り船の製造まで自力でやろうと決めていたのに、精霊達が我も我もと手伝うのでその環境は一日で出来上がってしまった。
昼間は海を泳ぎ、銛で魚を獲り、夕方には焚火を眺めてゆっくりと焼き魚と野菜のバーベキューを楽しむ。夜には夜空の星々を観察して風の精霊と詩を読む、そんな生活を始めていた。
これこそが俺の求めていたモノだと実感した。
精霊だって、自然にあるうちには誰の支援が無くても勝手に回復するし、そして自分で考えて活動するのだ。そう考えたら、王宮の精霊殿なんて場所に縛り付けているのが間違いなのだと考えるようになる。だが、土の精霊は普通は動けないので、王都を壊滅させて自然に戻す他に土の大精霊をもとに戻すのは不可能と言う事も判っていた。
俺はスローライフを満喫しながらも、親のような土の大精霊の事が気になって居たのだ。
土の精霊が寝入ってしまい、全ての土依存の魔法が止まってしまったのだ。それにより、王都の防御壁は機能を失い、今では外敵の侵入を防ぐことは不可能になっている。更に悪い事に農作物の収穫が激減しているのだ。このままでは軍事力と生産力が大ダメージを受けて、今でさえ厳しい国庫が完全に破たんしてしまう。そして今度は、追い打ちを掛ける様にして王都で疫病が蔓延し始めた。
「まだ見つからんのか?!」
王は自分の言葉の節々に怒りがこもってしまうのを抑える事が出来なかった。
「はい、派遣したサルーク岬に使いの者を飛ばしたのですが、すでにアキ殿は何処かへ去られた様子でして」
「全く……」
このままでは間違いなく侵略の好機とみた隣国、アガターヌ国が攻めてくるだろう。それは時間の問題におもえていた。
たった一人の精霊守護騎士(雑用係り)を首にしただけでこのあり様だった……。
以前の王は高をくくっていたのだ。精霊の守護などと言う雑用はだれにでも務まる簡単な業務に過ぎない……と。だが、実際にここまで窮地に追い込まれてから王都の中で求人をだしても”自称精霊のエキスパート”という中途半端な者ばかりが集まってきて、肝心の土の精霊と心を通わせるものが1人も居なかった。
「一体どうなっているのだ!!?」
「は、アキ殿の追跡は困難を極め、求人をつづけております」
「そんな事は判って居る」
「は……」
「次の手を打たねばな……同盟諸国へ軍事支援の書簡をだすぞ」
「は、して兵、物資の総量はいかほどにいたしましょうか?」
王は、プランBとして同盟への臨時支援を要請することにしていた。
「可能なら精霊の守護騎士の派遣も依頼しといてくれ」
「……は」
それは、恥を捨ててなりふり構わない王の覚悟だった。自国の恥を晒そうが、窮状を脱出する為にはなんだってやるというものだ。
「ですが、同盟諸国には土の精霊は居りませんので……」
「判っておる、たまたま土の精霊ではないが、元々土の精霊とも心を通わせることが可能かも知れぬだろう?」
「……なるほど、仰る通りでございます」
だが、実際にやって来た火の精霊使いと、水の精霊使いは多少は土の精霊とも交信できるとの事であったが、マルター王国の超大物の土の精霊とは格が二つ三つ違うので、まともに対話すら許してもらえなかったのだ。それで一瞬だけ目を覚ました土の精霊が又眠り込んでしまった。
「初めて拝見しましたが、これほどの大物とは思っていませんでした」
と、悔しそうに水と火の精霊使いが言う。実際に対峙した土の精霊の眼光にビビってしまって交流どころではなかったのだ。自分が数段格下であると言う事を認める代わりに、土の精霊が数段格上であると言う事にしたのだが、どちらでも同じ意味だった。
「ダメであったか……」王の落胆は激しかった。
いよいよ、王国は困窮を極めて行った。街は飢える者、疫病で倒れるもので溢れかえり、兵士の兵糧(食料)ですら今は在庫が厳しくなってきているのだ。このままでは自分の代で王国は崩壊してしまう。
精霊守護騎士をだたの雑用係りと侮っていたが、彼は王国の柱そのものだったのだ。宮廷の文官武官全員と交換しても良いくらい重要な人物だったのである。
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俺が王宮を去ってから半年が経つころにはマルター王国の窮状は周辺諸国に筒抜けとなっていた。だが隣国、アガターヌ国のそれも隔絶した孤島に居る俺にそれを知るすべはない。
そのころ、俺は新しく生命の楽園として復興したこの島でスローライフを満喫し始めていた。
まずは、掘立小屋からビーチでの昼寝設備、畑の開拓と釣り船の製造まで自力でやろうと決めていたのに、精霊達が我も我もと手伝うのでその環境は一日で出来上がってしまった。
昼間は海を泳ぎ、銛で魚を獲り、夕方には焚火を眺めてゆっくりと焼き魚と野菜のバーベキューを楽しむ。夜には夜空の星々を観察して風の精霊と詩を読む、そんな生活を始めていた。
これこそが俺の求めていたモノだと実感した。
精霊だって、自然にあるうちには誰の支援が無くても勝手に回復するし、そして自分で考えて活動するのだ。そう考えたら、王宮の精霊殿なんて場所に縛り付けているのが間違いなのだと考えるようになる。だが、土の精霊は普通は動けないので、王都を壊滅させて自然に戻す他に土の大精霊をもとに戻すのは不可能と言う事も判っていた。
俺はスローライフを満喫しながらも、親のような土の大精霊の事が気になって居たのだ。
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